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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

複合型レイドイベント

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イベント開始と船の選択

「欲しい! 欲ーしーいーぞー、ハインドー」
「……何で駄々っ子みたいな言い方なんだ?」

 翌日、イベント開始当日。
 ログインして報酬を確認するなり、ユーミルがメニュー画面を開いて俺の前に突き付けてくる。
 近過ぎて何も見えねえよ……。

「どれだ?」
「これだ!」

 ユーミルの顔面ごと押してメニュー画面を遠ざけつつ訊くと、報酬一覧の一番上を指している。
 またか? またトップ報酬なのか?

「……ん? “勇者のオーラ”――って、もう既に持ってるじゃん! アホか! 二個もいらねえだろ!」
「よく見ろ! 隣に注意書きが書いてあるだろう!?」
「何々……既に所持している場合は、全ステータス+5の能力が付加されます。はー、一応取る意味はあるのか。でもこれ、労力に見合ってるか? どう思います? セレーネさん」

 セレーネさんが自分の頭の中のデータと照らし合わせるように左上を見る。
 凜のギルドホーム内、借りた部屋にヒナ鳥を除く全員がログイン済みだ。

「確かに+5だとアクセサリーとしての効果はそれほどでもないかな。でも、仮に今後も“勇者のオーラ”を受け取る度に強化されるなら、話は変わってくるよ」
「魔王ちゃん関連のイベントで上位を取り続ければ、並のアクセサリーよりも強力な物になる可能性があるのか。やたら難易度高いですね」
「気の長い話でござるなぁ……」

 勇者のオーラの取得条件は『個人総ダメージランキング1位』か……持久力と火力の両立が必要だな。
 一発勝負じゃない分『サクリファイス』の出番が無さそうでホッとしたが。

「ですが、ただのお飾りのアクセサリーでは無くなった分だけ競争が激しくなるのでは?」
「ああ。副賞の賞金も額が多いし、リィズの言う通りになるだろうよ」

 賞金は200万Gと、個人ランキングの中では高額となっている。
 ギルド部門・同盟部門1位の賞金は3,000万Gと桁が一つ違うが。
 これは山分けを考慮されての金額だろうけれど。

「しかし、これを実際取るのは大変だぞ。前回の一発勝負と違って総ダメってことは、なるべくべったりゲームにログインしなきゃならんし」
「何を!? 勇者のオーラは私のものだ! 他の誰かが使っているところなど見たくない!」
「こいつぶっちゃけやがった。要は独占欲かよ……別に構わんが」
「へ? 構わんのでござるか?」
「だって俺、今回は特に取りたいものが無いし。皆は何か狙いたい報酬ってあるか?」

 俺の言葉に、メンバーが思い思いに報酬画面のページを移動していく。
 その間に、つい先ほど済ませたギルド間での話し合いの結果を伝えておくことにする。

「同盟方針としては、無難に討伐回数上位を狙うんだそうだ。得た賞金はギルドの規模を問わず参加した一人一人に等分配。特に活躍した個人に関しても、勝手に個人ランキングに入るだろうということで考慮しないって感じに決まった」
「無論、個人やギルドに対するノルマとかは一切無しだ! ゲームでノルマとか、ちゃんちゃらおかしな話だし当然だがな!」
「ギルドや同盟によってはありそうで、笑えない話でござるが……」

 まぁ、そもそもプレイに対するスタンスが遠かったら最初から同盟をお願いしていないが。
 そういうガチガチのギルドも、今回はランキングを上がってくるのだろうか?

「あ、そしたら拙者はこの回避回数ランキングでも狙うでござるかな。報酬が憎しみの蒼玉……ヘイト増幅アクセでござるし。前線で勝手に狙うので、お構いなく」
「私は特にありませんね。仕方ないのでユーミルさんのサポートでもしておきます」
「仕方ないので!? 普通に手伝うと言えんのか貴様は! 礼も言う気が無くなるわっ!」
「礼……? ユーミルさんからの礼なんて要りませんけど? 何を言っているんですか?」
「ふんがーっ!」
「こらこら。喧嘩すんな」

 俺はリィズに飛び掛かろうとするユーミルの襟首を引っ掴んだ。
 余りドタバタされると畳が傷みそうで怖い。

「セレーネさんは?」
「私も特にないかな。ユーミルさんのサポートに回るよ」
「ありがとうセッちゃん! どこかの小さいのとは大違いだな!」
「は? 余り調子に乗っていると、ユーミルさんにアタックダウンのデバフを掛け続けますよ?」
「じょ、冗談だ! そんなことをされたら取れるものも取れなくなる!」

 バフよりもデバフの方が効果が大きいからなぁ……。
 リィズがその気になれば、ユーミルの足を引っ張って蹴落とすのは実に簡単である。

「OK。そしたらヒナ鳥ちゃん達が来たら――」
「呼びました?」
「うひぃぃぃっ!?」

 話している途中で空間が歪み、眠そうな表情の女の子が目の前にアップで登場。
 俺は体勢を崩して割と情けない悲鳴を上げた。
 続いてリコリスちゃんとサイネリアちゃんも、間を置かずに近くにログインしてきた。

「「こんばんは!」」
「お、おう。こんばんは」

 おかしいな。三人とも昨夜ログアウトした位置からちょっとずれてないか……?
 ま、まぁいいや。とにかく今はイベントだ、イベント。

「――と、取り敢えず港に向かおう。イベント専用の船のレンタルが始まっているそうだから、まずはそれだな」
「先輩、うひぃぃぃって何ですか? うひぃぃぃって。誤魔化し切れてませんよ?」
「プククッ、ハインド殿だっせえ! シエスタ殿、グッジョブ!」
「うむ、今の悲鳴はダサかったな!」
「うっさいてめえら! おら、さっさと行くぞ!」

 俺は荒々しい足取りで立ち上がると、真っ先に部屋を後にした。
 凜のメンバーもシリウスのメンバーも、もう港に集まっているはずだ。



 ノトスの港はプレイヤーでごった返していた。
 セーピア水域に最も近い港なので当然なのだが、これはちょっと身動きが取り難い。
 それでも船着き場に続く列はゆっくりと進み、こちらに気付いたキツネさんが大きく手を振って位置を知らせてくれる。

「みんな、こっちこっち! ――あー、凄い人の数だねえ!」
「そうですね。ミツヨシさん、船の種類ってもう判明してます?」
「ああ、昼間の内にウチの暇なのが見ておいてくれたよ。俺達の場合、大型一隻で出るかギルド別に分けて中型を並べるかって感じになるかな」

 ミツヨシさんが話した船のグレードは、以下の通りだ。

 いかだ……0G、1人用。
 小型帆船(木造)……10,000G、1~20人用。
 中型帆船(木造)……80,000G、1~50人用。
 大型帆船(木造)……200,000G、1~250人用。
 小型魔力帆船(鉄甲)……100,000G、1~20人用。
 中型魔力帆船(鉄甲)……800,000G、1~50人用。
 大型魔力帆船(鉄甲)……2,000,000G、1~250人用。
 大型蒸気魔力船(鋼鉄)……10,000,000G、1~250人用。

「……ツッコミどころ満載ですけど、特に最後のは何です? 蒸気?」
「ロマンの塊……かね? 俺には何とも」
安宅あたけ船があったら良かったのにな」
「ユッキー、このゲームのベースを考えて話しなよ。和風の方が異端なんだからね?」
「わーってるよ」

 安宅船というのは、日本で用いられた軍船の一種である。
 数十人の漕ぎ手が動力となり、小回りが利くのが特徴。
 しかし、既に海に浮かんでいる複数の船影を見るに西洋ベースの形が基本になっているようだった。

「ふむ、なるほど。ここはやはり――」

 腕を組んで話を聞いていたユーミルが、ニヤリと笑って溜めを作る。
 ろくでもないことになる予感に、俺を含む渡り鳥のメンバーの顔は引きつった。

「大型蒸気魔力船だな!」
「大型蒸気魔力船ですわね!」
「やっぱり……ん? 誰だ?」

 といっても、「ですわね」なんて特徴的な語尾の知り合いは一人しか居ないわけで。
 重なるように響いた力強い声に振り向くと、そこにはヘルシャと多数の使用人達の姿が。
 そうだった……ここにも派手好きが一人居るのを忘れていた。

「これはイベント――つまりフェストですわ! ならばこそ、ドーンと派手に行かなくてどうします!」
「話が分かるじゃないか、ドリル!」
「誰がドリルですの!?」
「私もこのドリル女と同じ意見だ。やはり、祭りは派手に行かなければなっ!」

 二ギルドのトップが同じ考えを述べたことにより、結果……ミツヨシさんは多分に苦笑を含みつつも、船の選択を了承するのだった。
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