挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
252/277

252

 中からの応えに名前を名乗ると、少しの間の後で同志当て馬がドアを開けてくれた。

「遅くなりました」
「いや。こちらこそわざわざ時間を割いてもらって悪かったな。あぁ、生駒も一緒だったのか」

 同志当て馬が私の陰になっていた生駒さんに気づき、そのげっそりとした憔悴ぶりに一瞬目を見張ったが、黙って私達を室内に導いた。私は生駒さんを先に通して、その後に続いた。

「あ…」

 生徒会室には若葉ちゃんがいた。
 席に座って書類作業をしていた若葉ちゃんは顔を上げると、「ようこそ~」と笑顔で私達に手を振った。

「当事者に来てもらうのが一番だと思って呼んだんだ」

 若葉ちゃんがいる理由を説明した同志当て馬が、事後承諾で悪いと謝った。
 そんな若葉ちゃんは立ち上がると、ニコニコしながら「まぁ、座って座って」と私達をソファに誘導した。

「なにか飲む?コーヒー?お茶でいいかな?」

 若葉ちゃんがグラスに冷たいお茶を人数分用意してくれている間、生駒さんは両手を固く握りしめ、無言で下を向いていた。
 そしてお茶が出され、若葉ちゃんも席に着くと、同志当て馬が「では始めようか」と口火を切った。

「えっと、大体の話は聞いたよ。犯人は生駒さんだったって」

 それに「はい…」と生駒さんが消え入りそうな声で認めると、若葉ちゃんは腕を組み「そっか、そっか」と頷いた。

「私の身勝手な思い込みで、高道さんに大変申し訳ないことをしてしまいました。本当にごめんなさい…。謝っても謝り切れません…」

 生駒さんは立ち上がると、若葉ちゃんに向かって深々と頭を下げた。

「うん、わかった。座っていいよ、生駒さん。それで理由は、生駒さんが吉祥院さんのファンで、吉祥院さんのためにやっていたってことで合っているのかな?それが理由で私の持ち物を汚したりしていたと」
「はい…」
「そっか、そっか」

 若葉ちゃんはうんうんと頷いた。

「高道への嫌がらせのすべてが生駒の仕業ではないけれど、さっき話した通り、かなりの余罪があった」

 同志当て馬が補足した。

「なるほどねー。生駒さんはそんなに吉祥院さんが好きなのかぁ」

 そっかぁ、私に嫌がらせをしちゃうくらい、吉祥院さんを好きだったのかぁ、と若葉ちゃんは独り言のように繰り返した。

「吉祥院さんが好きだから、私の上靴や制服まで汚しちゃったわけだね?」
「…ごめんなさい」

 そっか、そっかぁと、若葉ちゃんは頷いた。さっきから若葉ちゃんはなぜそんなに、私のためだったというのを何度も確認しているんだろう。私と同志当て馬は若葉ちゃんの気持ちが読めなかったけれど、黙って成り行きを見守った。
 すると、

「だったら、これを言ったらショックを受けちゃうかなぁ…」

 若葉ちゃんが妙に芝居がかった困り顔で、小首を傾げた。

「なにかあるのか?」
「う~ん。どうしようかなぁ。ねぇ、吉祥院さん。例のこと、言ってもいいと思う?」

 えっ、なにが?!一体、なにを言うつもりなの、若葉ちゃん?!
 急に話を振られて焦る私を置いて、あのね、と若葉ちゃんは生駒さんに話しかけた。

「実は私が今着ているこの上靴と制服、吉祥院さんからのお下がりなんだよ」
「えっ?!」

 若葉ちゃんの爆弾発言に、驚いた生駒さんが顔を上げた。

「その上靴と制服が、吉祥院からのお下がり?!どういうことだ、高道」

 先程まで冷静だった同志当て馬も、あまりに予想外だったのか落ち着きを失っている。しかし私だってそれどころじゃない。若葉ちゃんによるいきなりの秘密の暴露にパニック状態だ。若葉ちゃん、なんで!それは秘密だと言ったじゃないかーーー!!

「うん。嫌がらせで汚されていたんだけどね。偶然その場に居合わせた吉祥院さんが、同情して自分の持っている替えの靴と制服をくれたの」
「吉祥院が…」

 衝撃の事実に同志当て馬が唖然とした表情で私を見るが、私も狼狽から立ち直れていない。瞬きの回数が異常に増えて止まらない!なぜバラしたか、若葉ちゃん!
 私達3人を驚愕させた若葉ちゃんは、立ち上がって制服を見せびらかすように、その場でくるりとターンをした。
 そして生駒さんの前に立つと、スカートの裾をドレスのようにちょこんと持ち上げて、笑顔でポーズを取った。

「憧れの吉祥院さんのお下がりだよ。羨ましい?」

 生駒さんが目を見開いた。

「生駒さんの嫌がらせが、私が吉祥院さんのお下がりをもらうことに繋がって、私と吉祥院さんを近づけるきっかけ作りになっちゃったんだけど、それについてどう思う?ねぇ、どう思う?」

 若葉ちゃんが「悔しい?悔しい?」って顔で生駒さんを挑発する。一体どうした、若葉ちゃん。黒いよ、黒すぎるよ…。

「何わざわざ神経を逆なでするようなことを言ってんだ」

 復調した同志当て馬が若葉ちゃんを窘めた。

「いやぁ、私だってそれなりに嫌な思いをさせられてきたからね~。これくらい意地悪をし返してもいいかなと」

 若葉ちゃんは悪びれもせず、へらりと笑った。

「全く、なにやってんだ…。だけど驚いたな。まさか高道の制服が吉祥院のものだったなんて…」
「本当だよね~。靴はともかく、制服は買い替えるとなるとかなり厳しいから、吉祥院さんに予備の靴と制服をもらえて助かったよ。あらためて、吉祥院さん、その節はありがとう」
「…どういたしまして」

 なんでバラしちゃうのよと、恨みがましい目で訴えたが、若葉ちゃんにはえへへと笑って返された。

「しかしその時に他の生徒に見られなくて良かったな。ヘタしたらロッカーの時のように吉祥院が犯人だと思われたかもしれないぞ」

 それは確かにその通りだ。ピヴォワーヌ前会長から睨まれていた若葉ちゃんと私が一緒にいて、若葉ちゃんの制服が汚されていたら、ほとんどの人が私がやったと思うよね…。ロッカーの時もだけど、私って結構綱渡りでここまできているんだよな~。やだ、今度厄除けしてもらおうかな…。

「知らなかった…。私の行いでまた麗華様にご迷惑をかけていたんですね…」

 生駒さんは項垂れた。

「そうだねぇ。ところで生駒さん。一度減った机や靴箱なんかへのいたずらが、修学旅行から帰ってきたあたりから再開したんだけど、それってやったの生駒さん?」
「…ごめんなさい」
「あっ、責めているわけじゃなくて、確認したいだけなんだけどね。それでどれくらいの期間やっていたの?今朝、水崎君と吉祥院さんに見つかっちゃったけど、再開してすぐに一旦やめて、今日また再開したの?」
「…?一旦やめてって言う意味がわからないんだけど、修学旅行から帰国してからは、毎日ではないけれど、不定期で週に2…3…4回…」
「多いね」
「…ごめんなさい」

 生駒さんは身を縮こまらせた。

「ふうん。でもおかしいね。私に覚えがあるのって帰国後の短期間で、それからは今日まで朝のいたずらは一度も受けた覚えがないんだよねぇ」
「えっ」

 生駒さんが不可解な表情を浮かべた。

「でも生駒さんはずっと続けていたんだよね。だとしたらそれって誰かが私が来る前に、毎回消してくれていたってことにならないかな~」

 若葉ちゃんは私と同志当て馬に順番に視線を向けた。

「それはもしかして、吉祥院さんと水崎君なんじゃないのかな~」

 バレてる?!
 どうごまかそうかとグルグル考えている間に、同志当て馬が「そうだ…」と認めてしまった。

「ただ、先に朝早く来て、嫌がらせの除去作業をしていたのは吉祥院だ。俺は途中から合流した」
「えっ!麗華様が?!」

 生駒さんが私を振り返った。

「それじゃあ…」
「うん。生駒さんの尻拭いをずっと吉祥院さんがやってくれていたってことだね!」
「お前、責めているわけじゃないと言っていなかったか…?」

 若葉ちゃんは、もちろんだよぉと笑顔で答えた。

「私が聞きたいのは、なんでふたりは私に言わずに、そんなことをしてくれていたのかってこと。どうして?」
「それは…」

 若葉ちゃんの顔が、嘘は許さないよ?とプレッシャーをかけてきた。

「俺は生徒会長として、それから高道の仲間であり友人として、嫌がらせの犯人を捕まえようと思ったんだ」
「私は…、高道さんが哀しい想いをするのがイヤだったから…」

 若葉ちゃんはやっぱりねぇと笑った。

「ありがとう。ふたりにはいっつも面倒かけっ放しだよね。特に吉祥院さん、ずっと朝早く来るのって大変だったでしょう。ごめんね、どうもありがとう。でも言ってくれたら、私も一緒に来たのに」
「それじゃ意味がないじゃない」
「そんなことないよ。犯人探しもできるし、余った時間で一緒に勉強したりおしゃべりしたりできたじゃない。それなら私、お菓子を作って持っていってたよ」
「うっ…。だったら今度、その食べ損ねたお菓子をちょうだい」
「あはは。りょうかーい」
「…もしかして、お前達ふたりは友達なのか?」

 私達のやり取りを見ていた同志当て馬が訝しげに尋ねた。

「そうだよ。私と吉祥院さんはずっと前から友達!ねっ!」

 若葉ちゃん!
 私達の関係のことはこれまでずっと隠し続けてきた秘密だったのに、またこんなにあっさりバラしちゃったよ!

「う、うん。私と若葉ちゃんは友達!」

 でも、若葉ちゃんに友達って宣言されたよ。それは素直に嬉しい!え~い、もういいや。認めちゃえ!
 浮かれた気分で私は若葉ちゃんと、ね~っとお互いにっこり確認し合った。

「聞いてないんだけど」
「言ってないからね!」

 同志当て馬の抗議も若葉ちゃんは笑って受け流す。同志当て馬は「もうなにがなんだか…」と頭を抱えた。

「でも今回のこともだけど、私は吉祥院さんに助けてもらってばかりだよね」
「そんなことないよぉ。いつもお家にお邪魔させてもらって、おいしいお昼をごちそうになったり、お菓子作りを教えてもらったり、若葉ちゃんと若葉ちゃんのご家族にはたくさん良くしてもらっているものぉ」

 それに私達は友達なんだもの!友達なら助け合うのは当然だよね!
 同志当て馬は勝手にやってくれと投げやりな表情だったが、パンと手を叩くと、「話を戻すぞ」と真顔になった。

「さて、生駒の罪状については明らかになったわけだから、次は処分をどうするかだ」
「…!」

 とうとう本題だ。ここで生駒さんの行く末が決まる。
 生駒さんがギュッと目を瞑った。体が小刻みに震えはじめる。そんな様子を見て、若葉ちゃんが、

「学院側には報告しなくていいよ」
「えっ」

 若葉ちゃんはのほほんと笑った。

「もちろん、やられたことに対して怒りはあるけどさ。事を公にすることで、もし生駒さんの人生を左右するような処分が下されたら、それはそれで後味の悪い思いをして、たぶんずっと罪悪感を引き摺ることになると思うんだよね」
「…そうか。それで?」

 同志当て馬は若葉ちゃんの答えを慎重に促した。

「うん。だから、この件に関しては、ここだけの話で収めるってことでいいよ」

 生駒さんは信じられないといった顔で若葉ちゃんを瞠目した。

「高道はそれでいいのか?」
「いいよ。っていうか、水崎君。そのために私を彼女に会わせたんでしょ?」
「…悪い」

 同志当て馬も、生駒さんを停学や退学にするのはできれば回避したいと思っていたのか。
 意図を見透かされていた同志当て馬は、苦笑いで謝罪した。

「…そんな、…本当に、いいの…?」

 生駒さんの目を涙の膜が覆う。

「まぁね。でも今回だけだよ。次はないよ?」
「…っ!っありがとう!…ごめんなさい!ありがとう…!」

 生駒さんは震える手で口元を覆うと、ボロボロと涙をこぼして頭を下げた。

「生駒は自分の行いの何が悪かったのか、もう一度しっかりと考えろ。犯行が見つかったからではなく、誤解で嫌がらせをしていたからでもなく、どんな理由にせよ他人を傷つける行為をしていたことが悪かったんだと、心の底から反省しろ。今回はたまたま高道の心が強かっただけで、別の人間だったら追いつめられて不登校や学院を退学していてもおかしくなかったんだからな。そして仮にそうなっていた場合、その時は俺は絶対に生駒を許さなかった」
「うううっ、ごめんなさい、ごめんなさ~いっ」

 生駒さんは堰を切ったように号泣すると、自分の膝に突っ伏した。
 私は生駒さんの背中を擦り、全員で生駒さんが泣き止むのを待った。
 しばらくして、ようやく生駒さんが泣き止むと、同志当て馬が「ただし」と話を続けた。

「生駒が行ったとする数々の所業を考えると、謝罪して高道が許したからといって簡単に即無罪放免とすることには、俺は納得しがたい」

 う~ん、それは確かにね。相当なことをやらかしているんだから、全くお咎め無しっていうのも違うかもなぁ。普通なら掃除1ヶ月なんてペナルティが科せられたりするのかもしれないけど、今回の場合は内密にすることになったから、大っぴらな罰は受けさせられないしねぇ。

「でしたらとりあえず、物的被害だけは弁償してもらったら?」
「そうだな。上靴と制服だったか。最低限それは弁償してもらうべきだな」

 私の提案に同志当て馬が賛成した。

「制服と上靴を弁償となると…」
「正確な金額は不明だが、約2、30万くらいか?」
「……」

 生駒さんも制服の値段を知らなかったようで、驚きに目を剥いた。
 約2,30万円って、家がお金持ちの瑞鸞の内部生ならまだしも、一般の高校生に簡単に用意できる金額ではないよね…。生駒さんのご両親の資産状況は知らないけど、金額を聞いての本人の顔色を見るに、私の想像はそう間違ってはいないと思う。

「あ、あの…、お年玉とかを貯めている貯金があるので、それを下ろせばなんとか…。足りない分は毎月のお小遣いを分割で…」

 お年玉か…。生駒さんがご両親に話して弁償をしてもらうのが一番なんだろうけど、心理的にそれはやっぱり難しいのかなぁ。
 すると、若葉ちゃんがはいっと挙手をした。

「でもそれって、ひとつ間違えると恐喝にならない?」

 え、恐喝…?
 私と同志当て馬は揃って若葉ちゃんを注視した。

「弁償は正当な権利だけどさぁ。私が生駒さんからお金を受け取っているのって、知らない人が見たら恐喝に見えるよね」

 同志当て馬がムムッと黙り込んだ。
 言われてみればそうかも…。同級生に大金を渡しているって、なにかあるのかもと勘繰ってしまうシチュエーションだよね。
 私達の反応に、若葉ちゃんは困ったように笑った。

「だからさ。まぁ、予備の靴と制服を提供してくれた吉祥院さんの前で言うのもなんだけど、吉祥院さんの厚意で私の金銭的な被害はなかったから、弁償はいいよ」
「えっ」

 私達3人は目を見合わせた。

「でもそれではさすがに…」
「高道。お前の気持ちもわかるけど」
「その代り、条件がある」

 若葉ちゃんはピッと人差し指を立てた。

「弁償する代わりに、しばらく私の家のお店でバイトして」
「バイト?!」
「私の制服と靴を買ってくれたのは働いてお金を稼いでくれた両親だからね。だからその両親の気持ちを踏みにじったことへの償いの意味と、自分で働いてみてお金を稼ぐ大変さを身を持って知って欲しい」

 若葉ちゃんは、「ずっとじゃなくて、休日に1ヶ月くらいでいいよ」と言った。

「高道、わかっていると思うけど、瑞鸞はバイト禁止だぞ」
「わかっているよ。だから私の家なんじゃない。当然、タダ働きだよ。私の両親には訳を話すから、ちょっと気まずいかもしれないよ。それが生駒さんへの罰」
「しかし…」
「私、やります!」

 生駒さんの力強い声が同志当て馬を遮った。

「生駒」
「私、高道さんのお家で働きます。ひどいことをたくさんしたのに、許してくれた高道さんに、少しでもお詫びをしたいんです。私、一生懸命頑張ります!高道さんの寛大な措置と、私の犯した罪の後始末をずっとしていてくれた麗華様に、少しでも報いたい!」

 生駒さんはやる気に満ち溢れた顔で、若葉ちゃんによろしくお願いします!と頭を下げた。
 若葉ちゃんはそれにうんうんと頷いているし、本人達がそう言うなら、それでいいのかな…?
 ちらっと同志当て馬と見ると、同志当て馬も仕方がないとため息交じりに頷いた。
 ではこれで一応は解決かなと思ったところに、生駒さんが立ち上がった。

「私、お遍路に行ってきます!」
「は?」
「え?」
「ん?」

 生駒さんの突然の宣言に、私達3人の頭にはてなマークが浮かんだ。お遍路?

「これからどうしたらいいのか、ずっとずっと考えたんです。高道さんと麗華様、そして水崎君には多大な迷惑をかけました。高道さんは許してくれたけど、私の罪は消えない。真に反省をするにはどうしたらいいのか。それなら頭を丸め、自分の罪に向き合い、お遍路に行くしかないかと。ええ、すぐにでも!」
「いやいやいや!」
「飛躍しすぎだと…」
「四国は遠いよ」

 学校があるのに頭を丸めてお遍路修行に行くのはまずいでしょう!

「一歩一歩、自分の罪の深さを踏みしめて参ります」
「えっ、徒歩?!」
「それだと1ヶ月以上かかるのでは?」
「出席日数が足りなくて留年になっちゃうよ」

 せっかく停学も退学もなく無事に内部進学ができることになったのに、留年して棒に振ったら意味がなくない?
 しかし生駒さんの決意は固いようで、私達の説得の声も耳に届かない。そんな生駒さんに同志当て馬は呆れたように私を見て、

「お前の信者はなんでこう、極端に走るヤツが多いんだよ…」
「信者ってなんですか?!変な表現をしないでください!」

 人聞きの悪い。信者なんて募った覚えはないわよ。
 しかしお遍路はまずいよ。これから期末テストだってあるんだから。行くならせめて夏休みまで待ちなよ。芙由子様といい、若い女の子に修行ってブームなの?
 …ん?あっ、そうだ!

「私から提案があります。生駒さん、お遍路は保留してまずは滝行をなさったらどうでしょう」
「は?」
「吉祥院さん?」

 ポカンとする若葉ちゃんと同志当て馬を放置して、私は生駒さんの手を取った。

「滝に打たれて弱い己を見つめ、それに打ち勝ち、禊をして、新しい自分に生まれ変わるのです。大丈夫、私が良い修行の場を知っています」
「麗華様…!」

 芙由子様の滝行にちょうど良い人材を確保できたぞ。ふふふ。

「お前、やっぱりそっちの人間だったのか…」
「言っていることが怪しい新興宗教の勧誘そのものだよ、吉祥院さん」

 若葉ちゃんと同志当て馬がドン引きしていた。目を輝かせる生駒さんにふたりが、騙されるな!目を覚ませ!と呼びかける。

 新興宗教麗華教へ、ようこそ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ