挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

最善の一振りと最高の一枚を求めて

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

282/294

キノコ収穫とスクショコンの結果について

 傘を大きく開いたキノコ――シイタケを、ハサミを使って収穫していく。
 肉厚な身に育ってくれたので、食べたら美味しそうだ。
 このまま炙って、醤油をかけるだけでも十分なんじゃないだろうか?

「あ、先輩がレシピを考える時の顔してる」
「――よく分かったね!? 凄いな!」
「先輩との付き合いも長いですからねぇ」
「そうだ……んん?」

 余りにも自然に返してくるから、思わず頷きそうになってしまった。
 手を止めて、俺の三分の一ほどの速度で動くシエスタちゃんのほうに一度、目を向ける。

「……あの、シエスタちゃん? 言ってること適当すぎない? まだ会ってからそれほど経ってないよね、俺たち」
「そうでしたっけ?」

 このは分かっていてこういうボケをかましてくるから、油断ならない。
 確かに肩肘張る必要のない関係は築けていると思うが、それは気が合ったからであって付き合いが長いからではない。
 シエスタちゃんが籠に収穫したキノコを入れながら、小さく嘆息する。

「はー。それにしても、収穫の自動化ってできないもんですかね?」
「そこまで行っちゃったら、せっかくの生産が味気ないんじゃない?」

 既にキノコ生産に関してはこの小屋……拡張して大きくなったこの『栽培所』の機能は、かなり充実している。
 種菌の植え付けと収穫以外の部分、管理に関しては既に随分と楽なはずだが。

「生産がオマケ要素にすぎないゲームなら、自動収穫みたいな機能があるんですけどね。このゲームでそれは有り得ませんよねー」
「そこまで理解していて、それでもあえて愚痴るのか……」
「先輩優しいんで、こういう益体もない話も聞いてくれるじゃないですか? だから、あえて言って甘えとります」
「甘えとりますかぁ……悪びれる様子もなく言う辺り、実に君らしいよ」

 そこから少しの間は、パチパチという鋏の音が静かな栽培所の中で響く。
 シエスタちゃんの鋏の音は遅いながらも一定のペースで、見なくてもサボったりしていないことがちゃんと伝わってくる。
 ただし「はぁー」とか「ふぅ」とか「よっこいしょ」とか、そういう類の呟きが一緒に聞こえてくるのが特徴的だ。

「……先輩、そういえばスクショコンの結果ですけど」
「うん? スクショコンがどうかした?」
「トビさんの作品がぶっちぎりだったなぁって」
「あー……みんな欲望に正直だよね。あのスクショが貴重だっていうのも確かだけど、本当に断トツだったからなぁ」

 俺たちが話しているのはスクショコンのプレイヤー投票賞に関してのものだ。
 1位が例のトビが魔王ちゃんを写したもの、2位はスピーナさんが撮った妖艶に微笑むパトラ女王という結果だった。
 相変わらずパトラ女王に関しては、何故かカメラ目線だったが。

「サーラ勢が防衛イベントに続いてワンツーフィニッシュですよ、先輩。めでたいですねー」
「びっくりするほど棒読みだね、シエスタちゃん……」

 受賞したスクショの性質を考えると、素直に喜んでいいものか微妙である。
 もちろん俺も男なので、ああいうスクショが嫌いという訳では決してないのだが……。

「先輩?」
「あ、ごめんごめん。何でもないよ。みんなのスクショも、結構いい順位に収まって良かったよね」
「何人か運営選定の賞を受賞しましたしね。そういえば先輩も、変わった賞に選ばれていましたよね?」
「NPCをデザインした開発者の賞だったかな? 確か。投票順位的には程々だったから、選ばれた時には嬉しかったな」
「私から見ても素敵なスクショでしたから、選ばれても不思議はないかと」
「お、ありがとう。そう言ってもらえると喜びが増すね」
「私には絶対にできない種類の顔ですよ、あれ。あんなにはつらつとした笑顔は、私には到底無理無理」

 まぁ、シエスタちゃんは脱力系だからな……最後の一言を言っちゃうあたりが特に。
 同じ癒し系だとしても、クラリスさんのは元気をもらえる笑顔だが、シエスタちゃんのは無駄なところに入っていた力が抜ける感じ。

「それだけに、先輩のスクショにそれほど票が入らなかったのが解せませんなー。やっぱり知名度ですか?」
「個人の嗜好が絡むスクショ自体の良し悪しを置いておくなら、そういう面はあるかもね。クラリスさんが最初の村……アルトロワの村にいた期間って、ほんの一瞬だからさ」
「先輩がクエストを発生させなければ、みんなが知ってるアイテム屋のお姉さんになったんでしょうかね? 美人さんですし」
「どうだろう? そもそも最初の時点から、彼女は護衛してくれるプレイヤーを探すっていう動きをしていたから。その対象が偶然、俺になっただけの話で」
「なるほどー。運営としても想定内なんですかね? そう考えると」

 そういう意味では、1位となった魔王ちゃんの知名度は圧倒的である。
 各国首脳NPCの中では、イベンターにならなかった北と南が若干落ちる感じだが……それでもNPCの中では断然顔を名前を知られているほうだろう。
 そんな中にあって、クラリスさんの知名度は――。

「そういう訳だから、最古参のプレイヤーならクラリスさんを知っているだろうね。長距離を移動するNPCとしては彼女が初だったから、その点でも印象に残っている人が多いかも。だから俺のスクショに票を入れてくれた人たちに関しては、それを憶えていた人も含まれていたんじゃないかな」

 懐かしさから、あるいはスクショを見てサービス開始当初を思い返しながら。
 俺だって、アルトロワの村のNPCのスクショを見て懐かしい気分になったことだし。

「商人になってからの、今のクラリスさんの知名度ってどんなもんなんです?」
「クラリス商会が出店しているマール、グラド、そしてここサーラのプレイヤーならもしかしたら会ったことや見たことがある人もいるかも。ただ、彼女が店にいる時間は限られているから、商会の名前だけ知っているって人のほうが割合は圧倒的に上じゃないかな」
「ほうほう。色々聞いて、納得しましたよ。東のルストと北のベリにいて、古参じゃないプレイヤーからすると、クラリスさんを見ても誰? という感じになるってことですもんね。それより先輩、こうしてキノコの収穫が終わったわけですが……」
「うん、ご苦労さま」

 話している間も手を止めなかったので、収穫作業は一段落していた。
 次はこの中の一部をリィズのところに持って行って、調合作業ということになる。

「疲れたので、おぶってホームまで連れて行ってください」
「またかい……そう言わずに、一人で歩いて――」
「先輩の背中が、好きだぁー! 私は密着したいんだぁー! 先輩の首筋に――」
「分かった、分かった! 分かったから、恥ずかしい台詞を叫ばないでくれ! ……楽したいだけでしょう、本当は?」
「さあ? どっちでしょうねー。よいしょ」

 シエスタちゃんを背中におぶって、栽培所を後にする。
 収穫したキノコは二人のインベントリの中だ。
 ここに二人でくると、大体出る時はこの状態になってしまうな……しっかりと体重を預けてくるシエスタちゃんを背負って、俺はギルドホームへと戻った。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ