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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

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高防御力の脅威

 まだ俺たちは扉を潜らない。
 あれがゴーレムのコアだと想定し、俺はインベントリから料理を取り出した。

「落ち着いて、まずはここでバフを上書きだ」
「RPGの定番だな……ボス部屋手前で準備を整える。待ちぼうけのボスを前にして、おもむろに道具を漁り始めるプレイヤーのパーティ」
「万全にしたつもりが、装備を変え忘れていたり回復を忘れていたり……」
「「「あるある」」」

 戦闘が始まってから気が付くという、悲しいパターンだ。
 俺たちはそんなことがないように気を付けつつ……。
 みんなには干し肉を、俺は煮干しを齧ってそれぞれ攻撃力と魔力のバフを発動する。
 ゴーレムは大抵動きが鈍重で高耐久、高攻撃力というのが定番。
 更にダンジョンボスは自己回復が多いということも、セレーネさんを除く三人には説明済みだ。
 準備が完了したところで頷き合い……突入!

「――おお、コアが光った! が……先手必勝ぉーっ!」
「ゆ、ユーミル先輩!?」

 ついつい見入る俺たちを差し置いて、ユーミルが真っ先に攻撃を仕掛けた。
 変身ヒーローの変身中、もしくは合体ロボの合体中を狙うかのごとき蛮行である。
 しかし、これまたお約束のごとく謎のバリアに跳ね返され――

「ふぎゃ!」
「お、おい、大丈夫か?」
「だ、ダメージはない! 大丈夫だ!」

 ユーミルが転がりながら戻ってくる。
 まあ、そりゃこうなるか……これで倒してしまえれば、こんなに楽なことはなかったんだが。

「惜しかったですね、ユーミル先輩!」
「もう少し早く――コアが光る前なら行けたかもしれんな!」
「そ、そうでしょうかね……? システム上、無理じゃないかなぁ……」

 そこでユーミルの行動を肯定しちゃう辺り、リコリスちゃんは大分染まってしまっているなぁ。
 そんなことをしている間にも、コアの光は増していき……。
 どこからか飛来した岩の塊を身に纏っていく。
 セレーネさんがそれを見て、俺の横で油断なくクロスボウを構える。

「ハインド君。このゴーレム岩じゃなくて――」
「水晶っぽいですね。硬そうだな……」

 透明な鉱石が次々と結合し、その場に重量感のある音と共に降り立つ。
 名前は『クリスタルゴーレム』、レベルはピラミッドのボスと同じ55だ。
 澄んだクリスタルの外殻なのでコアの位置が丸見えだが、それ以上に他のゴーレムと明らかに違う点が。
 そいつは水晶で武装した直後、お返しとばかりにユーミルに攻撃を仕掛けた。
 ただし、その動きは――

「ぬおおっ!? 何だこいつ!」
「速いっ! ――リコリスちゃん!」
「はいっ!」

 今まで出会ったどのゴーレムよりも素早かった。
 ユーミルが跳びはねるようにして後退し、リコリスちゃんが『騎士の名乗り』を使いながら盾を構えてカバーに入る。
 ノックバックしながらも右腕の振り下ろしを盾で受け止め、パーティが反撃体勢に移行。

「むう、速いと言ってもゴーレムにしてはだろう! 回り込んで斬りつける!」

 その言葉と共にユーミルが『アサルトステップ』で移動しながら足首付近を斬り付けるも、硬い音がして剣が弾かれる。
 表示ダメージも非常に少ない。

「かったぃ!」
「何て物理防御力をしてるんだ……ユーミル、とりあえずスキルは温存で! 様子を見る!」
「りょ、了解!」
「次はこいつを撃ってみるか……ステータスを推量する指標くらいにはなるだろ」

 俺は短い詠唱を終えて『クリスタルゴーレム』に杖を向ける。
 光が瞬き、初級攻撃魔法『シャイニング』によりゴーレムに微量のダメージが入った。

「……ハインド、元のダメージが低すぎて効いているかどうか分からん」
「悲しいことを言うなよ!? 俺は分かっているからいいんだよ!」
「で、どうなのだ?」
「大雑把な計算からして……ユーミルの通常攻撃があのダメージ……うん。物理よりは魔法のほうがちょっとマシだけど、ほとんどどっこいだ! それから、アレを見ろ!」
「む?」

 ゴーレムのHPバーは基本、コアのものなので判別が難しいのだが……。
 外殻から光が漏れ、回復表示が出ていることが確認できた。
 最前線で防御に徹してくれているリコリスちゃん以外のメンバーは、それをげんなりとした表情で見る。

「おおう、なんと面倒な……」
「ばっちり回復しているね……しかも表示された回復量が凄く高い。通常攻撃じゃあ全員で叩いたとしても、とても破壊は不可能だよ」
「火力を要求されたのはピラミッドも一緒ですけど、こいつは極め付きですね」
「もしかしてですけど、コアも……」
「回復すると思っておいた方がいいだろうね。でも、まずは確認してみるか……セレーネさん」
「スキルでコアを撃ち抜くんだね? やってみる」

 セレーネさんがクロスボウを構えて狙いをつける。
 彼女なら今の状態でも狙い撃てるだろうが、念のため……。

「リコリスちゃん、一度下がって回復を!」
「分かりました!」

 ゴーレムの攻撃が終わったところを見計らい、リコリスちゃんに後退指示を出す。
 それと入れ替わるように、セレーネさんが胸部のコアに向けて『ストロングショット』を放つ。
 俺が事前にバフを使い、リコリスちゃんが『大喝』で物理防御力を下げてくれた効果もあってか――ユーミルの通常攻撃よりはずっとマシな数値が内と外、二連続で表示される。
 さすがセレーネさんだ。
 一番素直に飛ぶ『ストロングショット』とはいえ、コアに一射で命中させた。

「どうだ……? ――あ、回復してる! HPバーが戻っていくぞ!」
「やっぱりな。さて、どうするか……セレーネさん、貫通するスキルを全て撃ち込んで、クイックで一個増やしたとして――」
「全部コアに命中したとしても、私一人じゃダメージが足りないと思う。今のダメージを見る限り、外殻より低いとはいえコアまでしっかり硬いんだもの……どうにか胸部の外殻を破壊して、それからみんなで一斉にスキルを発動しないと」
「ハインド。ダンジョンはこの前の防衛イベントのように時間制限などはないのだから、とりあえずやってみたらどうだ?」
「……そうだな。よし、全員タイミングを合わせて一斉攻撃だ!」
「「「了解!」」」

 とりあえずは、無策でそのまま全火力を叩き込んでみるものの……。
 外殻を削ったところでほとんどのスキルがWTに入り、コアのHPを一割程度残して外殻の水晶が復元される。
 粘って攻撃を続けていたユーミルが、悔しそうに剣を揺らしながら後退。

「ぬあー、惜しい! 微妙に足りん! 全力だったのに!」
「どうしますか、ハインド先輩? 魔法耐性を下げるデバフアイテムも攻撃前に投げましたし、これ以上は……」
「相手の攻撃が怖くないだけに、しっかり狙いも付けられたしね……残り一割とはいえ、見た目以上に難しい状態だ」
「私のスキルも全部コアに当てたんだけどね……料理バフも事前にしっかり付与してあるし、他に何か手は……」
「――低火力が憎い! 自分の低火力が憎いですぅぅぅ、ハインド先輩ぃぃぃ!」

 リコリスちゃんがゴーレムの攻撃を盾受けしながら、悲しみの叫びを上げた。
 騎士の防御型の代名詞である『シールドカウンター』は相手の攻撃力次第でダメージが上下するのだが、このゴーレムは防御力ばかりで攻撃力はそこそこだ。
 カウンターを起点に攻撃を始めても、大した足しには……待てよ。

「リコリスちゃん!」
「は、はい?」
「そのままでいいから聞いてくれ。確かリコリスちゃん、防御型のあの定番スキルを取っていたよね?」
「え? でも、このゴーレムさんの――わぁっ! このゴーレムさんの攻撃力じゃ、中々一杯まで溜まりませんよ!? 時間かかっちゃいます!」
「大丈夫。ユーミルもさっき言っていたけど、この戦いに時間制限はないんだ。じっくり準備させてもらおう」

 戦いを続けるリコリスちゃんに思い付いたことを一気に話すと、彼女は嬉しそうに何度も頷いた。
 思い出したよ。
 騎士の防御型で、今の状況でも火力を出せるスキルを。

「ということは、私にもやっと活躍の機会が!? もちろんやります! やらせてください!」
「みんなも聞こえたか!? 通常攻撃でMPを回復しつつ、しばらく待ってくれ! リコリスちゃんよりもヘイトを稼がないようにだけ、気を付けて!」
「――なるほど、あのスキルがありましたか。っていうか、リコ。そういうの、自分で気が付かないと駄目なんじゃ……」
「だって、絶対に一斉攻撃に出遅れちゃうと思って……言い出せなかったんだもん。でも、みんなが待っててくれるんなら大丈夫! ハインド先輩と一緒に準備するから、サイちゃんも期待してて! 先輩たちも!」
「うむ。どんなスキルなのか知らんが、期待している!」
「リコリスちゃん、頑張って!」

 このまましばらくは流れ作業だ。
 スキルを発動しながらシールドでガードを続けるリコリスちゃんを、俺がひたすら後ろから回復させる。
 全体の様子を見てバフのかけ直しも行い、全員のMPの状態を確認……そして一番WTが長いサイネリアちゃんの『アローレイン』が再使用可能になったタイミングで、リコリスちゃんに視線を戻す。
 彼女がシールドでダメージを受ける度に、体を覆う光が輝きを増していく。
 そしてついに――

「みんな、準備できたよ!」
「そうか! リコリス、合わせるからお前のタイミングで進めっ!」
「はいっ、ユーミル先輩! 行きます!」

 リコリスちゃんが慎重に前に進み、チャージ中に受けたダメージを倍加。
 更に騎士の防御型の職業特性である魔法属性への変換を行い、魔力を纏ったショートソードをゴーレムに――勢い良く突き入れた!
 スキル『リベンジエッジ』が炸裂し、外殻を魔力が縦横に走り抜ける。
 水晶に無数のヒビが入り、『バーストエッジ』並みのダメージが表示された。
 そして即座に、リコリスちゃんの傍に銀色の影が鋭く踏み込んでいく。

「いいダメージだ! 私も続くぞ!」
「あっ、わわっ! お、お願いします!」

『バーストエッジ』一発、外殻のヒビが更に広がったところで――

「ハインド!」
「あいよ!」

『クイック』からの『エントラスト』で、ユーミルがもう一度『バーストエッジ』が入る。
 そこで外殻が完全に砕け、前衛二人が後衛に射線を譲る形で後退。
 弓術士二人から次々とスキルを伴った矢がコアに向けて飛び、間隙を縫って再度前衛が突撃。

「たぁぁぁぁぁっ!」

 リコリスちゃんが『シールドバッシュ』を発動、シールドをコアに叩きつけた直後……HPバーが飛び、20階層に光が溢れた。
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