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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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闇属性魔法と探索方針の変更

 ヒタヒタ、ヒタヒタと……。
 通路の壁や天井を這いながら、果ては地面に潜りながらモンスターが這い寄ってくる。

「ああっ、足を噛まれたでござる! このっ!」
「どこから寄ってくるのか分かり難いな。かといって無視も……」

 リートゥス洞窟の『スピンスターフィッシュ』のようには行かない。
 何故なら――

「ぎゃあああ! 前方にダークネスボールがびっちり! 通れん!」
「近付き過ぎるなよ、ユーミル! アルベルトさん、お願いします!」
「了解した!」

 アルベルトが豪快に大剣を振りかぶり、床面に叩きつける。
『グラウンドインパクト』が床に潜んでいた影たちを根こそぎ炙り出し、消滅させた。
 こいつらは床や壁をすり抜けるが、実体がない訳ではない。
 ちゃんと攻撃は通じるし、こちらから触れることもできる。
 残りの影モンスターを撃破して先へ。

「こいつらの足止め能力、結構きついな。強くはないんだが」
「さすが、搦め手に定評のある闇属性なだけはあるな。しつこい! ねちっこい! 陰険! リィズ!」
「おい」

 そこにリィズを混ぜるんじゃないよ。
 しかし、闇属性魔法を敵に回すとこれほど厄介だとは思わなかった。
 今のところモンスターが使ってくる魔法は『ダークネスボール』と『ポイズンミスト』の二つである。

「しかしユーミル殿。グラビトンウェーブが来ないだけまだマシではござらんか?」
「うむ、確かにな。ダークネスボールならまだ躱しようがあるが、あんなものを頻繁に撃たれたのでは溜まったものではない!」
「そういえばハインド殿。ダークネスボールは見慣れたものでござるが、リィズ殿はポイズンミストは滅多に使わないでござるな?」
「あれは味方を巻き込みやすいからな。序盤で習得可能なスキルだけど、リィズが使ったのは……本当に数えるほどじゃないか?」

 タートルイベントで分散行動している時など、限定的な状況だけだったはず。
 そして敵は二種類……獣の形をした『シャドウアニマル』と虫の形をした『シャドウインセクト』というモンスター。
 獣型の影が直接攻撃で、虫型の影が魔法攻撃を使用してくる。
 現在の階層は未だに6階層……思った以上に攻略に手こずっている。
 また囲まれないように移動しながら、俺たちは対策を話し合う。
 重装備由来の力強い足音を立てながら、アルベルトさんが俺に視線を向ける。

「重力球や毒霧で通路を塞がれると、時間を大幅にロスしてしまう。ハインド、どうする? このままでは今夜中に満足のいく周回は望めんぞ。現状のペースが余りにも悪過ぎる」
「そうですね……ここは分散して、階段を見つけたら集合という形にしましょうか」

 パーティ状態なら互いの位置は分かるので、階段を見つけたら呼び合えば大丈夫だ。
 パーティチャットの存在しないTBだが、このダンジョンは静かなので恐らく声は遠くまで届く。
 もし駄目なら空メールでも……ということで。
 そんなパーティ分割の提案に対して、フィリアちゃんが俺をじっと見上げる。

「でも、ハインド……ハインドが単独行動は、危ない……」
「このレベルなら神官単独でも大丈夫――と言いたいところだけど、袋叩きにされたら駄目かもしれない。ここは特に、敵に捉まりやすい条件が揃っているから」

 問題は何人ずつでどう分けるかだが……。
 俺でなくても、このダンジョンは状態異常やら『ダークネスボール』による拘束やらで単独行動は危険だ。
 話ながら歩いている間にも、影がぞわぞわと薄暗い通路に迫ってくる。

「ハインド、また来たぞ! 早く結論を!」
「ええと……二人と三人で……二分割か。傭兵組と渡り鳥組で別れましょう! 近い時は大声で、遠い時は空メールで知らせてください! 宝箱は余裕があれば!」
「委細承知した。フィリア、行くぞ!」
「うん……!」

 俺がフィリアちゃんに効果が切れた『アタックアップ』をかけ直すや、親子は一気に影の群れを突破していった。
 少し先に見える、未踏破の右側の道へ。

「拙者たちは正面の道でござるな!?」
「ああ! 適当にあしらって先に進むぞ!」
「よぉし! あの二人よりも先に階段を見つけるぞ! ゴーゴー!」

 ユーミルが剣を振り回して叫ぶ。
 結果的にこの判断が大当たり……競うように階段を探しながら進んだ俺たちは、一気に10階層まで到達した。



「おお!? 今回は肉と魚の二択じゃないのか!?」

 10階層の休憩所……あまり安らげない雰囲気の石テーブルが置かれた部屋で、俺は恒例の調理をしていた。
 ユーミルが傍に来て、手元を覗き込んでくる。
 この場所が出す寒々しい雰囲気に、自然とメニューは温かなスープ系に決まってしまっていた。

「確かにどちらかの攻撃力を上げるのは鉄板なんだが……今回は前衛組の魔法抵抗の低さが気になってな。物理攻撃力を上げるパターンも考えてはきたんだが、ここのモンスターは魔法攻撃してくるし。ボスも多分……」
「ははあ。それでこの野菜スープでござるか」
「バフ効果は料理のジャンルで決まるからな。境界が曖昧なものもあるみたいなんだが」

 こういった野菜中心だと防御系になりやすい。
 防御系は不人気になると最初から予想されていたからなのか、大抵物理防御・魔法抵抗共に上昇する。
 ここに肉なんかを入れるとバフ効果が一気に攻撃系になってしまうので、このままあっさり系で。

「いっそのこと、私がタンクをやるか? 攻撃型アタックタイプとはいえ、私も騎士だ。魔法抵抗はそれなりにあるぞ」
「お前が? うーん……一回きりの勝負なら、それでもいいんだけどな」
「そうでござるよ。最終的には周回するのでござるから、ダメージソースのユーミル殿が盾役に回っては……速度が上がらないでござるよ?」
「料理は範囲攻撃などのに対する保険。これまで通り引き付け役はトビ。今回はそれでいいのではないか?」

 アルベルトさんがトビの肩を叩きながら傍に立つ。
 言外に、もっと普段の自分たちのスタイルを信じろと示してくれているようだった。

「それができれば一番良いでしょうね。ユーミル、ありがとうな」
「な、何なのだ? 急に」
「この前の氷竜の時からこっち、アタッカー以外にも自分にできることを模索しているようだからさ。今回は不採用だったけど、作戦の幅が広がるからすげえありがたい。助かる」
「――!」

 ユーミルは俺の賛辞に驚いたような顔をすると、急に立ち上がって背を向け、その場で剣の素振りを始めた。
 喜び方が微妙におかしい……普段から褒めろと言いつつ、時折そういう反応をするのが謎だ。
 ここからでも耳が赤くなっているのが見える。
 その様子に薄く笑いながら、アルベルトがユーミルと入れ替わるように席に座った。

「ハインド。ここまでの戦いで分かったことがあるのだが」
「何です?」
「敵の魔法に関してだ。分かり難いが、奴らにもしっかりと詠唱モーションというものが存在する。厄介なことに、プレイヤーのものよりも詠唱時間が短いのだが」
「……うん。わさわさ蠢いて、黒い粒子が散ってるタイミング……」

 フィリアちゃんも加わって説明してくれたのは、虫型の影――『シャドウインセクト』の魔法詠唱に関して。
 影の真似をしているのか、無表情でフィリアちゃんがわさわさと手を動かす。

「分かりづらっ!? 魔導士プレイヤーのように、魔法陣が出たりはしないのでござるか?」
「足元と撃つ時に出てる、けど……ここのモンスター、半分地面に埋まってたりするから……」
「見えないことが多い訳か。でも、大抵虫型の影は距離を取りながら動物型よりも後列にいるから――ユーミル、そろそろ戻ってこーい!」

 今後の戦術に関わる話なので、あいつにも聞かせておいた方がいい。
 出来上がったスープを飲みながら、俺たちは影モンスター対策について話を重ねた。
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