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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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ニグレードー大渓谷

「むう……」
「どうしたユーミル? メニュー画面出しっ放しで唸って」
「いや、なに。三つもフィールドを通ったのに、想像していたよりもスクショの被写体がなかったと思ってだな」
「ああ……」

 岩場を抜ける直前、ユーミルが気にしていたのはスクリーンショットについてのようだった。
 森、湿地帯、そしてこの岩場と確かにあまり目を惹くような景色や生き物は見当たらない。

「この辺りはダンジョン目当てのプレイヤーしか通らない僻地だから、何かあればコンテストでは被り難いはずなんだが……残念」
「帰りは夜時間を狙って通ってみたらどうでござる? 夜にしかいない生き物や見られない景色も存在するらしいでござるよ?」
「上手く時間が合えばな。今から行く渓谷なんて、時間に関係なく結構ダイナミックな景色だって――」
「おおおおおっ!」

 ユーミルの歓声に顔を上げると、道の先には階段と左右に切り立った山々、間を流れる澄んだ川が。
 それがうねりを伴って視界一杯に、どこまでも続いている。

「川だ! 山だ! 渓谷だーっ!」
「おー……TBの大規模フィールドはどこもスケールがでかいな。そのまま撮っても絵になりそうなのは、どこも変わらんか」
「ハインドは、スクリーンショットコンテストに出品するものは決まっているのか?」
「アルベルトさん……俺はまだ遠征のことで頭が一杯ですかね。遠征が一通り終わってからでも間に合いますから、それから何か考えますよ」

 俺たちと同じように渓谷を眺めながら、アルベルトが真横に立ち止まった。
 歩道は崖上と川沿い、上下二つのルートに分かれている。
 ユーミルはフィリアちゃんを連れて、意気揚々と階段を下って行った。

「そう言う兄貴は何か出品しないのでござるか?」
「今までに自分が使った武器や防具を並べて、撮ったものを出す予定だ。特に上位は狙っていないが」
「兄貴の歴代の装備でござるかぁ……」
「アルベルトさんの装備ってあれですよね? 傷や一部の汚れが残る設定の……」
「ああ、そうだ。オプションで変更可能な表面洗浄というやつだな。普段から俺はこの設定だ」

『全身洗浄』は装備画面で自分のアバターと装備を綺麗にする機能だが、アルベルトのように細かく設定を変更することもできる。
 具体的には時間経過による劣化に始まり先程俺が口にした傷、汚れなどなど……。
 これにより、現実のように使い込んだ装備の風格を滲ませることが可能と。
 今アルベルトさんが装備している『アクートゥスグレートソード』も、渡した当初よりも随分と渋い見た目になっている。
 見た目の変化こそあれど耐久値などには影響がないので、これはあくまでも趣味の範疇だ。

「なるほどぉ。拙者もその写真、欲しいくらいでござるな……。そういえば兄貴、その大剣は三代目でござったか?」
「これは五代目だな。最初のタートルイベントの時点で三代目、イベント後にお前たちから買い取ったグレートソードが四代目、前回依頼したこいつで五代目だ」
「そうなると、防具も合わせると結構な数になるんですね。そっか、そういう写真もありなのか……」

 きっとゲームで辿った軌跡を現わすような一枚に仕上がるだろう。
 そんな会話を交わす俺たちの視線の下のほうでは、渓谷の川の水に触れるユーミルとフィリアちゃんの姿が。
 この辺りは下流なのか、水の流れは緩やかだ。

「ハインド、ルートはどちらだ?」
「川沿いなので……下ですね。途中の分岐を左に、二百メートル直進したら細道が三つあるので、真ん中の道へ。そしたらすぐ傍にある小さな岩を目印に、三十メートル――」
「……」
「ハインド殿、覚えきれない。無理!」
「……今から全員に目的地の座標をマーキングしてもらうから。ダンジョンの場所の分かりやすさに関してだけは、サーラはナンバーワンだよな?」
「そりゃあ、遮るものが何もないでござるし」

 サーラ以外の国のダンジョンに関しては、どこもこんな感じだ。
 ここまでの遠征だって森の奥、隠し入り江の中、そして今回も――渓谷の細道の奥と分かり難い。
 しかし、俺たちの言葉にアルベルトさんが薄く笑って首を横に振る。

「分からんぞ。サーラとて、砂の下に遺跡や洞窟などのダンジョンが埋まっているかもしれん」
「いやいや、勘弁してほしいでござるよ兄貴。そんなんどうやって見つけるのでござるか?」
「そういうのは現地人から訊くんじゃないのか? 基本的に分かり難いものに関しては、ゲーム内の住人に訊いて見つける設計になっていると思う」

 もちろん、フィールドを探索していて何となく見つける場合も多いだろうけれど。
 適当にフィールドを通過するだけの場合は、塔のような目立つもの以外は発見が困難だ。

「それでも今回のように、古くなった情報は周知になるようだが」
「今のネット社会じゃ仕方ないですね。でも、TBはまだ情報が出回るのが遅いほうじゃありません?」
「それはトップ連中の性格が全体的にそうなのでござろう。みんなが知らない情報を教えて目立ってやろう! というよりは、その情報を使って誰も達成していない記録を出して驚かせてやろう! のほうが好き、みたいな」
「ああ、掲示板なんか見てるとそういうとこあるよな……だから情報が漏れにくいのか」

 何かを初達成したプレイヤーの名前が公式サイトに記録されたり、ゲーム内でアナウンスされたり。
 毎回イベントにランキングがあったりと、TBは基本的に競技性が高い。
 その辺りもプレイヤーの傾向に影響している可能性があるが、さておき。

「では、話はこの辺にしてそろそろ。結構ダンジョンまで距離がありますし、マップ情報を共有したら早速進みましょう」
「そうだな――フィリア! ユーミル!」

 名前を呼ぶアルベルトさんと共に、馬を引いて三人で階段を下りる。
 その後の俺たちは、渓谷の川を上流に向かって進んで行ったのだが……。
 敵のレベルが思いの外高く、少し進んだところで一気に足が鈍った。

「トンボに! 攻撃が! 当たらんっ!」
「私も……当たらないっ……!」
「ここは拙者にお任せを! ――って、凄い勢いで投擲アイテムが減っていくぅぅぅ!?」

 レベル40後半の『パラライズドラゴンフライ』が川の上をブンブン飛び回る。
 攻撃力は低いのだが、噛みつかれると高確率で『痺れ』状態になるため非常に厄介だ。
 トビの投擲アイテムは良く当たっているが、いかんせん有限な上に消費が激しい。
 インベントリから『焙烙玉』を取り出して投げてみたが、敵の動きが素早いせいで外してしまった。
 俺も新しい投擲アイテムを使うか? 他に何か手段は……あ、そうか!

「くっ、重戦士はやはり対空手段が乏しいな……ぬんっ!」
「とか言いつつ攻撃を当てる兄貴かっけぇぇぇ!」
「トビ、うるせえ! ユーミル、バーストエッジだ! バーストエッジ! 魔力を空中で爆散させろっ!」
「――おお、その手があったか! では早速……くらえぇぇぇっ!」

 ユーミルの『バーストエッジ』が炸裂し、数体のトンボが一斉にその場に落ちた。
 弓術士や魔導士がいればどうということはない敵なのだが……今は近接モリモリのパーティなので、どうしても相性は出やすい。
 それにしても、このトンボ以外にも毒ブレスを吐くイモリが出たりと、渓流沿いは状態異常を引き起こす敵が多いな。
 数戦前の戦闘なんて、不意打ちを受けて痺れたトビがモンスターに囲まれて、かなり危なかった。
 この分では、闇属性のダンジョンも一筋縄では行かなそうな予感が……。
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