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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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連携攻撃と貫く一矢

 手順こそやや複雑だが、作戦を一言で示すと実にシンプルだ。
 すなわち「低い位置で動きを止めて弱点を射抜く」――という、これに尽きる。
 感覚的に次のウェーブが迫っていることもあり、是非ともこれを成功させて撃破まで持っていきたい。
 そのためにも、まずは……。

「げっ!? こっちに来るな、トビぃぃぃ! ――うおわっ!?」
「あ、すまんでござるよ! 避けるのに必死で!」
「いや、こっちもすまん! ちょっと位置取りが悪かった!」

 敵の『アイスドラゴン』の攻撃を凌がなければならない。
 前腕による攻撃に巻き込まれそうになり、俺は慌てて声を上げた。
 位置調整と声かけは、視野を広く保ちやすい後衛の役目だ。
 だから、今のはどちらかといえば俺のミスである。
 氷竜の攻撃は爪、尻尾、稀に体当たり、そしてアイスブレスの四つだ。
 時間の切れたバフを付け直し、MPを回復し、チャンスがあれば胴体や足に攻撃を加えながらチャンスを待つ。
 作戦を念頭に置きつつも、それまでに取れるダメージはしっかりといただいておく。

「むう……ハインド、まだか!?」
「まだだ! 次のアイスブレスが終わってからだ!」

 ブレス攻撃には二種類ある。
 その場で放つものと、空中に飛んで地上に向かって放つものの二つだ。
 ここまでで、それがどちらも一回ずつ。
 もし飛ぶタイプのブレスを撃とうとする直前に作戦を始めてしまった場合、攻撃が届かずに大惨事となる。
 幸いブレスを連続で撃つことはないようなので、それが来るまでは我慢だ。
 トビが隙を見て氷の鱗を砕き、ユーミルが斬り付ける。
 セレーネさんは貫通スキルを使ってコンスタントにダメージを積み重ねる。
 この氷竜に対して弓術士の単発型シングルタイプは相性抜群らしく、非常に頼もしい。
 そして、待ち望んでいた時が到来した。
 大きな羽根を動かして、ドラゴンが宙を舞う。

「飛んだ! ということは――」
「よりによって避けにくい方でござるか……だが!」

 トビを信じて、俺たちはその場から動かない。
 氷竜が戻ってくるのは、前回と同じならば飛び立ったこの場所だ。
 下手に動くと却って危険ということもあるが、反撃の機会を逃さないためにも待機する。
『アイスドラゴン』が大口を開け、口元で生成された巨大な氷塊が多数落下を開始した。
 ブレスというよりも、大岩が次々と降ってくるような攻撃だ。
 分身が躱し、躱し、被弾して消え、トビ本体が上空を睨みつけて氷塊の隙間に滑り込んでいく。
 雪煙が晴れたそこには、身代わりは犠牲にしたのだろうが――無傷で立つ、トビの姿があった。

「――ここだな!? 渡り鳥、突撃っ!」
「「おおっ!」」
「「はいっ!」」

 ユーミルの猛々しい声に鼓舞されるように、着地した氷竜へと一斉に仕掛ける。
 まずは最初と同じように、一斉に焙烙玉を投擲。
 爆風が晴れるのを待たずに、ユーミルが俺とトビが投げた苦無と共にスキルを使用しながら突進をかけ……再度、今度は魔力による爆発が発生。

「くうっ……やはり硬いなっ……!」
「ユーミルさん! ポーション行くよ!」
「うむ! さあ、まだ私たちのターンは終わらんぞ!」

 セレーネさんがユーミルに『中級MPポーション』を投げ、『ヘビースラッシュ』で追撃を重ねていく。
 ダメージが足りないか……?

「リィズ!」
「はい!」

 魔導書が怪しげな光を帯びて激しく明滅する。
 13の剣がユーミルの傍ギリギリ――脇の下や足の間などを通過しながら、全て氷竜に直撃。

「危なぁっ!? 馬鹿じゃないのか!? 馬鹿じゃないのか!? もっと気を使った狙い方をしろっ!」
「ユーミルさん、もう一撃です! 早く!」
「なっ、あ、このっ……後で覚えていろ、貴様! でりゃあ!」

 ユーミルのやけくそ気味の一撃により、ようやく――

『ガァァァァァァッ!?』

『アイスドラゴン』が怯み、スロウ状態でゆっくりともがく。
 リィズの『グラビトンウェーブ』を重ねることも考えたが、今の状態に目が慣れてしまっていることを理由にトビが却下。
 そのトビが慎重にタイミングを計り……スキルを発動!

「ここ! ……で、ござるかな? 多分!」

 いまいち頼りない言葉と共に放たれた『影縫い』だったが……。
 蛇のような目でこちらを見る頭部は、地上から6~7メートルほどの位置で停止した。
 怖っ……改めて近くで見ると大迫力だ。
 停止位置はベストでこそないが、セレーネさんの腕なら十分射程圏内のはず……!
 走って回り込んだ彼女の手元から、一条の矢が『アイスドラゴン』の首元を貫いた。

「おお! セッちゃん、行けぇー!」
「セレーネ殿、ゴーゴー! もう一発!」

 弱点命中時に威力が跳ね上がる『スナイピングアロー』によってHPバーが消し飛ばされ、『アイスドラゴン』は瀕死状態に陥った。
 凄まじい速度で次矢を装填するセレーネさんに呼応するように、支援者の杖が白い輝きを増していく。
 リィズが投げたMPポーションが着弾するのと同時に、『クイック』もセレーネさんに到達。
 一切無駄のない動きで、セレーネさんが止めの一撃を――クロスボウから二発目の『スナイピングアロー』を射出した。

『――!!』

 HPバーが弾ける。
『影縫い』が解けた瞬間に氷竜の形相は驚愕に彩られ、そのまま事態を理解することなく光に包まれた。
 力なく巨体が地に横たわり、周囲に雪が舞う。
 水色の体が冬山の空に消え去った後には……。
 原形を留めているのが不思議なボロボロの短剣が、その場に落ちたのみだった。

「お、終わっ――」
「ユーミル、しゃがむな! もう次のウェーブが来ているぞ!」
「何だと!?」

 恐らくは時間一杯、どうにか間に合った形だろう。
 レベル66のウェーブ、明らかに数を増したそいつらが、待っていたかのように山を駆け下りて来るのが見えた。
 およそ倍……もしかして、100体はいるのか!?

「多っ!!」
「どうする、ユーミル!? 進むか、退くか!」

 現時点の記録でイベント終了まで逃げ切れるかどうかは、正直微妙だ。
 これ以上の攻略が絶対に無理なら俺は撤退を進言するが、壁の耐久値的には五分五分である。
 そしてこんな時、いつだってユーミルの答えは決まっている。

「――無論、続行だ! 限界までな! ただし、いつでも撤退できるように引き気味で戦う……という感じで、どうだ!? 異議のある者は言ってくれ!」
「ないない、ないでござるよ! 兄貴たちだってきっとドラゴンは倒す……ならば、拙者たちがやることは一つ!」
「ええ。もう一踏ん張りして、私たちの勝利を確実なものとしましょう」
「ここまで頑張っておいて、負けちゃうのは悔しいもんね……行こう、ユーミルさん!」

 リーダーのユーミルに劣らず、何だかんだでみんな負けず嫌いだ。
 俺とユーミルは頷き合うと、敵の群れに向き直る。

「ハインド、撤退タイミングは任せる! 頼んだぞ!」
「よっしゃ! 俺と前衛二人は焙烙玉! セレーネさんはブラストアロー、リィズはグラビトンウェーブだ! 一体でも多く敵を巻き込め!」

 あと少しでも判断が遅ければ、敵集団が散り始めていたことだろう。
 まだ固まっている群れへ一斉に攻撃をかけ、当たらなかった敵に向かって各自分散。
 数が数だけに壁への被害も出てしまったが、どうにか目の前の敵の殲滅に成功した。
 そして続くレベル67のウェーブの敵、最後の一体を……

「こいつら、高レベルだけあって攻撃が激しいでござる! ――であっ! っしゃあ!」

 瀕死のトビが倒し切ったところで、俺は後方を確認した。
 壁の耐久値もおよそ5%……いや、3%か? とにかく、ミリだ。
 焙烙玉も尽きたし、スキルもほとんどWT……迷う要素も余力もないな。

「――撤退! 総員撤退!」

 速やかに門に集まり、撤退を開始。
 最終的な俺たちのイベント結果は、『アイスドラゴン』から数えて二つ目のウェーブ……レベル67の敵を倒した時点で、終了となるのだった。
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