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謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
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 創立記念日は雲一つない青空で、絶好の遊園地日和だった。
 三者三様のキラキラさん達に囲まれて、私の気分も絶好調だ。

 なるべくたくさんのアトラクションに乗りたいので、私たちは開園直前にやってきた。
 一番最初に乗るのは、やっぱり人気のあるジェットコースター系。まだお客さんが少ない時に乗っておかないとね。
 お金持ちの家の子には並び屋を雇って代わりに並ばせ、順番がきたら代わって乗るというような事をしてる子達もいるみたいだけど、私達は自分達でちゃんと並ぶ。
 そういうのって、なんかズルしてるような感じがして他のお客さんに悪い気がするんだよね。
 ずっと立っているのは疲れるけど、おしゃべりしていれば楽しいしね!

 中等科と高等科のピヴォワーヌは合同なので、愛羅様とお兄様達はそれほど親しいわけではないそうだけど、何度か話をした事はあるらしい。
 愛羅様は伊万里様から、高等科の話を楽しそうに聞いている。
 良かった。愛羅様があまり親しくもないお兄様達と一緒でつまらないって思ったら、どうしようかと思ってたんだ。
 楽しんでもらえてるなら、私も嬉しい。

 並んでいるほかのお客さん達が、こちらをチラチラと見ている。
 あぁなるほど。キラキラさん達が気になるのですね。わかります。
 見られている本人達はあまりいい気分じゃないだろうけど、つまらない順番待ちの間の娯楽を提供してあげていると思って、許してあげておくれ。
 周りを見回すと、ほとんどが友達同士で来ているけど、ちらほらカップルもいる。
 客観的に見て、私達ってばダブルデートっぽい?
 伊万里様と愛羅様はふたりで並んでいると美男美女カップルに見える。うんうん。
 そしたらお兄様は?
 ダブルデートに誘える女の子もいないから、妹連れてきちゃった可哀想な人?
 やだ!私のお兄様が残念な人に見られてる!?
 うちのお兄様だってモテるんだからね!バレンタインのチョコだっていっぱいもらってくるんだから!
 妹しか誘う女の子がいない可哀想な人なんかじゃないんだからね!

「麗華、またおかしなこと考えてるだろう」

 お兄様が胡散臭げに私を見てくる。
 なんのことでしょう?

 アトラクションは愛羅様と一緒に乗る。
 だってロココの女王をエスコートするのは、騎士様と相場が決まっていますからね!
 伊万里様が男同士で乗るの?って微妙な顔をしていたけど、当然です。
 それに愛羅様を伊万里様の魅力から守らなくては!
 うん?私、お邪魔虫?

 一通りジェットコースター系に乗り、そろそろ和み系に行こうと歩いていたら、なんと伊万里様が私達にチュロスを買ってくれた!
 食べ歩き!
 夢にまで見た食べ歩き!

 嬉しい!おいしい!
 歩きながら食べるなんて、吉祥院家の令嬢として普段だったら絶対に許されない。
 でも今日はいいんだ!凄い、来てよかった!
 買ってくれた伊万里様、ありがとう。
 さすが女の子の気持ちがわかる憎い男!思わず恋をしてしまいそうです。

 あぁ幸せ、とニコニコもぐもぐ歩いていたら、お兄様と伊万里様が女子の集団に声をかけられた。
 どうやら瑞鸞の高等科生らしい。創立記念日だから私達と同じく遊びに来ていたのだろう。

「まさか桃園様と吉祥院様に会えるなんて!」
「伊万里様ったら、私達が誘った時はお断りになったのに」
「あの吉祥院様、この間の弓道の試合、私見に行きましたのよ。とっても素敵でした」
「あら私だって」

 凄い。アイドル見つけたファンの子達みたいだな。
 おおはしゃぎだ。
 私と愛羅様はそっと少し離れて、おとなしくチュロスを食べながら、成り行きを見守っていた。
 もしかして、この中にもお兄様にバレンタインのチョコレートを渡した人達がいるのかしら?
 毎年義理を含めて2、30個くらいはもらって帰ってくるよね。
 あ、お兄様にうっとりしている女の子達もいる。

 よし。小姑レーダースイッチON!

「桃園様、吉祥院様、今日はおふたりで?」
「いやいや、まさか。貴輝の妹ちゃんとその先輩と一緒だよ」
「妹、様?」

 今頃気づきましたか。

「ごきげんよう、吉祥院貴輝の妹、麗華です」
「中等科2年の水無月愛羅と申します。よろしくお願いいたします先輩方」

 食べかけのチュロス片手じゃ様にならないが、にっこり笑って挨拶をする。

「まぁっ!吉祥院様の妹様?!初めまして!」

 それぞれが自己紹介してくださった。
 しかし、お兄様の妹でしかも小学生の私には普通に笑いかけてくるが、愛羅様を見る目が微妙にきつい。
 ライバル認定ですか。
 でも愛羅様の敵は、私の敵だ!
 私の小姑レーダーはピコピコ反応してますよ。
 大体、妹の先輩だって紹介されているのに、その値踏みするような視線は失礼じゃないか。まぁ美人で凛とした佇まいの愛羅様の姿に、少しひるんでるみたいだけど。
 何事にも動じない愛羅様、素敵です。
 あれ?そんな愛羅様を見て頬を染めているお姉さまもいる。これは私のライバル?!

「ねぇ桃園様、私達も一緒に回ってもよろしいでしょ?」
「そうね、せっかくですもの。ね、桃園様、吉祥院様」
「吉祥院様はお休みの日に妹様と一緒にお出かけなんて、本当にお優しいのね」
「吉祥院様、もうお食事はなさった?よかったらぜひ一緒に」
「伊万里様」

「悪いけど」

 お兄様が優しく微笑んだ。

「今日は妹とそのお友達の愛羅さんと、一緒に遊ぶ約束をしているんだ。申し訳ないけど、またの機会にしてくれるかな」
「え、でも…」
「妹をないがしろにして嫌われたくないんだ。ごめんね」

 お兄様は困ったように微笑んで言った。
 彼女達はその顔を見て、それ以上強く押す事が出来なくなったようだ。

「俺も妹ちゃんに嫌われたくな~い。ごめんね。また明日学校でね」
「…わかりました。残念ですけど」

 伊万里様もお兄様に便乗した。お兄様の私への愛は疑っていませんが、伊万里様は完全に私をダシに使いましたね?
 まぁチュロスをおごってくれたので許しますけど。
 女の子達は、断っても後ろからこっそりつけてくるかなと思ったけど、きちんと礼儀は守ってくれたようだ。
 私達は再び、楽しい遊園地を満喫しはじめた。


 夜は小学生の私と中学生の愛羅様がいるので、早めに帰る事になった。
 それぞれ家の車が迎えに来たので、現地解散。
 私もお兄様と一緒に吉祥院家の車に乗り込んだ。

「麗華、せっかくだから外で食事して帰ろうか」
「えぇっ!」

 お兄様とふたりで外食!
 ぜひ行きたい!

「行きたいです!」
「うん。じゃあ麗華は何が食べたい?」

 私が食べたいもの?
 う~ん。どうせなら庶民的なシンプルな物が食べたい。私は庶民の味に飢えているのだ。
 お兄様だったら許してくれるかも。
 カレーライス、豚の生姜焼き、焼き魚定食、ラーメン…。

「オムライス!」

 町の定食屋さんのオムライス、あれはおいしいんだ。
 何度かお昼に吉祥院家の料理人さんが作ってくれたこともあるけど、お店のオムライスは別格だよね。

「オムライスね、わかった」

 そして連れて行かれたのは丸の内にある、定食屋さんとはほど遠い夜景の見える高級レストランだった。
 テーブルには天井からピンスポットが当たっていて、やたらムーディー。
 あれ?私が思い描いていた感じと違う。
 メニューに書いてあったオムライスの値段は、元庶民の私からは考えられない金額だった。
 た、高い…。庶民の食べ物のはずなのに。
 運ばれてきたオムライスは、ピンスポットで黄金色の卵とデミグラスソースが光輝いていた。思わずオムライス様と呼びたくなった。
 味は全く庶民的ではなかったけど、ほっぺが落ちそうなくらいおいしかったので、これもまた良し。

「そういえば、今日はお兄様と伊万里様はモテモテでしたわねぇ」

 そう言うと、お兄様はちょっと嫌な顔をした。

「お兄様はともかく、伊万里様は子供の私達と遊ぶより、あの方たちと遊んだほうが楽しかったのではないかしら?」
「……伊万里は彼女いるから」
「ええっ!」

 初耳だ!

「聞いてませんわ!」
「そりゃ言ってないからね」
「だったらなおさら、せっかくのお休みに私達と出かけてて良かったんですの?」
「学校が違うからね」

 なんと!
 伊万里様に彼女がいたとは!そりゃあれだけかっこ良くて優しければ、いても不思議じゃないけど。
 愛羅様は遊園地で伊万里様と仲良く話していたけど、よもや好きになったりしてないよね?

 帰りの車の中で、早速愛羅様に今日のお礼のメールを送った。
 そこに「さっきお兄様から伊万里様には彼女がいると聞いてびっくりしてしまいました!どんな方なのでしょうね?あ、これは私と愛羅様だけの秘密にしておいてくださいね」と先手を打っておいた。
 たぶんないだろうとは思うけど、万が一愛羅様が伊万里様を好きになってしまって、「実は伊万里様が好きなの」なんてカミングアウトされたら困るので。
 大好きな愛羅様と気まずくなる展開だけは避けたい。

 その後きた愛羅様からのメールには、「彼女がいる話、私も今日伊万里様から聞いたわよ。なれそめも聞いたけど知りたい?」という、完全に私の取り越し苦労だった内容が書かれていた。
 なにやってんだ、私。

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