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BUMP OF CHICKEN メドレー〜俺☆彼女編〜
作:タンポポ



ーー午前二時、踏み切りに望遠鏡を担いでった。ベルトに結んだラジオ。雨は降らないらしい。

『やっぱ星はこの場所から見るに限るぜ』

家から少し離れた場所に、そのベストスポットはある。

誰にも邪魔されず、人通りも少ない道で、終電もなくなったこの深夜に外を出歩こうとする人などいない。

さて、それではじっくりと眺めようとするかな。

この大宇宙に輝く星達を。

ーーーーーー


俺は大学卒業後、天文学者になった。自分で言うのもなんだが、ちょっとしたエリートだ。

今年で30を迎えた俺は仕事バリバリで生き甲斐すら感じている。

今は星の研究や宇宙の神秘について迫り、本なんかも編集している。

星に興味を持ち始めたのは小学生の時だ。

小さい頃から星が大好きで、流星群が来る時なんかはもちろんのこと、星が出ている日は夕焼けが落ちる前から一番星を探していた。

ガキの頃の夏休み、自由研究の宿題のテーマを星にしたのがきっかけだった。

一等星より五等星の方が光っているかもしれない。

本にそんな記事を発見してから食らいついたものだった。

確かに地球から見たら一等星が一番光っている。

ただ、それは一等星と地球の距離が近いだけの事であり、間じかで見て光を比べてみたら、一等星より五等星の方が光っている可能性もあるのだ。

高校では科学部の部長を努め、大学はトップクラスの成績で卒業。

その後いまの職場に就いた訳だ。

ただ、今は星より興味を持った事がある。



『宇宙の端っこはどうなっているんだろう?』



考えただけで色んな想像が頭を過ぎる。

実は地球みたく、宇宙も丸くなっていて、さらに宇宙を越えるとまた何かがあるんじゃないか…?

それを越えようとしても、地球で言う所の大気圏みたいなバリアがあるのではないか…?


今の科学ではそれを証明できないがために、〈宇宙は無限〉などと言われている。

それを暴く仕事を今しているわけだが、どうにも分からない。

そんな気晴らしと言っては何だが、本職の星の動きの観測をしに、今日は来ている。

時刻はジャスト二時。この時間帯の星は良く見えるんだ。

そろそろアイツが来るはずなんだが…。

ーー二分後に君が来た。大袈裟な荷物しょってきた。

「ゴメン、元基もとき君!これ重くってさ」

『いや、大丈夫だよゆい。さぁ、ーー始めようか天体観測』

結は大学時代から俺の彼女であり、歌手を目指すフリーターだ。

時間が余っては、こうして天体観測に付き合ってくれる。

「流れ星、見れるかな?」

『ん〜…運が良ければ…な』

それにしてもコイツは何を見るつもりだ?

俺の望遠鏡は科学室から借りて来た専門の望遠鏡だと言うのに、それより少し小さいサイズ。

それだって一般人が持つ望遠鏡にしては大きすぎる。

こんな小柄な体格で良く持ってこれたもんだな。



「…うーん」

『ん?どうした?』

結は星を見ながら低い声で唸り、首を傾げていた。

「なんで星って光ってるんだろう?」

………今更ですか?

別に星自体が光っているわけではないのは、知っているだろう?

ちなみに、今見えている光だって、何光年という時間が経って地球から見えるだけであって、実際はもう今見える星は存在しないかもしれないのだ。

星はいずれ滅びるものだ。地球だって例外ではない。

星が滅びる…つまり破裂した時にブラックホールが発生する。

その名の通り、黒い穴の物体が現れ、周りの星を吸い込むと言うより、性質同士を引き寄せるのだ。

そして引き寄せられた星同士がぶつかり、ビックバンという大爆発が起こりうる。

太陽が徐々に大きくなりつつあるというのをご存知だろうか?

何億年後には、地球で人が住めないくらいの暑さになるらしい。

だから今、地球ではなく火星に住む研究をしている。

火星で氷を溶かし、湖を作る。そうすれば生物が誕生し、緑も育つ。

これなら火星に住む事ができるのだ。

ただ、これにはかなりの時間が掛かるがな。

その研究をしているのが俺の仕事。

※この研究は実際に行われています


宇宙の神秘ってのに興味を持ってもらえたかい?


「あ、流れ星!」
『マジ!?どこ!?』
「もう消えちゃった」

くそ、語ってたら見逃した…。

「もっかい見る。ほうき星はいつ見ても良いね」

ほうき星とは、流れ星が通った後に圧を弾く事で、輝いて見えるものだ。

車なんかでも、空気を切るでしょ? その切った空気が肉眼で確認できるって感じかな。


じゃあ、そろそろ俺も見るかな。



ーー見えないものを見ようとして、望遠鏡を覗き込んだ。


「何を見てるの?」

『宇宙の端っこ』

「…バカ?」

『うるせぇ』


ーー気が付けばいつだって、ひたすら何か探してる。

俺にとっては、そうする事で生を実感できるような気さえしたから。

ーー生まれたら死ねまで、ずっと探してる。

これからも、ずっと…。


「なんかさ、こんな暗い空見てると頭クラクラして来ない?」

『ずっと首あげてっからだろ』

「…星マニア」

俺は結の言葉にも冷たく言い放った。

せっかくの天体観測を邪魔されたくないからだ。

ーー見えてるものを見落として、望遠鏡を覗き込んだ。

「…雨?」

『うわ、マジかよ!』

ーー予報外れの雨に打たれて泣き出しそうな、君の震える手を握れなかった。

『…そんな泣くなよ。たかが雨じゃん』

「泣いてないよバカ!一生星見てれば良いじゃん!じゃあね!」

そう言ってサッサと荷物をまとめると、結は帰ってしまった。

…なんなんだアイツ。
何であんなに怒ってんだ?



次の日、ーーもう一度君に会おうとして、望遠鏡をまた担いで、前と同じ午前二時、踏み切りまで駆けてくよ。

『ーー始めようか、天体観測』

ーー二分後に君が来なくとも。





〜プラネタリウム〜


『…と言うわけでさ、何で彼女が怒ったか分からないんだよ』

「ハッハッハッ、そりゃ彼女も怒るだろ」

『…なんで?』

「星ばっか見てないで構ってやれよ、ホラ!」

次の日の研究ラボで、俺は同期の仕事仲間と、昨日の件について相談を聞いてもらっていた。

そして、コイツが渡してきたのは、一冊の本だった。

『プラネタリウムの作り方…?』

ーーーーーーー


確かに昨日は結に構ってやれなかったが、あれも仕事の内だ。

しかし、怒って帰ってしまった彼女を放置する程、俺はバカじゃない。

《プラネタリウムの作り方》と言う本と、そこに書いてあった必要な材料を手に、結の住むアパートへ訪れた。

『結〜!入るぞ〜!』

「…何?」

どうやらまだ機嫌は直っていないみたいだ。

『えっと…その…これ、一緒に作んないか?星…好きになるぞ?』

「うん、とりあえず入って」

ーー科学の本に書いてあった作り方の他にアレンジ。

俺の知識を使えばこんなの一瞬で作れるぜ。

「…さすがだね元基君」

『ほら、結。好きな形にココに穴を開けて』

すでに八割完成。
電球にスイッチを付け、その上に半球の紙を被せる。

後は、この紙に穴を開けるだけだが、これは結に任せようかな。

「フフ、できた」

『ふーん、夏の大三角か。季節外れだな。今は冬だぞ?』

「これがいいの!」






「元基君も何か開けてよ」

『俺か?よし、まかせな』

針を手に大きさ、形、バランスを考えながら、一個一個丁寧に穴を開けていく。

ーー実在しない穴を開けて、恥ずかしい名前つけた。

「…?これ、なんて星座?」

『便座』

「……恥ずかしいね」

スベった!?


その他にも、満遍なく穴を開け、完成、手作りプラネタリウム。

時間帯はすっかり夜なので、部屋の電気を消し、カーテンを閉める。

部屋の中は真っ暗だ。

『いいか?つけるぞ?』
「うん!」

カチッとスイッチを入れると、天井に広がるは壮大な銀世界。

「…きれい」

二人してベッドで仰向けに寝転がり、しばらく見つめていた。

『…結』

「ん?」

『昨日はゴメンな』

「別に。もう気にしてないよ」



『今から真面目な話をするから聞いてくれ。

俺より結を優先するけど、結より仕事を優先する。

って事は結より金なのか?
って言われてもそうじゃない。

もし結が死にかけて手術費が足りない〜とかなったら、多額の借金ぐらい背負える覚悟はあるから。


結局一番大切なのは、やっぱり結だよ』



「…ありがとう」





〜星のアルペジオ〜

季節は十二月。今日は恋人達が待ち侘びたクリスマスだ。

デートスポットへ行く恋人達や友達同士で集まってパーティーをやる人達。

過ごし方は様々であるが、恋人がいてこの日が嫌いと言う人はいないであろう。

今日…俺の部屋に結が来てクリスマスパーティーを二人っきりでやる。


結の為に買ったーープレゼント、何度も持ったり置いたり。

早く約束の時間になれと早まる気持ちが自分でも分かる。

ーー広げたジュースとお菓子、並べたぬいぐるみ達。飾る四畳半。


…完璧だ。文句の付けようがない。


しかし、約束の時間になっても、結は来なかった。

ーー二人分のケーキの前で頬杖ついてうたた寝さ。


〜ドンドン〜

…来た!!

俺は勢いよく玄関に駆け付た。

結は窓を開けて俺を外へ手招きしている。

『…え?ちょ…中でパーティーの準備したのに』

それでも結は無理矢理に俺を連れ出した。

でも、まるで夢のようだった。

ーーーーーーー

…え?夢………?

そこでふと目が覚めた。部屋には結の姿がなかった。

『ーー夢かい…』

ガックリと肩を落とした。

しかし、さっきまで夢見ていた事がそろそろ現実になるんだ。

『…そうだ。確か買っておいたあれを…あぁ、あったあった。』

パーティーを盛り上げようと思って用意しておいた鼻メガネをとりだした。

それを付けてテンションをあげておこうと思った。

きっと結は笑ってくれるだろう。

〜クスクス〜

そう、そんな感じに…って、え!?

今笑い声が聞こえたぞ。

部屋には俺しかいない…誰だ?

〜クスクス〜

笑っていたのはぬいぐるみ達だった。…ような気がした。

フッ、ぬいぐるみの声が聞こえる程、俺の気は動転しているのか。

もう夜も遅くなってきたというのにまだ結は来ない。

急に不安になって電話をかけてみたが繋がらなかった。

『ーーどうして電話も出ないんだ?』

ーー髪も染めたんだよ…?


急な仕事でも入ったのだろうか?

そこで留守番電話にメッセージを残す事にした。

〜トゥルルル…ガチャ〜

『ーーもしもし、パーティーの準備できたよ。もうこっち向かってる?留守番聞いたら電話下さい』

それから結構な時間が経ったのに連絡は来なかった。そこでもう一度電話をかけてみる。


〜トゥルルル…ガチャ〜

『ーーもしもし、今こっち結構盛り上がって来た☆…結構ね、まぁ…まだ一人なんだけどぉ…この留守番聞いたら電話ください。…じゃあね』


〜トゥルルル…ガチャ〜

『ーーもしもし、今もう大体飲み物…なんか俺一人で飲んじゃったから…なんかもし飲みたいのあったら買ってきて。じゃあね』


〜トゥルルル…ガチャ〜

『ーーお〜い…もしもし?え〜と…何回か電話したんだけど……ぇっと、今日ね、大体何時でも時間大丈夫だから…うん、いつでも電話して下さい』


〜トゥルルル…ガチャ〜

『ーーもしもし!早く来た方が良いよこれ!!俺が編み出した動きマジスゲェこれ…超ウケ…面白い。』


…と、まぁこんな感じの留守番電話を入れておいたが連絡は来なかった。

しびれを切らした俺はーー君へのプレゼント、自分で開けた。


ーー聖なる夜に尻を叩いて、自分でも驚く様なダンス。こんな動きは見た事ないぜ。踊る鼻眼鏡。


結…どうしちまったんだよぉ〜…。





〜彼女と星の椅子〜



ーーテレビの前で彼女は一人。椅子に座って煙草に火を点けた。


「フン、全く。やってらんないわよ」


ーーテレビの中、歌うスターを見て、煙と共に皮肉を吐いてる。

「フー…私だって、このくらいの歌唱力は…」

ーー本当はスターになりたい君が、何もできず椅子に座ってる。

「煙草…ノドに悪いから…いや、もう関係ないか。所詮、私が歌手になるなんてバカげてたんだ…」


元基君との天体観測中。私はふと気付いてしまった。

仕事に熱心な彼が羨ましい。

仕事に生き甲斐を感じる彼みたいになりたい。


所詮、私は歌手を夢見るフリーター。

収入だってたいしてならないし、歌手になるなんて程遠い。

私には…才能がない。

努力だけじゃ補えない。


そんなイライラから、元基君に当たってしまった。

しかし、彼は次の日には、私を元気付けようと、一緒にプラネタリウムを作ろうと言うのだ。

私は自分がいかに小さい人間かを悟った。

ーー散々、人に当たったって、自分が惨めになるだけさ。…こんな損な事はないよ?

今日はクリスマスイブ。
元基君と約束している。

だが、彼に合わす顔がない。

たくさんの留守番電話。
その声は私の耳にも届いている。


ゴメンなさい、元基君。


私はあなたのようにはなれません。

歌手になれない私に

もはや魅力もなくなるでしょう。


「……サヨウナラ」



彼女はスターになったよ。

夜空に輝く



本物の星に。






〜Stage of the ground〜


『ウゥ…結〜』

「もう飲むのは辞めろよ!体に悪いって!」

『なんで…バカじゃねぇのかアイツは!何死んでんだよ!』

「それは気の毒だと思うけどさ、だからってお前、科学者も辞めて毎日酒飲んでたらダメだって!」


うるせぇ、うるせぇ。

お前らに俺の何が分かるって言うんだよ。

最愛の人を亡くし、それで俺だけ平凡な暮らしを送れって言うのか?

つい最近まで、ずっと隣に居たじゃねぇかよ。

弱音なんか吐かない奴だから、何でも器用に熟す奴だったから、歌手にだってなれるって…。

だから俺だって安心してたのに。

現実は、まるで逆。

弱音を吐かないから溜め込んで、それがプレッシャーとなり、自分を追い詰める。

…なんの為に俺がいるんだよ。

その弱音を聞くのが俺の役目じゃねぇのかよ…。



結の死から半年、うなだれる様な暑さの中、俺は昼間っから飲んでいた。

生きる希望を失い、途方に暮れる日々。

それでも、俺が科学者を辞め半年も経った今でも、心配してくれる奴はいる。

なのに俺ときたら、そんな良い奴にも冷たい態度。


…最悪だよ、俺。

ーー飛ぼうとしたって、羽なんかないって、知ってしまった夏の日。

じゃあどうすれば良い!?

これから俺は何をすればいいって言うんだよ。


「割り切れよ」

同期の仲間がそう言った。

『だってよ…』

「じゃあいつまでもそこで止まってるか?宇宙の神秘を説き明かすんじゃないのか?いい加減、戻ってこいよ、みんな待ってるぞ」


『………』

「お前、前にこんな事言ってたよな?《女は星の数だけいる。その中から、結を選んだ》って。人を選んだ奴ってゆうのは、誰かに必要とされているんだよ」


『…………』


「頼む、俺達だけじゃ知識が足りない。協力してくれ」

『…じゃあな』

「おい!元基!!…ったく」



俺は必要とされているのか。

結、俺はどうすれば良い?





満天の空に輝く無数の星。

そう、このどこかに結がいるんだよな。

今日は夏の大三角が、一段と輝いてるな。

プラネタリウムにアイツが開けた星座は、これだったな。

ーー古い夢を一つ犠牲にして、大地に立ってるって気付いた日。


俺はまだ、そっちには行けそうにねぇや。


結はきっとーー夜空の応援席で見てる。


宇宙の謎、暴いてやろうじゃんか。


気が付くと、ラボに駆け付ける俺がいた。

「元基…おかえり」


『ただいま』



ーー360°全て道なんだ。


読んでいただき、ありがとうございます。なんか星の事とかで間違っている所もあると思うので、その時は連絡下さい。すぐに訂正いたします。













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