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獣王烈戦記 作者:不某逸馬

第六章「神女と聖女」

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第六章 第四話『黒色美洲豹』


一.
 黄金の人狼騎士〝ヴァナルガンド〟。


 優美な長い足をした、狼と狐の中間のような見た目の犬科動物、タテガミオオカミの〈鎧獣ガルー〉。

 アクティウム王国が誇る工聖オーバーマイスター、エンツォ・ニコラの制作で、〈騎士スプリンガー〉は同王国の第三王子クリスティオ・フェルディナンド・デ・カスティーリャ。
 駆り手のクリスティオが六・五フィート(約二メートル)の非常な長身のため、〈鎧化ガルアン〉後の大きさは、ザイロウなどと違い、劇的に大きくなるわけではない。ザイロウと同じ十一・五フィート(三・五メートル)ほどの上背だが、筋肉に覆われた通常の〈鎧獣騎士ガルーリッター〉に比べれば、実にほっそりとした体つきに見える。

 そのヴァナルガンドが、体を丸めるように沈ませると、直上を鎚矛メイスの風切り音が過ぎていった。
 空を斬る、尾黒牛羚羊オグロヌーの一撃。
 石壁さえも砂糖菓子のように粉々にする勢いがあるのだから、細身のタテガミオオカミなど、中の駆り手ごと致命傷になりかねない。
 だが、どれほどの威力があろうとも――擦りもしなかった。

「なんとノロマだ。欠伸がでるぞ」

 気付けば、灰堂騎士団ヘクサニアの人牛騎士の背後に周り、耳元で囁き声を残す。背後を振り返ると、もうそこにはいない。

 イーリオは何度も目にしていた。
 旅の途中の修練で、その速さを。
 ヴァナルガンドの速度は、まだまだこんなものではない。今でさえ、ザイロウの動体視力でも、目で追うのがやっと。足の速さだけで言えば、本気のヴァナルガンドは、百獣王さえも凌駕する。

 クリスティオ=ヴァナルガンドは、腰の大剣を手にした。今まで剣を構えてすらいなかったのだ。
 鋳型で鋳造したような、様々な細工模様が施された、異形な見た目の大剣。刀身には穴があったり、丸型の凹凸物があったりして、およそ武具としては不格好である。だが、見た目の異様さは飾りではなかった。
 クリスティオは、タテガミオオカミの足で軽く地面を叩くと、不敵に言い放った。

「まずは〝一速〟だ」

 次の瞬間、その場から金毛のタテガミオオカミが姿を消した。
 と同時に、目の前のオグロヌーの〈鎧獣騎士ガルーリッター〉が、横向きに体を湾曲させながら吹き飛ばされた。片腕は千切れ飛んでいる。その吹き飛んだ腕が地面に着くより早く、もう一騎の人牛騎士が、体を地面に叩き付けられていた。

 その速さは、まさに神々の領域。神速の金毛人狼。

 たじろぐ敵に対し、クリスティオ=ヴァナルガンドは、笑うように口吻の片側を上げた。その仕草を嘲弄と受け取って激昂しかけるオグロヌー達であったが、ヴァナルガンドとの距離が、鎚矛メイスの攻撃範囲ではわずかに届かない、間合いの外。その状況で、いきなり一体が腹部に衝撃を受けて吹き飛ばされる。勢い、吹き飛ばされた一騎の真後ろにいた人牛も、煽りを食らって下敷きになった。
 残った一騎が見ると、ヴァナルガンドは走り出していない。走り出した素振りもない。だが、片手を突き出していた。瞠目する。イーリオや、ドグも驚いた。

 ヴァナルガンドが手にしていたのは、槍。

 先ほどまでの大剣ではなく、その二倍の長さはありそうな槍だった。
 ヴァナルガンドは槍を持った片手を手首で捻ると、仕掛けめいた音をたてて、槍が〝変形〟する。

 見れば、元の大剣に戻っていた。

「ほう、ジャンルイジの〝カラドヴルフ〟。――エンツォが完成させていたのか」

 感心したように呟いたのは、黒騎士だった。
 ヴァナルガンドの武器授器(リサイバー)
 銘を〝カラドヴルフ〟と言った。


 〝槍〟で吹き飛ばされた一騎は、鳩尾の下側に、風穴を空けて悶えている。いくばくかもしない内に、絶命する事は目に見えていた。それの下敷きになった一体が、仲間を助けるよりも、この状況に堪えきれない絶望を覚え、その場で悲鳴をあげた。
 声はメギスティ中に響き渡り、聖域らしい寂寞とした空間に、目に見えぬ亀裂を走らせた。
 だがこれで騒ぎが広がる。予定より早くなったが、ここまではイーリオ達の予定通り。
 悲鳴をあげた一騎は戦意を喪失したのか、その場から腰を抜かしたまま後じさろうとするが、無傷のもう一騎は、勇を鼓舞して鎚矛メイスを構え直した。その気迫は賞賛に値するものだろうが、如何せん相手が悪すぎる。オグロヌーが鎚矛メイスを振り上げ、〈角突撃アンシュトゥルム〉の体勢に入った直後。

 彼の視界に入っていなかった白銀の閃光が、光の残像を残して横切っていく。

 大狼ダイアウルフの〈鎧獣騎士ガルーリッター〉イーリオ=ザイロウが、残った一騎を一刀の下に沈めた。

 その場に崩れ落ちる人牛騎士に対し、白銀の人狼は振り返りもしなかった。そのまま、イーリオにしては珍しく、まるで挑発するかのように曲刀〝ウルフバード〟の切っ先を、黒衣の騎士に突きつける。

 黒衣に身を包んだ仮面の騎士は、笑ったのだろう。肩を細かく揺すると、腰に吊るした剣を外した。

 ガシャン。

 剣が鞘ごと地に落ちて、石の回廊に大きな音を立てた。その音が、やけに残響をたてて耳を打った。

「なるほどな。腕をあげたという事か。それに、助っ人もいる、と。確かにあの時、助けを借りてはいかんとは言ってなかったな」

 ゆったりと、だが隙のない猛獣の動作で、黒豹が主の背に回り込んだ。

「しかし忘れてないか?出来れば取り返そうなどとは思わん事だ、と言ったのを?それは忘れたか?」
「覚えてる。けど、約束はしていない」
「そうか」


 黒曜石よりも漆黒に輝く黒豹が、全身をバネにした。


「〈黒化ニグレド〉」


 墨のような黒煙がわきあがる。
 この世で唯一人。
 白色の煙ではなく、くり色の煙を噴き上げる〈鎧化ガルアン〉。
 神秘の黒が、暗黒色の獣王を呼び覚ます。



二.
 薬湯による湯浴みを済ませた体を、二人の女官が、丁寧に恭しく拭き取る。
 僻地、それも高山の寺院の中で、自由に湯船を使用出来るなど、王侯貴族並みの贅沢ぶりであった。それが許されるのは、ヘスティアが黒母教の大巫女だからだ。
 例え、仮にどのような末端の――ごく普通の――信徒がこれを知ったところで、彼らは何も不服には思わないだろう。何故ならヘスティアは、生ける象徴。大司教よりも遥か高位の存在。黒母教の唯一絶対神、母なるオプスの地上における代行者なのだから、彼女以外のあらゆる人間は、彼女に尽くすのが当然だと考えるからだ。

 人々が彼女を敬う実証の一つが、そのよわいにあった。二百歳をとうに過ぎ、三百歳に手が届こうかという年齢にも関わらず、未だに少女のような顔姿形をしている。
 外部の人間からすれば、何を馬鹿な、人間が二百歳も生きるなど有り得ない、そんなものは偽り、まやかしの類いでしかないと考えるだろう。しかし、黒母教信者は、口を揃えてヘスティア様は二百歳を超えた〝神女〟なのだ。間違いない、と言う。狂信的と言えばそうなのだが、実際、幾人かの証言者――ヘスティアに謁見した事のある黒母教に帰依した王侯貴族ら――によれば、自分が入信した若い頃から、ヘスティア様の見た目は一切変わっていない。同じ顔、同じ声、同じ姿のままだ、と言う声が多数ある。そして記録の上でも、そのような記載が少なからず残っていた。
 神か悪魔か、はたまた魔法の類いでもなければ、そのような事は有り得ないのだが、女神オプスの加護によるという以外、真実を知る者はいなかった。

 ヘスティアの体を拭く女官達は、鼻孔をくすぐる甘やかな香りに、頬が上気した。薬湯に含まれる成分なのか、それとも神の巫女なればこそなのか、ヘスティアの体からは、得も言われぬ芳香が漂っているからだ。それはどこか、わずかながらにネクタルの香りにも似ていた。

 体の線が透けて見える薄絹を羽織り、その上から巫女の衣服を纏う。
 ヘスティアが、いつもの正午の湯浴みを終えた直後の事だった。
 何やら神殿の外側が騒がしい事に、女官達は気付いた。
 いつもは静寂に包まれているメギスティにおいて、大きな音声おんじょうが出るのは、祈りの時と、いくつかの祭礼や儀式を除けば、ここの別棟に住まう〈錬獣術師アルゴールン〉イーヴォが何やらしでかした時ぐらいで、普段は神女のいる奥殿まで騒ぎが聞こえる事など有り得ない。
 女官の一人が不審がり、何事か確かめるために腰を上げようとした。だが、鈴を鳴らしたような軽やかな響きで、女官の動きをヘスティアが押しとどめた。聖歌を唄う少女のようでもあり、予言者の宣託のような厳かにも感じとれるその声色に、女官達は一様に畏まる。
 装身具を嵌め、身支度をし終えたヘスティアは、唐突に告げた。

「〝遷宮〟をはじめます」

 女官達は目を丸くする。神女の言葉に疑義を挟む事などありえないが、さすがに耳を疑いそうになる発言だったからだ。

「は……、しかし、まだ細かなものがお済みになっておりませぬし、信徒の皆もそれに向けての準備に働いておりますれば、数日の後には御意も叶いましょう。それまでは、今しばしお待ちあそばされるのがよろしいかと具申いたしますが……」
「本日、こちらを出ます」
「はっ」

 神女の言葉は絶対。
 これ以上の疑いは、信仰への裏切りでもある。

「後ほど、皆には私がみことのりを発しましょう。その後で、やるべき事があります」

 ヘスティアは、祈るように目を閉じた。
 それが女神に対する祈りなのか、何かに想いを巡らしての事なのかは誰にも分からない。そしてこの後に続く出来事を見越せる者も、誰一人としていなかった。彼女と、もう一人を除いて、誰一人――。



三.
 黒灰院に通じる石畳の回廊、そのはじまりである向かい側の丘の地点で、派手な色の髪を高く結い上げた女性が、黒灰院入口付近で起きた騒ぎを観察していた。ちょっとした人の動きなど見えるはずもないし、人の判別も覚束ないほどの距離ではある。だが、〈鎧獣騎士ガルーリッター〉の動きは派手だ。背丈も人間を遥かに超えるし、何より破壊力は攻城兵器をも凌ぐほどなのだから、谺する音も大きければ、もたらす被害も人の領分を軽く凌駕している。

 覇獣騎士団ジークビースツ 陸号獣隊ビースツゼクスのマルガとの距離がこれほどあろうと、何か異変が生じたぐらいは彼女でなくとも容易に視認出来る。
 傍らで体を休める黒色美洲豹ブラックジャガーの〈鎧獣ガルー〉に頷いて、立つように促した。

「行くよ〝ウェヌス〟」

 通常の覇獣騎士団ジークビースツのものよりもくすんだ、白亜の色をした〈授器リサイバー〉を揺らし、ブラックジャガーのウェヌスが「ヴォウ」と喉を鳴らした。
 中型猫科でも、豹以上のものしか出せない、独特な低音の吠え声は、これが人間などものともしない、猛獣の眷属なのだと改めて実感させられる。豹よりも小型になれば、咽頭の仕組みが変わり、このような低音の咆哮は出せないのだ。

「〈白化アルベド〉」

 マルガの声に応じ、ウェヌスが前足を跳ね上げ、彼女の全身に覆い被さる。同時に、白煙を勢い良く噴き上げ、たちまちの内にジャガーの頭をした、人獣の女騎士が姿を見せた。

 手には金属製の細長い棒。金属棍。
 女性〈鎧獣騎士ガルーリッター〉特有の、細い腰にわずかにふくらんだ胸をしているが、六つに割れた腹部や、しなやかではあるが筋肉質で逞しい四肢は、特殊な筋繊維で鎧われている事を、はっきりと物語っている。

 上官であるヴィクトリアはいない。彼女とは別行動になっており、マルガは己のみで、今から潜入工作を開始するのだ。
 ジャガーの瞳で目的の寺院を見定め、どの経路ルートが最良かを判定する。しばらくして、道が定まった。

 マルガ=ウェヌスは、金属棍を折り畳み、それを腰の防具に吊るした。ウェヌスの武器授器(リサイバー)である棍は、最大四つにまで折り畳める節棍式なのだ。


「〝偽装隠身キャッシュ・キャッシュ〟」


 準備が出来ると同時に、彼女の声で、人化美洲豹ワー・ジャガーの姿が徐々に消えていく。まるで幽霊か物の怪のような溶け込み方。輪郭も細部もなく、絵具で混ぜ合わせるような自然さで、やがてその姿は完全に見えなくなった。
 ウェヌスの〈獣能フィーツァー〉。

 〝偽装隠身キャッシュ・キャッシュ〟。

 体毛や体表組織による色素変化の〈獣能フィーツァー〉で、簡単に言えばカメレオンのように周囲に擬態して姿を消す、後の世に言う光学迷彩。
 その際、身に着けた〈授器リサイバー〉も動きに合わせて色変化するのだが、これは陸号獣隊ビースツゼクス、それも席官以上に支給された特別製の〈授器リサイバー〉のみが持てる機能であった。

 擬態の精度は、ゆっくりとした動作であれば、まず気付かれる事はない。速い動作になれば違和感に気付く事もあるだろうが、静止していれば、視覚で感知するのはほぼ無理だと言っていいだろう。
 姿が完全に見えなくなり、気配や匂いすらも掻き消える。
 隠密・索敵に特化した〈鎧獣騎士ガルーリッター〉。彼女に忍び込めぬ場所はなく、乗り越えられない壁はない。

 見えぬ姿で石回廊を跳び降り、岩肌を壁伝いに駆けてゆく。壁走りの要領。それはイワヤギでも不可能な常識はずれの動きである。〈鎧獣騎士ガルーリッター〉としても、超常に等しい疾走は、人智を遥かに超えていた。
 ウェヌスが駆ける度に岩壁が崩れ、連続で規則的に石塊が打ち込まれるように、穴が空いてゆく。それは疾駆というよりも、ほとんど跳躍に等しかった。一足の幅は十一ヤード(約十メートル)をゆうに超える。瞬く間に黒灰院下層部の岩壁に取り付き、そこで一度急停止をした。

 荒くなった息を、浅く短い呼吸で整え、全身の緊張をゆっくりと解いていった。敵地の侵入に焦りは最もいけない。焦れば焦るほど、周囲が見えなくなってしまうからだ。気息を安定させたマルガ=ウェヌスは、壁面の上部を見上げた後、両足に力を込めて、両手も巧みに使いつつ、垂直に跳び上がっていく。何度かの跳躍で、寺院の一棟の屋根にまで一気に駆け上がって行った。
 さぁ、ここまでは予定通り。問題はここからであった。

 何処にレレケこと、レナーテ・フォッケンシュタイナーがいるのか。

 手紙には、レナーテが知る限りの建物の見取り図や、おおよその場所、それに救出の際の助けになりそうな情報がしたためられていたが、現在進行形でどの場所にいるかまでは分かるはずもない。目星を頼りに、ひとつひとつ確認をしていくしかなかった。

 最初の建物に身を踊らせ、体重を感じさせぬ動きで、するりと侵入を果たしていく。
 もし姿が見えなくなっていなければ、突然の人獣の出現に大騒ぎになっていたに違いない。だが、巨大な人獣の姿をしていても、〝偽装隠身キャッシュ・キャッシュ〟があれば誰にも気付かれる事はなかった。



 メギスティの寺院の中。
 一面が黒の世界。

 黒漆喰で塗布された石壁は、長年の風雪に耐えるだけの耐久性を持ち、内も外も問わず、あらゆるところが黒と灰色系統の塗装で統一されている。それゆえか、断熱性はあっても全体的に暗い印象なので、過剰なまでに燭台が置かれていた。

 ――これだけ黒いと、偽装隠身キャッシュ・キャッシュもし易いわね。

 もともとがブラックジャガーなだけに、色彩の乏しいメギスティの中は、隠れるのに好都合だと言えた。

 中央の礼拝堂は無視していいだろう。
 まずは図書館のある左端の建物。情報によれば、レナーテの父、イーヴォ・フォッケンシュタイナーの研究室は、同じ建物にあるという事だった。可能性が高いのはここ。もしくは反対側の〈鎧獣ガルー〉厩舎のある建物か。
 息をひそめつつ、素早い動きで建物内を探っていった。
 目の前、鼻先の距離を黒母教の僧侶が歩いていく。だが、気付かれはしない。
 気付かれなければ存在は無きに等しい。
 そのまま、一部屋一部屋、隈なく調べていく。

 ところどころに、四枚の翼を持った大小様々な女神像が設置されていた。女神オプスの像だ。翼のないものもあったり、古い神像だと羽の形状が蝶であったりするらしいが、ここにあるのは四枚ある鳥の羽をしていた。

 太い柱のある通路を抜け、背の低いアーチ状の天井のある部屋を通り過ぎる。その先で、幾人もの僧侶が、神妙な面持ちで出入りしている部屋を見つけた。
 三階が吹き抜けになった巨大な空間。
 黒母教の知の宝物庫。メギスティの大図書館だ。

 足音を忍ばせつつ、全体が見渡せる位置に、透明の黒豹騎士は立った。
 視野は獲物を捉える広さで。触覚は警戒を。嗅覚と聴覚はそれ以外の情報を漏れなく感知するように。そうやって、マルガ=ウェヌスは目標を見定めようとする。が――

 いない。

 しばらく様子を伺った後、立ち位置も移動して確認するが、それらしい人影は見当たらなかった。

 ――ここじゃないとなれば……。

 次は〈鎧獣ガルー〉厩舎。行くまでには巨大な回廊があるが、気付かれる心配はないので行き易い。しかし、問題は果たしてそこにいるかどうかという事。もしいない場合はどうするか……。



四.
 モニカが反応したので、ガエタノは閉じていた瞼を開いた。正確にはモニカではなく、彼女の〈鎧獣ガルー〉チベタン・マスティフの〝マーザドゥ〟が反応したのであったが。

「来たのか?」
 モニカは磁器人形フィギュリンの無表情で、おそろしく長身な老人の問いに頷いた。

「うん。中にいる。一人みたいだけど」


 モニカ・ナビィの心は、この建物のように暗黒で虚ろだ。
 幼い頃に人買いに売られ、幼女趣味の変態貴族どもを相手にする売春窟に居た所を、今、目の前にいるガエタノ老人に拾われた。ガエタノにその趣味はなく、くだんの売春窟が、エール教の司教によって運営されていたため、これを摘発する為に行ったに過ぎない。そこでたまたま拾った少女が、何の興趣か、犬の〈鎧獣ガルー〉を使う〈騎士スプリンガー〉として仕込まれており、それに興味を持ったガエタノが、灰堂騎士団ヘクサニアに誘ったのだ。

 以来、誰にも心を開かぬモニカが、ガエタノには心を閉ざす事なく接していた。自分を、魔窟から救い出してくれた恩人だからであり、同時に、彼女に眠る〈騎士スプリンガー〉の才能を見出してくれた恩師でもあるからだった。
 ファウストにも心を閉ざしてはいないが、彼への場合は、思慕や憧憬に近く、分かり易く言えば恋をしているだけだ。灰堂騎士団ヘクサニア総長のゴーダンに対しては、純粋な畏れから敬服しており、また、〝神女〟ヘスティアに対しての思いとも異なっていた。

 ともあれ、モニカが心を開くのは、灰堂騎士団ヘクサニアの長老であり、知恵袋でもあるガエタノ老人ただ一人だけなのは間違いなく、最も優れた〝目〟と、悪魔の気配も察知する恐るべき〝嗅覚〟が合わされば、この二人から逃れられる者など地上にはいなかった。
 それが例え、神をも欺く人獣であったとしても――。


「一人とな?どっちだ?あの生白いチーターの女か?それとも黒い方か?」
「黒い方。もうすぐ東の回廊に着くよ」
「ふむ……。二人一組で来ると思ってたのじゃがな。マーザドゥの〝標〟が間違うはずないしのう。何かの策か?」

 二人がいるのは〈鎧獣ガルー〉厩舎。周りには、己の騎獣以外にも、オグロヌーが何十体とひしめきあっている。

「もう行く?待つ?」
「こちらの手の内がわかるはずもないしのう。よしんば、こちらの〝わざ〟が彼奴らに知られておったとしても、一人だけとは随分とした自信じゃな。こうなると、お互い、伏せた手札に何が有るかは分からぬままの読み合いとなるか。なれば、これが敵の策であれば、あえてそれに乗っかるのも一興かもな。面白い。儂らの〝目〟と〝鼻〟、それに儂と知恵比べしようとはの。ヒョッ、身の程知らずな小娘どもよのう。年季の違いを見せてやらねばいかんな」
「独り言、長い。行くんなら、あたし先に行くよ」
「年をとれば独り言が長くなるもんじゃ。お主もいずれそうなるよ」
「あたしはならない」
女子おなごは皆、年を経る事を拒むもんじゃが、残念ながら人は皆等しく年を取る。お前さんとてシワシワの婆になるのじゃぞ。ヒョヒョヒョ」
「ガエ爺みたいなしわくちゃになるんなら、その前に死ぬ」
「如何にも若人わこうどらしい言い様じゃな。刹那的じゃわい。まぁそれも、若さ故の特権かのう」
「やだガエ爺。爺さん臭い」
「何を言うとる。儂はとっくにジジイじゃて。ほれ、モニカ。マーザドゥを連れて行くぞ。〝ヘイズルン〟も来い」

 ガエタノがそう言うと、厩舎の奥から、巨大な獣の影が姿を見せる。肩までの高さだけで約六フィート(一八〇センチ)はある、ウシ科ブッシュバック属の大型羚羊レイヨウ。外向けに螺旋を描いて捩じれた二本の角と、下顎の根元から胸元まで伸びた、顎髭のような長毛が特徴的な、同目の最大種。

 ジャイアントイランドの〈鎧獣ガルー〉。
 〝ヘイズルン〟。

 灰堂騎士団ヘクサニア、それも指揮隊長相当の騎士である〝十三使徒〟の証、黒灰色の〈授器リサイバー〉を、チベタン・マスティフの〝マーザドゥ〟同様その身に帯び、老人と少女、大型羚羊と虎殺犬は厩舎を後に〝獲物〟を狩りに出ていった。



五.
 マルガ=ウェヌスは、ホールのような広間を持った通路に出た。壁面は修繕の痕がいくつかあり、壁画を剥がしたような痕跡も見て取れる。
 メギスティの地は、遥か古の時代においてこの土地に根付いた宗教の聖地であったと言われている。その名残であろう。ともすれば、ここに広がる無駄に空間のある通路は、かつてあった宗教儀礼的な場における、礼拝堂のような役割をもった場所だったのかもしれない。何が描かれていたのか、今となっては判然としないが、月や星のある夜空、山のようなもの、それに〈鎧獣ガルー〉に思える鎧を着た獣の姿の絵だけが、かろうじて認める事が出来た。

 そこに気を取られたわけではないが、ほんの僅かの間だけ、壁画の痕跡を観察している間に、通路の反対側から人影が表れた事に、彼女は気付かなかった。

 感知される事のないウェヌスの〈獣能フィーツァー〉があるにも関わらず、思わずその人影を警戒したのは、歪な二人組と、二体の〈鎧獣ガルー〉があったからである。
 一人は人目を惹くほどの長身で、もう一人は子供同然の背の低さをしている。
 ガエタノとモニカ。
 ここに来る途中で両名と接敵したとはいえ、〈鎧化ガルアン〉していない状態を知っている訳ではない。にも関わらず、マルガはこの奇妙な二人連れが、あの時の灰堂騎士団ヘクサニアの使い手だろうと即座に看破した。
 二人の引き連れる〈鎧獣ガルー〉からの類推ではあるが、先ほどまですれ違った人間たちとの違いが、それを裏付けたのもある。

 ただの信徒ではなく、〈騎士スプリンガー〉だから。
 成る程、それもあったろう。だが〈騎士スプリンガー〉なら、さっきまでも何度か見ている。先刻の戦いで会した〝十三使徒〟の二人は、一人が老人の声をしていた。そしてもう一人は少女の声。

 ――あの時のガエタノとモニカってヤツね。

 警戒はすれども、二人は〈鎧化ガルアン〉していない状態。ならば偽装隠身キャッシュ・キャッシュを発動しているマルガが気付かれるおそれはなかった。
 偽装隠身キャッシュ・キャッシュは匂いすらも打ち消してしまうのだから、例えチベタン・マスティフの嗅覚であっても問題はなかった。
 ないはずだった。

 彼我の距離が三〇ヤード(二十七メートル)ほどになった時だ。

 二人はそこで足を止め、何かに警戒する素振りを見せた。
 モニカがチベタン・マスティフの顔を撫でる。

「ガエ爺、居る」
「フム。動く気配はあるのか?」
「大丈夫、だと思う」

 何だ?何が居るというのか?まさか、自分に気付いた?馬鹿な。相手は〈騎士スプリンガー〉といってもただの人間。気配に気付くなんて、そんな都合のいい感覚があるわけない。
 マルガは脳裏に浮かんだ疑念を頭の隅に追いやろうとするも、眼前の二人の挙動は、そんなマルガを待ってはいなかった。

「〈白化アルベド〉」

 老人と少女。
 両者が同時に〈鎧化ガルアン〉をする。


 ジャアイントイランドの〈鎧獣騎士ガルーリッター〉〝ヘイズルン〟。
 チベタン・マスティフの〈鎧獣騎士ガルーリッター〉〝マーザドゥ〟。


 ヘイズルンは片手に金属棍。マルガの武器授器(リサイバー)も同じ金属棍だが、あちらは太く長い。
 マーザドゥは、己の背丈も超える、不釣り合いに大きい突戦鎚ウォーピック

 黒灰色の〈授器リサイバー〉が体の各所を覆い、人狗と人牛の騎士は、明らかな敵対行為を構えていた。

 ここで判断したマルガは、さすが陸号獣隊ビースツゼクス次席官ツヴァイターといったところであろう。破られるはずのない自分の〈獣能フィーツァー〉。それに絶対の自信はある。だが、状況は明らかにおかしい。この現状を思い過ごしと言い切るほど、彼女は戦闘の初心うぶではなかった。

 勘違いなら、自ら墓穴を掘る事になる。諜報部隊でこれほど間抜けな者もないであろう。だが、彼女の勘は、先ほどから警鐘音を鳴らして止まない。己の勘と経験が物語っていた――。

 マルガ=ウェヌスは、腰に吊るした、折り畳んだ状態の連接棍を手に持った。音をたてずに直棍にすると、それを引き絞るように、一足でマーザドゥに突きを入れる。疾風よりも俊敏な一撃。音のない弾丸は、そのまま貫いてしまうかに思われたが――。

 回廊を突き抜けて響き渡る金属音を響かせ、ブラックジャガーの金属棍は、人狗騎士の突戦鎚ウォーピックによって弾かれてしまった。

 掌全体に痺れるような残りかすを覚えて、マルガ=ウェヌスは距離を取るように着地する。

「〝視えて〟る。無駄」

 モニカ=マーザドゥが、磁器人形フィギュリンの無機質な声で、こちらを〝視〟た。

「たいした〈獣能フィーツァー〉じゃ。そこまで体毛を高速で変化させるなど、並みの〈鎧獣ガルー〉ではないのう。特級以上なのは間違いあるまい。じゃが、相手が悪かったな。儂ら二人に、お主の〈獣能フィーツァー〉は通じんよ」

 ガエタノ=ヘイズルンも、同じ方向に視線を向ける。
 間違いない。何故か奴らは、私の姿を感知している。どうやって?視力なのか嗅覚なのか聴覚なのか。理由は判然としないものの、自分の異能がいきなり破られるとは……。

 マルガはゆっくりと立ち上がり、偽装隠身キャッシュ・キャッシュを解除していく。

 景色の一部が塗り替えられるように、白亜の〈授器リサイバー〉を纏ったブラックジャガーの人獣騎士が、浮かび上がった。

「何よもう。どーゆー事?アタシの〈獣能フィーツァー〉を破るなんて」

 マルガは人豹の肩に連接棍を乗せ、呆れ気味の口調で言った。〈獣能フィーツァー〉が通用しなかったにしては、意外にも深刻そうではない。
 ガエタノは、それを小さな笑い声を一つ残して観察し、モニカは〈鎧獣騎士ガルーリッター〉の体で見る事は出来ないが、マーザドゥの中で、忌々しげに顔を顰めていた。

「あんたはね、もうあたしから逃れられない……」
「?」

 マーザドゥの茶褐色と黒色の体毛が不気味に揺れる。さっきの弾かれた一撃――。マルガは思い出す。〝視えて〟いただけではない。このモニカって、アタシの一撃に反応したトコからして、相当な〝使い手〟かもしれない……。

「タネ明かしをしてやろう」

 ガエタノが、羚羊の顔で言った。長く伸びた顎髭は、如何にも長老然としたガエタノそのものといった風情だ。

「儂ら二人の〈獣能フィーツァー〉で、お主の居場所なんぞ、昼間に太陽を見つけるより容易い事だったのよ。しかもモニカの〝マーザドゥ〟の〈獣能フィーツァー〉、〝猟狗追路ドッグウェイ〟はな、一度かかってしまえば(・・・・・・・・)二度と逃げ切る事は出来ん。お主はな、これから永遠に、モニカの〝鼻〟から逃れられんのよ」

 ――〈獣能フィーツァー〉?じゃあ、嗅覚の〈獣能フィーツァー〉なの?

 マルガの推理は間違っていた。
 マーザドゥの〝猟狗追路ドッグウェイ〟とは、〝標付け(マーキング)〟の〈獣能フィーツァー〉なのだ。
 多くの動物が行う、己の縄張りを確保する行為、マーキング。体をこすりつけたり、排泄物のような分泌液、または排泄物そのものを木などにつける事で、自分のテリトリーを他の個体に知らしめる事である。
 〝猟狗追路ドッグウェイ〟は、マーキングに行う臭腺を、体の任意の場所に作り出す事が出来、それを、相手に付着させる事で、敵の行動を完全把握するというものだ。
 マーザドゥは、山間で行ったマルガらとの一度目の攻防で、密かに〝標付け(マーキング)〟を行い、彼女らの行動を補足トレースしていたのであった。

「まぁそうは言うても、お主がここから生きて出られる事もないのじゃがな」

 ガエタノの勝利宣言に、マルガはやれやれといった態度で返す。

「アタシの〈獣能フィーツァー〉を破ったぐらいで、もう勝ったつもりなの?」
「ほう」
「アタシも舐められたもんね……。そもそもアタシの〈獣能フィーツァー〉は戦闘向きじゃないの。侵入や索敵には向いてるけど。それが破られたってのは、侵入には支障を来すけど――でも、それだけの話」
「……」
「侵入に長けているから陸号獣隊ビースツゼクス次席ツヴァイターになれたわけじゃないの。勿論、それも重要な能力だけどね。分かる?その意味が?たかだか姿を消せる程度で務まるほど、覇獣騎士団ジークビースツ次席ツヴァイターは簡単じゃないの。それがどういう事なのか――今から知るといい。アタシが次席ツヴァイターになれた理由ワケをね」

 言った後で、ブラックジャガーの人獣騎士は、連接棍を脇に構え、片手で挑発するように手招いた。


「かかってきなよ」


「ヒョっ、威勢のいい小娘じゃな。良かろう、モニカ」
「うん」

 モニカ=マーザドゥも、ハンマーの片方の先端がクチバシのように尖った突戦鎚ウォーピックを構える。そのまま下半身を沈め、つぶての勢いで一直線に突進をかけた。
 勢いは凄まじいが、マルガの纏うウェヌスの目で捉えきれぬ速度ではない。ぎりぎりに引きつけて、体を左右に揺らしながらこれを躱し、身を捻って反撃の構えに出る。
 同時に、突戦鎚ウォーピックが床を破壊する破砕音を響かせて埃と割れた床石をまき散らすが、その空振りの一撃で強引に方向転換をしたマーザドゥは、突戦鎚ウォーピックを支点に回転し、遠心力の勢いで再度武器を振るって襲いかかってきた。
 マルガは続く連撃を巧みに回避し、反撃の端緒を伺うが、大振りなわりに、マーザドゥには隙がなかった。それに、一度でも突戦鎚あれに当たってしまえば、タダでは済まない事は容易に予想出来た。
 だが――。

 ――何、コイツ?

 次々と床石を砕いていくが、ただいたずらに、破壊行為を繰り返しているに過ぎない。まるで無茶苦茶な戦い方だ。

 ――この戦い方。まるで素人同然じゃないの。〈授器リサイバー〉ったって、護殺防撃テーテンどころか骨形フラーメンすら出来ていない。〈鎧獣騎士ガルーリッター〉の能力に任せて、力を振るってるだけ……。

 ブラックジャガーは突戦鎚ウォーピックの連撃をすり抜け、連接棍を間隙を縫うように叩き込む。だがモニカ=マーザドゥは、突戦鎚ウォーピックの柄の部分で、器用にそれら全てを弾き返した。

 ――こいつ……!

 〈鎧獣騎士ガルーリッター〉の武術、〈獣騎術シュヴィンゲン〉の動きではない、何の訓練も受けていない、力任せ、勘任せの攻撃方法。型も何もあったものではない強引極まりない戦い方。それなのに、マルガの攻撃は当たらない。人間を遥かに凌駕した〈鎧獣騎士ガルーリッター〉において、それすらも凌ぐほどの、常軌を逸した動き。おそらくこのモニカという少女は、勘と感覚センスのみで戦っているに違いない――と、マルガは判断した。

 ――じゃがのう、それだけではないぞ。

 戦闘に加わらず、両者の攻防を傍観しているだけのガエタノは、マルガの考えを読み透かすように内心でほくそ笑んだ。

 ――モニカはのう、〝天才〟なんじゃ。天性の武の才に、生い立ちと境遇が加わり、己の資質のみで十三使徒に登り詰めたほどの、な。正統な武術を教えようにも、並の才が教えたところで、あの娘の妨げにしかならんほどの、類い稀な才能を持っておるんじゃよ。

 ガエタノの心中の独語を裏付けるように、連撃の手を休める事なく、モニカは更に次の手を打って出た。
 繰り返し放つ攻撃の中で、両手で振るう突戦鎚ウォーピックを、片手のみに持ち替える。
 マルガはすかさずその隙を衝こうとするも、それは明らかな誘いの一手だった。空いた手は必要以上に筋量が膨らみ、赤黒く濁った鋭い突起物を、マルガ=ウェヌスの顔面に叩き込もうとする。
 凄まじいとしか言い様のない反応速度で、ブラックジャガーは〈爪撃クロゥ〉の一撃を躱すも、右の二の腕、〈授器リサイバー〉の隙間に、薄皮一枚ほどの裂傷が走った。そんなものは無きに等しい傷だが、躱し切った直後に、回転した突戦鎚ウォーピックの柄の先端が、風車の要領で迫って来ている。マルガは即座に連接棍を四つに折り畳み、壁を作ってこれを受け流した。

 まるでボールを打撃したような軽やかさで、回廊の壁際まで吹き飛ばされるマルガ=ウェヌス。だが、ダメージを感じさせない動きで、ブラックジャガーは身を捻って着地した。
 距離を置いた事で、一旦、空白のような時間が生まれる。

「たいしたもんじゃん――と言いたい所だけど、どっちかっていうと、残念、って感じかな」

 防戦で手が一杯のクセに――と、負け惜しみのようでもあるが、実際のところ、マルガの息は上がっていない。
 出入りの激しい動きを主とするレーヴェン流では、この程度の動きで、〈騎士スプリンガー〉も〈鎧獣ガルー〉も、スタミナが尽きる事などありえない。ましてや陸号獣隊ビースツゼクスならば尚の事。それどころか、この騒ぎに気付いた信徒達が、上へ下への大騒ぎになっている事にさえ、マルガは己の注意を向けていた。勿論、イーリオ達の陽動による騒ぎもあるだろうが、寺院内の喧噪は、明らかにそれだけではなかった。

「気付いたか?陸号獣隊ビースツゼクスの。お前の侵入は、もうメギスティの至る所に知れ渡っておる。例え万が一、儂ら二人を退けたとしても、お主の任務が成功する可能性は皆無じゃろうて。余裕をこいとる暇など、お主にあるのかのう?」

 笑い声が、こびりつくように耳に残る。意識的に嫌な笑声を出しているのだろう。明らかな挑発だ。

「ありがとね、カモシカのおじいちゃん。敵の心配までしてくれてさ。でもね、アンタ達こそ、余裕こいてる暇なんてあんのかな?そっちのワンちゃん騎士はなかなかだったけど。でもその程度なんだったら(・・・・・・・・・・)アタシの敵じゃない(・・・・・・・・・)
その程度(・・・・)……?」

 モニカがピクリと反応する。

「惜しいわよね。ちゃあんとした〈獣騎術シュヴィンゲン〉を学んでいれば、アタシだって危なかったかもしんない。でも残念ながら、そうじゃない。きっと、今までは相手が良かったんだね。本当の戦場は、才能だけじゃ――生きて行けないよ」
「ヒョッヒョッ、お主こそ、こちらに助言をするなど、敵の心配をしとるつもりか?やはり状況が分かっとらんのは、お主の方じゃな」

 ガエタノ言葉の意味を理解するのに、時間などいらなかった。
 違和感。
 右腕に、痺れるような感覚。
 視線を走らせると、二の腕のあたり――先ほど〈爪撃クロゥ〉で擦った箇所を中心に、体毛が枯れ草のように萎びて抜け落ち、中の皮膚の上に、黒と茶の斑紋が出来ている。範囲は成人男性の拳ほどだが、それが徐々に広がっていくものだという事に、即座に気付いた。
 ――!!

「才能だけで戦場は生き抜けない――じゃと?戦場の何たるかも知らん小娘が、よく言う。儂はの、お主がおしめをしておった頃には、とうに戦場に居たのじゃ。その儂からすれば、お主の戦場訓など、青二才の戯言でしかないわ。よいか、鍛錬や修練などでは追いつけぬほどの理不尽な才というのはな、残念ながらおる。十年の研鑽を、一日の閃きで無にし、人生を賭けた偉業を、一瞬で体得する非常識な存在がのう」

 斑紋はどんどん広がり、同時に、右腕に神経的な痺れが拡散していく。

「成る程、確かにお主は相当な修練を積んだのじゃろうて。動きを見れば分かる。レーヴェン流を修めた腕前なのじゃろうな。じゃがな、このモニカは、そんなお主の苦労を、一瞬で無益にさせてしまう才を持っておる」

 もし人間の体で、この傷を受けていたらと考えると、ぞっとする。〈鎧獣騎士ガルーリッター〉なので痛みはないが、違和感の大きさから考えて、針の一穴で致死量になるほどの〝猛毒〟らしき何か――。


「その証が、〝それ〟じゃ。マーザドゥの〈第二獣能デュオ・フィーツァー〉〝腐病供物シック・オン・ユー〟じゃよ」


「〈第二獣能デュオ・フィーツァー〉……?!」

 マルガが驚くのも無理はない。
 〈第二獣能デュオ・フィーツァー〉。〈獣能フィーツァー〉の先にある、第二の異能。
 第二獣能そんなものは、滅多に出現するものではない。覇獣騎士団ジークビースツでさえ、発動できるのは主席官エアスターのみ。いや、むしろ主席官エアスターの条件にさえなっているほど。ある種、天才とも呼べる程の〈鎧獣騎士ガルーリッター〉との適合率と感覚を掴める才智がなければ発揮出来ない。
 他国を見ても、騎士団の団長クラスでさえ、持っている者は多くない。それを、まだ年端もいかぬようなこの少女が、使えているなど、信じ難い話であった。

「信じられんか?じゃが事実じゃ。さて、どうする?もう右腕は使えんよなぁ」

 ガエタノの嘲弄どおり、このままでは毒が広がるばかりだ。決断するしかない。すぐに全身に意識を張り巡らせ、問題ない事を確認する。

 ――よし。

 マルガの行動に躊躇いはなかった。
 連接棍を脇に手挟み、左腕の爪で、自身の腕に〈爪撃クロゥ〉を放つ。

「!」

 ガエタノもモニカも、今度は自分達が驚く番だった。
 ものの見事に抉り取られた肉塊を捨て、マルガは己の腕の感覚を確かめる。開く。握る。開く。出血量とネクタル消費から考えて、あまり無理は出来なくなったが、動かぬわけではない。指先に痺れはあるが、戦う事は出来そうだった。

「ほほう。思い切りの良さは、さすが陸号獣隊ビースツゼクスじゃのう。まさか腕の傷口を、肉ごと抉り取るとは……。じゃが、いい判断とは言い難い。そんな傷で、モニカと戦うというのか?片腕だけで?」

 マルガは己の〈鎧獣ガルー〉、ウェヌスの活動限界を計算する。まだ〝作戦〟時間はぎりぎりいけるはずだ。だが、これ以上の大きな傷は、〝作戦〟に支障を来しかねない。この両名を倒す事に障りはないが、それだけでは駄目だ(・・・・・・・・・)。油断した訳ではなかったが、このモニカという〈鎧獣騎士ガルーリッター〉、想像の遥か上の実力者だった。

 ――〝腐病供物シック・オン・ユー〟って言ったっけ。

 チベタン・マスティフの〈第二獣能デュオ・フィーツァー〉。
 傷口から広がっていった事から、敵の爪が毒爪のようになるのかもしれない。それだけではないのかもしれないが、少なくとも、〈爪撃クロゥ〉は確実に回避すべきだろう。まだこれ以上、仕掛けがあるのだとしたら厄介だが――例えば毒物を飛ばせるとか、全身が毒になるとか――そういった事はなさそうだった。

 ――だったら、それほど面倒じゃないわね。
 マルガは息を小さく、長く漏らし、気息を整える。
 支払った代償は小さくなかったが、もう理解した。この後どれだけ水増しされようとも、だ。

「言ったでしょ。アタシが次席ツヴァイターになれた理由ワケを教えてあげる、って。こっからは、アタシの番だからね」

 連接棍を直棍にし、両肩を下げるような構えを取る。すると、自然と肩甲骨が上にせり上がった。まるで猫科猛獣が歩く様のような構え(フォーム)だ。
 それを不愉快げに見つめるモニカ=マーザドゥ。

「あんたの番なんて、一生ない。もう消えて」

 人狗の少女騎士は、無機質な響きで、死の宣告を放った。虎を殺すのが虎殺犬チベタン・マスティフならば、虎に次ぐジャガーを屠ろうとするのは、当然の事かもしれない。


 再び、モニカ=マーザドゥが跳躍する。
 だが、マルガは動かない。
 突戦鎚ウォーピックが空気の層を突き抜ける轟音と共に繰り出された直前――ぶつかっていくように、ブラックジャガーの人獣は、チベタン・マスティフの人獣をすり抜けた(・・・・・)突戦鎚ウォーピックが空を斬って反転すると、反対側に対峙するマルガ=ウェヌスが構えている。
 モニカが再度仕掛けようと足に力を入れた瞬間。

 音をたてて、マーザドゥの右肩から背中に至るまで、深い裂傷が走った。羽ばたく鳥の翼のように、ネクタル混じりの血が噴き上がり、モニカは信じられない顔つきになる。

「何、これ――」

 ガエタノは目を見開いてこれが何か思い出す。

 ――レーヴェン流の〈獣騎術シュヴィンゲン〉……今のはおそらく、幻爪イルジオンという技じゃな。まさか、モニカの攻撃に合わせた(・・・・)とでもいうのか?

 マルガ=ウェヌスは、手招きをして再度挑発した。

「どうしたぁ?モニカちゃん。アタシをやっつけんじゃないの?」
「調子に乗らないで……!」

 鋭さの増した跳躍。怒りで勢いが増しているが、その分、攻撃が雑になっている。それを見逃すマルガではなかった。
 さっきまでの攻防の倍をいく早さでけしかけるマーザドゥに、一見すると、防戦一方のウェヌス。正直、一流の騎士であっても、多少攻撃が直情的になろうが、この苛烈さを前にすれば、手の出しようなどないはずだった。しかし――。

 攻防の最中、互いの距離が開いた一瞬に、ウェヌスの手にあった連接棍が、姿を消していた。
 ――?!

 不審に思ったモニカだが、気付いた時には肩に激痛が走っていた。
 いつ、どうやったのか。
 まるで意識の外から殴りつけるように、連接棍が気付けば叩き込まれていた。
 屈辱的な格好で、地に伏せる虎殺犬チベタン・マスティフの人獣騎士。
 ジャイアント・イランドの中で、ガエタノはこれにも目を剝く。

 ――今のは隠武ファシュテイク……!レーヴェン流の高等技術を、こうも見事に操ってみせるとは……。

「これが〈授器リサイバー〉の正しい使い方。あんたのは、ただ力任せにぶん回してるだけ。いくら〈鎧獣騎士ガルーリッター〉が人を超えた力や速度を持っていたって、そのコツみたいなのを理解してなきゃ、ただのすごいってだけの〝力〟よ」
「うるさい……」

 思いがけぬ衝撃に、中のモニカにまで痛手が響いている。それでも彼女は立ち上がろうとしていた。

「さっきさ、あっちのおじいちゃんが才能がどうたらって言ってたけどさ、すんごい才能なんてアタシだって知ってるっつうの。そんな人間、覇獣騎士団ジークビースツにはゴロゴロいんだから。でもね、どんな才能があったって、それだけじゃやっぱり届かない領域ってあるのよ。どんな世界だってそうじゃない?その道には、その道ならではのプロがいる。〈鎧獣騎士ガルーリッター〉だっておんなじだよ。あんたにいくら才能があっても、それだけじゃ届かないものがこの世にはいっぱいあんの」
「黙れ」
「それにさ。アタシだってそーとー若いんだよ。色っぽいからわかんなかったかもしんないけど、これでもまだ二十代前半なんだから。自分で言うのもナンだけどさ、この若さで、陸号獣隊ビースツゼクス次席ツヴァイターになったんだよ?それって充分――〝天才〟じゃない?」

 それに気付かぬガエタノではなかったが、あのモニカがこうも翻弄されるのは少々意外だった。手こずる事は予期していたし、レーヴェン流の恐ろしさも知ってはいたが――いや、あれはレーヴェン流がどうというのではない。あのマルガという娘が、桁外れに優れた〈獣騎術シュヴィンゲン〉の使い手というだけだ。

 立ち上がったマーザドゥは、それでも突戦鎚ウォーピックを構える。

「もうあんたの攻撃は見切った……」

 いつもの無機質さのない、怒気を孕んだモニカの声。

「あんたはカウンター狙いの攻撃。こっちの攻撃に合わせてるだけ……。だからもう、怖くない」

 マルガ=ウェヌスも構えを取る。だが、少し違った。
 連接棍が外れている。
 四つの節に分解され、先端を手に、二節目から後端まで、両脇に挟んでいた。

「カウンター狙いね……。いい〝目〟をしてるけど、そんな浅いもんじゃないよ、〈獣騎術シュヴィンゲン〉は。子供相手にアレだけど……今度は本気でいくから」

 今までのが本気ではないと――?
 ただのハッタリか、それとも本当か。ガエタノはいけない、と思った。だが彼の判断が遅かったというより、マルガの速度が遥かに上だったというだけ――。


「いっくよぉ、必殺ぅ〜、マルガ・スペシャル(シュペツィエル)!」


 ウェヌスが連接棍を繰り出す。蛇のようにうねり、マルガの攻撃に合わせた(・・・・)突戦鎚(ウォーピック)を、這い上がるように絡み付く。そのまま持ち手を痛打。だが、ダメージなど意に介さない勢いで突戦鎚ウォーピックが反撃に出るが――そこにブラックジャガーの姿はいなかった。

 姿がない。
 武器を手放してのカウンター攻撃?
 連接棍がジャラリと動く。

 ――違う!これは!

 蛇が這う動きで、スルリとウェヌスの棍が抜けていった。

 ――ウェヌス(こいつ)の〈獣能フィーツァー〉!!

 一瞬の隙を衝き、姿を消したウェヌス。無論、マーザドゥの〝標付け(マーキング)〟は生きている。だが、訓練をしていないモニカは、人獣の感覚よりも、咄嗟に己の〝目〟で判断してしまった。

 次の瞬間、後ろ立ちで、ブラックジャガーの人獣騎士が、モニカの後方に立っていた。
 もう、攻撃は済んだ。
 マーザドゥが振り返るのと同時に、人狗騎士の体中から、一斉に血が吹き出る。無数の裂傷が、全身を苛んでいた。体のいたるところから、ネクタルの光粉が煌めき、夥しい血潮が長毛を濡らしていく。

 マーザドゥが、音をたてて、その場に崩れ落ちた。



六.
「今の技、知っておるぞ」

 ガエタノ=ヘイズルンを見るマルガ。

「レーヴェン流の奥義、確か……〝妖風刃エルフェシュス〟という技じゃな」

「ちがうもん。あれはマルガちゃん特製必殺技、マルガ・スペシャル(シュペツィエル)だっての」

 猛獣の顔で言う台詞ではない。そのズレがむしろ恐ろしい。稚気めいた発言で、為す事は恐ろしいまでの殺人術。モニカの残虐さなど、この娘の〝ズレ〟に比べれば、可愛いものかもしれない。

「全く……やはり覇獣騎士団ジークビースツなどというものは、尋常の集まりではないな。その若さで人間を捨てとるとはの……」
「は?何言ってんの?」
「〈鎧獣騎士ガルーリッター〉というのは、獣と人の境に立つ者。人獣のさがを身に着け、人獣の残虐さに物怖じせぬ者にならねばならん。それは既に人ではない。ケダモノよりも獰猛で悪質な、悪鬼の如き存在よ。それを推奨する国も、王も、教えも、全て人でなしの集まりじゃ。そんなものが蔓延る今の世界に、真実の仁愛など生まれようはずもない。人を率いるべきものが、人獣の心根を持ったこの世界など、やはりあってはならんものなのじゃ」
「ちょ、ちょっと……いきなり何、演説ぶっちゃってんの……?」
「儂はヘスティア様に心酔した。この世の荒ぶるケダモノを、浄化せねばならんというお言葉に。黒母教こそ、人が人として正しく生きる〝法〟なのだ。そしてイーヴォ殿は、そんな儂の願いを叶えて下さった。人のまま――〈獣騎術シュヴィンゲン〉などという卑しいすべを身につけずとも、〈鎧獣ガルー〉の力を行使出来る力を!」

 最後の叫び声と同時に、ジャイアント・イランドが口を大きく開け、叫ぶような格好をした。マルガに向かって吠えるようだ。

 咄嗟に、マルガは判断した。
 横方向に、鋭い跳躍をかける。敵の〈獣能フィーツァー〉か、何かの攻撃かもしれない。これ以上の被撃は避けた方が賢明だ。
 速度感はそれほどないが、何かが彼女の横を通り過ぎた。

 ――目に見えない攻撃?アタシのマルガ・スペシャル(シュペツィエル)は、見えない訳じゃない。それとは違う攻撃ってワケ?

 瞬間――マルガの体を、重い激痛が貫く。
 横殴りの衝撃。思わず息が詰まる。〈鎧化ガルアン〉していなければ、体の骨が砕けてしまう。そんな一撃。

 ――馬鹿な?!避けたはず?

 左腕側からの〝何か〟を受けつつ、マルガは状況が呑み込めずにいた。
 そのまま受け身を取って着地した後、己の状態を瞬間的に考査した。右腕の傷は深い。自分で行ったとはいえ、ネクタル消費は激しい。しかも、今の一撃で左腕が折れた。回復にかかるネクタルも尋常ではない。危険だ。まさかこんな形になるとは……!
 ガエタノ=ヘイズルンを睨みつけ、第二撃を警戒した矢先だった。
 マルガは声を失った。
 己の視界の先。目の前を、宙に浮く形で、チベタン・マスティフの人獣騎士が、〝何か〟に運ばれて(・・・・)いくではないか(・・・・・・・)
 いや、よく見ればおかしい。マーザドゥの宙に浮いた部分が、微妙に歪んで見える。
 ――居る?
 モニカ=マーザドゥは、ジャイアントイランドの側に降りたち、その場に蹲った。


「〈消失と進撃のヴィニッシュ・ウンド・ヴォルケン羚羊・アンテロープ〉」


 ガエタノが高らかに言った。

 ――何?〈獣能フィーツァー〉なの?

「今のはこのヘイズルンの、〈獣使術クンスト〉じゃ。今から用いるのもな」

 ――〈獣使術クンスト〉?それって確か、レナーテさんの……!

 マルガの疑問の答えを待たずして、さらに目を見張る光景が、彼女の目に映った。
 ヘイズルンは、己の腕をここだとマーザドゥに指し示すと、マーザドゥは頷き、いきなりそこに噛み付いた(・・・・・)
 まるでお伽噺に聞く吸血の妖怪のように、噛み付いたままのマーザドゥは、嚥下する音をたて、傷口から溢れる血を飲んでいった。人獣の片方が、己の身を差し出そうとでもいうのか。それはまさに、おぞましい異教の密儀を見せつけられているような――そんな不気味にも神々しくも見える光景。
 しばらくすると、マーザドゥは傷口から血を飲み尽くしたのか、おもむろに立ち上がり、マルガの方に向き直る。驚愕したのは、血に濡れた口の故ではない。先ほど負ったばかりの無数の傷が、僅かの間に塞がっているからだ。
 あれらの傷は〈鎧獣騎士ガルーリッター〉の回復力でさえ、そう容易く治る程度のものじゃなかったはず。実際、彼女の手応えは確かにあった。にも関わらず、まるで何事もなかったように、マーザドゥは突戦鎚ウォーピックを構えていた。

「これは〝摂癒の血(クーアブルート)〟という。モニカは、人獣のくびきを設けずして、強力な〈鎧獣騎士ガルーリッター〉となった者。そして儂は、卑しきケダモノのさがを持たず、人獣の力、〈鎧獣ガルー〉の力を行使する者――!」

 状況は一変した。どういう原理かはともかく、敵のみがもう一度降り出しに戻れ、こちらは手詰まりで置いてけぼり。考えうる最も良くない展開だった。
 マルガは思った。このままじゃ不味い(・・・・・・・・・)と――。

「〈鎧獣術士ガルーヘクス〉!その始祖こそが儂なのじゃ!」

 〈鎧獣術士ガルーヘクス〉だって……?
 聞き慣れない言葉だ。敵の手の内は、おそらく出揃ったのだろうが、こちらは手番待ちが長すぎる。さぁ、どうする?マルガ?自問自答は、最悪の結果しか導き出せない。任務にとって、ではない。彼女にとっての最悪(・・・・・・・・・)だ。

「今度は確実に、仕留める」

 傷の癒えたマーザドゥが構えた。突戦鎚ウォーピックの狙いは、勿論ブラックジャガー。
 ウェヌスの傷は浅くない。先ほどの動きが可能か否かは言わなくても明白だ。

 ――ヤバいなぁ。マジヤバ。マジ、パないじゃないの。

 思考が段々と単純になってくる。だが、審判の時は中断を許さない。

 復活したチベタン・マスティフが、最前の勢いで突進をかけた――と同時に、あらぬ方向に吹き飛ばされる。

 床石が散乱し、瓦礫の粒が濛々と煙をあげる。

 ――ヤバ。

 マルガはウェヌスの中で、顔面を蒼白にさせた。

「何じゃ?」

 煙と埃で、視界が防がれたガエタノは、咄嗟に〈獣能フィーツァー〉を発動させた。
 視界の〈獣能フィーツァー〉〝見破ランブル〟。
 一瞬で回廊全てが、己の視覚下に置かれる。
 人影――否、それよりも大きい。

「お前は……!」

 吹き飛ばされたモニカが、瓦礫の中から立ち上がった。

「何?!」

 埃が晴れ、モニカにも見渡せるようになる。

 白亜の〈授器リサイバー〉。
 クリーム色に近い、薄黄色の体毛。あるはずの模様はなく、黒の部分が全て白くなっている姿は、儚げであり、美しさすら感じさせる。
 右手には鉄扇。武器にしては短く、華麗に過ぎ、虚飾にしては武骨すぎる。
 豊かな胸と、柳のように優美な腰回りは、明らかに女性の姿態。
 蜉蝣かげろうのように朧げなその姿をして、人はこの種を、幻霊ファントムと呼んだ。

 猫科中型猛獣の、超稀少な色素変種。
 幻霊狩猟豹ファントムチーターの〈鎧獣騎士ガルーリッター〉。
 陸号獣隊ビースツゼクス主席官エアスター、ヴィクトリアの駆る〝キュクレイン〟の姿が、両者の間にあった。

「そんな……!」

 モニカの呟きに、ガエタノが反応した。

「モニカ、〝猟狗追路ドッグウェイ〟に反応は?!」

 わななきながら、首を左右に振る、マーザドゥ。
 有り得ない。マーザドゥの標付け(マーキング)は、例え全身を洗おうが、薬品を使おうが、絶対にとれるものではない。付けられたら最後、永遠に逃れる事は出来ないもの。そこに例外はなく、個の強さなどは関係ない。それなのに、マーザドゥの〝嗅覚〟に、反応はなかった。
 山間部の折りに、確かに標付け(マーキング)は施した。こいつの動きはずっと把握出来ていた――はずだった。

 キュクレインは、ウェヌスの側に跳躍し、様子を見つめた。

「マルガリータ・アイゼナハ」
「は、はい」

 ビクリ、と背筋を正すマルガ=ウェヌス。
 ヤバい。主席エアスターが人をフルネームで呼ぶ時は、機嫌が良くない証拠だ。

「情けないですね。陸号獣隊ビースツゼクス次席官ツヴァイターともあろう者が、その体たらく。まさか、限界ではないでしょうね?」
「い、いえ!まだ動けます。ただ……戦闘したり、〈獣能フィーツァー〉使ったりする余裕は……その……」

 語尾の消え入るマルガに、幻霊狩猟豹ファントムチーターの人獣は、首を振って小さく嘆息した。

「エ、主席エアスターはうまくいきました?」

 何とか話を逸らそうとするマルガ。彼女が怖れていたのは、敵ではない。既に来ているであろう、自分の上官にであった。


「当然ですよ。レナーテ様は、もう助け出しました」


 マルガはやっぱり、と顔を引き攣らせ、モニカとガエタノは驚きに目を丸くした。
「モニカ!」
 言うが早いか、ガエタノも、己の〝見破ランブル〟を、寺院全体に拡大する。
 イーヴォ・フォッケンシュタイナーの娘、こ奴らの目的であるはずのレナーテ・フォッケンシュタイナー。彼女の動きも当然把握していたし、モニカに至っては、完全に捕捉トレースしていた。そもそも、マルガが彼女の救出をしようとしてたんじゃないのか?そういう思いが頭をよぎるが、突きつけられた現実は、それがでまかせでない事を表していた。

「いない……」
「儂も、確認出来ん。どういう事じゃ?モニカ(おぬし)の捕捉をかいくぐれるなど、万が一にも有り得ぬ事じゃ――!」

 ヴィクトリアは、己に向けられた二つの殺意を、そよ風のような平気さで受け流した。

「貴方がたお二人の能力は、たいしたものです。特に、犬科の貴女。己の肉体からだを特異化させる力のはずなのに、相手に働きかけ、あまつさえ、それを持続させるなんて。本当に恐ろしい能力です。私などは、とてもそこまでは(・・・・・・・・)不可能です(・・・・・)
「――?」

 今の発言に違和感を覚えるガエタノ。私などは?とてもそこまで?それはつまり――

「お主、儂らに何かをしたのか……?」
「さて、どうでしょう?」

 人を食ったようなヴィクトリアの答え。マルガは答えを知っているが、知っていたところで、状況は変わらなかったろう。とっくの昔に――戦闘は終わっているのだから。

 前のめり。

 糸が切れたように昏倒するモニカ=マーザドゥ。
 そのまま強制〈鎧化ガルアン〉解除の白煙があがった。

「な……!」

 うめき声しか出ないガエタノ。

 まるで舞姫のような優雅さで、幻霊狩猟豹ファントムチーターの〈鎧獣騎士ガルーリッター〉は、静かに佇んでいた。

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平凡な若手商社員である一宮信吾二十五歳は、明日も仕事だと思いながらベッドに入る。だが、目が覚めるとそこは自宅マンションの寝室ではなくて……。僻地に領地を持つ貧乏//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全205部)
  • 7 user
  • 最終掲載日:2017/03/25 10:00
千剣の魔術師と呼ばれた剣士

魔力で操られた剣が自在に宙を舞い敵を切り裂く『剣魔術』。 いまだかつて魔法史に記されたことのない新魔術の使い手であるアルディスは、討伐、護衛、調査など、報酬次第//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全87部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/18 19:49
賢者の孫

 あらゆる魔法を極め、幾度も人類を災禍から救い、世界中から『賢者』と呼ばれる老人に拾われた、前世の記憶を持つ少年シン。  世俗を離れ隠居生活を送っていた賢者に孫//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全120部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/05/16 04:45
ガルディナ王国興国記

剣と弓、そして魔法の飛び交う世界。 現役高校生であった天城繁久(アマギ シゲヒサ)は、なんの前触れもなく、そんな世界へ転移した。 最強の種族、ドラグニルとして。//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全152部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/04/18 13:00
魔王様の街づくり!~最強のダンジョンは近代都市~

 魔王は自らが生み出した迷宮に人を誘い込みその絶望を食らい糧とする  だが、創造の魔王プロケルは絶望ではなく希望を糧に得ようと決め、悪意の迷宮ではなく幸せな街を//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全156部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/23 21:50
異世界建国記

異世界に転生した主人公。 どうやら捨てられた子供に転生してしまったらしい。 目の前には自分と同じように捨てられた子供たち。 主人公は生きるために彼らを率いて農作//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全233部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/24 12:00
失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~

とある世界に魔法戦闘を極め、『賢者』とまで呼ばれた者がいた。 彼は最強の戦術を求め、世界に存在するあらゆる魔法、戦術を研究し尽くした。  そうして導き出された//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全128部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/09 20:00
百魔の主

青年は病室でその生をまっとうしたあと、異界の英霊に誘われて世界を渡った。 青年、メレア=メアの二度目の生は、英霊が未練と共にさまよう霊山の一角から始まる。 英霊//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全197部)
  • 7 user
  • 最終掲載日:2017/06/04 17:52
獣の見た夢 -父親殺しの転生綺行-

最低の人生を送った男が死んだ。 気が付くと、瀕死の子供の肉体に転生している……。 2017年5月 ブックマーク数、4000件以上もありがとうございます。感謝、//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全107部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/19 23:25
火刑戦旗を掲げよ!

勇者は戦死し、1人の男が火刑に処された。窮地の王国を救い大陸に平和をもたらしたのはその男だったというのに。時が流れ辺境に1人の不思議な子が生まれる。名をマルコ。//

  • ローファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全148部)
  • 7 user
  • 最終掲載日:2015/06/27 10:33
男なら一国一城の主を目指さなきゃね

 列車事故で死亡した主人公(45歳サラリーマン)は異世界に生まれたばかりの赤ん坊として転生した。なぜか特殊なスキルも持っていた。自身の才能について検証を行い、そ//

  • ヒューマンドラマ〔文芸〕
  • 連載(全495部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/18 19:00
人狼への転生、魔王の副官

人狼の魔術師に転生した主人公ヴァイトは、魔王軍第三師団の副師団長。辺境の交易都市を占領し、支配と防衛を任されている。 元人間で今は魔物の彼には、人間の気持ちも魔//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全413部)
  • 8 user
  • 最終掲載日:2017/06/23 11:24
おかしな転生

 貧しい領地の貧乏貴族の下に、一人の少年が生まれる。次期領主となるべきその少年の名はペイストリー。類まれな才能を持つペイストリーの前世は、将来を約束された菓子職//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全152部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/09 22:03
勇者様のお師匠様

 両親を失いながらも騎士に憧れ、自らを鍛錬する貧しい少年ウィン・バード。しかし、騎士になるには絶望的なまでに魔力が少ない彼は、騎士試験を突破できず『万年騎士候補//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全152部)
  • 7 user
  • 最終掲載日:2017/03/12 00:00
異世界料理道

 津留見明日太(つるみあすた)は17歳の高校2年生。父親の経営する大衆食堂『つるみ屋』で働く見習い料理人だった。ある日、『つるみ屋』は火災に見舞われ、父親の魂と//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全472部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/09 17:00
異世界薬局

研究一筋だった日本の若き薬学者は、過労死をして中世ヨーロッパ風異世界に転生してしまう。 高名な宮廷薬師を父に持つ十歳の薬師見習いの少年として転生した彼は、疾患透//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全94部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/23 12:00
精霊幻想記(Web版)

主人公のリオは異世界のスラム街で最底辺の孤児として暮らしていた。だが、日本で暮らしていたとある青年の記憶と人格が、七歳のリオの身に宿る。その後、王女誘拐事件に巻//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全187部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/21 22:00
最強魔法師の隠遁計画

 100年前、突如として魔物が現れ人間を襲いだした。当時、通常兵器では魔物の硬質な身体に傷を付けることすらできず、人類はその数をあっという間に減少させ身を守るか//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全329部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/21 12:04
氷使いは栄光の夢を見る

強さを求め氷属性最強となった主人公のジエロ。 強さを極めた先に何も無いことに気づき虚無感に苛まれたジエロは、自分を討伐しに来た親友に封印されることにした。 そし//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全105部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/24 18:54
レジェンド

東北の田舎町に住んでいた佐伯玲二は夏休み中に事故によりその命を散らす。……だが、気が付くと白い世界に存在しており、目の前には得体の知れない光球が。その光球は異世//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全1407部)
  • 8 user
  • 最終掲載日:2017/06/24 18:00
オークの騎士

前世にてある事件をきっかけに、ひたすらに己の『真の強さ』を追い求め続けて生きた男は、最後に病で道半ばにて倒れることになってしまった。 だが、次に彼が目を覚ました//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全115部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/18 08:09
ウォルテニア戦記【Web投稿版】

 青年が召喚された異世界は乱世だった。  絶対王政の世界。  選民意識に凝り固まった特権階級と世俗にまみれた宗教。  青年は自分の正義を胸に行動を起こす。  

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全188部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/05/14 19:49
蘇りの魔王

勇者に討たれ、その命を失ったはずの魔王ルルスリア=ノルド。 彼にはやり残したこと、解決できなかった問題がいくつもあったが、悪は滅びると言うお題目に従い、消滅した//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全272部)
  • 7 user
  • 最終掲載日:2017/03/23 18:00
ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント-

世界最強のエージェントと呼ばれた男は、引退を機に後進を育てる教育者となった。 弟子を育て、六十を過ぎた頃、上の陰謀により受けた作戦によって命を落とすが、記憶を持//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全172部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/05/24 23:35
ドリーム・ライフ~夢の異世界生活~

 45歳の冴えないサラリーマンが異世界に転生?!  趣味なし、バツイチ、恋人なしの灰色の人生を送っていた男が、辺境の騎士の家に転生し、その能力をいかんなく発揮し//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全292部)
  • 7 user
  • 最終掲載日:2017/06/20 12:00
用務員さんは勇者じゃありませんので

部分的学園異世界召喚ですが、主役は用務員さんです。 魔法学園のとある天才少女に、偶然、数十名の生徒・教師ごと召喚されてしまいます。 その際、得られるはずの力をと//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全141部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/05/25 23:30
食い詰め傭兵の幻想奇譚

世話になっていた傭兵団が壊滅し、生き残ったロレンは命からがら逃げ出した先で生計を立てるために冒険者になるという道を選択する。 だが知り合いもなく、懐具合も寂しい//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全297部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/19 12:00
元最強の剣士は、異世界魔法に憧れる

 剣に生き、剣に死んだ。  その生涯に後悔はなく――ただ一つ、憧れだけが残った。  ある日唐突に前世の記憶が蘇ったソーマは、同じくその日に無能の烙印を押される//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全158部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/24 07:00
戦乱の帝国と、我が謀略 ~史上最強の国が出来るまで~

目立ちたがりの主人公や、俺TUEEEEを読むのが辛くなってきた人向け。 地球と同じように歴史が積み重なっている異世界で、元日本人が暗躍し人の眼から隠れ『名誉』『//

  • ローファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全206部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/22 23:28
やる気なし英雄譚

大陸西方の小国であるクラリス王国に、「王都のごくつぶし」と呼ばれる青年士官がいた。彼は魔法全盛の時代にほとんどの魔法を扱えず、出来損ないの士官として地方へ左遷さ//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全241部)
  • 7 user
  • 最終掲載日:2017/06/24 21:00
ゴブリンの王国

醜悪なる姿はゴブリンと呼ばれ、人に狩られるだけの存在だった種族がいた。しかし、ただ一人の王の存在によって彼らは生まれ変わる。 魔物を率いて神々への反旗を翻した王//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全371部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2016/01/22 12:00
Re:ゼロから始める異世界生活

突如、コンビニ帰りに異世界へ召喚されたひきこもり学生の菜月昴。知識も技術も武力もコミュ能力もない、ないない尽くしの凡人が、チートボーナスを与えられることもなく放//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全443部)
  • 6 user
  • 最終掲載日:2017/06/13 01:00
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