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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

大型アップデートと新コンテスト

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初めてのPT募集

 サーラでは『デザートスコーピオン』の他に『ファイアガゼル』『サーラオオトカゲ』『ファイアアント』などの魔物を倒しながら東進。
 得た食材は様々だが、中でも『ファイアガゼルのもも肉』は美味しそうな食材である。
 他は昆虫やら爬虫類なので、正直……。
 やはり過酷な環境からか、乾燥や暑さに強い生物ばかりなので食材としては今一つ。
 故にこれから向かう先では、是非ともメインに据えられそうな有力な食材をゲットしたいところ。

「てなわけで、数日ぶりのヒースローだな。相変わらずプレイヤーの数が半端じゃない」

 厩舎にグラドタークを預け、俺は体を解しながらヒースローの往来を眺めた。
 フード付きローブは既に装着済みで、お世辞にも視界が良いとは言えないのが難点だが。
 その光景を見ていると、今でもTBに新規が増え続けているというのが本当なのだと実感出来る。
 これだけの人が居て、何故サーラにはプレイヤーが来てくれないのだろうか……? 求む、砂漠の仲間。
 リィズも風で乱れた服を整えながら、俺と同じように道の先に視線をやる。

「ですね。ここでPTを募集すれば、難なく人を集めることができると思います。重要なのはここからどこへ向かうか、ということですが……」
「折角だから、まだ行ったことのない土地を目指して行きたいと思うけど。リィズはどうだ?」
「兄さんの行きたい場所が、私の行きたい場所です」
「お、おう。それ、前にも同じことを言っていなかったっけ? 取り敢えず、いつもの酒場に入ろう」

 質問の答えになっていない気がしたが、俺の意見を尊重してくれているのだと思っておこう。
 俺達にとってヒースローでは定番となっている、渋いマスターが経営する酒場へと足を向けた。



 TBの大陸は全部で五つの国に分かれているわけだが、俺達がまだ行ったことが無い場所は二か国。
 東にある森の国『ルスト王国』と北にある山の国『ベリ連邦』だ。
 トーストを齧りながら、俺とリィズはカウンター席で隣り合わせに座って休憩している。

「距離はどちらに向かっても同程度。ただ、山が険しい分だけ北の方が移動が辛いかもな」
「北は鍛冶師が多い場所でしたよね。食材的にはどうなのですか?」
「それなんだけどな……」

 北の『ベリ連邦』は鉱物資源こそ豊富だが、寒さが厳しく作物にはさして期待が持てない。
 なのでTB世界の大陸の中で食材を得るのに適した国は、海洋資源が豊富な南『マール共和国』と、肥沃な土地を持つ東『ルスト王国』の二つということになる。

「こうやって条件を並べると、未見の土地で食材が豊富な――」
「ルスト王国ですね? 兄さん」
「うん。リィズはここまでで、何か気になってることってあるか?」
「特には。ただですね、確か次の料理コンテストの主催者が……」
「そうそう。ルストの国王夫妻と、その娘である姫様なんだよな。王族全員が美食家って設定だったかな? 確か」

 それぞれ担当が決まっていて、肉・魚料理の審査が国王様、スープと野菜が王妃様、甘い物が姫様だったか。

「リィズの言いたいことは分かってる。方式的にはサーラで主催したアイテムコンテストと同じだから、可能であれば――」
「はい。その人達の食の好みに関して、探りを入れることにしましょう。食材探しと合わせて両方達成出来れば、とても効率が良いと思います」

 リィズが俺に対して、微笑みながら話しかける。
 こいつとは考え方がよく似ているので、話し合いは齟齬もなく非常にスムーズだ。
 応えるように俺も二ッと笑い、トーストを完食する。

「OK、なら目的地はルスト王国で決まりだな。そしたら、次は早速PTを募集しよう」
「その前に……兄さん」
「ん?」

 疑問の声を上げるよりも速く、リィズが俺の腕を抱え込む。
 そのまま体を寄せ、頭も体重ももたれかかるようにこちらに預けてくる。
 ……どうしたんだ? また甘えモードか?

「PT募集ということは、こうして二人で居られるのもあと少しの間ですから……駄目、でしょうか?」
「これくらいなら、特に何も問題ないよ。どうせ誰もこちらを気にしていないしな」

 酒場内は騒がしく、現実でも良い時間ということもあって酔っているプレイヤーも多い。
 フードを被っていて俺もリィズも正体が分からない状態だし、少しくらいなら。

「でも、帰りは一度突破したフィールドをグラドタークで通るからまた二人きりになるぞ。それまで我慢――」
「………………」
「わ、分かった、分かったから。全然嫌じゃないってば! 満足するまでくっついてて良いから。だから、そんな顔をするなよ……。まるで俺が苛めているみたいじゃないか」
「兄さんはイジワルです……」

 涙を溜めた色素の薄い瞳が、俺を責めるように見上げる。
 ……勘弁してほしい。
 妹の涙に勝てた試しはないのだ、昔から。



 野良PT募集は、メニューを操作して登録することで一定距離内の町や村に居るプレイヤーへと一斉に通知される。
 ここヒースローなら、この町のプレイヤーだけでPTを組める可能性が非常に高い。
 まずは自分達の情報を登録し、続けて目的地の設定だ。

「ルストまでの長距離PTを組めれば一番だが、どうしよう? 刻んだ方がいいか?」

 恐らくだが、国境付近までなら野良PTでも一晩で到達可能だ。
 それでも距離はそれなりなので、拘束時間が長く、この条件で集まるかどうかは分からない。

「まずは長めのルスト最西の町――国境の傍にあるウェストウッズまでを設定して様子を見ましょう。それから少し待って集まらなければ、今度は近めの場所に変更しませんか?」
「――だな、そうしよう。えーと……ウェストウッズは……」

 目的地の設定方法は地名を直接入力するか、開いたマップの一地点をタッチして設定するかのどちらかだ。
 ここからの距離を確認する意味も含め、俺はマップの中から『ウェストウッズ』と書かれた町を探す。

「……マップのここか。募集人数は二人以上、四人から出発で良いか?」
「そうですね。前衛が最低でも二人は必要かと」
「了解……お、そういえば募集する職を指定できるんだったな。さて、どうするか」

 TBもサービス開始から少し時間が経った。
 避けては通れない職格差というのも徐々に露になり、いわゆる上級者向け職業、または地雷職と呼ばれる職業も残念ながら存在している。
 しかし、俺達としては前衛職であれば贅沢は言わない。
 弓術士の近接型や神官の前衛型など、特殊な前衛職にも全てチェックを付ける。
 ここは大事な作業だ。
 コメントを良く見ずに参加する人やPTのバランスを考えない人は多いらしいので、システム側で先んじて除外してもらう必要がある。
 今回の場合は、後衛のプレイヤー全てがこれに該当する。

【ヒースローからルストへの移動PTを募集します】
目的地:ルスト王国・ウェストウッズの町
出発地:グラド帝国・ヒースローの町
フィールド踏破状態:未
PT人数:2/5人(4~)
待機中:神・支ハインド(48)魔・闇リィズ(48)
PT不可:魔導士、弓・連、弓・単、神・支、神・バ
レベル制限:レベル30~
プレイスタイル:道中の敵を倒しながら
コメント:前衛の方が2人以上集まった段階で出発となります。
距離があるので長時間になりますが、よろしくお願いします。

「……これでいいかな?」
「問題ないと思います」
「じゃあ決定、と。マスター、ミルクを二つください」
「後は待つだけですね。今の内にインベントリ内の整理でも――」

 そう言ってリィズがメニュー画面を開く前に、『ピロン』とメールと似た通知音が二連続で鳴る。
 リィズ側でも同様のようで、手を止めてこちらを見ている。
 俺は慌ててメニュー画面を開くと、PT募集の状態を確認した。

「――早っ! もう来たのか!? ええと、四人になったから取り敢えず募集を締めるぞ?」
「は、はぁ……あの、兄さん? 簡易マップに表示された光点が、物凄い勢いでこちらに向かって移動しているのですが」
「へ?」

 PTを組んだ相手にはマーカーが付き、互いの所在地が明らかにされる。
 視界の中に表示された二つの矢印の下の距離も、どんどん数字が減っていき……。
 壊れんばかりの音を立てながら、酒場の扉が蹴り開かれる。
 激しい音に酒場内の空気が凍り、入口へと視線が殺到した。

「……」

 耳にはピアス、逆立てた金髪、剃り込みの入った眉、そして鋭い目付きで無意味にガンを飛ばしまくるその仕草。
 まさかとは思ったが、無情にもマーカーはその人物を指している。
 続けて、申し訳なさそうな表情で今度は普通の女の子がそろそろと酒場に入ってきた。
 もう一つのマーカーはその人物に表示されている。
 金髪の少年は集まった視線の一つ一つに対して、蹴散らすように睨み返しながら進み……俺達の前に立つ。
 そして一言、

「アンタがハインドか?」

 と告げたヤンキー少年は、こちらを見下ろして不敵な笑みを浮かべた。
 なんか、変なのが来ちゃったなぁ……。
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