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謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
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 遠足が終われば、その後にやってくるのが中間テストだ。
 優秀な外部生達が大勢入ってきたので、私もさらに気合を入れて試験勉強しないと。
 実は少しのんびりしようと、高校用の塾にまだ入っていないので、家庭教師オンリーなのだ。テスト前は回数を増やしてもらうことにした。

「麗華さんはどうしても、数学が少し苦手なようですね。問題集を繰り返しやっていけば、弱点も克服していけると思いますから、頑張ってね」
「はい」

 その繰り返しが出来ないんだよなぁ。だって嫌いなんだもん…。
 でもやらないと、またもや補習に呼ばれてしまうかもしれない。あの孤独な日々は絶対に嫌だ。そして本当は小物のくせに“さすが麗華様”と持て囃される今の状況を手放したくない!
 このくだらないプライドのために、私は今日もせっせと理解不能な公式と戦う。

 私は今回、栄養ドリンクに手を出した。一日7時間睡眠が基本の私は、それ以下の睡眠が続くと、途端に眠くなってふらふらしてしまうので。
 しかしいきなり、箱に入った1本千円以上するような大物には怖くて手が出せない。これは最後の砦な気がするから。
 とりあえず3本パックになっているポピュラーなものを買ってみた。
 あ、この味久しぶり。前世では時々飲んでたもんなぁ。
 効いてるのか効いてないのか、いまひとつわからないけど、なんとなく栄養ドリンクを飲んで試験勉強を頑張る自分っていうのが、気に入った。
 私がゴミ箱に栄養ドリンクの瓶を捨てているのを見て、お母様が「女の子がそんなに頑張らなくていいのよ」と心配してきたけど。お母様には恐ろしく高い美容ドリンクをたくさん渡されたので、これも飲む。
 さぁどこからでもかかってこい!中間テスト!


 栄養ドリンクを飲んで頑張った中間テストは、うん、まぁ私だしね…。
 お母様にはテストが終わるとエステとヘアサロンに連れて行かれた。お母様は本当に私の外見にこだわりがあるなぁ。お母様は自分が考えるお嬢様像というものがしっかりあるんだろうな。ゴスロリとかじゃなくて良かったけど。
 そして突如現れた白髪も、今は元通りの黒髪だ。二度とあんな悲劇を繰り返さないためにも、あれから毎回念入りにヘッドスパをしてもらっている。
 そんなエステとトリートメントで、私の肌も髪もぴかぴかになった数日後、中間テストの結果は貼り出された。

 高等科では貼り出される順位は30位までだ。約300人の中の30人って、絶対私には無理だな。
 ……無理だなと言いつつも、心のどこかでもしかしたら?と期待してしまうのはなぜでしょう。
 いつも通り私なんてとてもとてもという顔をしながら、掲示板を見に行く。
 ドキドキしながら上から見ていったけど、うん、やっぱりないね。
 しかし知らない名前が多いなぁ。これってきっと外部生達だよね。さすがだ。
 そんな中、燦然と輝くのは

 1位 鏑木雅哉
 2位 円城秀介

 凄すぎる。合計点数もほぼ満点に近いし。いったいどんな頭の中身してんだ。羨ましい。私達の学年において、1位2位は中等科から揺るがないなー。このふたりの間で順位が入れ替わる事はよくあるけど。
 そして1位2位は鏑木と円城だったが、3位がなんと若葉ちゃんだった!しかもふたりの点数に肉薄する勢いで。これってヘタしたら次回の期末では首位に躍り出ちゃうんじゃないの?!
 若葉ちゃんはいつものようにちょっと毛先がはねた状態で、ボーッと掲示板を見ていた。とても頭が良さそうには見えない…。若葉ちゃんっ、口開いてる!おバカっぽく見えるから口閉じて!
 ほかの生徒達も高道若葉って誰だ?と噂をしていて、その本人を見るとまさかあれが?!と驚いていた。若葉ちゃんは能ある鷹は爪を隠すを体現しているね。
 外部生の名前が多い順位表の中で、同志当て馬は5位に食い込んでいた。凄いぞ!私は同じ当て馬仲間として鼻が高い!
 若葉ちゃんは自分の名前を見つけたのか、ホッとしたような顔をしていた。特待生にとっては成績は死活問題だもんねぇ。おめでとう。

 そこへ鏑木と円城がやってきた。普段は順位表なんてほとんど気にしていないのに、やっぱり入学して一番最初の順位には関心があるのかな?
 ふたりがやってくると順位表に群がっていた生徒達が一斉に左右にわれた。
 自分達の名前があるであろう上位だけを見て、鏑木がボソッと言った。

「3位の高道若葉って誰」

 鏑木のその声を周囲の生徒達が聞き取り、「あの女みたいです」とご注進していた。
 鏑木は若葉ちゃんを一瞥すると、そのまま円城と共に掲示板から去って行った。無表情な鏑木とは逆に、円城はちょっと面白そうな顔をしていたけど。
 すると生徒達が先程までとは違ったざわつきをし始めた。なにやら少し不穏な空気。そして聞こえてきた言葉は「生意気」だった…。

 表だって若葉ちゃんを攻撃する生徒はいないけど、一部の生徒達は鏑木と円城の順位を脅かした若葉ちゃんが気に食わないようだ。しかもその子がおよそ瑞鸞にはいないタイプの庶民的な生徒だったので、余計に癇に障るらしい。
 そんなこと言ったってねー。若葉ちゃんの場合、特待生だから結果残さないといけないんだし。それにふたりの順位を脅かすっていうなら、中等科でずっと3位だった同志当て馬はどうなのよ。
 それを聞いたら友達がみんな「水崎君はいいんです」と言った。なんでよ、顔か?顔がいいからか?
 それだけじゃなく、同志当て馬には男女関係なく人を惹きつける魅力があるんだと。そりゃあ生徒会長までやったくらいだもんねぇ。
 だからって自分達の頭の悪さを棚に上げて、頭のいい外部生に矛先向けるなよ。

「厳しい受験に勝って入学してきた外部生達ですから、頭がいいのは当然でしょう?それよりも、そんな外部生達を抑えての鏑木様と円城様が素晴らしいわ」
「確かにそうですわね!さすがですわ~、皇帝と円城様!」

 女の子達の前ではあのふたりの名前を出しておけば、ほぼ間違いはない。途端にきゃあきゃあと楽しげな空気に変わった。

 個別に配られた成績表での私の順位は73位。う~ん、これって喜んでいい順位なのかな?



 最近の私のストレス解消。それはニードルフェルトだ。
 羊毛フェルトを専用のニードルでチクチク刺していく。これが妙に楽しい。教本を見ながら一番最初に作ったのは雪だるま。大小の白い丸玉を作って目を付けただけなんだけど。
 そしてこの趣味は、集中しすぎると目が痛くなるので気を付けないと。目がっ、目がぁ~!

 いつもは自分の部屋で作っているんだけど、たまにリビングでやったりもする。
 今作っているのはとろろん芋タロウだ。茶色いフェルトを針でひたすらチクチクチク…。
 夜遅くに帰ってきたお兄様にその姿を発見され、「相手は誰だ!」と言われた。
 呪いの藁人形じゃないよ……。

 あぁこの気持ちをわかってくれる手芸友達が欲しい。手芸部入りたい…。空気読まずにゴリ押ししちゃおうかな。
 でもそれをやったらまた、私は部室でぽつんとひとりだ。うっ、この涙はニードルフェルトに集中していたせいだ。
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