腹グロ王子と子羊ちゃんsideNPDFで表示縦書き表示RDF


チョットだけBL混入中。
苦手な方はご遠慮下さい。
腹グロ王子と子羊ちゃんsideN
作:狐狸川ゆうら


 質問。
 例えば、気になる人に極端に嫌われたとしましょう。
 その時、アナタは一体どう云う対処法を取りますか?



 俺は今まで、極力人と摩擦を起こさない様に勤めてきた。
 俺を嫌う奴にも、出来る限り公平に接してきたハズだ。
 内申書の為もあるけど、生徒会長なんかも引き受けたし、勉強やスポーツも力を抜かない様に努力してきた。
 まぁ……主に変な目立ち方をしない為にだけど。
 だから、人に極端に嫌われた事は一度も無い。
 顔を見たくないと言われた事も一度も無い。
 けれど、クラスメイトの室尾守むろおまもるだけは何故だか心底、俺を嫌っていた。それは正直言って、少し面白くない事だった。
 今までは、陰口を叩く奴らくらいは幾らでも居た。だが、室尾は面と向かって“嫌いだ”と言い、挙句、あからさまに俺を怯えた目で見て避けまくる。まるで、狼に付け狙われている羊みたいに。
 けれど、俺はあんまり気にしていなかった。まあ、中にはそんな人間が居ても良いだろうと思っていた。
 しかし、室尾が他のクラスメイトや生徒と“笑顔”で“楽しそう”に話しているのを見 た時、何故だかもの凄く不愉快だった。
 何故?
 以来、俺は視線で室尾を追う様になっていた。
 笑う、怒る、はしゃぐ……と、くるくると表情を変えて見ていて非常に面白かった。
 身長は少し低いか?クラスの女子に囲まれると、頭しか見えなくなってしまうから。体のラインも折れそうとまでは行かないが、細い部類に入ると思う。
 顔は犬みたいなクリッと大きな目がとても印象的で、男と云うよりは男の子……いや、女の子に近いかもしれない。華奢な顎のラインを見ていると時に指先でなぞって見たい衝動に駆られる。
 日に日に俺は室尾の“俺に向けられる笑顔”を見たいと思うようになっていた。……違うな、笑顔だけじゃない、泣き顔も、寝顔も、全部だ。
 けれど、俺に向けられる室尾の顔は怯えだけ。
 どんなに近付こうとも、一歩近付けば二歩下がる。近付けば近付く程、相手はどんどん遠ざかっていく。
 どうすればいい?
 俺はそこで諦められるほど物分りが良くない。相手を想ってそっとしておこうなどと思えるほど大人じゃない。
 そんな時、偶然クラスで女子に囲まれる室尾を見つけた。助けようと思ったのかどうなのか、正直あんまり覚えていない。
 ただ案の定、室尾は俺を怯えた目で見上げていた。
 けれど、今までに無いほど傍に寄れた事は確かだ。俺はつい正面から室尾の顔を見たい衝動を抑えきれず、更に近付いた。
 何か声を掛けたかもしれない、舞い上がっていたせいでよく覚えていない。
 でもソレによって室尾は俺から逃げようとして、後ろに転びかけた。咄嗟に室尾の手を握り、腰に手を回していた。
 俺も驚いたが、室尾はもっと驚いた様で大きな目を更に大きく見開いたかと思うと、突然意識を失った。
「え、ちょ……室尾!?」
 がっくりと力を失った体は少しだけ重みを増した。けれど、心地よい重みだ。
 俺はそのまま室尾を寝かせるかどうか少し考えたが、やはり保健室に連れて行くことにした。そっと、室尾の体を抱き(俗に言うお姫様抱っこだ)かかえて歩き出す。
 なんだか妙な満足感が心を満たした。
 捕まえようと必死になっていたモノが、ある日突然、俺の腕に落ちて来た。嬉しくないはずは無い。
 すると、今度は悪戯心がムクムクと湧き上がる。これは間違いなく、千載一遇のチャンスだ。
 どうするかあれこれと考えていたら、あっという間に保健室に到着。しかし、着くなり先生は職員会議に行くと言い出した。
「あれ?中内くん、どうしたのそのコ」
「それが……貧血で倒れたみたいです。ベッド借りてもいいでしょうか?」
「じゃ、帰る時や何かあった時は職員室に来てね」
 先生はバイバ〜イと手を振って去って行った。
 どうやら今日は本当に運がいいらしい。
 俺は室尾をベッドに横たえると、いい考えが頭を過ぎった。
 ブレザーを脱がせ、ワイシャツを脱がせる。その時、ブレザーのポケットから、室尾の定期入れが滑り落ちた。
 また、いい考えが思い付く。
 こんな事したら、きっともっと嫌われる。そんな事は頭でしっかり分かってた。でも、どうしても俺の傍に室尾を置きたかった。
 どんな事をしても、傍に…………。
 俺の頭はそんな考えで一杯だった。
 室尾が目を覚ますと案の定、予想通りの反応を返してきた。
 怒鳴る顔が少し新鮮だ。
 そこで少し意地悪な質問をする。これもやっぱり予想通りの反応が返ってきた。俺は自分の計画が間違いなく成功する確信を得た。
「…………どうぞ、気を付けて下校して下さい」
 ココであっさり引き下がる。がっつくのは良くない。
 クルリと背を向け、保健室を後にした。
 胸ポケットには室尾の定期券。室尾の定期入れには代わりにメッセージと住所を書いた紙を入れてある。
 俺の予想では、室尾は間違いなく俺の所へ来る。
 そう思うと、自然と口元が緩み足取りが軽くなった。
 さて、次はどうしようか?



 答え。
 俺は例え自分を嫌う相手を好きになったとしても、捕まえて、閉じ込めて、撫でて、抱き締めて、放さない。
 でも、いつか本当の笑顔を見せて欲しいと思うのは、俺のエゴなのだろうか。でも、いつか、きっと…………。














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