挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼が「本体」と呼ばれる理由

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

80/237

決勝ブロックに向けて

 二人が出掛けた後は、洗濯物を干して家の掃除に移る。
 時間があるので全体的な掃除をした後、床にワックスを掛けておく。
 続けて二階から一階へ向かって順番に窓を磨き上げていく。
 最後に庭に出て一番大きなリビングの窓を磨くと、光が反射して自分の姿が映るくらいの状態になった。
 うむ、美しい……達成感に思わず笑みがこぼれる。

「――ふふふ」
「おお、亘が一人で笑っている……不気味な……」
「不気味とはなんだ! ほっとけ!」

 ガラスに長い黒髪の女が映り込んだのを見て、俺は振り返りつつ叫んだ。
 すると塀の向こうから未祐がこちらを覗き込んでいる。
 未祐が来たってことは、もう昼近いのか?
 つい夢中になって長く作業をし続けてしまったようだ。
 秀平はまだ来ていないが……おっ、良いタイミングで道の向こうから人影が。

「オッスー、二人とも。来たよー……」
「ああ、秀平――ってお前どうした!? 目の下にでっかい隈が!」
「うむ、確かに酷い顔をしているな……」
「あ、これ? ……取り敢えず上がってもいい?」

 妙にくだびれた状態の秀平共々、二人を家に上げた。



「つまり、なんだ。俺達に負けたのが悔しくて、眠れなくなったから――」
「何度もあの試合のリプレイを見た後――というか、ここまでは自然な流れとして分かるのだが」
「うん。どうしてその後、他会場の試合とか掲示板まで見始めちゃうかな……」

 話を纏めると、どうやらそれで完徹したらしい。
 昼食を用意している俺達をよそに、事情を話し終えた秀平はソファでぐったりしている。

「……折角だし、集めた有用な情報は全部教えるから二人の大会攻略に役立ててよ。そうすれば、俺の徹夜も意味があるものに変わるってもんさ……うふふ……」
「お前、ちょっとおかしな状態になってるぞ? 大丈夫か?」
「徹夜明けの人間だからなぁ。放っておくしかあるまい、亘……」

 取り敢えず昼食を済ませてしまおう。
 これで皿を並べ終わったので、秀平を呼んで三人でテーブルにつく。
 今日の昼食のメニューはサーモンのクリームパスタだ。
 俺と秀平は普通に一人前、そして未祐の分だけ……

「うんまーい! ズルズルズル……」
「パスタをすするな。ちゃんとフォークに巻け」
「見ているだけでお腹一杯になるね……いや、そうは言っても自分の分は食べるって! 未祐っち、がっつき過ぎ!」

 大盛りの三人前である。
 それを未祐はぺろりと平らげると、食後のウーロン茶を飲んでご満悦だ。
 いつも思うのだが食べた分の栄養はどこに行っているのだろう?
 何故これだけ大食いで全く太らないのか、これが分からない。
 その後秀平は満腹で眠くなったのか、座ったまま先程以上にフラフラし出した。

「秀平、無理せずに少しだけ寝たらどうだ? ソファ使って良いから。タオルケットも貸すし」
「ありがとう。でも、今から寝たら夜眠れなくなりそうで……」
「じゃあ短時間――十五分だけ眠ると良いぞ。先にコーヒー飲んどけ」

 そうする、と言って秀平は俺が出したコーヒーを素直に飲んだ。
 しかし未祐は俺が用意したコーヒーを見て首を捻る。

「むん? 亘、カフェインを摂ったら眠れなくなるのではないか?」
「吸収までに時間が掛かるから大丈夫。起きる頃に効き始めて、丁度スッキリ目覚めるらしいから」

 カフェインが血液中に吸収されるのは十五分から三十分の間のことらしい。
 だから眠り過ぎると却って疲れてしまう昼寝前には、最適なのだとか。
 秀平がソファーで横になったのを見て、俺達は二階で時間を潰すことにした。



 変換器を噛ませ、無理矢理新しいディスプレイに接続されたレトロゲームでの対戦を自室で未祐と繰り返した。
 特にこだわっているわけではないのだが、レトロゲームをやる時は実機でのプレイということが多い。
 遺品とはいえ後生大事にしまっておくよりも、こうやってたまに使った方がきっと父さんも喜ぶと思う。
 まあ、セーブが必要な類のゲームは電池交換が面倒なわけだけども。

「ほい、十三連鎖」
「ぎゃあああああ! この鬼畜!」

 今やっているのは落ち物パズルゲームという奴だ。
 浮いたブロックがあれば下に落ちるタイプの物なので、上手く積んでいけば連鎖して消すことが出来る。
 そして連鎖をすると、対戦相手に大量のブロックを送り込むことが可能だ。
 選んだのは未祐なのだが、これがまた。

「弱いなぁ、お前……何で得意なアクション系のゲームを選ばないわけ?」
「このパッケージのキャラに惹かれてつい。勝てなくとも、充分にゲーム内の姿を見れたので私は満足だ!」
「そうかい。じゃあしゃーねえな」

 淡々と消していくストイックなパズルゲームと違い、この手の対戦要素の強いパズルゲームには可愛いキャラクターが付属していることが多い。
 未祐が五連敗したところで、そろそろ違うゲームにしようかと手を伸ばすと――

「――おっしゃー! 元気出たぁー! ……あれ、二人はどこ!? まさか俺を置いて出掛けた!?」

 秀平の目覚める声が聞こえてきたので、そのまま電源を落としてリビングへ戻ることにした。



「はいー。というわけでー、君達には是が非でも優勝してもらいまーす」
「元気が無くてもうざいが、元気なら元気でうざいな、秀平は!」

 立ち上がって宣言する秀平に未祐が半眼を向ける。
 俺達の対面で椅子に座り直した秀平は、テーブルを叩いてその言葉に憤慨した。

「うっさいよ未祐っち! てか、本当に勝ってよね! 俺はゲーム内の全財産を二人の優勝に賭けたんだから、もう後戻りはできないし!」
「えっ? お前、それは外れたらまずくないか? 言っておくが、外れて素寒貧すかんぴんになってもセレーネさんに金を無心するのだけは駄目だからな。俺らからなら良いけど、あんま持ってないし」
「分かってるよ! でも俺達に勝った二人が優勝したら少しは負けた自分が納得できるし、むしろ実質優勝? みたいな!」

 それはちょっと違うんじゃないか……?
 とはいえ、自分達でやるつもりだった情報集めを秀平がやってくれたのでありがたいことには違いないのだが。
 秀平はバッグの中からタブレットを取り出すと、画面を見せながら集めた情報を俺達に一通り説明してくれた。
 リプレイなどを見つつそれらを大体頭に入れたところで、少し休憩。

「そういや秀平、ミツヨシさんも含めて俺が戦闘中に何度か本体って呼ばれてたんだけど。あれ何?」
「ああ、私も気になった。どういう意味なのだ? あれは」
「二人とも、掲示板見てないの? ちょっと待ってて……えーと……確かこの辺に……あったあった。その呼び名の発祥は、多分このスレだと思う」

 そう言って秀平が表示したページを、未祐と一緒に覗き込む。



【三人だけの】決闘イベント実況スレ・グループH 4【サーラ所属選手】

TBで開催中のPvPトーナメント・グループHのゲーム外生放送を実況するスレです。
スレはマナーを守って正しく使いましょう。
次スレは>>800が宣言して立てること。
立てられない場合は必ず次のレス番号を指定するように。
次スレが立っていない場合は各自減速を。

518:名無しの騎士 ID:wXaYU8Y
勇者ちゃんキター!ヽ(゜∀゜ )ノ

519:名無しの重戦士 ID:ZtkGyFb
一回戦はアレだったから期待

520:名無しの魔導士 ID:3pcbybT
しかし、何でコンビが神官なんだ……弓術士にしとけよ……

521:名無しの神官 ID:YgAjkJN
神官馬鹿にすんな! さっきの試合は良い動きしてただろ!

522:名無しの弓術士 ID:8yu5TXG
皇帝様が相手だと参考になんないじゃんw

523:名無しの騎士 ID:SgDZFPX
始まったぞ
相手は武闘家×2か……堅くてメンドクセー奴だこれ

524:名無しの弓術士 ID:mG3gZ9S
勇者ちゃん二対一で囲まれてる

525:名無しの重戦士 ID:ZtkGyFb
あの、勇者ちゃんの相方の神官が開始地点から一歩も動かないんですが

526:名無しの魔導士 ID:5BuDEpQ
マジだw
ずっとMPチャージしてるw 

527:名無しの軽戦士 ID:nbNEt6A
あ、やっと何か詠唱始めた
でも回復もう間に合わなくね?

528:名無しの騎士 ID:SEJhyZB
勇者ちゃん逝ったぁあああ!?

529:名無しの重戦士 ID:UitE3QD
はっやw まだ開始三十秒ちょいしか経ってないwww
と思ったらすぐに起きたぁああああ!?

530:名無しの弓術士 ID:mG3gZ9S
何なのだこれは!? 誰か説明してくれよ!

531:名無しの神官 ID:fBeLSLS
いやいやいやいや、おかしいでしょ
神官がリヴァイブで蘇生させたのは分かるけど、詠唱短縮とかってないよね?

532:名無しの魔導士 ID:KkFsyDh
自分が知る限りでは今のところ無い……はず

533:名無しの武闘家 ID:PB54phB
ちょw また逝ったw

534:名無しの騎士 ID:SgDZFPX
今度こそオワタ……って、あれ?

535:名無しの魔導士 ID:QgrV4Tw
また速攻で起きたw
てか、リヴァイブのWTどこ行ったしwww

536:名無しの神官 ID:hTDrZHW
お前ら勇者ちゃんの方ばっかり見てるけどね、事前にクイック使ってたよ神官君

537:名無しの重戦士 ID:nfHW9Bf
ああー、そんなのあったねそういえば

538:名無しの武闘家 ID:Ea6NU8J
勇者ちゃんの方ばっか、と言えば誰か武闘家コンビの方も応援してやれよw
誰もそっちの実況してないw

539:名無しの軽戦士 ID:EbiexEQ
だって……ねえ?

540:名無しの重戦士 ID:7BMNBe6
可愛いは正義!

541:名無しの騎士 ID:wXaYU8Y
というか、可愛いのに掛け声が無駄に男らしくて本当に好きw
見てて楽しいw

542:名無しの弓術士 ID:JNT67ss
あー、しかし今度は大分我慢して持たせてんな勇者ちゃん

543:名無しの魔導士 ID:5TLB7Bp
リヴァイブもクイックもWTだろうからね
んでも、二対一なのに後逸しないように上手く封鎖してるし
回復もバフもバンバン飛んでくるから、このまま持ちこたえそう

544:名無しの神官 ID:hTDrZHW
かなりスキルの回し方上手いよこの神官
あと、俺の勘違いじゃなければ先読みしてリヴァイブ撃ってるんだと思う

545:名無しの重戦士 ID:7BMNBe6
それは無いでしょ
空撃ちしたら終わりじゃんか、そんなの

546:名無しの弓術士 ID:KdDwHQk
でも、死んでから詠唱始めても間に合わないしなあ
相手に殴られて詠唱キャンセルされてお終いだし

547:名無しの軽戦士 ID:tT7ajD6
もう一回勇者ちゃんが戦闘不能になれば確認できる
戦闘不能になれば

548:名無しの騎士 ID:JNT67ss
お前、酷いこと言うのな……w

549:名無しの軽戦士 ID:tT7ajD6
でも、どうせ遅かれ早かれ……あっ

550:名無しの武闘家 ID:Ttnt7Bp
死ん……!?

551:名無しの弓術士 ID:KdDwHQk
待ってwww
今、勇者ちゃん巻き戻しみたいにギュンって戻ったけどwww

552:名無しの神官 ID:hTDrZHW
勇者ちゃんが戦闘不能になる十四秒前から詠唱しているのを確認
てか、発動までの詠唱時間十五秒なのにwww

553:名無しの魔導士 ID:fhWgYi8
誤差一秒とかどうなっとんねん!

554:名無しの重戦士 ID:7BMNBe6
勇者ちゃんが倒れる暇さえ与えないwww
鬼www

555:名無しの神官 ID:nQDDrKZ
やばい、この神官さん超面白いwww
このまま大会で活躍するようなら専スレ立てて応援するかもwww

556:名無しの魔導士 ID:sz68Ze5
相手がゾンビとかネクロマンサーとか喚き出したぞ
勇者ちゃんをゾンビ呼ばわりとか許さないよ?

557:名無しの軽戦士 ID:d5AK5kL
どうやって死ぬタイミングを読んでるのか謎すぎる……
ある程度は回復でコントロール出来るにしても

558:名無しの騎士 ID:jPV4X3d
バーストエッジ決まったあああ!

559:名無しの武闘家 ID:Ea6NU8
あああああ! 一応武闘家の方を応援してたのにぃぃぃ!

560:名無しの弓術士 ID:WJBPJuL
>>559一応てw
でもここまで耐えてからの大技かぁ、燃える展開だね

561:名無しの魔導士 ID:AyxdLLm
後は消化試合か
他のグループ覗いてくる(・ω・)ノシ

562:名無しの騎士 ID:JyUP8TR
今の試合、時間があったら会場で見たかったなぁ

563:名無しの神官 ID:bSmaYc9
にしても、同じ神官としてネクロマンサー呼びはしっくりこないな
それが似合うのは魔導士だと思うんだけど
誰かあの神官君にふさわしい呼び名をつけてやってよ(他人任せ)

564:名無しの軽戦士 ID:4h8Yy5d
僕にはあの神官が、勇者ちゃんを遠隔兵器として扱っている変態に見えましたw

565:名無しの重戦士 ID:gUjp9hX
確かに戦況をコントロールしてるのは勇者ちゃんじゃなくてあっちだけど
ネクロマンサーとどっこいでひでえなwww ロボみたいwww

566:名無しの魔導士 ID:XEmWhLw
そういうゲームの敵居るよね
子機を延々倒しても本体を倒さないと何度も復活する、みたいなw

567:名無しの神官 ID:2zbgPEd
あっ、本体が勇者ちゃんにエントラスト使ったぞ

568:名無しの軽戦士 ID:x4SY8YN
MPを譲渡するスキルだっけ? てことはバーストエッジのWT開けたのか
味方のスキルのWTも把握してるとか、そつが無いな本体

569:名無しの弓術士 ID:eQ9ChT8
はい、試合しゅーりょー
しっかし最後ものすげー吹っ飛んだなあ
食らいたくはないけど見てる分には気持ちいいw

570:名無しの重戦士 ID:RYEafLV
本体sugeeee!

571:名無しの魔導士 ID:FmDhzkf
終始完璧に試合をコントロールしてたな、本体

572:名無しの軽戦士 ID:KxuAJ7E
やるじゃないか本体! 次も応援するぜ!

573:名無しの神官 ID:bSmaYc9
えっ、なに? 呼び方「本体」で決定なの?w



「と、二人の二回戦が蘇生祭りだったじゃん? だからこんな感じであっと言う間に定着しちゃった」
「誰が遠隔兵器だ、上手いこと言いおって! 否定できんっ!」
「いや、そこは否定しとこうよ未祐っち……」
「それで本体か……ま、まあネクロマンサーよりはマシか。でもやっぱ微妙……」

 秀平によると直後のベスト8入りでめでたく「勇者ちゃんの本体を応援するスレ」が立ったそうだが、恥ずかしいので閲覧するのはやめておいた。
 妙な名前の売れ方をしたもんだな……。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ