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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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ダンジョン遠征・最終編

「ハインド殿、拙者色々とお訊きしたいことがあるのでござるが」
「何だ?」

 日曜の夜、俺、ユーミル、トビの三人はグラド帝国のとある町にいた。
 ユーミルは会話に参加せず、初めて訪れる町の様子をきょろきょろと見回している。

「渡り鳥の遠征メンバーが前回と同じなのはまあ分かるでござる。セレーネ殿は相変わらず鍛冶、リィズ殿もそのお手伝いと遠征で減ったポーション類の精製、補充……実に結構」
「うん」
「ヒナ鳥ちゃんズと兄貴たちはサーラに残って火属性・風属性ダンジョン攻略……これも大変結構。あちらは防衛戦で連携も上がっているし、二グループに分かれての攻略は非常に効率的でござる」
「ああ」
「それで……どうしてヘルシャフト殿とワルター殿がここに?」

 俺たちの横には例によって余裕の表情で悠然と佇むヘルシャと、自信なさげに傍に控えるワルターの姿が。
 トビの疑問の言葉に、ヘルシャが腕組みしながら相対する。

「なんですの、トビ? 何か不服ですの?」
「不服はないでござるが……あの、ハインド殿?」
「いや、そこで俺のほうを見られても分からん。掲示板の情報が不作でな……メールで光属性のダンジョンの情報を教えてくれないだろうかって二人にお願いしたら、三人パーティでここに来いって返事があったから来たんだが」

 直接会って教えてくれるのかと思ったら、会うなりヘルシャからパーティ申請を連打された。
 仕方ないので、とりあえず二人をPTインさせた訳だが……。

「ふん、しゃらくさいですわよハインド! お茶の木のお礼に、わたくしたち自らがダァンジョンをご案内させていただきますわ! そちらのほうが話が早いでしょう!?」
「しゃらくさいの使い方、おかしくないか? 不思議と勢いは伝わってくるけど」
「ダァンジョン? でござる?」
「うるさいですわよ! とにかく、わたくしたちも光属性のダンジョンに同行します!」
「相変わらず強引なやつ……まぁ案内も戦闘もしてくれるっていうんだから、素直にありがたいけどさ」

 お茶の木のお礼ということなら、そのまま受け取ることにしよう。
 三人でのダァンジョン――間違えた。
 三人でのダンジョン攻略に、やや不安があったのも確かだし。
 そこで周囲を見ていたユーミルがようやくその動きをやめ、会話に参加すべくヘルシャのほうを向く。

「うむ。しっかり私たちの盾になるがいいぞ、ドリル!」
「なんっっっで魔導士のわたくしが盾にならなければいけないんですの!? このイノシシ女!」
「ま、まぁまぁお嬢様。あの、師匠……ボクたちが一緒に行っても、大丈夫でしょうか? お邪魔じゃありませんか?」
「むしろこっちからお願いするよ。三人で来いってメールをしてきたのは、こういう訳だったんだな」

 ワルターが補足のメールをくれなければ、セレーネさんとリィズを除いた四人PTずつで別れてダンジョンに行く予定だった。
 もちろんフルパーティのほうが何をするにも安定するので、この提案は非常に助かる。

「そうと決まれば、まずは腹ごしらえですわね! わたくしたち、シリウスのギルドホームにご招待いたしますわ!」
「その前に私は町を見て回りたいのだが!」
「ええい、一々スムーズに行かせない気ですわね!? 貴女は! ――でしたら先に町をご案内しますわ!」
「あ、ちゃんとやってくれるんだ。何だかんだ言っても優しいなぁ、ヘルシャは」
「なっ、がっ……い、行きますわよ!」

 怒ったり照れたりと忙しいやつである。
 俺たちは今いる町はグラド帝国の中央部やや北にある、『商業都市アウルム』という巨大な町だ。
 帝都に次ぐグラド第二の都市であり、流通の中心を担っているとのこと。
 それを裏付けるように、この都市から方々に伸びる道は非常に整備されており、どちらに向かってもスムーズに進むことができる。
 近くに大規模な農業区を持つ大農村があったりと、色々な意味で盤石。
 そんな交通の便もいい都市は、プレイヤー……特に生産系のプレイヤーからも人気で。
 ここ『商業都市アウルム』には、生産系ギルドが集結しているという特徴がある。
 ヘルシャの案内で商業区に差しかかったところで、俺は思わず呻いた。

「うおぉぉぉぉ、買い物してぇぇぇ……あっちの屋台とか、あっちの鍛冶ギルドとか、あっちの雑貨屋とか気になる……参考にしたい、試食したい、良い道具があったら是非とも欲しい……」
「いかん、ドリル! 商業区はハインドにとって毒だ!」
「そのようですわね……迂回しますわよ! ほら、ハインド!」
「こっちに来いっ、ハインド!」
「ああっ!?」

 食い入るように見ていると、ユーミルとヘルシャに引っ張られて一本外れた道へ連行されてしまった。
 少し遅れて、後ろからトビとワルターが追いかけて来る。

「ハインド殿、買い物は帰る時だとご自分で言っていたでござろう? 今は我慢我慢」
「むぐ……確かに言った」
「師匠、ダンジョンに行った後に改めてご案内しますよ。おすすめしたい生産ギルドさんもありますし」
「サンキュー、ワルター。確かに今、インベントリを一杯にする訳にもいかないしな……」

 これから向かうダンジョンのドロップ品が入らなくなってしまう。
 帰りの買い物のために、インベントリの枠はたっぷりと空けてきたが。
 良い物があればなるべく沢山買って帰りたい……格安で。
 目玉の商業区を迂回することになったので、自然とヘルシャの町案内も薄味になる。
 居住区や観光向きの施設、有名NPCのいる場所などを中心に、街中をぐるりと。

「そういや、ヘルシャたちはどうしてこの都市を本拠地に選んだんだ? 帝都じゃなくってさ」
「……! よくぞ訊いてくださいましたわね、ハインド! この場所をわたくしたちが選んだ理由、今からじっくりしっかり念入りにご説明いたしますわ!」

 ユーミルはヘルシャの表情を見て、俺はヘルシャの背後でワルターが全力で首を横に振る動きを見て嫌な予感を覚えた。
 先にユーミルが動いて、俺の肩にポンと手を置く。

「ハインド、やっぱり質問を取り下げないか? この雰囲気、異常な長話になりそうだぞ」
「……そうだな。自分から訊いておいて悪いけど」
「ちょ!? で、では掻い摘んでお話ししますわ! それならいいでしょう!?」

 ヘルシャが妥協する姿勢を取ったことにより、ワルターが露骨にホッとした表情を見せた。
 その短縮版の説明によると、シリウスがここにホームを構えた理由は三点。

「一つは、イベントがどこで開催されても駆け付けやすいという理由ですわね」
「ああ、それはグラド帝国そのものの性質だよな。特に大陸中央寄りのここは、その条件にぴったりだ」
「そうでしょう? 何かと移動が大変なゲームですから、とても便利で気に入っています。大陸の中心であるグラドの中でも特にここアウルムは素晴らしく、プレイヤーの滞在人口的にもそれを示して――」
「お嬢様、その、お話が脱線し始めていらっしゃいますよ。立地に関するお話だけで十分では……?」
「多数派の何がいいのか、私には全く分からん!」

 少数派のサーラ住まいであるユーミルが、気に入らないといった様子で反論する。
 ワルターの忠言も含めてヘルシャも不味いと思ったのか、他の地域が悪い訳ではないとフォローを入れた。

「こ、こほん。二つ目は、わたくしたちシリウスが生産向きのギルドではないという都合がありますわ」
「なるほど……それで生産ギルドがひしめくここで、他からの助力を受けようという魂胆でござるか」
「自分たちができないことを人にお願いするというのは、何をするにも大事なことではなくて?」
「それは分かる! とても良く分かるぞ、ドリル!」
「は、はい? どうしたんですの、急に……」

 ヘルシャに全力で同意を示した後に、俺のほうに熱い視線を向けてくるユーミル。
 頼られて嬉しいような情けないような、複雑な心境だよ俺は……まぁ、しかしこれはお互い様か。
 俺も前衛はできないし、指示は出せてもみんなを引っ張っていくような力はないからな。
 考えてみれば、普段から互いに足りない部分を補い合っている訳か。

「何を目と目で通じ合っているのか知りませんけれど……三つ目の理由は、ズバリこれですわ!」
「「「――!?」」」

 そう言ってとある場所で足を止めたヘルシャが示したのは……まるで宮殿のような、巨大なギルドホームだった。
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