挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼が「本体」と呼ばれる理由

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

82/348

会場入りと三人娘

 おやつに作ったワッフルを食べ、ようやく本来の目的だった勉強会を行い、日が暮れる前に解散。
 実質半分以上はゲームに関する雑談タイムだったが、テスト範囲の勉強は大体終わったので良しとしておく。
 洗濯物を忘れずに取り込んだ後、夕飯の用意をしていたところで沢山の荷物を持った母さんと理世が帰宅。
 袋を見るに大量に服を買い込んだ――わけではなく、どうやら帰りにスーパーに寄って食材の買い出しをしてきてくれたようだった。ありがたい。
 調理を続ける俺の横で、二人が袋から食材を取り出して冷蔵庫にしまっていく。

「亘ー。いい匂いしてるけど夕飯のメニューは?」
「あー、筑前煮、焼き鯖、ほうれん草のおひたし、なめこの味噌汁……とかそんな感じ。今日は米食べてないから、和食にした」
「あら、良いわね。お昼がちょっと重かったのよねぇ」
「そうなの? 二人は昼、何食べてきたの?」
「ファストフードです。ハンバーガーショップで食べました」
「へ? なんで?」

 俺は思わず手を止めて二人の方を向いた。
 外食ならもっと良い店で食べてくればいいのに。
 時間が無かったのか? それとも店が混んでいた?
 と思っていたら、二人とも敢えて行ったのだと言う。

「亘が健康に良いものばっかり作ってくれるから、たまにああいうチープなのが食べたくなるのよ。ね、理世ちゃん」
「ええ。つい、ふらっと立ち寄ってしまいまして」
「ふーん。で、どうだった?」

 俺がそう聞くと、二人は顔を見合わせて曖昧な笑みを浮かべた。

「……今度、ハンバーガーバンを買ってきて家で挟みましょうね」
「そうですね。中身が兄さんのハンバーグなら、美味しく出来上がりそうです」
「駄目じゃん……」

 この二人、割と頻繁に俺の理解を超えた動きをするんだよな。
 結局、何のために行ったのか良く分からない話になってしまっている。
 というか、どうせならバンズも家で焼けばいい。
 折角ガスオーブンがあるんだし、使わないと勿体ないじゃないか。

「まあいいや。取り敢えず夕食にしよう。ほら、運んだ運んだ」
「はい」
「はーい」



 夕食が終わった後は食器の片付け、明日の料理の仕込みを済ませてから風呂へ。
 やるべきことが全て終わったら、いよいよトーナメントの決勝ブロックだ。
 時間に余裕もあるし、事前に公式サイトにログインして自分への全額ベットも済ませてあるので……。

「んじゃー、行くかぁ」

 ストレッチをした後で、VRギアを着けてベッドに横になった。



「おおう、コロッセオのサイズがデカくなっとる……」

 グループトーナメントは全て同じ会場のコピペだったのだが、どうやら決勝ブロックの物は一味違うようだ。
 ログインしてサーラから会場に転移すると――そこは倍近いサイズになったコロッセオの内部だった。
 薄っすら見える外の景色はグループトーナメントの時と同じ気がするんだが、どういう辻褄の合わせ方をしているのだろう?
 異空間に並列に存在している……とか?
 分からないが、そんな巨大な会場には既にかなりの数のプレイヤーが押し掛けている。

「あ、本体さんだ」
「本当だ。でも遠隔兵器の勇者ちゃんが居ないぞ?」
「後から来るんじゃない? ――うわっ、こっち見た!」
「気を付けろよ! 目が合ったらお前も遠隔兵器にされちまうぞ!」

 するか! と聞こえてきた会話に全力で突っ込みを入れたい気持ちを抑え、どうにか平静を保つ。我慢、我慢だ。
 にしても思った以上に本体呼びが定着しているな……隣にユーミルが居ないので注目度はほどほどで済んでいるが、なるべく目立たないように静かに移動を開始する。
 それはそれとして、インベントリなりメニューなりを開くと見える所持金0の数字が物悲しい……。
 というのも御丁寧に一の位まで賭けることが可能だったので、未祐と秀平の監視の元、キッチリと全財産約30万ゴールドを余さず入力する羽目になった。
 最終的な俺達の倍率は最下位のまま更に上がって50倍になったので、当たれば1500万Gもの大金を得られるわけだが。

「そう上手く行くとは思えないしな……」
「「だーれだ?」」
「!?」

 不意に誰かの手によって視界が暗闇に閉ざされる。
 聞こえた声は女性のものが二人分、しかし方向からして俺の目を覆っている主の者ではない。
 柔らかな感触からして、この手も女性の物だと思うのだが――うぇぇっ!?
 何か、手だけじゃなく背中にも柔らかくて重量感のある物体が押し付けられているんだが!?
 三人組、女の子、そしてこの、この……あっ、分かった。

「――声を出したのはリコリスちゃんとサイネリアちゃん。俺の目を抑えてるのはシエスタちゃん……かな? どうだ!」
「おー、先輩正解ー。お久しぶりでーす」
「お久しぶりです! 良く分かりましたね!」
「こんばんは。今夜はお招きいただき、ありがとうございます」

 くりくりした目で元気の良いリコリスちゃん、礼儀正しい優等生気質のサイネリアちゃん、そして眠そうなシエスタちゃんの三人が俺にぺこりとお辞儀をした。
 普通に登場して欲しかったが、中学生らしく微笑ましい部類の悪戯なので咎めはすまい。
 サイネリアちゃんの招かれた、という言葉には理由があり……。

「ようこそ。じゃあ折角だから、一緒に席に移動しようか」

 決勝トーナメント出場者は最前列の席がゲーム側から用意してあり、一組につき十人までフレンドを呼んで一緒に並んで座ることができる。
 俺達の場合はリィズ、セレーネさん、トビ、そして新たにフレンドになったミツヨシさんを呼んで四人なので枠が余る。
 そこでユーミルとも共通のフレンドであるこの子達を招いたわけだが、ちゃんと応援に来てくれたようで嬉しい。

「ところで先輩……さっき私の胸の感触で誰なのか判別しませんでした? 気のせい?」

 ……って、公衆の面前で急に何言ってんだこの子は。
 確かにしたけども。したけども! 
 つい今しがたも、昼間見た未祐の胸と比べちゃったけども!

「……そうだって言っても違うって言ってもからかう気だろうから、絶対答えない。それと、前にも注意したと思うけど軽々しく異性にそういうことをしない、言わない。危ないから」
「えー、けちー。でも、私も先輩にしかそういうことしないって前に言いましたよ?」
「ふおお……ハインド先輩、クールな対応です! 大人っぽいです!」
「本当に。シーがこんなに簡単にあしらわれるのも珍しいです」

 それ、多分だけど君達の同級生男子が比較対象だろう……?
 中学生男子と比べて大人っぽいと言われても、微妙な気分にしかならないのだが。
 これでも内心は物凄く動揺しているから、それほど変わらないように思えるし。

「というかむしろ先輩、言動がちょっとオッサンっぽ――」
「あ゛あ゛?」
「――嘘ですごめんなさい」
「シーちゃんが謝った!? 担任の先生にも、一度も謝ったことないのに!?」
「凄い迫力……あ、わ、私はお母さんっぽいと思いましたよ! だから大丈夫です! はい!」

 サイネリアちゃん、それフォローになってない。
 しかしオッサンって……人が気にしていることを……。
 こうやって隙あらば悪戯なことばかりしてくるシエスタちゃんは、実際かなりの問題児だと思う。
 リコリスちゃんとサイネリアちゃんによると、それでいて勉強の成績は非常に良いのだそうな。
 中学校の先生方の苦労が偲ばれる……。
 成績が良くて態度が不真面目とか、手がつけられん生徒だろうに。

「そういえば君達は、PvPは一切やらない感じなの? リコリスちゃんが前衛なら、どっちと組んでもバランス良いと思うんだけど」
「いえ、私とリコが予選に出たんですが……」
「へたっぴなので、アローレインを撃つ前に負けちゃってばっかりで。予選落ちですー」
「私は二人の成長を昼寝しつつ見守っていました。むふー」

 そう言ってシエスタちゃんは眠そうな顔のまま親指を立てた。
 それは何もしていないに等しいんじゃないか?

「リプレイ見てアドバイスくらいしてあげなって」
「シーの助言は的確なんですけど、気が向いた時しかしてくれなくて」
「シーちゃん酷いですよね? ね?」
「酷いというか、君達も大概変わった関係だよね……」

 見た感じ三人組というよりは二人プラス一人なのだが、不思議とそれで付き合いが成り立っているように思える。
 リコリスちゃんとサイネリアちゃんの二人が主に行動して、シエスタちゃんはたまに口出ししたり気紛れに動くだけという。
 とはいえ、それで仲が良いのだから外野が言うことは何も無いのだが。
 そこまで話したところで最前列に着いたので、話の続きは席に座ってからということになった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ