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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

集団戦と夏休みの開始

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コンテスト景品とアイテム配合

「おおー……」

 俺たちが調合を続ける傍ら。
 トビがスクリーンショットの撮影画面越しに、色々な物を見ては声を上げている。
 リィズはそれに対して率直な感想を述べた。

「新しい玩具をプレゼントされた子供……」
「ぴったりな形容だな……」
「お二人とも、辛辣!? ちょ、ちょっとくらいはしゃいでもいいでござろう!?」
「はしゃぐのはいいんだけどさ」

 何といっても、コンテスト・トップ賞の景品だからな。
 基本的には、抽選で何人かに配られたものと「ほとんど」一緒のものである。
 スクリーンショットにモンスターの解析機能を付加するというあれだ。

「どうしてわざわざ、作業中の調合室に来てはしゃいでんだよ?」
「だって、一人ではしゃいでも虚しいでござろうが……」
「談話室に誰もいなかったのですか?」
「誰もいなかったのでござるよ。みんな農業区か街に出ているようで」
「ここもシエスタちゃんがさっきまでいたけど、リコリスちゃんに呼ばれて出ちゃったからな」

 必要なキノコ類の素材は一通り揃えていってくれた。
 今夜は彼女にしては既に結構働いているので、連れていったところで役に立つのかどうかは微妙なところだが。

「兄貴たちも行ってしまったでござるし……今頃はもう国外か……」
「彼らにとっては今が書き入れ時だからな。最近やってるキャンペーンで入ってきた新規は、スタート時から金塊が配られてる上に資金の入手手段が豊富だから――」
「彼らに依頼もしやすいはず、ですよね。しばらくはグラド付近での活動ということになるのでしょうか?」
「多分な。次のイベントまでは、初心者を対象にした活動を中心にするって言ってたぞ」
「新規といえば、他のプレイヤーたちもギルド員の勧誘に躍起でござるよな」

 イベントによっては人数が必要になるから、その用意という意味もあるのだろう。
 そんな具合に、イベントがない期間でも動きがあったりする訳だ。
 当面ギルドメンバーを増やすつもりがない我らがギルドには、あまり関係のない話だが。

「で、どうなんだよ?」
「何がでござる?」
「そのスクショの拡張機能だよ。話を聞いてほしくて来たんだろう?」
「あー、そうそう! モンスターの情報に加えて、その辺のアイテムとか素材とかオブジェクトとか、ランクの低い奴限定ではござろうが……とにかく、詳細が見えるのでござるよ! 拙者のオンリーワン!」
「へー……それ、地味だけど使えるんじゃないか? オブジェクトってのはどういう感じの情報が見られるんだ?」
「とりあえず、ホームの壁に向けると“ホームの壁”と表示されるでござるよ」
「見れば分かりますよ、そんなの……」

 名称が分かるだけでも、場所によっては使い道があるかもしれないが。
 とりあえずは、表示される情報の範囲を適当に探ってみることにした。

「俺たちの装備の情報なんかは、何か見えてるか?」
「プレイヤーの装備までは、さすがに何も表示されないでござるな。どの道セレーネ殿作の装備と、ハインド殿の裁縫作品はきっと高ランクすぎて対象外でござろうよ」
「では、この辺りの回復アイテムや素材はどうです?」

 そう呼びかけながらリィズが示したのは、素材の薬草や合成済みの回復アイテムの数々。
 トビはメニュー画面を移動させてそれらを枠の中に収め、目を細める。

「えーと……薬草! 耐暑性能レベル7! 上質! 他は……」
「他は?」
「他は……特に何も見えないでござるな……」

 その言葉に、俺とリィズは顔を見合わせて全く同じ表情になった。
 ものすっごく微妙な範囲。

「この回復薬でも駄目か? ちょっと失敗して効果が低いんだけど」
「駄目でござるな。素材に関してはそこそこ見えるようでござるが、合成品となるとさっぱり。ショップ売りの量産品なら、あるいは」
「使い道あるんでしょうか? その機能……」
「そ、そうでござるなぁ……言われてみれば、今一つのような」

 トビがしょんぼりとした顔で俺のほうを見る。
 このままでは使い道がない、何とかしてくれ――と言わんばかりの雰囲気だ。
 せっかく取った賞の報酬だもんな、気持ちは分かる。

「個人的には、さっきも話したオブジェクトの情報が出るって部分に着目しているんだが。それを使って上手いこと、斥候みたいな動きができたら面白いと思う」
「お? お? 誠でござるか!?」
「あとでフィールド、それからダンジョンに潜ってみようぜ。もし採取ポイント、それからトラップなんかの情報が遠くからでも表示されたら、それだけで最高なんだが」
「おお! 行こう行こう! で、ござる!」

 一瞬で立ち直った。
 それにしても、TBのこういう機能はマイルドというか慎重というか。
 良くも悪くも劇的な変化をもたらしてはくれないんだな。
 これが駄目だったら、また他の使い道がないが探ってみないと。

「どうなるかは分かりませんが、ひとまずは良かったですね。落ち着いたのでしたら、回復薬の合成を手伝ってくれませんか?」
「勿論でござるよ! で、拙者は何をすれば?」
「薬草をすり潰してくれ。単純作業だけど、結構な重労働でな。俺はもう手が痛くて駄目だ」
「承知いたした!」

 回復薬に関しては、リストに登録した物を呼び出して再生産するということも可能だが、品質が平均値で固定される。
 今はこの『複合ポーション』の品質を高めるために色々と試作をしていることもあり、作業を簡略化せずに全工程を手作業で行っている。

「ハインド殿、そういえば今後の予定はどういう感じになさるので?」
「あー、予定か。少し前にみんなの意見を訊いて回ったんだけど……次のイベントまでは生産中心で、少しペースを落とそうかと思っている。イン率もしばらくの間は下がるんじゃないかな」
「えー? もうすぐ夏休みなのにでござるか?」
「夏休みだからこそだよ」

 トビが手を止めて不思議そうな顔をする。
 夏休み序盤の過ごし方は人それぞれだと思うが、意外にもギルドメンバーの大多数のスタンスが一致をみた。
 最初にそれを言い出したのは、もちろん我らがギルマスである。

「序盤の内にさっさと課題やら宿題やらを終わらせて、残りで思う存分遊ぼうぜっていう提案をユーミルが――」
「ぎゃあああああああ!!」

 課題と聞いてトビが悲鳴を上げた。
 こうなることが分かっていたから、こいつに話すのを最後にした訳だが。

「どうしてそんな悲鳴を……最近はちゃんと勉強をしているんですよね? トビさんは」
「そ、それはそうなのでござるが!」
「長年の経験で染みついた習性ってやつだな。中学三年間と去年、こいつは俺の課題を泣きながら最終日に写すというお約束な――」
「やめて、ハインド殿! いつもありがとう!」
「どっちだよ。ちなみに写したのがバレて、先生方に怒られるのまでがセットだ。記述形式の問題なんかは、自分なりの書き方に変えろっていつも言ってるのに」
「そういえば例年、長期休暇の最終日には毎度青い顔をして家に来ていましたね。最終日のハインドさんを一日独占されて、私としてはいい迷惑でしたが」
「すっごい冷ややかな目でこっちを見てたよね、リィズ殿……。来年こそは、と思いつつも夏休みが始まると結局遊んでしまうという……拙者の馬鹿……」

 一応自分でも良くない行動だとは思っていたんだな。
 課題以外にも夏期講習などがあったりするが、それはそれとして。

「で、どうするんだ? お前が序盤に終わらせる気があるなら、分からない部分は教えるが。せっかく期末の赤点を回避できたんだし、早目にやっておいたほうが――」
「や、やる! みんながインしてないのに一人でインしても仕方ないでござるし……兄貴に大見得切った手前、格好悪い姿は見せられぬっ!」

 鼻息を荒くして宣言するトビの姿を見て、リィズが口元に手を添えてこちらに囁きかけてくる。

「……トビさん、変わりましたね。課題なんてやって当たり前とはいえ、少し驚きました」
「……アルベルトさんのおかげだな。ちゃんとやる気が継続していることだし、しっかりサポートしてやらないと」
「お二人とも、薬草の処理が終わったでござるよ!」
「――ああ。じゃあ、一度濾したらこっちの瓶に流し込んでくれ。それで完成だ」

 配合を変えた試作品、第23号である。
 薬草が混ざった瓶を軽く振ってかき混ぜると……小さなエフェクトがかかって完成したことを告げてくる。
 完成した『複合ポーション』の性能は、今までで最も高く中級ポーションに迫る回復量だった。
 ――うん、どちらも上り調子で良い感じじゃないか。
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