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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

彼が「本体」と呼ばれる理由

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コンビ結成

「ああ……拙者の、ターマ……ターム……あれ?」
「ターメイヤ、だよ。トビ君」
「――ターメイヤがっ!」

 料理の名前も覚えていないじゃないか。
 馴染みのない響きだから仕方ないけれども。
 心配しなくても、リィズの分も含めて別に取ってあるので問題なし。

「で、なんだよ。人の会話を遮って出てきて」
「お、おお、そうでござった! PvP大会の話でござるよ! 拙者もハインド殿と組みたい!」
「それは困るな! ハインドは既に私と先約済みだ!」
「あれ? そういう流れだったっけ?」

 とはいえ、二人は大会参加に意欲的ということか。
 これでリィズが参加可能なら前衛後衛で二・二に上手く分かれるのだが。
 俺の否定的な言葉にユーミルが悲し気な顔をするが、一瞬だけ口元が弛んでいたのが見えた。
 これはこいつが嘘をつく時の兆候……というか、癖だな。
 作った表情であることがバレバレである。

「……お前、私と組むのがイヤなのか?」
「嫌ではないが、まだ組むかどうかなんて決まってなかっただろ。嘘はいかんよ」
「ちぃっ! 勢いで誤魔化せると思ったのに」
「残念でござったな!」

 そんな話をしていたら、扉がノックされてリィズが顔を覗かせた。
 これで全員が揃ったので、次のイベントでどう動くかを本格的に話し合うことができる。


 分けておいた二人分のターメイヤを揚げながら、リィズにイベントの内容を簡単に説明していく。
 それから大会参加の意志を確認したところ……。

「ハインドさんが一緒に出ろと言うなら出ますが、それ以外は嫌です。面倒です」
「ほらな。言った通りだろう?」
「む、何ですかその反応は……」
「別にぃ。で、どうするのだハインド?」

 俺が前衛も出来る攻撃型の神官なら悪くなかっただろうけど。
 自分を回復しながら防御主体で粘って、後ろからリィズに攻撃してもらうと。
 しかしどちらも完全な後衛型な以上、俺とリィズが組むのは負けに行くようなものだろう。
 物理攻撃力の高い相手に接近された時点で、詰みだ。

「そういうことなら、イベント中はセレーネさんとリィズは自由行動に――」
「出場しなくてもサポートならしますよ? それと、会場には応援に行きます」
「あ、私も。鍛冶で必要な武器・防具があったら言ってね。作るから」
「……サポートに回って貰おう。で、ユーミル、トビ。お前ら二人で組む気は無いのか?」

 トビが攪乱、ユーミルが本命のアタッカーで短期決戦を挑めばそれなりに行けると思うのだが。
 しかし、互いに相手を指差してユーミルとトビは同時にこんなことを言った。

「「こいつ(ユーミル殿)とだと、勝てるビジョンが全く浮かばない……」」
「……うん。なんで?」
「あー、何となくだけど……分かるよ。ユーミルさんとトビ君、偶にだけど戦闘中にぶつかりそうになってるよね?」
「良く見ていますね、セッちゃん。私は気付きませんでした」

 セレーネさんが言うならそうなんだろうけど。
 きちんと事前に作戦やら優先ターゲットを打ち合わせておけば、そこまで酷い事にはならないと思うのだが。
 原因が分からないので、詳しい説明を二人に要求する。

「何と言ったらいいのか、動きのテンポが合わないのだ。タップダンスを踊っている横で、日本舞踊を舞われているかのような……」
「拙者から言わせて貰うなら、歌舞伎の舞台でヘビーメタルを鳴らされている感じなのでござるが」
「どっちも分かり辛い例えだなー……なのに、何で今までの戦闘では連携が破綻しなかったんだ? ぶつかりそうにはなっても、どうにかなってたんだろう?」
「それは、適度にハインドの指示が飛んでくるからだろう」
「崩れたリズムが直るんでござるよなー。あの声を聞くと」
「え、なにそれこわい」

 効果には個人差があります。多分、この二人だけだと思う。
 俺としては理解し難い話だが、二人で組むと確実にグダグダになると明言されてしまった。
 なので、自分を含めて二人のどちらかと組む必要がある。
 個人的に対人戦に対する忌避感は特にないので、自分が出るのは一向に構わないが。

「取り敢えず、完成したからまずは食事を済ませてしまってくれ。リィズも」
「おおう、揚げたて! 良い香り! 頂くでござる!」
「ありがとうございます。いただきます」
「食べてる間に適当なくじを作っておくから、後でトビとユーミルで引いてくれ。それで決定にしよう」

 ターメイヤに手をつけた二人を横目に、俺はインベントリから適当な材料を取り出した。



 テーブルの上で、二本の紐を握って二人の前に差し出す。
 くじは先が赤く塗ってある方が当たりというシンプルなもの。
 ユーミルが手を伸ば――そうとして、引っ込めた。
 手を組んで手首を回しつつ、深呼吸。
 その間にトビが、意を決して紐を引き抜こうと――抜こうと――したのだが、やはり一度手を引っ込め――

「早く引けよ!!」

 俺の声を受けて、ようやく握った手から二本の紐が持っていかれる。
 結果、ユーミルが赤い印のついた紐を引いて椅子から立ち上がった。

「ぃよおおおおおおしっ! よし!」
「ぬああああああああっ! 何故じゃあああ!?」

 くじの結果に大騒ぎな二人を見て、リィズが溜息をついた。
 ユーミルと参加することに決定、と。
 床に手をついて悔しがるトビを、セレーネさんが苦笑しつつ助け起こした。

「……でも、トビは他のフレと組めば良いんじゃないのか? 居るんだろ、俺達と合流する前に知り合ったプレイヤー」
「あー……拙者が交流を持ってたプレイヤー、いわゆる類友なタイプが多くてござってな。他のゲームから移住してきた長い付き合いのフレンドも、居るには居るでござるが」
「ふむ。それはつまり、やり込み系のプレイヤーってことだよな? それの何が悪いんだ? 大抵は強いだろう、そういう人らなら」
「強い弱い以前に、そういう連中は得てして動き出しも早いもので。まだペアを決めていないプレイヤーが残っているかどうか……」
「早いって……まだイベント初日ですよ? 内容も一時間ほど前に出たばかりですし……」

 そんなリィズの疑問をトビは鼻で笑った。
 うざったい表情にリィズの顔にはっきりと青筋が浮く。
 そのまま鋭い視線で睨みつけられ、トビが怯えて俺を盾にするようにして隠れた。
 早めに謝った方が良いと思うぞ……リィズは根に持つから。

「だが、社会人とかなら、まだインすらしてない人も居るんじゃないのか? ほら、仕事が忙しい人とか」
「甘い甘い、ハインド殿。アプデする日には休暇を取り、先週のようなイベントの無い週は必死に働く……拙者のゲーム内の知り合いには、そんな大人しかおらんのでござるよ! 時間に余裕のある学生ならば、言うに及ばずっ!」
「誇らしげに語るような内容ではないと思うのですが」
「趣味に全力で生きてるってことだよね……きっと」

 愛すべきゲーム馬鹿たち……とでも言えばいいのだろうか。
 俺には想像の及ばない世界で生きている人達のようだ。
 トビも大差ない感じだし、本人が言う通り似た者同士ということになるんだろう。

「とんだ道楽人どもだな」
「ユーミル殿にだけは言われたくないでござる! 鏡を見ろぉ!」
「何だと貴様!」
「あ-、ともかく連絡取ってみろよ。出たいんだろ? 大会」
「勿論でござるよ! こうなったからには、必ず出場してハインド殿とユーミル殿は拙者が倒す! で、ござるよ!」
「ほう……やってみるがいい」

 おー、相変わらず二人とも無根拠に自信満々だ。
 俺は全く自信が無いんだけど……。
 そもそもトビも出場できたとして、互いに直接対決するまで生き残れるかどうかも分からないのに。

「じゃあ、こんなところで今夜はもう自由行動にしようぜ。イベントに関しては明日からで……ってことでいいか? ユーミル」
「どうして私に訊くのだ?」
「いや、お前がギルマスだろ。俺のはギルド員としての一意見だから。解散も集合も、最終的なタイミングはユーミルが決めてくれないと」
「お、あ、そうか。皆が今夜の内に、ギルドとしてやりたいことが終わったのならそれでいいぞ! うん!」
「これでは、どちらがリーダーなのか分かりませんね」
「う、うーん……ま、まあでも、私はこのゆるい空気が好きだよ。ゲームで肩肘張っても、疲れちゃうだけだし。いいんじゃないかな?」
「早速メールを送りまくるでござる! 誰か、拙者を拾ってー!」
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