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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

ギルドホームを作ろう

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進路と勧誘

「――という感じらしい。周辺の地形の状態は」

 全員が揃ったところで、俺達はどの方角に向かうかの相談を始めることにした。
 場所は今夜の利用が最後になるだろう街の酒場。
 パンとチーズをセットで注文し、相談ついでに満腹度を回復させておく。

 酒場の主人も急激に人が減って少し寂しそうだ。
 とはいえ、今後も新規プレイヤーは必ずこの街を通るのだから暇になるということはないと思う。
 ここにギルドホームや個人のホームを構えたプレイヤーも大勢居るだろうし、ピーク時よりは少ないというだけの話だ。

「で、どうするよ? 山は普通に鉱物資源が豊富だろうし、島は……釣りとか漁業とかって出来るのか?」
「可能でござるよ。店売りでも最低ランクの釣り竿が売っているでござるし」
「私は魚よりも肉の方が好きだ!」
「今、そんな話をしていましたっけ……?」
「ちっとズレているが……まあ、あながち間違いでもない。食べるものも向かう先によって変わるだろうからな。といっても、取引掲示板を使えばその辺の融通は利く訳だが」
「向かった先で何をしたいか、何を優先するのかという話でござろう?」
「そうそう」

 トビの言う通り。
 鍛冶メインなら迷わず山岳地帯だろうし、ポーションや農業系の生産をするなら森林地帯が良さそうだ。
 今居る帝国に関しては『帝国』という名前からしてNPC、つまり人口が多いのではないかという予想をトビと俺はしている。
 そのことから、恐らくNPCが絡む特殊なクエストを発生させやすい。
 国力が高くないとわざわざ「皇帝」を名乗って他国に喧嘩を売ったりしないだろうし、地形もバリエーション豊かでバランスが良い。

 これらの条件から、何をやるにしてもそこそこ出来そうな感じだ。
 戦闘中心であちこちを飛び回りたいというプレイヤーは、中央という位置も考えてここに。
 他にも、迷ったら大抵のことは出来そうなここに留まるのが最も無難な選択になると思われる。
 故に、初心者ゾーンとしてもこの地域は優秀な訳だ。
 スタート地点が帝国内にあるのも頷ける作りである。

「では、砂漠はどうなのだ?」
「砂漠なー……現実で言うと、ほどほどの鉱石と塩、それから――」
「石油ですかね。砂漠で価値のある資源というと」
「このゲームの雰囲気には合わんでござるな。燃料としては良かろうが」
「第一、適当に掘って出るもんでもないだろ。やるなら大規模にやらんといかんし、考慮に入れなくてもいいんじゃないか? 出たらラッキー程度で」
「つまり、他の地域に比べると?」
「総じて不利だな。帝国の逆パターンだから、そっちに行くプレイヤーは少ないだろう」
「ふむ……」

 考え込むユーミルに、少し嫌な予感を覚える。
 こいつが良く使う台詞として、普通と同じではつまらないという類のものがあるのだが――

「なら、私は砂漠に一票だ! やはり、人と同じことをしても面白くない!」
「……そう言うと思ったよ」
「ぬ?」

 ユーミル以外の俺達三人は、顔を見合わせて苦笑いだ。
 なんとなくこう言うだろうと予想出来ていたというか。
 パンを咀嚼し、水を飲んでからトビに視線を向ける。

「トビはどうだ?」
「拙者、実は大層迷ってしまってござってな……言ってしまえば、どこも一長一短でござろう? なので、かえって不利な状況に飛び込んでしまうのも、それはそれで面白いとは思っていたところにて」
「つまりユーミルに賛成と。お前ら、オフのゲームで最初から最高難易度を選ぶタイプだな。俺とは真逆だ」
「拙者はそれでもちゃんとクリアするでござるよ?」
「私は適当にプレイするから大体詰むな! それも序盤で!」
「威張んな阿呆。で、リィズは?」
「私はハインドさんが行きたい所に付いて行くだけです。どこまでも、ずっとずっとお傍に……」
「お、おう。そうか」

 まあ、俺の意見は安定志向のつまらない物になりがちだからな。
 誰も推す場所が無いようなら、帝国に滞在という形にしようかと思っていた位に。
 しかし二人が行きたい場所があると言うのなら、それを反対する理由もない。

「じゃあ、砂漠にすっか」

 俺の言葉に三人が頷き、あっさりと意見が集約された。
 こうして当面の目的地は砂漠へ、ということに決まったのである。



 その後、ユーミル・リィズ・トビの三人は食料・回復アイテムの買い込みに。
 俺はその間、ゲーム内で遠出するにあたってセレーネさんに会いに行くことにした。
 彼女はまだアルトロワに滞在しているので、距離が開くと会いに行くのが困難になる。
 お世話になったお礼もしたいし、彼女が今後どこに移動するのかというのも是非聞いておきたい質問だったので。

「あー、こんばんはー……ハインド君……」
「こんばんは――って、元気ないですね。どうしました?」

 鍛冶場に行くと、そこには一人で暇そうに座っているセレーネさんの姿が。
 珍しく炉に火も入っておらず、いつもなら大量の完成品を並べている壁にも今日は何も置かれていない。

「うん……実は深刻な素材不足でさ。鉄が足りないし、タートル系が便利なせいもあって、プレイヤーのの武器の更新が遅くて。性能では勝ってるのに、在庫が全然はけないんだよね……」
「それはまた……なら、北の山岳地帯に行くのをお勧めしますよ。鉱物資源も豊富そうですから、鍛冶にはぴったりだと思いますけど」
「うーん、でもさ……私、未だにレベル5なんだよね。だから、ちょっと自力で到達するのは無理かなって」
「じゃあ、適当なパーティにくっついて移動すれば――」
「人見知りだって言ったじゃない! 無理だよ怖いよ何を話していいか分かんないよぉぉぉ!」
「あ……」

 そうだった。
 俺とは普通に話せるし会話もスムーズだからすっかり忘れていた。
 ――セレーネさんが、酷く人見知りする性格だということを。

「すみませんでした。でも、要はここでの活動に限界を感じているってことですよね?」
「うん、そうなの。取引掲示板とこことの往復で、もう暫くは楽しめると思っていたんだけどね……こんなに早く素材の供給が止まるなんて思わなかった。こうなると、自分で採りに行く必要があるよね……。仕方ないから、のんびりソロで進めるかなぁ」
「……あの、セレーネさんはゲームの他の要素――例えばイベントだったり戦闘だったりに、全く興味が無かったりしますか? 生産だけしたい感じですか?」
「そんなことはないよ? 単に鍛冶が一番好きってだけで……TBは良いゲームだと思うし、優先順位が低いだけで、その内ほかの部分にも手を出したとは思うよ。でも、どうしてそんなこと聞くの?」

 そうか……そういうことなら、試しに訊いてみるのもアリなのかもしれないな。

「だったら、俺達と一緒に他の土地に移動しませんか? というか、俺達の創るギルドに入ってくれませんか?」

 俺達は生産専門のギルドを作る訳ではないので、こういう質問する必要があった訳だ。
 プレイヤーの中には非戦主義と言ってもいいほど戦闘をオマケとしか考えていない人も居るが、そういう人に合うギルドを作れる気はしないので。
 TBのパーティの最大人数は五人……セレーネさんが加入してくれれば、戦力的な充実にもなって俺としては万々歳だ。

「え……本当に? 私、今ハインド君に誘われてる? 実は私の後ろに居る誰かに言ったのであって、勘違いした私が反応したら悲しいことになるという――」
「どういうマイナス思考ですか!? どこを探しても、ここには俺とセレーネさんしか居ませんよ!」

 VRX3500の再生産がまだな事もあり、現在TBでは新規プレイヤーが減少傾向だ。
 今週中には在庫が復活するらしいという情報があるが、とにかく今の『アルトロワの村』は閑散としている。
 現に、鍛冶場には二人きりしか居ない状況だ。
 セレーネさんは鍛冶場の中をぐるっと一周し、人が入れないサイズの備え付けてある棚を開き、窓を無意味にパカパカと開閉し、更にもう一度周囲を見回してから自分を指差した。
 どれだけ自分に自信が無いんだ、この人……。
 それに俺が頷くと、ようやく口を開く。

「ぜ、是非お願いしまひゅ――あ、ああっ! 舌がもつれた!」
「お、落ち着いて下さい! 別に何もしませんから!」
「何もしない!? つまり今の話は無しってこと!?」
「違います!」

 どうも考え方が後ろ向き過ぎるが……。
 ともかく、俺はセレーネさんから承諾の返事を貰うことに成功したのだった。
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