挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

大型アップデートと新コンテスト

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

174/352

グダグダPTと改善への道

「あのう、ハインドさん。ユーミルさんのこと、色々教えて欲しいんですけど……」
「ユーミルのことを? んー……じゃあ、君達のことも少し聞かせてくれると嬉しい。もちろん、話せる範囲で構わないから」
「はい!」

 フォルさんは無愛想な兄の分を補うように、積極的に話しかけてくる。
 俺は話のネタが尽きないようにと、簡単な交換条件を出した。
 特にポル君は、とてもMMOをやるような人種には見えないので事情が気になっている。
 普通に他のプレイヤーとパーティを組めているのか疑問だ。

「私達がこのゲームを始めた切っ掛けは、お兄ちゃんが一緒にやろうとバイト代で――」

 バイト代で二人分のVRギアを買ったのか? あんなに高いのに?
 ポル君、いいところあるな……って、この話の流れで本当に大丈夫か?

「ちょ、ちょっと待った。そんなリアルの事情を、初対面の相手に話しちゃって大丈夫?」
「あ……で、でももう話し始めてしまったので。こ、個人情報とかは言わないので大丈夫です! はい!」
「気を付けてくださいよ? このフィールドだって、私達以外の人が皆無というわけではありませんから」

 リィズが視線で示すと、軽装の三人のプレイヤーが近くを走り抜けていく。
 頭上の表示アイコンを見るに、全員軽戦士か?
 前イベのアルテミスの活躍からこっち、職種を問わず統一PTが増えたという話も聞く。
 フォルさんは一瞬口を噤み、今度は慎重に言葉を選ぶような仕草を見せる。

「は、はい……分かりました。あの、それでですね。実は私、心因性の喘息がありまして……」

 また微妙にリアル事情かつ重い話が。
 俺とリィズはどんな顔でそれを聞いたらいいのかよく分からない。
 でも、酒場で咳き込んでいたのはそういうわけか……。
 ポル君があれだけ心配する理由も、多少は納得がいった。

「それで、VRで思い切り動ければ現実にも良い影響が出るんじゃないか? ってお兄ちゃんが」
「あ、確かにそれは効果がありそうだ。良いと思うよ」
「本当ですか!?」
「心因性なら特にね。な? リィズ」
「ええ。心理カウンセリングにVR装置が使われているのは有名な話ですし、可能性はありますね」
「それにしても、優しいじゃないかポル君。良いお兄ちゃんなんだな」
「はい!」

 あの見た目で損をしている感が酷いが。
 背を向けた彼の耳が赤くなっているのを見るに、今の話が聞こえていたのだということが簡単に分かる。

「――テメエら! お喋りも結構だが敵が来てんぞ!?」
「はいはい、照れ隠し照れ隠し」
「ああ!?」
「話の途中だけど、取り敢えず目前の敵を倒そう。リィズ、デバフの振り分けはさっきと同じで」
「はい」
「フォルさん、そんなわけで前衛よろしく」
「は、はい! 頑張ります!」

 このPTで行う戦闘はこれで二度目となる。
 ポル君はメイスを、フォルさんはロングソードをよろめきながら取り出して構えた。
 うーん……正直、フォルさんの方は武器が合っていないように感じる。
 そのロングソードというチョイスも、ユーミルリスペクトの賜物なのだろうけど。
 敵モンスターは2体、狼型の魔物である『ランドウルフ』レベル23と24。
 そしてポル・フォル兄妹のレベルは、どちらも募集時に下限とした30きっかりである。

「オラッ!」

 ポル君がメイスですくい上げるようにぶん殴り、狼が宙に吹っ飛ぶ。
 ……おかしいな。メイスじゃなくて金属バットを振り回すヤンキーにしか見えない。
 喧嘩慣れでもしているのかこちらは踏み込み良し、思い切り良しと前衛として申し分なしである。
 彼へのバフは『アタックアップ』、対面の敵にリィズがデバフで『ガードダウン』を使用。

「や、やぁぁ!」

 対するフォルさんの方なのだが、若干腰が引けている。
 バフは『ガードアップ』、対面の敵に『アタックダウン』……本当は職業特徴的に、ポル君と使う物を逆にしたい感じなのだが。
 最短で倒したいなら俺がリィズに『マジックアップ』を掛けた状態で『ダークネスボール』を放つのが正解ではある。
 しかし今は良くても、敵のレベルが30付近になった辺りから攻撃力不足に陥るのは必定である。
 ……つまり、何が言いたいかというと。

「やっぱり、少し訓練して貰わないと途中で詰まるよな?」
「そうでしょうね……特にフォルさんは、自分の職業に対して動きがチグハグですし」
「いや、ポル君はポル君でやばいぞ?」

 攻撃力を活かせないフォルさんに対し、一見ポル君は防御力を活かした立ち回りが出来ているようにも感じられる。
 しかし、フォルさんが少しでもダメージを受けるとそれは一変する。

「きゃっ!」
「フォル! 大丈夫か!? 今すぐに兄ちゃんが治してやるからな!」
「――あ、また始まった! 駄目だってのポル君! 回復はこっちでやるか――あー、敵が来た! リィズ!」

 既に『ヒーリング』を詠唱していた俺の方に、『ランドウルフ』が二体迫る。

「はぁ……了解です。こうして組んでみると、いかに私達のギルドの二人がまともだったのか分かります」
「あいつらの動きは前衛としてはトップクラスだぞ? 一応。ミスが多いのはご愛敬だが――ぬおっ!」

 詠唱を中断し、杖で牙による一撃を防ぐ。
 リィズは魔導書の角で狼の眉間を殴りつけた。
 結局、そのまま俺とリィズがレベル差を利用してランドウルフを殴殺する羽目に。
 いかん、このままじゃまるで使いものにならない。
 俺達はどうやら、かなりのハズレプレイヤーを引いてしまったらしい。
 よくこれでレベル30に到達できたな……。



「すみませんでした……本当にすみませんでした……」
「もう謝らなくていいよ。この一帯は敵が少ないから、ここで休んで次の戦闘のために改善策を練ろう」
「――! 見捨てないでいてくれるのですか!? 普通のパーティなら、とっくに放逐されている頃なのに……ありがとうございます! ありがとうございます!」

 フォルさんの話によると、今まで組んだPTでも上手くいかずに直ぐに解散になっていたらしい。
 ポル君の顔を見ただけで結成前に逃げ出すようなプレイヤーも居たらしく、こうして事情を聞くと中々に不憫な状況である。
 さすがのポル君も、今の戦闘内容の不甲斐なさにバツが悪そうにしている。

「悪い……妹のことになるとつい、よ……」
「やっぱりポル君はシスコンなんですか?」
「!?」

 あ、リィズがとうとう我慢できずにポル君にその質問を……。
 口をパクパクと開閉させていたポル君は、ややあって顔を背けて「悪いかよ……」と呟いた。
 シスコンヤンキーお兄ちゃんとは、なんとも不思議な生き物だな。

「か、過保護なんです、兄は……私の体が弱いせいもあるんですけど……。でもハインドさん、本当に宜しいのですか? 私達なんか放っておいて、他の方達と東に向かった方が早くありませんか……?」
「まぁ、そりゃそうなんだけどね。ヘイトの管理ミスならともかく、前衛がポジション放棄して敵を後逸なんて、正直論外だし」
「くっ……」

 ポル君が悔しそうに歯噛みする。
 そこで俺に食ってかかって来ないということは、自分達の現状に一定の理解があるということ。
 だったら、改善の余地は充分にあると思う。

「でも、今のところはこのパーティを解散する気はないよ。俺、このTBってゲームを気に入っているんだよね。だから、なるべく長く続いて欲しくてさ」
「……はい? あの、仰っている意味がよく……私達を見放さないことと、それに何の関係が……?」
「オンラインゲームが終わる理由の多くは、主にプレイヤー人口の減少――つまりは過疎だろう? だから、俺は本当にどうしようもない人達以外とはなるべく楽しく一緒にプレイしたい。そして、出来ることなら長くTBをプレイしてほしい」
「「……」」

 楽しく、長く、という言葉を聞いた兄妹の顔に一瞬だが暗い表情が差す。
 やっぱり、こんなPTもまともに組めないような状態は楽しくないよな。

「君達の今の状況を見ているとさ……そう遠くない内に、このゲームをやめてしまいそうな気がして。お節介な上に鬱陶しいかもしれないけれど――」
「そ、そんなことはありません! そんなことは……本当にありがとうございます、ハインドさん……!」
「そっか。なら俺のお節介、受けてくれるかな? ま、そんなに時間は取らせないよ。少し考え方を変えれば、すぐに良くなるさ」

 フォルさんが泣く寸前のような表情で何度も頷く。
 そして、ポル君は――

「ハインド……ハインドよぉ……! アンタぁ、スゲエ奴だ! ありがとう、ありがとうよぉぉぉ!」
「男泣き!? いや、ポル君ちょっと待っ――抱きつくなぁぁぁ!」

 しばらく震えていたかと思うと、号泣しながら俺に抱きついてくる。
 溜息をつくリィズと目の端を拭うフォルさんは、何故か見ているだけで助けてくれなかった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ