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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼が「本体」と呼ばれる理由

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武器に関するアレコレ

「ご、ごめんね。ちょっと騒がしかったね……」

 ひとしきり作業が終わると、ようやく我に返ったセレーネさんが頭を下げた。
 それだけ鍛冶が好きなんだなぁ……と感心してしまう。
 別に俺もユーミルもあまり気にしていない。

「ふむ。セッちゃんはおとなしいから、たまに騒がしいくらいで丁度いいぞ」
「食う時と寝る時以外、常に騒がしいお前が言うと説得力があるな」

 俺が皮肉を含んだ発言をすると、それを聞いたユーミルがこちらを向いて驚愕の表情を浮かべた。

「何……だと……?」
「自覚なかったのか!? 嘘だろお前!?」
「あ、あはは……じゃ、じゃあ帰ろっか、二人とも」

 周辺にはもう、採取可能な光を放っているポイントは存在しない。
 完全に取れるだけ取り尽くした形だ。
 容量一杯になったインベントリと共に、俺達は再びラクダに乗り込んだ。
 帰る道すがら、セレーネさんが武器防具に関する要望を聞いてくる。

「それで、戻ったら早速武器製作から始めようと思うんだけど。二人とも、どんな武器が良いかな? 今の内に方向性だけでも知っておきたいんだけど」
「むーん。ハインド、どう思う?」
「俺に訊くのかよ。じゃあ質問を返すけど、ユーミルは戦闘中の防御に関してどう思う?」

 騎士は片手剣の場合、逆の手に『盾』を装備可能だ。
 確か中学生三人組のリコリスちゃんが盾を装備していたな。
 あの子はユーミルと違って防御型だったと思うけど。
 ユーミルは上を向いて一瞬だけ考えるそぶりを見せたが、次に出た言葉は非常にらしいもので。

「面倒だ! 避けた方が早い!」

 というものだった。
 俺とセレーネさんは顔を見合わせて苦笑いだ。
 となると、攻撃力に特化した剣で良いということになる。

「避けられるなら、だがな。じゃあもう一つ。今、お前が使っている武器に関してどう思う? 軽いとか重いとか、剣が長いとか短いとか」
「もう少し重くても大丈夫だぞ。あと、ラクダから攻撃が届くようにして欲しい! 今のやつよりも長めに作ってくれ!」
「……だそうです、セレーネさん。イメージ湧きましたか?」

 セレーネさんは一つ頷くと、ユーミルに質問を重ねた。
 まだイメージを固めきるには意見が足りないようだ。

「ユーミルさんって、武器を振る時は基本的に両手で持ってるよね? どうして?」
「そうだな。その方が力が入るだろう?」

 そこまでの話を受けて、セレーネさんがうーんと唸る。
 まとめると両手持ち、ブロードソードより刀身を長く、多少の重量増加は問題無し、というのが主な条件のようだが。

「じゃあツーハンデッドソード……だと、大き過ぎるか。バスタードソード……も、何だかしっくりこない。ハインド君はどう思う?」
「だったら無難にロングソードでどうでしょう? バスタードソードだと、セレーネさんの言う通りユーミルには些か扱いが難しいのではないかと」
「そうだね。それがいいかも」

 バスタードソードは片手・両手の使い分けに加え、切るだけでなく突きにも使える玄人向けの武器だ。
 現実での使用には専門の訓練が必要だったほどらしい。
 これがゲームだということを考慮に入れても、大雑把なユーミルに合った武器かと言われると甚だ疑問である。
 そのユーミルはというと、俺達の会話に大量の疑問符を頭の上に浮かべている様子。

「む? うん? 私にも分かるように話してくれ! 聞いたことがある名前がポンポン出てくるが、どれもピンとこないぞ!」
「ツーハンデッドソードは二メートル近い大剣。バスタードソードは一メートル超、ロングソードは一メートル前後の馬上剣だな。といっても、ただ長いだけの剣をロングソードと分類して呼ぶ場合もある」
「前に使ったグレートソードとは違うのか?」
「あんなに大きくて分厚いのは作らないよ。倉庫の売れ残りに幾つか参考になりそうなものがあるから、ギルドに帰ったら試しに装備してみてよ。ユーミルさん」
「うむ、ありがたい。そうさせてもらおう」

 ギルドホームの機能として『倉庫』というものがあり、ギルド員は好きなアイテムを一定数、個別に保管しておくことが可能だ。
 倉庫はいずれかのギルド員が『投資』を行うことで拡張可能で、現在の施設レベルは3。
 容量に関しては今の所、特に不満の声を聞かないので暫くはこのままだろう。

 俺も料理の食材、生産の素材などの細々とした物を倉庫に大量に預けてある。
 インベントリの容量には限りがあるので、非常にありがたい機能だ。
 今回も、必要のないアイテムは全て倉庫にしまってから採掘に出てきた次第である。

「それで、ハインド君の武器はどうする? 攻撃の手数を増やす為に、杖からメイスにでも持ち替えてみる?」
「あー……俺の運動神経の微妙さは、セレーネさんもご存知ですよね?」
「ま、まあね、うん。前に二人で戦った時に、後ろから見てたよ」
「筋力などは普通なのにな。昔から微妙に鈍いのが不思議でならん」
「陸上競技とかはそれなりだけど、球技とかになるとやばいよな……。なので、このまま魔力特化の杖で良いかと」
「ドッジボールで逃げるのは得意だったろう?」
「あれは良く見れば相手がどこに投げるか大体分かるから。でも結局、最後の方まで残っても瞬殺だったじゃん。てか懐かしいな、ドッジボール」

 そういう位置取りの問題と、瞬間的な反応・動きを一緒にされても困る。
 結論として、俺がメイスなんか持っても上手く使える感じがしない。
 攻撃の為に自分から近付いた時点で、焦って平常心を失うのが目に見えているからな。 
 神官は魔導士と違ってメイスを持つとそれなりの攻撃力にはなるが、やはり防御の低さが変わる訳ではないので。
 相手との交戦距離が近い前衛神官ならメイス一択と言ってもいいだろうけれど、やはり純粋な前衛と比べると対した攻撃力ではない。

「うん、そういうことなら杖で了解。そうしたら武器は今日の内に、防具は明日中に作るよ。自分の武器もついでに作るつもりだけど、リィズちゃんの武器も作っておこうか? タートル系のままじゃ辛いでしょ?」
「あ、リィズの武器は俺が作りますよ。ちょっと考えがあるんです」
「何を作る気なのだ?」
「それは完成品を見てのお楽しみかな」

 そのまま武器に関しての細かな相談をしながら、俺達はギルドホームへと戻った。


 帰るなり、セレーネさんはホームの倉庫から沢山の剣を抱えて鍛冶場へと戻ってくる。
 売れ残りとは言いつつも、どれも一級品の武器が並んでいるのが何とも。
 それをユーミルが触ったり、実際に振り回したりしてはセレーネさんと感触について話し合っている。

「もう少し、柄の握りに余裕が……」
「じゃあ、こっちはどう? さっきのよりも……」

 俺はその横で、牛の皮と羊の皮をあれこれ加工しているわけで。
 こういうチマチマした作業を無心でやるのも楽しいものだ。
 面倒な部分は簡略化してあるし、作り応えが足りないと言えばそうだが。
 引き換えにサクサク出来上がるという別の意味での気持ち良さがあるため、現実とはまた違った充実感がある。

 ――よしよし、こんなもんか。ページ数もこんなもので充分だろう。
 表紙の色は良く見る赤茶でいいか。リィズの属性を考えて暗めの色使い。
 更にレザーカービングで模様を作り、閉じるための金具などを付けてそれらしく飾り立てていく。
 後は、中身を書けばそれで完成なのだが……。
 と、鍛冶場の入り口をノックする音がした。

「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、リィズちゃん」
「無事に戻ったのか………………残念だ」
「……今、何か仰りましたか? ユーミルさん」
「気のせいだ。何も言っていないぞ?」

 ちょうどいいところに帰ってきたな。
 そうしたら、こいつの中身は本人に書いて貰うとしようか。

「おかえり、リィズ。帰って早々で悪いんだが、こっちに来て座ってくれるか?」
「はい?」

 困惑するリィズを座らせると、俺はインベントリから赤黒い液体を取り出して作業台の上に置いた。
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