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謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
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 瑞鸞学院中等科に入学した。
 制服のジャケットが紺から白に変わって、かなり可愛い。ボルドーにストライプの入ったリボンが更にその可愛さを引き立たせてくれる。制服が変わるだけで、たった1ヶ月しか経っていないのに、なんだかずいぶんお姉さんに見えるのが不思議。


 中等科に上がると、外部受験組が3割程度入ってくる。
 そしてこの外部受験組は、厳しい入学試験に合格して瑞鸞に入ってきているので、頭がいい。
 基本的に瑞鸞は、よっぽど問題がなければ全員エスカレーター式に上にいけるので、内部組は外部組より頭が良くないというのが巷説だ。
 高等科になると更に優秀な外部組が入ってくる。ここにくると一部を除き、初等科からの内部上がりが一番バカだと思われている。
 でも本人達は特に困る事もないようなので、それはそれでいいのだろう。世間一般のレベルには達しているのだから。
 ただ学院側としては、伝統ある瑞鸞学院がバカの巣窟になるのは困るので、外部から優秀な生徒を集めてくるのだ。
 瑞鸞はそのブランド力と、素晴らしい設備と授業内容でかなり人気があるので、優秀な生徒はすぐに集まる。
 高等科では、特に優秀な成績の生徒には特待生として授業料が免除される。その中で更に全国模試で一定の成績を出す事を条件に、一部の生徒には返却不要の奨学金も出る。
 これって要するに、学院の体面を保つ為に偏差値をお金で買っているってことだよね。

 君ドルの主人公も、この特待生制度を使って瑞鸞に入学してくる。
 家計の為に授業料無料で、しかも頑張れば奨学金までもらえるという事で瑞鸞に入学するが、あまりの金銭感覚の違いにカルチャーショックを受けるんだよね。
 それはそうだ。今まで通っていた学校とは、あまりに規模が違うんだから。
 その気持ちは、私も初等科に入学したときに味わったからよくわかる。なんだここは。私の知っている小学校と全然違う!って開いた口が塞がらなかった。
 きっとそのうち慣れるから、3年後に高等科に入学してくる主人公には頑張ってもらいたい。



 初等科と中、高等科と一番違うところは、生徒会がある事だ。
 生徒会は学院内の優秀な生徒達で構成される、実力主義の組織だ。
 対して、ピヴォワーヌは本人の力よりも、ピヴォワーヌにふさわしい血筋、家柄、財力を持つ家の子女で、初等科からの純血瑞鸞生のみという条件がある。
 ピヴォワーヌは自分達こそが瑞鸞を体現する者達であり、生徒会を外様が何を偉そうにと苦々しく思い、生徒会はピヴォワーヌを本人の実力でもないくせに、特権を振りかざす学院の害悪のように思っている。
 伝統のピヴォワーヌと実力の生徒会は、表だって対立することはないが、長年に渡っての確執があった。
 今の生徒会がどんな人達かは知らないけど、なるべく波風立てる事なく過ごしたい。


 中等科と高等科のピヴォワーヌは合同だ。初等科のプティはあくまでおまけで、こちらが本体。
 サロンのドアを開けると、美しい曲線で有名な家具に、たくさんの胡蝶蘭と季節の生花。窓際にはグランドピアノも置いてある。
 私は壁際の、アールヌーヴォーの可愛いランプのある一人掛けソファが気に入って、サロンにいる時は、そこにいつも座るようになった。
 いいなぁ、このランプ。私の部屋にも欲しいなぁ。

 サロンは中、高等科合同なので、もちろん優理絵様もいる。皇帝は何年かぶりの優理絵様との学院生活に、とても幸せそうだ。
 本人は隠そうとしているが、口角があがっちゃってるので、結構わかりやすい。
 最近はストーカーも鳴りを潜め、優理絵様の教育の賜物か、他人への気遣いも出来るようになったらしい。人間とは成長するものなのだなぁ。
 皇帝は大好きな優理絵様さえいれば機嫌がいいのだから、あと2年は平穏な生活が出来そうだ。良かった良かった。

「麗華さん、中等科には慣れた?」

 愛羅様がお菓子を持って私の元に来てくれた。
 今日のお菓子はザッハトルテ。光沢のあるチョコレートが光輝いている。ゴクッ。

「はい。給食の代わりに学食というのが新鮮です」

 中等科からは学食かお弁当持参かを選べる。学食は、普通に高級レストラン。ほとんどのメニューが二千円以上からという、庶民にはなかなか厳しい価格帯となっている。おいしいけどね。
 私は密かに全メニュー制覇という目標を掲げているので、今のところは学食派だ。
 そしてこの食堂にも、ピヴォワーヌ専用のリザーブシートがある。窓際の、明るい一画だ。
 そういえば、君ドルでは高等科の食堂で主人公が知らずにピヴォワーヌ専用席に座ろうとして、顰蹙を買うエピソードがあったな。
 うん、頑張れ主人公。「庶民のくせに、この身の程知らず!」と一番怒りまくってたのは吉祥院麗華だけどね。

「外部生とは上手くやっている?」
「そうですねぇ。まだ内部生との壁はありますわね」
「まぁそれはそうでしょうね」

 外部生は1クラスに10人前後だ。高等科から入ってくる特待生と違って、中等科の外部生は瑞鸞の高額の学費と寄付金を払えるだけの家の子達なので、それほどの金銭感覚の差はない。
 なのでしばらくすれば馴染んでくるのだろう。一応。

 部活動に入るかはまだ考え中だ。特にどうしてもやりたいという事もないし。
 お兄様からは料理部に入れば?とアドバイスをもらったけど、習い事の日と重なっているしなぁ。
 それ以外に塾や花梨先生の家庭教師もある。もうすぐ中等科に入学して最初のテストがやってくるから、今は結構大変なのだ。
 なんだか最近、「さすが麗華さま」という評価をよく受けるので、ボロを出さないよう必死に足掻いている。
 数学だ。数学が私を苦しめる。
 因数分解という言葉は覚えていたけど、中身はきれいさっぱり忘れていた。xとかyが出てくることだけはかろうじて覚えていた。どうなってんだ、私の記憶力。
 前世で本当に習ったのかなぁ。習ったんだろうなぁ、義務教育だし。
 かなりの危機感を覚えて、春休み中に花梨先生に教えてもらいながらどうにか頭に詰め込んだ。
 前世の自分には、もう勉強面での期待はしないことにした。そんなの初等科の時にわかってたはずなのに。でももしかしたらって淡い期待をしてしまった。奇跡なんてないんだ。
 ゼロからコツコツ頑張ろう…。
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