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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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遠征終了とコンテスト受付の開始

「「ただいまー」」
「戻ったでござるよー」

 ダンジョン攻略を終えてグラドからサーラに戻った俺たちは、ホームのドアを開いた。
 二人ともまだログイン中なので、どこかにいると思うのだが……。
 俺たちは誰が言い出すでもなく、自然と鍛冶場へと足を向けた。

「いたいた。リィズも一緒だったか」
「あ、ハインドさん。お帰りなさい。ついでにお二人も」
「ついでとか言うな!」
「リィズ殿はブレないでござるなぁ……セレーネ殿も相変わらずで。集中力が半端じゃない」

 作業に集中して顔を上げないセレーネさんの傍から立ち上がり、リィズが俺たち出迎える。
 彼女の作業中にはよくあることなので、気にせず遠征の成果を空いているテーブルの上に広げていく。

「それにしても、随分と早かったですね? メールでは、ヘルシャさんたちと一緒にダンジョンに行ったとか……」
「今から詳しく話すよ。結論から言うと、他のダンジョンよりも周回数を減らすことができてな」

 光の属性石を並べながら、三人でリィズに遠征の様子を話す。
 それ以外にも、俺はインベントリから購入したアイテムなどをテーブルへと置いていく。
 属性石には特に反応を示さなかったリィズが、不思議そうに首を傾げた。

「あの、何です? この統一感のないアイテムの数々は……」
「ハインドの買い物の成果だぞ。むしろ、ダンジョン攻略以上にそちらの方が時間がかかりそうで危なかったが」
「え? そんなに長かったか?」
「女子の買い物並みに長かったでござるよ?」
「ああ、そういえばシリウスのギルドホームは商業都市にあるのでしたね」

 そんなに時間をかけた憶えはないのだが……。
 単に見たい物と買いたい物が多かっただけで。

「でも、見ろよこのアイテムたちを! 例えばリィズだったらこの回復薬なんて、どう思う?」
「HPとMPの複合回復薬ですか……私には作れませんし、凄い物だということは分かります。確か、アイテムコンテストでも同じような物を見ましたね?」
「あれを出品していたプレイヤーと同じ人だよ。どうやら回復量を向上させて、量産に成功したみたいだ。状態異常回復の効果はなくなっているけど」
「取引掲示板で売っていないのはどうしてでしょう?」
「単価が高いことと、生産に時間がかかること。それから懇意にしているプレイヤーに優先的に卸しているからというのが理由だそうだ。ギルドの直営店のみで、数量限定で販売していたのを買ってきたぞ」
「……高かったのですか?」

 リィズの言葉に俺は数瞬口をつぐんだ。
 確かに、値付けは同等の効果を持つHP・MPポーションを二つ買った場合の、実に十倍以上だった。
 WTのグループ分けが別という素晴らしいメリットを踏まえたとしても、ポーションとしてはべらぼうに高い。

「……三割引きまでしか持っていけなかった……高かった……」
「値切ったのですか!? というよりも、値切れたのですか!?」
「限定品を堂々と値切れるだけでも、ハインド殿はちょっとおかしい」
「店番をしていたのがポーションの作成者でな。ハインドが手放しで褒めたせいで、表情がゆるゆるだったぞ。そのプレイヤー」
「ハインドさんらしいお話ですけど……」
「良い物は良いって、ちゃんと伝えておきたいじゃないか。実際凄いポーションだぞ、これ」

 今後のポーション作成の参考にしてもいいかと訊いたら、快く承諾してくれた。
 真似できるものならしてみろ、といった感じで中々に豪胆な人だったな。
 既に改良案も新ポーションも考えているし、仮にこれを真似されて大量流通したところで影響はないとのこと。
 話をしていて気持ちのいいプレイヤーだった。

「他にも、参考になりそうな動物たちの飼料だとか、見たことのない食材とか色々。飼料は特にサイネリアちゃんに見せておきたいかな」
「もう少しで駿馬ができそうだと張り切っていましたよ、彼女」
「それは誠に重畳ちょうじょう! 頑張っているでござるなぁ」
「育てた馬がグラドタークに並ぶ日も、そう遠くないかもしれんな!」

 全員で最高ランクの馬に乗って全力疾走か……それができたら、さぞかし痛快だろうな。
 移動時間も大幅に短縮されるはず。

「何にしても、商業都市アウルムは実入りの多い場所だったよ。当たり前だけど、俺たちが作ったやつより全然質が上の生産物がゴロゴロ売っててさ。見比べて確実に勝ってるって思えるのは、やっぱりセレーネさんの作る装備品だけだったな」
「それと、アレでござるよな? 思いの外、取引掲示板を経由せずに商売している生産ギルドが多いという」
「そうなんですか?」
「ああ。グラドは特にそうなんだけど、現地にいるプレイヤーが多いからさ。わざわざ取引掲示板を使わなくても、店を開けばその場で商品が売れる」
「何でも売れるという訳ではないがな。やはり値段が安い店と、商品の質が良い店に人気が集中していたぞ。店の形態も色々だ!」

 ギルドホームの一部を店にすることもできるし、プレイヤー用の空き店舗を使用したり、空いた場所に新たに建設することも可能と自由度は高い。
 条件を満たせばNPC――もとい、現地人を雇用して店番をやってもらうことも可能だとか。
 取引掲示板を利用すると発生する手数料も必要ないので、直接売るメリットはしっかりある訳だ。

「興味深いお話ですね。サーラにはプレイヤー経営のお店なんて、数えるほどしかありませんから」
「敢えて露店を使って性能の高い商品を、怪しげな雰囲気で売っているプレイヤーも見かけたぞ。わざわざそれらしい衣装まで装備してさ。かなり手の込んだロールプレイだったな」
「しゃがれ声を作るのに失敗して、思いっ切り咳き込んでいたでござるがな。あの女の子のプレイヤー」
「うむ。アクセサリー屋だったな、確か。効果は小さいが被弾時のヒットストップ軽減、スキルの反動軽減など、変わり種の面白いものが揃っていたぞ!」
「ミントを入れた金平糖をあげたら、アクセサリーをいくつか譲ってくれてな。最新作よりもちょっとランクが落ちるやつだって言ってたけど、得しちゃったぜ」
「遂にお金を介さない物々交換に……」

 ヘルシャとワルターがおすすめの店を色々と紹介してくれたおかげで、とても充実した成果となった。
 そのままリィズが気になったアイテムについて質問し、俺たちが答えるという会話が続き……。
 セレーネさんがこちらの様子に気が付いたのは、話が粗方終わった段階のことだった。

「――あれ、みんな!?」
「ただいま帰りました。セレーネさん、お疲れ様です」
「お疲れ様だ! セッちゃん!」
「お疲れ様でござるー」
「み、みんなもお疲れ様……予定よりもずっと早く戻ってきたから、びっくりしたよ。あ、石もちゃんと揃っているね。それから、このアイテムの山は一体……?」
「まぁ、色々ありまして。セレーネさんの作業も一区切りみたいですし、一旦みんなでお茶にしません?」
「そう……だね、うん。それがいいかも」

 そんな訳で、俺たちは鍛冶場を出て談話室に向かうことに。
 ユーミルが先頭で扉を開けたところで、ホームの入口方面から元気な声が聞こえてくる。

「ただいまですー!」
「おっ、リコリスの声だ。これは丁度良いな、ハインド」
「ああ。みんなで成果を報告し合いながら、お茶にしよう」



 シリウスからプレゼントされた紅茶とクッキーを挟んで、俺たちは談話室の卓についた。
 今は2ダンジョンを攻略してきたヒナ鳥・傭兵親子組の話を聞いている最中だ。

「アルベルトさんが前に立ってグイグイ進んでくれるので、とっても進みが早かったです!」
「かといって無理のあるペースという訳でもなく……適度な休憩を挟みながらと、私たちを気遣ってくださいまして。おかげさまで、順調に攻略が進みました」
「あれですねー。なんか、学校の先生の引率に近い安心感というか。そんな雰囲気で。さすがフィリーのお父さんじゃー」
「……うん。さすがお父さん、じゃー」
「ああ、まぁ、同じ公務員には違いないのでな」
「兄貴、その返答はちょっとずれているような……」

 アルベルトさんがフィリアちゃんの頭を撫でつつ、珍しく天然気味な発言をしたその時。
 視界の下部にゆっくりと、見慣れない内容の字幕が流れ始めた。
 普段のレベルキャップ到達者などのアナウンスとは違い、赤字で運営からのお知らせという前置きがある。
 それによると、まずはスクリーンショットコンテストの詳細が公式サイトで発表されたこと。
 それから現時点を以て、応募作品のエントリーを開始したというのがアナウンスの内容のようだ。
 ユーミルとリコリスちゃんが歓声を上げつつ、勢いよく椅子から立ち上がり……その場の話題は、スクショコンに関するものへと流れていった。
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