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謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
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 さあさあ、今日から私も高等科の2年生に進級だ。毎年祈ることだけど、仲のいい子と同じクラスになれるといいな~。孤立はイヤです…。そして厄介な人と同じクラスになりませんように。
 外に出ると春の嵐か、風が強かった。私は華奢で折れちゃいそうだから、風に飛ばされちゃうかもしれな~い。
 せっかく巻いた髪が乱れてしまうので、慌てて車に乗り込んだ。鏡を取り出し身だしなみチェック。クラス替え初日は、印象良くしたいからね!ニッと口角を上げてみる。エクボもしっかり出ている。オッケー。


 学院に着くとすでにクラス表を持って生徒達がわいわい盛り上がっていた。お目当ての人と同じクラスになって喜ぶ生徒、落胆して周りに慰められている生徒と、反応は様々だ。
 特に好きな男の子がいない私としては、同じクラスに仲のいい女の子がいるかどうかが一番大事。私は恋愛ぼっち村村長ではあるが、友達ぼっち村の村長になるつもりはない。
 まず私と同じクラスの女子名簿をチェックすると、同じグループの白鷺流寧(しらさぎるね)ちゃんの名前があった。よっしゃあっ!
 流寧ちゃんは去年一緒に軽井沢にも行ったことのある子で、グループ内でも仲のいい子だ。良かった、これでとりあえずクラスで孤立する憂き目は免れた。ほかにも何人か同じグループの子もいた。ひとまずホッとした。
 さて問題の男子は…と上から順番に見ていくと、委員長の名前があった。おお、委員長!久しぶりの同じクラスだね!数少ない男子の友達と一緒なのは嬉しいな。
 それ以外の男子も比較的無害な子達ばかりで、厄介な連中は別クラスだった。いやっほーう!!
 やっぱり今年の私はツイているかもしれない。一度は呪いのアイテムを受け取ってしまったせいで運気がガタ落ちしたけれど、あの例の詩集は厄除けのお札とともにきっちり風呂敷に包み、お雛様のしまってある蔵に封印した。魔をもって魔を制すだ。もし誰か欲しい人があれば、いつでもあげるぞ。
 ほかのクラスを見てみると、なんと円城と若葉ちゃんが同じクラスだった。そこに蔓花グループのナンバー2もいたりした。このクラスはなかなか大変そうだな…。近づかないようにしよ。

「麗華様!同じクラスですわよ!」

 流寧ちゃんが笑顔で私に駆け寄ってきてくれた。私達は「一緒で嬉しい」と喜びを分かち合った。そこにほかの子達も集まってきて和気藹々とクラス分けの話をしたりした。仲良しの友達もいるし、問題児もいなさそうだし、この1年は平和に過ごせそうだ。


 新しいクラスでは、当然のように委員長がクラス委員になった。女子は野々瀬さんがいるから今回はお役御免かなと期待したけれど、担任や委員長に「ぜひ」と言われ、当の野々瀬さんからも「麗華様が適任だと思います」と言われてしまったので、またもや副をやることになってしまった。最近では半分以上諦めている。問題を起こしそうな生徒もいないし、相方は気心の知れた委員長だし、まぁいいか。

「またよろしくね、吉祥院さん」

 委員長がニコニコして挨拶してくれた。いえいえ、こちらこそ。
 そして委員長はこそっと「恋愛相談にも乗ってください」と小声で言ってきた。恋愛相談か…。君もいい加減片思い歴長いよね。よし、まかせておきたまえ。私が委員長を立派な村民に育てあげようではないか!まずはあの詩集を読むことから始めようか?

「吉祥院君」

 は?吉祥院君?
 誰だ、私を君付けなどで呼ぶ人間は?──ディーテだ。

「吉祥院君、ちょっと訪ねたいんだがいいかね?」

 アフロディーテのディーテ君の頭は今日も爆発している。髪型のせいか、近くで見ると顔おっきいなー。そして個性的な外見の人は個性的なしゃべりかたをするらしい。
 そんなディーテ君とも実は同じクラスだ。無害と思ってスルーしていたけれど。

「今年の遠足でもクラスごとの余興はあるのかね?」
「余興ですか?さぁ、特に聞いてはいませんけど」
「…そうか。しかし僕のバイオリンが必要な時にはいつでも言ってくれたまえ。遠慮はいらないよ。僕のバイオリンのレベルについてこられる生徒がいなければ、独奏でいいと思う。この件について吉祥院君、君の意見を聞かせてもらいたい!」

 え、意見…?要するに、このアフロディーテはみんなの前で自慢のバイオリン演奏を披露したくてしょうがないということか?

「…まぁ、よろしいんじゃありません?」

 余興があるかわからないけれど。

「そうだろうとも!やはり僕の見込んだ通り、君は話がわかるようだ!吉祥院君、これから1年よろしく頼むよ!」
「…よろしく」

 ディーテ君は我が意を得たりと頷き、アフロを揺らして揚々と去って行った。

「なんだか、凄いね…」

 隣にいた委員長がぽつりと呟いた。ディーテ君、ここまで委員長丸無視だったけど、いいの?

「芸術家はエキセントリックな人が多いから…。去年も遠足のバスの中でずっとバイオリンを弾いていて、みんな眠れなかったらしいよ」

 そういえば私もディーテ君と同じクラスだった子から、そんな話を聞いたことがある。
 前言撤回。厄介なのがひとりいた。



 放課後、私はピヴォワーヌのサロンに行った。今日のお菓子はアップルパイだ。私はアップルパイが大好きなのだ。パイはサクサク、林檎は柔らかでおいしいよねー。
 あまりにおいしかったので、すぐに一切れ食べ終わってしまった。サロンでおかわりはまずいか。大食いだと思われてしまう。でも食べたい…。
 私が食欲と心の中で戦っていると、私を訪ねてきている子がいると知らされた。
 誰かと思えば、初等科の麻央ちゃんだった。
 プティの麻央ちゃんがピヴォワーヌのサロンにやってくるのは珍しい。年長者ばかりのサロンに来て、麻央ちゃんは少し緊張していた。

「麻央ちゃん、どうなさったの?さぁ、こちらに座って」
「はい」

 私は麻央ちゃんを自分が座っていたソファに導いた。

「なにか召し上がる?そうだわ、今日はアップルパイがあるのよ。ぜひ麻央ちゃんもどうぞ」
「え、でも…」

 麻央ちゃんはひとりで食べることに気後れしているようだ。しょうがない。

「では私も少しだけいただきますわ。そうすれば遠慮なく麻央ちゃんも食べられるでしょう?」
「はいっ、ありがとうございます。麗華お姉様」
「いいのよ、気にしないで」

 私達の前にアップルパイが運ばれてきたので、ふたりで仲良く食べた。

「麻央ちゃんが会いに来てくれて嬉しいわ。なにか私にご用があったのかしら?」
「あ、はい!あの、今度私のお誕生日パーティーがあるんです。それで、麗華様に来ていただけないかと思って…。無理ならいいんですけど」
「お誕生日パーティー?」
「はい。晴斗兄様も来てくれると言ってて、私、麗華様にも来てもらえたらなって」
「そう…」

 誕生日パーティーか…。その日の予定を確かめないとわからないけど、せっかくの可愛い麻央ちゃんの誘いだ、少しだけ顔を出すので良ければ参加しようか。

「わかりましたわ。予定を確認してお返事いたしますわね」

 麻央ちゃんは嬉しそうに笑ってくれた。可愛いなぁ。
 小さい女の子の誕生日プレゼントか…。なにがいいかな?お姉さまとしては素敵なプレゼントを選びたいものだ。

 私達はおいしいアップルパイを食べながら、和やかにおしゃべりした。

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