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謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
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 円城邸は、兄弟のイメージ通りの白亜の洋館でした。
 荷物が多いので、玄関までお兄様に付き添ってもらう。出迎えてくれたのは円城だった。

「いらっしゃい、吉祥院さん」
「ごきげんよう、円城様」
「こんにちは、秀介君。今日は妹をよろしく」
「こちらこそ」

 お兄様と微笑みあった円城が、お兄様が持っていた荷物を代わりに受け取ると、私は家に招き入れられた。お兄様は「失礼のないようにね」と私に言って、そのまま帰って行った。
 今日の円城は、ラフなグレーのカーディガン姿だった。普段見る姿はほぼ制服姿だし、私服もパーティーでのフォーマル姿くらいしか見たことがなかったから、こういう普段着の姿を見るとちょっとドキッとしてしまう乙女心。くそーっ、元がいいと何を着ても似合うな~っ。

「今日の吉祥院さんの服、真っ白で可愛いね。うさぎさんみたいだよ」
「うぇっ?!」

 驚きすぎて、変な声出た!心臓、飛び跳ねた!
 う、うさぎさんだと?!女の子にそんなことを笑顔でさらっと言えちゃう、このスキル。もしや円城はカサノヴァ村の仮村民?!いやさ正式村民?!伊万里様の後継者ではあるまいか?!
 警戒警報発令!警戒警報発令!

「あ、会場はこっちね」

 私の内心の動揺などおかまいなしに、円城は家を案内した。悔しい、なにかこっそり報復ができまいか。円城の背中に抜け毛を探す。抜けた髪の毛を他人に捨てられると失恋するというジンクスだ。しかし身だしなみに気をつけているらしく、収穫はなかった。ちっ。
 ふたりで歩いていると、廊下にまで子供達の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

「雪野の友達がもう来ているから、賑やかなんだ」
「私、遅れてしまいました?お待たせしてしまったかしら」
「そんなことないよ。開始時間はまだだしね。それに雅哉も遅れてくるって連絡があったし」
「鏑木様もいらっしゃるのですか?」
「うん」

 へぇ~。親友の小さな弟の誕生日に、律儀にお祝いにやってくるんだ。でもまぁ、確かに鏑木は、雪野君を可愛がっているもんね。
 ドアを開けると、子供たちがわいわいと騒いでいた。

「雪野。吉祥院さんが来てくれたよ」

 友達に囲まれて楽しそうにしていた雪野君が、兄の言葉に振り向いて眩しい笑顔を見せてくれた。

「麗華お姉さん!」
「お誕生日おめでとう、雪野君」

 私は雪野君に手を振った。するとお手伝いさん達に指示を出していた円城のお母さんも私に気が付いて、こちらにやってきた。

「いらっしゃい、麗華さん」
「ごきげんよう。本日はお招きいただいてありがとうございます」

 儚げ美人の円城夫人は、笑うと雪野君に似ている。

「こちらこそ雪野のためにわざわざありがとう」
「あのこれ、雪野君とお約束した手料理なんですけれども…」
「まぁ、どうもありがとう。聞いているわ、雪野が我がままを言ったんですってね。ごめんなさいね、麗華さん」
「そんな。大した物ではありませんの」
「ではこちらでお預かりさせていただこうかしら?それとも雪野に渡したほうがいいかしらね。あの子が楽しみにしていたから」

 私達が話していると、雪野君が身を乗り出して「こっち!麗華お姉さんは、こっちの席ね!」と手招きをした。なんだか今日は雪野君、いつもより元気だな。可愛い。

「あの子ったら、もう。ごめんなさい、麗華さん。雪野の我がままに付き合ってもらえる?」
「ふふっ、はい」

 円城夫人は苦笑いして私を送り出し、私はそのまま渡しそびれた風呂敷包みと共に、雪野君の近くの席に座らされた。ニコニコ楽しそう、雪野君。
 円城は小さなお客さんを出迎えるために部屋を出て行った。
 そのすぐ後に招待された子供が何人か着いて、鏑木以外の全員が揃ったので、いよいよ雪野君の誕生日パーティーが始まった。
 部屋を暗くし、手拍子に乗せてみんなが歌うバースデーソングに合わせ、7本のロウソクの立った2段重ねの豪華なバースデーケーキが、雪野君の前に運ばれてきた。
 歌が終わったと同時に、雪野君がフーッとろうそくの火を吹き消すと、全員が拍手喝采!

「雪野君、お誕生日おめでとう!」
「おめでとう、雪野君!」

 雪野君は頬を上気させ「ありがとう」と嬉しそうに笑った。
 みんなが雪野君に誕生日のプレゼントを渡す間に、ケーキが切り分けられ各自の席に配られた。私も雪野君にプレゼントを渡す。

「ありがとう、麗華お姉さん!」
「雪野君、誕生日おめでとう」
「なんだろう、大きいですね?」
「あとで開けて見てね」

 喜んでくれるといいんだけどなぁ。子供の、しかも男の子のプレゼントって全然思い浮かばなかった。
 プレゼントはケーキや料理を食べながら、随時開けることになった。テーブルには子供達が好きそうなメニューがいっぱい。

「麗華さん、作ってきてくださった手料理を、そちらに出していただいてよろしい?」
「あ、はい」

 うっ、とうとうこの時がきたか。
 円城夫人に言われ、私が風呂敷を開いてテーブルに重箱を出すと、雪野君がぱあっと笑顔になった。

「わぁっ!本当に作ってきてくれたんですね!」
「雪ちゃん、麗華さんにお礼は?」
「ありがとう、麗華お姉さん!」
「どういたしまして。雪野君のお口に合うといいけれど…」

 そう言って私は若干緊張しながら、子供達の注目の中、重箱の蓋を開けた。

「きれい!ちらし寿司だ!」
「これ、麗華お姉様が作ったの?私も食べてみたいわ!」
「おいしそう」

 おお、一応見た目は合格みたいだ。良かった。この刻み海苔をまぶしたのは私だよ。

「麗華さんはよくお家でもお料理をしていると、麗華さんのお母様が話していらしたけど、本当にお上手なのね」
「いえ、まだ勉強中で、お恥ずかしいですわ」

 どうやらお母様も外で私の話を盛っているらしい。だからあんなに手料理を持っていくことを心配していたのか。いろんなことがバレるから。夫婦そろってあの人達は全く…。

「ではせっかくですから、麗華さんの作ってきてくださったお寿司をいただきましょうか、雪ちゃん」
「うん」

 円城夫人がお皿にちらし寿司を取り分けて雪野君に渡した。お味はどうでしょう…。どきどきするーっ。
 雪野君がぱくりと一口食べた。

「おいしい!麗華お姉さん、とってもおいしいです!」

 天使が微笑んだ。良かったーー!
 円城夫人や麻央ちゃん達も、おいしいおいしいと食べてくれた。耀美さん、やりましたよ!
 あまり大きくないお重に詰めてきたので、ちらし寿司はあっという間になくなった。あー、心の底からホッとした!

「うん、本当においしかった。吉祥院さん、料理上手なんだ」

 円城もちゃんと完食してくれた。円城は鏑木と違って他人の手作り料理が平気なんだな。あ、それともムリして食べた?

「ムリしてないから」

 ぎゃっ!心を読まれた!やっぱり円城って、怖いっ!

「いや、全部顔に出てるから」

 そうなの?って、また読まれた!
 これ以上心を読まれると怖いので、私は円城に背を向けて、ケーキをもそもそと食べた。

「麗華お姉様はお料理も上手なのねぇ」

 麻央ちゃんが尊敬の目で見てきた。雪野君達も「本当にそうだねぇ」と大絶賛。ううっ、純粋な子供達に対して罪悪感…。

「本当は、私のお料理の先生に手伝ってもらって、一緒に作ったの」

 罪の意識に苛まれ、あっけなくカミングアウト。

「そうなのですか?でも麗華お姉様が作ったことには変わりないでしょう?」
「まぁそうですけど。人に手伝ってもらったのにあまり絶賛されると、手柄を独り占めしているようで、心が痛みますわ」

 ちゃんと手伝ったけど。盛り付けは一緒にやったけど。でもほぼ耀美さんの作品といっても過言ではない。

「ふふっ、麗華さんは正直なかたなのね。どちらの先生に習っていらっしゃるの?」

 円城夫人に聞かれたので、私は「成冨家の耀美さんです」と答えた。

「耀美さんはお料理がご趣味で、私は個人的に教えていただいているんです」
「そうでしたの。確か成冨家のお嬢様はまだ学生でしたかしら?」
「はい」

 麻央ちゃんが私もお料理を習ってみたいなぁと言った。麻央ちゃんはお母さんが料理上手なんだから、教えてもらえばいいと思うな。
 ケーキを食べ終わった雪野君が、友達に囲まれながらもらったプレゼントを開け始めた。素敵なプレゼントに喜ぶ雪野君が、次に手に取ったのは私のプレゼントだった。
 大丈夫かなぁ…。

「なんだろう」
「大きいね」
「早く開けて、雪野君」
「うん。わっ、なにこれ?」

 誕生日プレゼントは喘息持ちの雪野君の体調を考え、加湿器にした。しかしただの加湿器ではない。透明の球体で中が二重になっており、外側には水と青い油が入って海の生物のミニチュアがぷかぷか浮いている。そこにはイルカやくじらやクマノミ、そして沖縄で雪野君が一番気に入っていたマナティなども泳いでいて、インテリアのオブジェとしてとっても可愛い。加湿器型の水族館オブジェ。正直言って、加湿器としての威力は二の次だ。

「可愛い!イルカが泳いでる」
「雪野君の好きなマナティもいるのよ?」
「えっ、どこどこ?」

 雪野君がマナティを探して喜んでくれたので、気を良くしてもうひとつの箱も渡す。

「雪野君、こっちも開けてみて。おまけのプレゼント」
「えっ、これも?」

 雪野君は私が渡したもうひとつのプレゼントを開けると、「んん?」と言って、きょとんとした顔をした。

「これ、なあに?」

 中身は初心者向けから難易度の高い物までいくつも入った知恵の輪だ。

「知恵の輪。知ってる?このくっついている輪っかを、頭を使って外すの」
「へえっ!」

 暇つぶしには最適なのです。雪野君は体が弱くて家にいることが多いから、ひとりで遊べるものがあると楽しいかな~って思って。私も小さい頃からひとりでジグゾーパズルをやったりするのが好きだったからさ。
 雪野君や子供達が興味を持って、知恵の輪に挑戦し始めた。

「んーっ、難しいっ」
「全然できないよ」
「わぁっ、雪野君のお兄様が簡単に解いてくれたわ!」

 女の子にせがまれ、円城が知恵の輪を解いて優しく手渡していた。うん、盛り上がってくれてなにより。実はジェンガとかボードゲームも持ってきたんだけど、やるかな?

 そこへ、お手伝いさんが鏑木の到着を告げた。
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