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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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ダンジョン遠征・グラド編

 水属性のダンジョン……マール遠征はその後、つつがなく終了した。
 土属性のダンジョンボス『クリスタルゴーレム』に比べて『ギガント・アイアンシザース』はパターンに嵌めやすく、一周辺りの負担は少なめ。
 ヒトデが活性化する満潮に合わせての休憩も上手く行き、一晩で目標に到達。
 疲れでフニャフニャになったシエスタちゃん……と元から少なめの口数が更に減ったリィズをフォローしながら、サーラに帰還した。
 そして今夜は、遠征最後のグラド帝国へ向かう予定になっている。
 そのメンバーなのだが……前回から続投のトビがギルドホームの談話室で唸った。

「ぬぬ、前衛多くないでござるか? 多いというか、ハインド殿しか後衛がいねえ!」
「……シエスタちゃんとリィズはお疲れモードでお休み。サイネリアちゃんは引き続き馬飼育の改善。リコリスちゃんはテスト勉強。セレーネさんは属性武器の作製開始……まぁ、結果こうなるよな」

 今夜の遠征メンバーは俺、ユーミル、トビ、アルベルトさん、フィリアちゃんの五人。
 装備の手入れとアイテム確認を終えたユーミルが、椅子から勢いよく立ち上がる。

「このパーティ構成だとハインドの負担が増えるな! 大変だな!」
「そんな元気よく言われてもな……確かに大変そうだが、モンスターの攻撃次第でそれは変わるはず」
「む、例えば?」
「範囲攻撃が多い相手だと回復が大変だ。全員前衛だと、距離の問題でどうしても被弾が増えるだろうからな。逆に単体攻撃ばかりなら、回避盾であるトビの頑張り次第……つまり普段と変わらないはず」
「なるほど!」
「今日行くダンジョンは殆ど情報がないんで、念のためみんなにポーション類を多めに持ってもらうつもりだ。ほら」

 そう言って俺は机に準備してあったポーションをユーミルに渡していく。
 今はログアウト済みのリィズと一緒に早目にログインして、ここに揃えておいたものだ。

「俺の回復の手が回らない時は、これを使って自分で回復してくれよ」
「分かった! ありがとう!」
「ハインド殿、拙者の分は?」
「こっち。分身使って減った分は、なるべく自分で回復してくれ」
「心得た!」
「アルベルトさんとフィリアちゃんも」

 武器を研いでいた親子が顔を上げる。
 持っていく武器は無属性……攻略するのは闇属性のダンジョンなので、対応する光属性の武器は作製できなかった。
 使い慣れた無属性武器を収納し、二人は俺からポーション類を受け取っていく。

「ハインド、今夜の大まかな予定を確認してもいいだろうか?」
「あ、そうでしたね。昨夜までの遠征が思った以上にスムーズに進みまして……グラドに行きっ放しの二日程度で闇と光の両ダンジョンを攻略する予定でしたけど、闇属性を攻略して一度サーラに戻ることになりました」
「……つまり、今夜は日帰り?」
「そういうことになるね。一度帰って、明日か明後日には闇属性の武器を持って光属性のダンジョンに行きたい。みんなの都合次第だけど」

 試作品を作るだけなら、一本辺り三十分もかからずに用意することができるだろうから。
 弱点属性の武器を使うことで、多少の時間短縮にもなると思われる。
 試作品故に、劇的に早くなることはないだろうが……。
 そんな話を聞いたユーミルが、何かを思い出したように視線を彷徨わせた。

「――そういえばハインド。属性武器に使う魔物素材集めは順調なのか?」
「レベル40以上の魔物の素材を中心に、それらしいものを買い集めてあるぞ。既に結構な数が揃っているから、どうにかなるんじゃねえかな」
「ああ、だからセレーネ殿が製作を始めたのでござるな」
「そうそう。石が揃った土属性と水属性はもう作り始めてる。セレーネさんは仕事が速いから、どちらかというと他の属性石待ちの状態だな」

 関連する魔物素材に関しては、余裕の残る資金に任せて取引掲示板で買い漁ってある。
 残念ながら自分たちで集めるには、現時点では時間も人手も足りない。
 総じて素材の希少性が高く相当な金額に上ったが、アルベルト親子の報酬から考えるとまだ黒字だ。
 もっとも余った素材や作製時のノウハウについては自分たちも後々利益を受けることになるので、必要な投資であると割り切ってしまっていいだろう。
 ちなみに属性石は取引掲示板でほとんど売っていないので、自分たちで取りに行くしかない状況だ。

「そんな訳で、日帰りで闇属性のダンジョン――アーテル遺跡に行きます。幸いグラドの西側にあるので、サーラからはそこそこ近いです」

 俺の言葉にアルベルトさんが重々しく頷く。
 彼はここまで遠征に参加できなかったことを気にしており、今夜は一段と気合が入っている様子だ。
 少しくらいパーティバランスが悪い今回も、彼に任せておけばどうにかなりそうな気がする……。

「しかし闇属性でござるかぁ……ビームを出せるシエスタ殿がいれば楽だったでござろうに」
「ビームって……あの子を今日に回すと、昨夜の遠征パーティの人数が四人になりそうだったからな。仕方ない」
「ハインド殿のシャイニングでは、頼りにならないでござるし……」
「やかましいわ! 支援専門の職に火力を求めんな!」

 恐らくだが、弱点を突いたところで重戦士の通常攻撃以下だろう。
 初級攻撃魔法として『シャイニング』は『ファイアーボール』や『アクアボール』に比べて発生・命中共に優れているが、その分スキルそのものの火力が控えめだ。
 詠唱妨害や行動阻害には向いており、個人的には低火力でも気に入っているスキルである。

「それにしても、私たちに比べてハインドは遠征に出ずっぱりだな。いくらゲームとはいえ、休まなくて大丈夫なのか?」
「家事もバイトも学校の課題も、普段とやることは大して変わらないからな……ゲームをやる時間が多少伸びたところで、特に問題ないぞ。遠征は色んなメンバーと一緒に戦えて楽しいし」

 ゲームを始めた直後は時間を作るのが大変だったが、もう慣れた。
 客観的に見ても無理のないペースを作れていると思う。
 成績も特に落ちていないので、現状維持で大丈夫だ。

「さすがだな、ハインド! 生徒会と理数系の課題さえなければ、私も毎日一緒にログインできるというのに……」
「課題といえばもうすぐ期末テストだな。ユーミルもだけど、トビも頑張れ。週末の約束、忘れるなよ」
「今回は期待してくれていいでござるよ! 勉強会ではビシバシ来い! とりあえず平均点狙いで!」
「うむ、週末までに分からない部分をまとめておくぞ。よろしく頼む!」

 中学生組のテスト期間とも被っているので、交代で休める今回の遠征は非常に都合がよかった。
 とはいえ、三人の中で専ら勉強が必要なのはリコリスちゃんだけらしいのだが……。
 俺たちはいつも通り、次の週末で勉強会をやる予定だ。
 準備を整え、腕組み状態で待機していたアルベルトが俺たちを見て口を開く。

「ハインドは、その年にして既にスケジュール管理が上手いようだな。その調子なら、すぐにでも社会に出られるだろう。こうして趣味の時間をしっかり持っているのも好印象だ」
「そ、そう……ですかね? ありがとうございます」
「私見だが、社会人にとって最も重要なのは――ああ、すまない。ゲームでこんな話をしても仕方ないな。そろそろ出発しよう」
「そのお話も個人的には興味がありますが……そうですね。では、出発しましょう」

 目指すはグラド西部にあるダンジョン『アーテル遺跡』である。
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