挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
30/284

30

 芹香ちゃんと菊乃ちゃんの仲がおかしくなっている。
 原因は菊乃ちゃんが鏑木と同じクラスになったことだ。

 クラス分けの発表で同じクラスになったのがわかった時、菊乃ちゃんは狂喜乱舞した。
 それからは毎日、鏑木の話だ。
「国語の授業で朗読する姿が素敵だった」だの「鏑木様が使った後のチョークを使ってしまった」だの。
 私からしたら他愛もない内容に思えるが、芹香ちゃんにとってはそうではなかったらしい。

「麗華様、菊乃さんたら最近調子に乗っていると思いません?鏑木様と同じクラスになったからといって、毎日自慢話ばかり。なんなのよ、あれ!」

 ありゃりゃ~。
 芹香ちゃんと菊乃ちゃんはコンビのような関係だったのに、片方が出し抜くような形になって亀裂が入っているらしい。

「麗華様だって悔しくないんですか?菊乃さんったら、まるで自分の方が鏑木様に近いとでも言うような態度で!偉そうに!」

 全然悔しくないけど?
 だって私は別に好きじゃないし。
 ただ、これだけ学院中にファンがいるふたりの事を、私は特に好きでもないなんて言って、ヘタに波風立てる必要もないので、とりあえず周りに合わせて「素敵ねー」などと適当に相槌を打っている。

「円城様もたまに教室に遊びに来るとか!あの子それを狙って、最近休み時間も麗華様のところに来ないじゃないですか!私達への裏切りよ!」

 うわ~、ヒートアップしてきたなぁ。
 どうしようかな。

「菊乃さんは、芹香さんが喜ぶと思っていろいろ話してくるんじゃないかしら。悪気はないと思うわよ?」
「……そうは思えませんけど」

 あきらかに納得してない顔だな。まぁ私もあれはただの浮かれすぎての自慢話だと思ってるけど。

「だって菊乃さんは芹香さんの事が大好きみたいですし。前に菊乃さんの具合が悪くなった時にも、芹香さんが親身になって保健室まで付き添って行ってくれた事を凄く感謝していましたし。いざという時、頼りになるのは芹香さんって、私にも言ってましたわよ」
「えっ…」

 これは半分本当、半分嘘。
 保健室に付き添ってくれたのを感謝してたのは本当。
 頼りなるうんぬんは、私が「芹香さんは頼りになる人ね」と言ったら菊乃ちゃんが「そうですね」と返事をしただけだ。

「菊乃さんが…」
「菊乃さん、今は憧れの鏑木様と同じクラスになって、舞い上がっちゃってるだけだと思いますわ。もう少ししたら落ち着くでしょう。元々鏑木様は女子にほぼ無関心ですし。所詮は遠くの鏑木様より、近くの芹香さんのほうが菊乃さんにとって、価値ある存在なのですから」
「そうですわね」

 お、乗った。
 そうしたら…

「芹香さん、これ」
「えっ、マカロン?」

 芹香ちゃんに渡したのはピンク色のマカロン。

「季節限定のさくらんぼのマカロンですの。鏑木様の好物ですわ」
「えっ!鏑木様の?!」
「えぇ、さっきピヴォワーヌのサロンに行った時に、鏑木様が召し上がっていましたわ。私も1個頂いたのですが、食べずにもらってきたのです。芹香さんに差し上げますわ。これ、菊乃さんには内緒ね」
「まぁ…」

 芹香ちゃんが嬉しそうにマカロンを両手に包む。

「鏑木様がお菓子を食べる姿なんて、なかなか見られないですわよね」
「あら、そんなことないんじゃないかしら。あの方、結構甘党よ」

 サロンではよくスイーツを食べているし、君ドルの中でも甘党描写があった。
 一時期、京都の老舗茶屋が出している、抹茶の生チョコレートにはまっていたし。
 隠しているわけではなさそうだけど、そもそも校則でお菓子の持ち込みは原則禁止だからサロン以外で見る機会はないか。

「鏑木様とおそろいなんて、もったいなくて食べられないわ」

 芹香ちゃんの機嫌が直ったので、とりあえずこっちは良し。

「あの…麗華様。さっき私が言ったことは…」
「もちろん、聞かなかった事にしますわ。だってあれは芹香さんの本心ではないでしょう?」
「はいそうなんです。ありがとうございます麗華様」

 いえいえ、どういたしまして。



「麗華様、芹香さんの最近の態度どう思います?私が鏑木様と同じクラスになったから嫉妬しているんだわ!」

 今度は菊乃ちゃんが芹香ちゃんのいない隙をみて、私の元へやってきた。

「羨ましかったら素直に羨ましいって言えばいいのに。せっかく私が鏑木様の話をしてあげてるのに、睨んできたりして。性格悪いと思いません?」

 おりょりょ~。
 上から目線ですねー。
 どっちもどっちだと思います。

「芹香さんは、菊乃さんが鏑木様の話ばかりで拗ねているのですわ」
「拗ねている?」
「これ、私が言ったって内緒にしてくださいね。芹香さん、菊乃さんが芹香さんより鏑木様のほうが大事なんじゃないかって私にこぼしてきましたの。自分の方が菊乃さんと仲良しだったのにって。なんだか寂しそうでしたわ」
「え…」
「芹香さんは菊乃さんが大好きだから。それなのに最近、菊乃さんは鏑木様の話ばかり。自分がないがしろにされてる気分なのでしょう。芹香さんが嫉妬しているのは、菊乃さんではなくて鏑木様に対してなのではなくて?」

 こっちは全部嘘。

「でもこれ、芹香さんに確かめたりなさらないでね。芹香さん意地っ張りだから本心を知られたら、ますます拗ねて大変なことになりそうですもの」
「芹香さんがそんなことを…」
「ここは菊乃さんが大人になって、芹香さんに歩み寄ってあげたら?そしたら菊乃さんが大好きな芹香さんの機嫌はすぐに良くなりますわよ。だって、ふたりは親友なのですから」
「親友…、そうですわね。私達は親友でしたわ」

 親友って特別っぽくて憧れるよね。
 菊乃さんの怒りも収まったらしい。

「麗華様、さっき私が話したことは…」
「もちろん、聞かなかった事にしますわ。だってあれは菊乃さんの本心ではないでしょう?」
「はいそうなんです。ありがとうございます麗華様」

 いえいえ、君たちは似た者同士だよ。


 その後すぐにふたりは仲直りした。
 私のついた嘘はばれていないらしい。ふたりは、らぶらぶベタベタだ。
 小心者の私としては、ゴタゴタに巻き込まれるのはごめんだ。だって怖いんだもん。
 いつとばっちりがくるかわからないし。
 平和が一番だよ。


 そういえば『君は僕のdolce』中で、吉祥院麗華は主人公の嘘を皇帝に吹き込んで、仲違いさせるシーンがあったな…。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ