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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

大型アップデートと新コンテスト

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奇跡のキノコ

「実に美味かったぞい……ふうう……」
「本当に全部食いやがったぜ、この爺さん……」

 ポル君の言った通りで、お腹の形が変わるレベルで食べた様子だが大丈夫なのだろうか?
 いい笑顔で食後の茶をすすっている。
 俺達がじっとそれを見ていても、キノコ長老は何食わぬ顔だ。
 ……あの、とっておきの情報とやらは?

「――おお、そうじゃったの! と、その前に……」

 長老がポンと手を合わせると、視界の中に文字が躍った。
 食評価:Sランクと表示されているが、これは一体……?

「まずは今の料理の総評からじゃ。一つ一つの素材のしっかりとした魅力を、優しい味付けで見事にまとめあげておる! 帝国では馴染みのない味じゃったが……」

 あ、そこ気にしちゃうのか?
 説明が面倒だからできれば――

「まあ、よい! 美味ければそれでよい! なにせ来訪者のすることじゃしの!」

 良かった、和食に関してはスルーされた。
 帝国領はかなり洋食寄りの食文化で、和食そのものをまず見ることはない。
 そして美味ければいいという意見にポル君が大きく頷いている。

「何よりも、お主がキノコがメインになるような料理を持ってきたことをワシは高く評価したい! キノコは添え物のみに非ず! 何じゃあいつら、キノコ料理と言ったら出してくるのがステーキの添え物だったり汁物のオマケじゃったり。終いにゃ低評価を受けて実はキノコの食感が嫌いだの香りが嫌いだの、だったら食うな! とワシは言いたい! キノコが主役足り得る力を持った食材であるということを、広く広く伝えていくことで――」
「長老さん」
「あ? 何じゃ? 人が気持ちよく話しているというに」

 と、そこまで無言で話を聞いていたリィズが椅子から立ち上がった。
 目が攻撃的である。

「話が長い」
「……」

 バッサリと切り捨てる言葉に、あんぐりと口を開けた長老を俺達の顔を順番に見る。
 しかし、俺達もリィズと同意見である。
 あまり長話が続くようだと、東に行くための時間が無くなってしまうじゃないか。
 うんうんと頷く俺達に、長老は軽く咳払いをした。
 どうやら話が長いという自覚はあったらしい。

「うぉっほん! まぁ、何じゃ……何も、ワシは添え物としてのキノコを否定したいわけではない。その証拠に、お主らに与える情報は素材の味を限界まで引き出す奇跡のキノコ――その名もペレグリーヌス・フングス!」
「ペ、ペレ? ……ペレギ……」
「ペレグリーヌス・フングスだってさ、ポル君」
「そ、そのキノコはどこにあんだよ?」

 直訳するとラテン語で奇妙なキノコ……で、合っているだろうか?
 長老の話は続く。

「本当の名は別にあるがの。対外的にはペレグリーヌス・フングスで通しておる。この町の先にあるオリエンスの山、そこの頂上にある三本松の根元でこいつを撒け」

 長老が棚の引き出しを開き、中から取り出した小さな袋を俺に手渡してくる。
 もそもそという軽い感触に、開いて袋の中身を見てみると……。

「……おがくず?」
「そいつはこのおがくずが大好物なんじゃ。そいつを撒けば香りに誘われて……」
「ちょっと待った。キノコの話ですよね? 猪とかじゃないですよね?」
「キノコの話じゃよ? ――なんじゃ、ワシを疑っておるんか!? とっておきの情報じゃぞ!? この情報を教えたのは、お主らでまだ五回目じゃからな!」
「少なっ!」

 でも、そんな撒き餌みたいな手段ということは……いや、止めておこう。
 何が出るにしても、やってみれば分かることだ。

「それと、そのおがくずは特別製な上に貴重品じゃ。乱獲を防ぐために、この町でも数人しか製法を知らん秘中の秘。大事に使うんじゃぞ? ついでに、三本松以外の場所で使用しても無意味じゃからな」

 長老のこの言葉はゲーム的に翻訳することが出来る。
 おがくずをプレイヤーが複製することはは不可、そして無くしてももう一度気軽に貰うようなことはできない。
 ただし、おがくずの再入手自体は町に居る製法を知っている長老以外の数人――つまり他のNPCを通じて得られる可能性があると。
 話をまとめると、回数限定のレア食材ってことになるな。
 いいじゃないか……!

「ではの、お主ら。馳走になった!」

 そう言うと、長老は部屋の奥へと重そうな腹を抱えて去っていった。
 奥はプレイヤーの侵入不能エリアだ……どうやら話はこれで終わりということらしい。



 そして現在、『オリエンスの山』の山頂へと到着した俺達は松の木を探し当てたところである。
 ポルフォル兄妹の新装備の成果は上々で、まだまだ詰める余地こそあるが徐々に安定感が出てきた。
 戦闘時の表情も以前とは違い、楽しそうなものに変化してきてこちらとしても嬉しくなる。

「しかし、やっぱり出て来るのはモンスターだよな……」
「でしょうね。ぼかす意味が分からないくらいに、言い方がおかしかったですから」
「キノコのモンスター……でしょうか?」
「え? 何言ってんだお前ら?」

 すっとぼけた返答に、俺達三人は一斉にポル君を見た。
 そして一斉に元の方へと向き直り、そのまま話を続ける。

「急に高レベルモンスターが出てきたりはしませんよね?」
「大丈夫じゃないか? 基本的に、クエスト関係でもフィールドに準拠したレベルの物が主だって聞いているし」
「今回のものが例外に当てはまらないといいのですが」
「そればっかりはやってみないと分からないな。逃走不可ってことはないだろうから、状態異常にだけ気を付けて呼び出してみようか」
「特に注意が必要なのは、動けなくなる痺れや睡眠ですね。フォルさんとポルさんが、普段通りにきちんと前で抑えて下されば大丈夫ですよ」
「が、頑張ります!」
「おがくずを撒くとキノコがニョキニョキ生えてくるんじゃねえの? おーい」

 念のために武器を構えてから、俺は松の木の根元に『特製おがくず』を撒いた。
 キラキラと光を放ちながら、一帯におがくずと共に木の良い香りが広がっていく。
 武器を手にしたまま、撒いたその場からじりじりと後退しておく。
 待つこと約数秒。
 しかし、モンスターが現れる等の思ったような変化は訪れず……。

「……あれ? 何も起きないみたいですけれど」
「来ませんね、モンスター」
「まさか……」

 俺達はポル君の方を見た。
 キョトンとした顔で見返してくるポル君だが、果たしてその直後――

「うわぁぁぁ……凄い」
「綺麗……」
「ポル君の方が正解だったのか……武器を構えて気合を入れていたのが恥ずかしいな」
「だからお前ら、何の話をしてたんだよ?」

 松の木とおがくずの間から輝く白いキノコが、ひょっこりと顔を出している。
 それは柔らかな光を放ちながら、神秘的な雰囲気さえ纏い……。
 確かにこの急激な反応はキノコの生態としては異常で、奇妙なことには違いない。
 だから『ペレグリーヌス・フングス』という名前が付いているのだろう。
 戦闘態勢を解き、次々と現れるキノコの様子を注視する。

「なんか、俺達ひねくれてるのかな? って今回の件で少し思った」
「ですね。ゲームなので、何でもアリと言えばそうですから……もう少し言葉を素直に受け取った方がいいのかと、反省してしまいますね」
「わ、私もそうなんですかね?」
「いやいや、フォルさんは俺達に引っ張られただけでしょ。ごめんね、結果的に無意味に脅かすような真似をしちゃって」
「あ、そ、そんなことは!」

 フォルさんは周囲に合わせるのがとても上手だ。
 恐らく、こういうお兄さんと一緒に居る内に必要に駆られて身に着けた能力だろうけれど。

「やっぱお前らの話は今一つ分かんねえ。さっきから何なんだよ? 俺にも分かるように話せよ」
「気にしなくていいよ。要はポル君は凄い! って話だから」
「ん? そうか? ぬははははは!」

 このくらい単純な方が、事態を難しくしなくて済む。
 そういうことも往々にしてあると、周囲で傘を開く『ペレグリーヌス・フングス』を見て思った。
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