デートの待ち合わせ
よく晴れた休日の午後のこと、僕は彼女とデートで待ち合わせ。時間よりも少し早目にに行ったけど、僕には勿体ないくらいの可愛い彼女は既に来ていて、いかにも楽しみといった様子で待っていた。
気合を入れたオシャレなファッション。メイクは少し濃いめだけれど、それも僕に会う為だと思えば、ほんの少しも気にならない。堪らないくらいに愛おしい。
そんな彼女を見つめるうち、僕に少しだけイタズラ心が芽生えてきた。彼女はまだ僕に気付いていない。そっと後ろから近付いて、ちょっとおどけて驚かしてやろう。きっと、彼女も喜ぶはず。
ところが、ところが、彼女の直ぐ傍まで来たところで、偶然現れた彼女の女友達が、こう彼女に話しかける声が。
「あら? ユミ、偶然ね。一人なの? わたし達と一緒に遊ばない?」
なんて事を言うのだろう?
そう思って顔を出そうかと思ったけれど、彼女が何と言うのかが気になった。そのまま聞き耳を立ててみる。
「駄目よ、駄目。これから彼氏とデートなの」
すると彼女はそう言った。僕はもちろん、大喜び。しかし、それに彼女の女友達はこう返す。
「そんなの別に良いじゃない。どうせ、つまらない彼氏でしょう?」
なんて事を言うのだろう?
再び僕はそう思う。けれど顔は出さなかった。やっぱり、彼女が何と返すかが気になったから。
「あら? 失礼な事を言わないで。タカシ君はとってもイケメンなのよ」
それを聞いて僕は驚く。
待ってよ、待って。僕はそんなにイケメンじゃない。お願いだから、そんなにハードル上げないで。
そっと覗いて見てみると、彼女の女友達は他にも仲間を連れていて、その中には僕よりよっぽどイケメンが。
僕は頭を抱え込む。
君は恋する乙女フィルターで、僕がよく見えているだけなんだ。僕はそんなに大したもんじゃないんだよ。
でも、でも、彼女はまだ続ける。
「それに、とってもオシャレなんだから」
いやいや、止めて。
僕は自分のファッションセンスに、これっぽっちも自信がないの。
「へぇ、それなら見てみたい」
すると、彼女の女友達はそう言った。展開は最悪。これじゃ、顔を出せやしない。もちろん、帰れもしないのだけど。
仕方ないので、僕は彼女の友達たちがそこから去るのを待つ事にした。このままじゃ、彼女も僕も恥をかく。
ところが、だけど、いつまで経っても彼女の友達はいなくならない。彼女は僕が来ない事に、少しずつ不安を感じ始めたよう。彼女の女友達はこう言った。
「もしかして、あなた、すっぽかされたのじゃない?」
それに彼女は文句を言う。
「失礼な事を言わないで。タカシ君は、絶対にそんな酷い事はしないわ。とっても優しい人なんだから!」
それを聞いた瞬間、僕の足は前に出た。僕の姿に彼女は喜び、彼女の友達たちは微妙な顔。
僕が顔を出したのは、その最後の彼女の言葉だけは本当だと、そう思いたかったから。彼女の友達たちは、どうやら僕を馬鹿にしているようだったけど、彼女が喜んでいるようなので、それでもいいやと僕は思った。
街で可愛い子が、明らかに待ちぼうけをくらっているのを見て、「さっさと来てやれ、男」とか思いながら、こんな理由かもしれないと思って、こんな話を考えてみました。いえ、絶対に、こんな理由じゃないですがね。
因みに、この文体はそれなりに難しいです。やってみれば分かります。簡単にできたら、ごめんなさい。