挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼が「本体」と呼ばれる理由

75/89

大会経過とおかしな呼び名

「公式チートの化身とか呼ばれていたでござるよ。既に掲示板では、話題の中心になっているようで」

 トビはログアウト中に掲示板を見てきたようで、試合終了直後の俺達に情報を教えに来てくれた。
 リィズとセレーネさんも席を立って、今は通路の上の方で固まって話をしている。
 話題はもちろん、俺達が戦ったグラド皇帝に関するものだ。

 レベル100に職を無視したスキルの使用、異常なMP回復速度とまさに常軌を逸した能力だったからな……。
 『レイジングフレイム』の詠唱時間も、本職の魔導士より極端に短かったし。
 掲示板の反応も、そうなるのが自然というか。
 もしこのゲームに全体チャットがあったら、さぞ酷いことになってたんだろうなあ……。

「掲示板ではそのまま他のNPCの強さを類推したり、果てはあの強さで魔王軍を倒せないならどのくらい魔族は強いのか? という議論にまで及び――」
「つっても、あの皇帝様が特別なんじゃないのか? 強いと言っても戦争には数が揃わないと無意味な話だろうし、前提がおかしくないか?」
「うむ。あんなのにゴロゴロ居られたら、プレイヤーの存在価値が無くなってしまうではないか!」
「拙者もそう思うでござるよ。余りに議論がおかしな方向に過熱していたでござるからなぁ……」

 思い返すと、国境警備の帝国兵士のレベルが平均30。
 サーラの王宮を守護していた兵士に至っては25前後、近衛隊長まで行ってようやくレベル35という体たらくだったはず。
 TBがNPCに暴力行為可能なゲームだったら酷いことになっている設定だ。
 そんなNPC達と戦えるのは、双方が決闘を承諾した時のみとなっている。

「でもキャラバンの傭兵隊長はレベル50ありましたね、ハインドさん」
「だったな。隊長格でそんなもんだし、アレはやっぱり特別だろうよ」
「国防の費用が少ないサーラの兵士の練度は低いだろうから、それを踏まえて他国の隊長のレベルを考えると……高くて60位だよね? 流れ的には」
「まあ、少なくとも100は無いでしょうね」

 纏めると一般的な市民や商人が10前後、鍛えた一般兵のレベルが30付近。
 隊長格はやや上の50からで、チラッと掲示板で情報を見掛けたベリ連邦の将軍が確かレベル70だったはず。
 その将軍も特別なNPCなのは間違いないので、皇帝の異常さが更に浮き彫りになった形でしかないのだが。

「しかし、皇帝陛下はハインド殿とユーミル殿の試合で特殊な挙動をしていたでござるな」
「特殊? どんな?」
「陛下が穴埋めで出た他の試合もざっと見てきたのでござるが、その全てが二人の内の片方を戦闘不能にした時点で終わらせていたでござるよ」
「そりゃ単なる偶然だな。ユーミルが戦闘不能になった直後に蘇生したから、タイミングがズレたんだろ。俺達の時も終わらせようとはしていたはずだぞ?」
「それだけでは無いような……いや、拙者の気のせいでござろう。忘れて下され」
「?」

 俺が蘇生可能な神官だったから、というだけの話に思うのだが。
 しかしトビは結局、何に引っ掛かりを覚えたのか教えてくれなかった。

 と、そんな話題を呼ぶ皇帝に関しては、運営からのサプライズとしか言えない存在だったな……というのが俺達全員の感想だ。
 でっかい竜巻を遠くから眺めている気分というか。

「ぐぬぬ……いつかリベンジしたいな、あの皇帝に。完全に負けた気分だ」
「そうは言ってもレベル100に近づけるのはいつになるやら、だがな」
「今のままではとても勝てませんしね。本気ではなかったようですし、仮に五人で挑んでも難しいかと」
「そうだねえ……――あっ、トビ君! それよりも時間は大丈夫? 次の試合、もう直ぐじゃないの?」

 セレーネさんがメニューを開いて時間を確認する。
 慌ててトーナメント表と共にこちらに見えるように拡大して表示すると、時刻は既に……

「ひいいいっ!? まずい、残り一分でござる! あっ、もう舞台上に三人揃って――感謝致す、セレーネ殿! 行ってきます!」
「い、行ってらっしゃい……」
「頑張れよー」

 転がるように駆けていったトビは、舞台に辿り着くとミツヨシさんに謝り倒していた。
 どうにか試合開始には間に合ったようで、そのまま問題なく試合がスタート。
 会場が歓声に包まれる。

「それにしても、ちょっと疲れたな……トビ達の試合を見終わったら、俺達も一度ログアウトしないか?」
「賛成だ。トーナメント後半になるほど、休憩に取れる時間が減ってしまうからな」
「勝つこと前提の意見ですか。自信満々ですね」
「当たり前だ! 私達はちゃんと勝つ!」
「ま、まあまあ二人とも。ハインド君、私も賛成だよ。今の内に休憩しておこう」

 そういうわけで、近くの空いていた適当な席に座ってトビとミツヨシさんの試合を観戦。
 無事に勝ったところまで見届けてから、俺達は闘技場の片隅でログアウトした。



 再度ログインしてからの試合は順調に勝ち進むことが出来た。
 二戦目は武闘家(拳撃型・蹴撃型)の二人組で、互いに回復持ちということもありかなりの長期戦になったが……。
 『バーストエッジ』発動まで無事に耐えきり、片側を撃破。
 残った一人が諦めずに粘ったが、二対一になればもうこちらの優勢が揺らぐことはない。
 俺達にとって一撃で倒し切れる『バーストエッジ』の瞬間火力が如何に大事か分かる試合でもあったが、勝ったのでそれで良しとしておく。
 それにしても、何度も死んでは蘇るを繰り返すユーミルを指して「ゾンビ」、復活させている俺を「死霊術者ネクロマンサー」呼ばわりは酷いと思う。
 異名ならもっとまともな物を寄越せと言いたい、切に。

 続く三回戦は重戦士(攻撃型)と弓術士(連射型)、最もこの大会で多い組み合わせである。
 だが、多いということはその分だけ予選も含めて対策を練り切っているということで……。
 今回はいくつかある対策の中でも「速攻」で勝負を決めることに成功した。
 MPチャージからの神官スキル『ライトエンチャント』でユーミルの通常攻撃に光属性を付与。
 ユーミルが俺ばかりを狙って突進してくる重戦士をあっさりと倒し、『アローレイン』発動に必要なMPが貯まる前に弓術士を制圧。
 結果的に二回戦よりも短時間での決着となり、随分と楽に突破することができた。
 ただ、開始直後から相手の弓術士が叫んでいた「本体を狙え!」という言葉の意味は分からず終いだった。本体?


 そしてグループHの準決勝……。
 俺達の対戦相手は、魔導士のセーロスと神官のジャルジーという二人組らしかった。
 隣のユーミルが敵のプレイヤーネームに目を凝らす。

「おおっ、ハインド! 名前がオレンジだぞ、本当に! 噂通りにガチガチのPK野郎どもだな!」
「そうだな、ユーミル。だがな……名前の下のギルド名に非常に、ひっじょーに見覚えがあるとは思わないか?」
「む? ……リア充、撲滅……あっ!」

 嫌な予感が的中してしまった。
 掲示板で見た時からもしやと思っていたが、覆面を付けた二人組の所属ギルドはゲーム序盤で出会ったPKと同じものだった。
 何だっけ……確かポーカーフェイスとかいう名前でありながら、全く怨念を隠し切れていないプレイヤーだったはずだが。

「カップル……カップルぅぅぅ……ぶあああああっ!!」
「「!?」」

 俺達がひそひそと話をしていると、鉄仮面を着けた大柄な男が突然吼えた。
 それをピエロの仮面を着けた黒衣の男がいさめる。

「気を静めなさい、ジャルジー。試合開始までの辛抱です」
「兄者ぁ! でもよぉ!」
「あの、一つ訊いてもいいかな?」

 話が通じるかは疑問だが、俺は気になっていることがあったので声を掛けた。
 意外にもピエロ面の男は「何ですか?」と応じる姿勢を見せる。

「君らのカップル認定の基準って一体……?」
「知れたこと。男女が二人でパーティを組んでいれば、それは全てカップルと相場が決まっているでしょう?」
「基準ゆるっ!? そんなもの、誤認し放題ではないか! 現に私達とて――」
「黙らっしゃい!! あなたたちも直ぐに血祭に上げてやりますから、覚悟しなさい!」
「「ええー……」」

 そいつらがいきり立って武器を構えた直後、試合開始の合図が行われた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ