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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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各々の連携

 アルベルト親子と再会した俺たちは、街中のカフェで腰を落ち着けた。
 店内の混雑状況はかなりのものだが、どうにか二つ分のテーブル席を確保。
 こちら側にはヒナ鳥たちと俺、アルベルト親子が四人掛けのテーブルに椅子を追加して座っている。
 向かいに座る親子のレベルは当然のようにカンストしており、防具の幾つかも更新されているようだった。
 注文したホットココアの中身をある程度飲んでから、俺は話を切り出した。

「まずは、依頼を引き受けてくださってありがとうございます」

 俺がそう言って頭を軽く下げると、慌てて隣に座るヒナ鳥たちもそれに続いた。

「「ありがとうございます!」」
「ありがとうございまー」

 今回アルベルト親子を雇ったのは彼女らのほうだ。
 サイネリアちゃんは、自分たちから話を切り出さなかったことに対して小さな声で俺に詫びた。
 そのために少し間を取ってみたのだけど……まぁ、仕方ない。
 預かっていたヒナ鳥たちの金を、俺は後ろ手で見えないようにサイネリアちゃんに渡す。
 彼女はそれを受け取ると、改めてアルベルト親子に話しかける。

「あの、こちらが前金になります。お受け取り下さい」
「ああ……確かに受け取った。これで今日からイベント終了までの期間、俺たちはギルド・ヒナ鳥の傘下に入る。よろしく頼む……フィリア」
「……よろしく」
「よ、よろしくお願いします!」

 雇ったからには、ヒナ鳥たちはある程度の成果を出さないと赤字になる。
 しかしながら生産活動で補填できないこともないので、その辺りは彼女たちのスタンス次第か。
 上を狙うにせよ、楽しんで快適にプレイするにせよ、腕の良いアルベルト親子がいれば自由自在だ。

「そういえば訊いていなかったな。ヒナ鳥たちは、どの部門のどの程度の順位を狙ってんの?」
「あ、そうですね。リコ曰く――」
「一番分かり易いやつで、なるべく上を目指します!」
「――だそうです。総討伐数……でしょうか?」
「ほう……ならば、私たちと勝負だな!」

 今回の『勇者のオーラ』は、一戦の「最高討伐数個人一位」に授与される。
 これに関しては、PT単位の総討伐数とほぼイコールなところがある。
 都市の壁を守るには、恐らくソロだと難しいだろう。
 結果的に、個人一位を獲るような記録を残せばPTも上位に食い込むと予想している。
 ユーミルの不敵な笑みにリコリスちゃんがたじろぐが、立ち上がったフィリアちゃんが近付いてポンポンと背中を叩く。
 それで力を得たように、リコリスちゃんは表情を引き締め直した。

「わ、私個人は勝てなくても、PTならきっと勝負になります! 勝負です、ユーミル先輩!」
「うむ、よく言った! それでこそ私の妹分だ!」
「はい! 頑張ります!」

 対決姿勢は見せつつも、別段敵対関係になったりはしない。
 二人の仲の良さにサイネリアちゃんが微笑み、シエスタちゃんはフラフラと体を傾けた。
 ――って、重い重い! なんでこっちに寄りかかって……あ、もしかして寝てる?
 サイネリアちゃんが位置を戻し、頬を痛くない範囲でぺしぺしと叩く。

「シー……シーってば! 起きて! すみません、礼儀を知らない二人で……」
「ごめんなさいー……体が温まったせいで、眠気が……」
「いや、見た感じ君たちはフィリアと同年代だろう? 普段通りにリラックスしてくれて構わない。俺たちも、普段通りに……普段通りに、全力を尽くすことを約束しよう」

 大人な対応と同時に、常に戦闘では全力であることをアピール。
 それに対して隣のテーブルのトビが感嘆の叫びを上げ、女性陣の冷ややかな視線を受けている。
 その後は互いに握手などを交わし、カフェを後にした。
 混雑具合が更に増してきたことで、これ以上ここで話をするのは難しいと判断したためだ。
 ユーミルとアルベルト親子に気が付いているプレイヤーもいたが、それほどの騒ぎにはならず……。
 やはり、イベント中のプレイヤーたちは自分のことで一杯一杯だ。



 イベント開催地である『城郭都市スクートゥム』は、『首都グラキエース』からフィールドを一つ通った先にある。
 馬はイベントでの使用不可、フィールドの距離も大したことはないということで首都の厩舎に預けてきた。
 今の俺たちは徒歩での移動となっている。
 そしてここ、『スカー平野』でやるべきことはただ一つ。

「イベント時のPTごとに別れて、連携確認タイムで。敵のレベルもそこそこで、丁度いいだろ」

 俺の宣言で、十人のメンバーは半々の固まりに。
 こちらは渡り鳥のメンバーで集まり、五人で小さな円を作って話を始める。
 すると早速、トビが疑問の表情でこんなことを口にした。

「そうは言っても、ハインド殿。拙者たちにはあまり必要ないのでは? 普段通りにやれば――」
「驕るなトビ! そんな考えでイベントを勝ち抜けると思っているのか、貴様!?」
「え」
「そうですよ。連携に完成などという言葉はないのです。図に乗らないでください」
「ええ」
「トビ君……各々スキルも増えたことだし、私たちも確認をしっかりやっておかないと」
「えええ」
「お前、リア山脈でもミスってた癖によくそんなことを言えるな。扱いが難しいのは理解しているけど、さっさと新スキルに慣れろよ」
「ええええ……あの、仰る言葉は至極もっともなれど、セレーネ殿を除いて一々辛辣なのはこれいかに」
「「「ドンマイ!」」」」
「うるさいでござるよ!?」
「あ、あはは……そっちの連携は完璧だね……」

 渡り鳥のメンバーが馬鹿をやっている向こうでは、ヒナ鳥プラス傭兵二人がサイネリアちゃんを中心に戦術や隊列を話し合っている。
 アルベルトが所々で助言をし、極々稀にシエスタちゃんが口を挟んで戦術を最適化しているようだ。
 リコリスちゃんとフィリアちゃんは、完全に聞き役に回って頷きながら話を聞いている。
 その一団の様子は普通に、娘とその友達の面倒を見る保護者の図だ。
 アルベルトがいれば、俺が何かしなくても上手くやってくれることだろう。

「では、基本はこれで」

 サイネリアちゃんがそう言って締め、目で合図を送ってきたところで俺たちは移動を開始した。



 傷跡スカーの由来となっている大きな亀裂を避けるように前進し、フィールドボスの下へと到着。
『スカー平野』のフィールドボスは、攻撃性が極端に高いマンモスの変種『クルーォルマンモス』だ。
 レベルは35で、それほど高くない。
 ただしHPと物理防御力が高く、連携向上を図るにはもってこいな敵であると言える。
 横目で見たヒナ鳥組の様子だが……。
 前衛三・後衛二のPTとなり、内三人が純アタッカーと攻撃力が高めだ。
 引き換えに回復・防御と搦め手には難があり、いかにリコリスちゃんがしっかり敵の攻撃を引き受けるかがPT安定の鍵となっている。

「私に任せてください! ――こ、のぉっ!」
「ナイスガードだ、リコリス! ……フィリア!」
「うん……!」

 敵の突進をリコリスちゃんが盾でいなしたのを見て、アルベルト親子が猛攻をかける。
 うおぉ……物凄い勢いでマンモスのHPが。
 相変わらずの強さだな、あの二人は。
 というより、フィリアちゃんの攻撃が以前よりも数段上の鋭さになっている。
 さすがにアルベルトには及ばないものの、彼女と同世代のプレイヤーに敵はいないのでは? と思わせるキレのある動きである。
 それに続くように、離れた位置からサイネリアちゃんとシエスタちゃんの遠距離攻撃が飛ぶ。
 即席パーティであることを考慮しているのか、ポジション固定の堅実な戦術を取っているようだ。
 かなり良い感じだが、デバフアイテムを使えばもっとダメージを伸ばせ――

「――っ!? 何故そこに出る、トビ!? 邪魔だっ!」
「あっれえ!? また距離感が――ぶぺらっ!」
「ぬおっ!?」

 こちらでは、前衛の二人が敵の目の前で衝突した。
 磁石が反発するように、派手に左右に吹っ飛ぶ。
 FF扱いとなり、微量のダメージが入ってトビが張っていた『空蝉の術』が割れた。
 衝突の原因はトビの新スキルにあり……。

「は、早く横にもう一度跳ぶのだ! それなら調整もいらないだろう!? そろそろ敵の攻撃が来るぞ!」
「しょ、承知!」

 短いWTが明け、トビの姿がユーミルの傍から掻き消えた。
 すると、真横の数メートルほど先に黒ずくめの姿が再出現。
 これは『縮地』というスキルで、超スピードや高速移動ではなく実質的には短距離転移と呼んでいいスキルである。
 使いこなせば攻防に渡って優秀なスキルになる……はずなのだが、高いプレイヤースキルを必要とされるらしく、トビはまだスキルの習熟に時間がかかりそうだ。

「またぶつかったね、二人とも……」
「どちらも新スキルが移動に関するスキルだったのが問題ですね。フットワークが軽くなった分だけ、そのままミスに繋がっているというか」
「位置を入れ替える交差のタイミング、互いの攻撃の間隔など全てがズレていますからね」

 あちらのパーティよりも高度な連携を目指しているとはいえ、あまり良い状況ではない。
 後衛メンバーは話をしつつも手を止めない。
 俺は『アタックアップ』をセレーネさん使用。
 リィズが『シャドウソード』の詠唱を始め、セレーネさんは『ストロングショット』を放つ。
『クルーォルマンモス』の攻撃を『挑発』で引き寄せたトビが躱す。
 攻撃を集中させるのに最適な位置……そこで敵を停止させた俺たちは、攻勢に転じた。
 弱点である鼻の根元が、攻撃に合わせて下がっている。

「ユーミル、決めろ!」
「応!」

 矢を再装填するセレーネさんの横で、MPポーション片手に俺は『クイック』の詠唱を開始した。
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