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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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新・忍び装束の完成

「できたでござるぅぅぅ! 拙者の新・忍び装束! マサムネ殿、ハインド殿、ありがとう! みんなありがとう!」

 トビが嬉しそうに忍び装束を掲げる。
 見た目の上ではそこまで変わっていないが、中身は前と別物だ。
 ……というよりも、そうなっていてもらわないと困る。

「相談して意見を聞いて試作……って程度で済ませる予定が、完成まで漕ぎつけちまった。長時間お邪魔してすみません、マサムネさん」
「んなこたぁ気にすんな。俺としても楽しかったぜ、坊主ども」

 マサムネさんがぽきぽきと首を鳴らして呵々と笑う。
 それを見たフィリアちゃんがマサムネさんの肩にペタペタと『湿布』を貼った。

「お、おう? こりゃあ気持ちいいな……ありがとうよ、斧のお嬢ちゃん」
「ん。ハインドも……」
「あ、ありがとう。ゲーム内でも神経疲れみたいなのはあるから、不思議だよなぁ……」

 故に、HPが減っていなくても細かい作業を続けていた俺とマサムネさんにとって、これは効果的だ。
 じわっと薬効成分が肌を通して染み込んでくる……。

「しかし一気に仕上げましたね。疲れる訳だ」
「ああ。構想三十分、試作一時間の出来事だな」
「そう聞くと適当に作ったみたいに聞こえるけどねー。でも、この失敗作の山を見るとそんなこと言えないわよね……濃密な時間だったもん」

 キツネさんの視線の先には、黒っぽい布の山がある。
 サイズ調整やら取り出す時につっかえないか、強度はどうかなど、思っていた以上に作ってみると難しかった。

「……単純に、ハインドの作業が早かったから……」
「おうよ、驚いたぞ。鍛冶はともかく、裁縫は神官坊主に負けてるかもしれねえなあ。見事な手際だったぜ」
「いえ、そんな。マサムネさんが作った極薄の鉄板も凄くないですか? 手で打ったものとは思えない精度ですって」

 各所に施された強化繊維や鉄板により、結果的に防御力も上がった。
 元が元なので、焼け石に水ではあるのだが。
 もしかしたら、一撃での戦闘不能を避けられるかも……。

「そうだ、忍者坊主。折角完成したんだ、訓練場で試用していけ」
「いいのでござるか? 助かるでござるなー。演習なら投擲アイテムも消費しないでござるし」
「見たい見たい! 行こうよ、みんなで!」

 キツネさんの号令の下、ぞろぞろと訓練場へと移動を開始。
 新装備に着替えたトビが、みんなが見守る中で案山子と向き合う。
 隣のリィズが、それを見て小声で囁いてくる。

「あまり見た目は変わっていませんね」
「凝ったのは中身だからな。トビ、そろそろ行けよ」
「……こう、みんなに見られていると些か緊張するでござるな」

 トビが狼狽えてその場で足踏みをする。
 気持ちは分かるが、マサムネさんが若干イラついているぞ……仕方ない。

「とりあえず二刀との兼ね合いも見たいから、接近戦からの投擲って動きをやってみてくれ。まずは棒手裏剣から」
「な、なるほど! では……いざ!」

 軽やかに踏み込んで案山子を数度斬り付け、剣を高速納刀。
 気が付いた時には、手首に仕込んだ棒手裏剣が案山子の頭部にめり込んでいた。

「はっや! え、凄いね忍者君! いつ投げたか分かんないくらいだったよ! 鮮やか!」
「いや、ははは。照れるでござるな」
「……ダメージはしょっぱいけど!」
「上げてから落とすのやめて!? キツネ殿ぉ!」

 防具の詰めを行う時に、暇だったトビは散々『棒手裏剣』を弄りまわしていたからな。
 それにしたって、ぶっつけ本番にしては上手く飛んだものだ。

「片手をフリーにできる一刀のほうが良いかとも考えたけど、それだけ納刀が速いなら問題ないか」
「だから言ったでござろう!? まあ、状況によってその辺りは使い分けるつもりでござるが!」

 マサムネさんも俺も一刀化を一度は薦めてみたのだが、本人は二刀流に拘りがあるらしい。
 拘るだけあって、トビは投擲の枷にならない動きを目の前で示してみせた。

「忍者坊主、重さは?」
「動いた感じ、当然前よりは少し重いでござるが……全く問題なし! アイテムの軽量化が効いているでござるよ!」
「結構。そのまま他の投擲アイテムもどんどん使えよ」
「承知っ!」

 トビはカテゴリ分けをチェック・更に改良した投擲アイテムを次々と投げていく。
 最終的に残った投擲アイテムはつ。
 まずはたった今投げた『棒手裏剣』が分類される、『投げナイフ』や小型の刃物が一つ。
 WTが短く、ほとんど連続で投げることができるが特徴あり、ダメージは少な目。
 次に、フィリアちゃんの情報を元に作製した――

「せいっ!」
「……外れ……」
「くうっ、刃の部分をちゃんと当てるのが難しい!」

 トビが左の懐から取り出した『小型鎌』による鎌投げである。
 ここには斧や鎌などが分類され、遠心力を加えればそれなりのダメージを期待できる。
 ただし、この通り命中させることが難しい。
 トビが背中に手を回し、腰元を探ってそれを取り出す。

「お次はこいつを!」
「おっ、命中。ダーツみたいな投げ方だったけど」
「ダメージは……ほどほどですね。棒手裏剣のやや上程度かと」

 正しい投げ方は良く知らないが、しっかり当たるならOKだろう。
『打矢』は最初どの分類か分からなかったのだが……リィズが試しに作ってみましょうと提案してくれた『投げ槍』と同じ分類だった。
 先端で刺突するアイテムはどうやらここに含まれるらしい。
『棒手裏剣』とどう違うんだ? と言われたら、システム側の判定としか答えられないので困ってしまうが。
 小型化が過ぎたためか、この『小型打矢』はややダメージが抑え目。
 そして、今回シエスタちゃんの功績で最も小型化を果たした――

「やっぱり、こういうのこそいかにも忍者って感じでござるよな! ポイっと!」

 トビがその小さな玉を足元に投げつけた直後、演習場が光に包まれた。

「うあー。目がいてえ、いてえですトビ先輩。よりによって何で閃光玉?」
「あ、煙玉と間違えた! 拙者もなんも見えねえ!」
「何やってんだ、このお調子者!」

 指の間に挟み込めるほどに小型化された『小型閃光玉』により、全く備えていなかったメンバーの目が眩む。
 ちゃんと色分けしたんだから、間違えるなよ……小型化に成功したのは『煙玉』と『閃光玉』の二つだ。
『焙烙玉』に関しては、適した素材が見つかり次第改良という形になると思われる。
 視力が回復しない中、不意に腰に温かな感触が現れる。

「うわっ、誰だ!? 腰に抱きついているのは!」
「フフフ……」
「リィズか!? リィズだよな!? あ、帽子ある! リィズだろう!? ――ぐへっ!?」
「は、ハインドさん!?」
「あ、ごめん本体君!」

 更にキツネさんが軽くぶつかったりと混乱する中、ようやく視力が元に戻る。
 額に青筋を浮かせたマサムネさんが無言でトビの頭を引っぱたき、仕切り直し。

「あ、あー、大変失敬。申し訳ござらん。で、では、ラストでござるな。キツネ殿のご提案で完成した……装着不能なので、防具とはちょっと関係ないでござるが」
「おっ!」

 キツネさんが身を乗り出す中、トビがインベントリに手を入れて取り出したのは……。
 人の半身ほどもある、巨大な十字手裏剣だった。

「この大型手裏剣・ブーメラン仕様でござるな! イカすぅ!」

 今までのアイテムの中でも、特にインパクト抜群である。
 当然、こいつを体に身に着けることは不可能だ。

「何度見てもこれ、色物アイテムだよな……」
「武器扱いされていないのが不思議でなりません」
「ちと悪乗りが過ぎたわな。こういうのが一個くらいあるのも、おもしれえけどよ」
「戻ってくるのをキャッチしたら、消費されないんだよね?」
「それがブーメラン系の仕様っぽいですからね、ええ……」

 これは新発見だったのだが、ブーメラン系の投擲アイテムはキャッチに成功すると消費されない。
 ただし耐久値が設定されているようで、一定回数使うと壊れる。
 耐久値の回復は不可なので、そういう意味では武器でなくアイテムで間違いない。

「ともかく、投げてみるでござるよ! ワクワクするでござるなぁ!」
「嫌な予感がするが……どうぞ」

 問題はこの『大型ブーメラン手裏剣(十字)』という滅茶苦茶な名前のアイテムをキャッチできるかどうかである。
 数秒後、トビは俺の予想を裏切ることなくダメージを受けて吹っ飛んだ。
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