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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

北の大地にて

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軍事教練

 ミレスは練兵場に向かったのじゃろう――というアルボルさんの言葉に、俺たちは執務室から移動を始めた。
 そちらに向かう途上、ユーミルが俺を質問攻めにしてくる。

「なあ、軍事教練というのは何をすればいいのだ?」
「手段は色々あるそうだぞ。例えば装備そのものを兵士に与えてみたり、そのものじゃなくても生産技術を教えたり……」
「あ、私もどこかでその情報見たことがあるよ。私はそうしようかな……」

 セレーネさんが装備の供与という方法に興味を示す。
 既に情報があるということは、他国で同じようにクエストを行ったプレイヤーがいるということだ。

「それ以外だと、まず同じ職業クラスの兵士にスキルを見せる。すると、見たスキルを練習して習得したりとか」
「見せるだけなら楽ですね。むしろ、細かく訊かれてもゲーム側で処理されるので説明しようがありませんし」
「ああ。特に“詠唱”って言っても、実際に呪文を口にしているわけじゃないからな……普通に詠唱中も話せるし、それが止まるのは被ダメージ時とキャンセル時だけだ」
「そういえばそうでござるな。ハインド殿、もし呪文を口にしなきゃいけないシステムだったら――」
「絶対に魔法職を選んでないな。間違いなく別の職にしていたと思う。多分弓術士」
「私もハインドさんと同じですね。その場合は二人とも弓術士だったと思います」
「バランス悪ぅ!?」

 だって恥ずかしいじゃないか。
 それを楽しめるのは、ノリノリで呪文を口にできるタイプの人だけである。

「私はそのシステムだったら、逆に魔導士にしていたかもしれん! 楽しそうだ!」
「さ、さすがだねユーミルさん……私もちょっと無理だなぁ……」

 と、このように。
 そうなっていた場合、軽戦士、魔導士、弓術士、弓術士、弓術士か……酷いな。

「で、他にはアイテムを兵士にやるのもありだそうだ。トビ、投擲アイテムで量産されてもいいってやつを教えてしまうのもアリだぞ。生産方法から使い方まで教えておくと、兵士の標準装備になるケースもあるとか」
「なるほど、制式採用とは夢の広がる展開! 何か考えておくでござるよ!」

 隠しておきたいものまで教える必要はないが、誰でも思い付くような簡単な物はどんどん指導に使ってしまって構わないと思う。

「むう……ハインド、私にもできそうな簡単そうなのやつはないのか? 私は人にものを教えるのが苦手だぞ? 知っているだろう?」
「ああ。一番分かり易いのは、ひたすら一対一の模擬戦を繰り返すことかな。完膚なきまでに叩いた方が成果が高いらしいから、手加減なしで思い切りやって大丈夫だ」
「おお、それは分かり易い! 私向きだな!」

 ユーミルが気合を入れて拳を作る。
 これで一通り試されている方法は伝えたかな……あ、まだアレがあった。

「それと、ちょっと高度なものとして隊列の組み方だとか戦術・戦略指導ってのもあるそうだ。軍全体に大きな効果が生まれる分、難易度も相応に高いらしいけど」
「うむ。ハインド、それはお前に任せた」
「適材適所でござろう?」
「ぴったりですね」
「私もハインド君がやるのが一番良いと思う。何かあったら相談に乗るから」
「セレーネさん以外は丸投げかい……はいはい、分かったよ。一応、やってはみるさ」

 パーティ単位の戦術と軍隊の戦略では全然違うと思うが……本でも読んで勉強した方が良さそうだ。
 そもそもの基本事項として、軍事教練を行うと所属国の兵士のレベルを上げることができるらしい。
 現在のサーラの兵士は誰も教練に手をつけていないのか、初期のレベル25のままとなっている。
 一通り軍事教練のやり方を聞いたところで、ユーミルが新たな疑問を俺に投げかけてきた。

「教練の仕組みは分かったが、兵士のレベルを上げるのってどんな意味があるのだ?」
「さあ? 全然分からん」
「ぅおい!?」

 俺の言葉にユーミルは豪快にずっこけつつ肩を掴んできた。
 そんな反応をされても、俺にだって分からないことくらいある。
 むしろ分からないことだらけである。

「その内イベントなり新要素なり、何かに絡んでくるとは思うんだけど……まあサーラ所属のプレイヤーとしては、自国の軍事力を強化しておいて損はしないはずだ」
「報酬も一定成果ごとにスキルポイントの書が配置されているでござるしなー。頑張れば新スキルを取れるでござるよ?」
「おお、それはいいな! カンストしても微妙に取れなかったのがいくつかあるし!」

 そういえば、俺も気になっているスキルがあったな。
 話し込んでいる内に王宮から出て、練兵場へ続く道を進んでいく。
 丈夫な鉄の門扉をくぐると、そこにはミレスを始めとする戦士団が勢揃いしていた。



 渡り鳥のメンバー振り分けはこうなった。
 前衛戦士・模擬戦担当ユーミル。
 工作兵・アイテム強化担当トビ。
 魔導士・スキル指導リィズ。
 弓兵及び全体の装備強化担当、セレーネさん。
 そして神官・戦術指導が俺という形で収まる。

「では、お願い致します! 渡り鳥のみなさま!」

 ミレスが頭を下げ、戦士団がそれに続く。
 それを見た俺たちは、返礼した後にそれぞれの担当場所へと散っていった。
 ミレス団長の好感度が高いので非常にやりやすい状態だ。

「ハインド殿はこちらへ。早速隊長格を集め、戦術指導を――」
「あ、それは最後にしましょう。先に神官の教練を行います」
「そうですか? では、ご案内します。こちらへどうぞ」

 俄かに騒がしくなった練兵場の中をミレスの先導で歩くと、全体的に白っぽい服装の集団の前で足を止める。
 兵種別の訓練は、その兵種の隊長格を中心に指導を行えばいいという話だ。
 そんなわけで、俺の目の前には神官の代表者である女性が立ったのだが……。

「あれっ!? パトラ女王陛下!?」
「違います! 一緒にしないで!」

 神官服に身を包んだ黒髪・褐色の女性が、俺の言葉を強めに否定した。
 あまりにもそっくりなその容姿に、困惑しつつミレスに助けを求める。

「この御方は女王陛下の妹君……ティオ殿下であらせられます!」
「よろしくお願いしますね、ハインド」
「あ、ああ……これは失礼しました。よろしくお願いします、ティオ殿下」

 うわっ、やりづれえ! と思わず叫びそうになったものの、どうにか我慢した。
 更には王の妹が戦士団の一員という無茶な設定に、ついつい力が抜けるのを感じる。
 よく見るとパトラ女王を一回り幼くしたような容姿だ。
 あちらが妙齢の美女だとすると、こちらは瑞々しい少女のそれである。
 ミレスが補足するように説明を開始する。

「ティオ殿下は生まれながらに天から神聖な力を授けられ、聖女として国民から絶大な支持を得ている御方でもあります! もしかしたら、ハインド殿のご指導も必要ない可能性がありますが……」
「おやめなさい、ミレス。折角来ていただいたのですから、私は指導を受けます。例えそれが、どんな結果になろうとも……ね?」

 聖女という呼び名に、このちょっと調子に乗っている感。
 目が曇ってるぜ、ミレス……現に、後ろの神官部隊の兵士たちは隠し切れない不満を湛えた表情をしている。
 この性格の矯正もクエストに必要なことなのだろうか?
 俺たちが一番手のせいなのか、それとも誰も教練をせずに放っておいたからこうなってしまったのか?
 分からないが、俺にできることは神官としての技術指導だけである。
 他のことは面倒なので、この際思考を放棄することにした。
 挑発? 無視無視、付き合ってられっか。

「じゃあ、早速始めましょうか。最初にやることは簡単。あちらの……ユーミルにのされた連中の治療をいかに効率よく速く行うかです。ミレス団長、貴方もユーミルの模擬戦に参加してくださると嬉しい」
「了解しました。後はお願いします!」

 ミレスが駆けて行き、王妹殿下は俺が挑発に乗らなかったことにつまらなそうな顔をした。
 この辺は完全に姉妹だよなぁ……パトラ女王も似た部分がある。
 こうやって相手を品定めしているのだ。
 ユーミルには訓練モードの設定で、終了時にダメージを回復しないように設定してもらっている。
 双方必ずHP1の状態で止まるので戦闘不能になることはないが、終わってもダメージはそのまま。
 まずは自分の現状を知れば、多少はこの聖女様とやらの態度も変わるのでは? と予想しつつ。
 NPCにはレベルが見えないのだろうが、何せ彼我のレベル差は20以上あるのだ。
 そのレベル差を利用した教練も、最初の内はきっと有効だろう。
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