アイヒェンドルフ、eichendorff あるいは森とさすらい。 研究序説
アイヒェンドルフの世界は、恐らくそんな単語で言い表される世界であろう。
清澄な世界、ホフマンの狂気幻想の夜の世界から、アイヒェンドルフの世界に来るとなぜかほっとする。
明るい森があり小高い丘からの眺めは彼方まで見晴るかせ、遠くでは狐狩りのホルンが鳴っている。
和えかな予感があり、過去は遠く彼方に郷愁のままに佇んでいる。
憧憬は抑えがたく心を支配して遥かの、ユートピアに羽ばたく。
森の中を馬でギャロップする貴族の青年がおり、彼らの談笑が聞こえる。
彼方の古城には、貴婦人がいて彼らを待っている、貴族に従う従者の美少年は実は、故あって男装している美少女なのである。
城での、サロンにはさすらいの吟遊詩人がいて哀愁のメロディを奏でてくれる。
アイヒェンドルフに、いささかの狂気はないし、たとえそのような場面を描いても、至って清澄である。
これは性格的なものもあろう。彼のことをドイツ人は、「森と放浪の詩人」という。まさにその通りであろう。
アイヒェンドルフに
とっては、もっと、優しい、清涼な世界である、
森のさまよいをこのんで描いたさすらいと郷愁の詩人。
月光さんざめく静やかな森を白馬で散策する。そこになんら魔的なものはないし、森から森へ抜けて、
早足でギャロップする貴公子たちに、狂的なものもない。
狐狩りの角笛がかなたからこだまし、すずやかな風が森から吹き渡る。
アイヒェンドルフの自然・森とはそういうものであり続けたといえるだろう。
主な著作リスト(詩集は除く)
予感と現在 長編 ahnung und gegenbald 青春小説。邦訳題名(フリードリッヒの遍歴)
ゲーテの「ウイルヘルムマイスター」をお手本に、若きアイヒェンドルフが描いた
青春と彷徨と、郷愁の長編小説、いたるところに長詩がちりばめられてまるで
詩小説、、歌物語風に仕上がっている。
秋のまどわし 短編 永遠の謎である秋の精が青年を惑わして拉致し去る。
黄金色の秋が森の妖魔となって青年騎士を誘惑し
惑わせる。
デュランデ城 短編 古城にまつわる悲恋話。
大理石像 短編 ビーナス伝説、石造のビーナスが青年を誘惑し惑わせる。
誘拐 短編 中世の古城を舞台の大メロドラマです。
幸運の騎士 中編 主人公ズッピウスと友人クラリネットの運命は?
騎士の時代を舞台の青春小説。
詩人とその仲間 長編 「予感と現在」のその後?を描く,はたして詩人達の運命は?
のらくらものの生活より 中篇 極楽暮らしの主人公をおとなの童話として描く。
古い邦訳では「楽しき放浪児」となっています。