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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

複合型レイドイベント

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水着作りと嵐の到来

 翌日、トビとの賭けに負けた俺はリィズを伴ってログインしていた。
 借りている部屋の畳の上で道具を広げ、取引掲示板で必要数だけ揃えた素材を広げる。
 リィズには俺が賭けに負けたこと、そのせいで女性用水着を作らなければならないことを既に説明してある。
 悲しいかな、ショップ売りは存在せず。
 そして何故リィズに最初に説明したかというと……俺の危機察知能力がそうしろと告げていたからだ。
 割合スムーズに事が運んだので、恐らくそれは正解だったと思われる。

「というわけで、俺は手袋を着けて作業するから細かい作業を手伝ってくれるか?」
「構いませんけど、何故です? 素手ではいけない理由でも――」
「お前、男が素手でベタベタ触った水着を着けたいと思う? 特に内側の布地とか」
「……?」

 あれ、何故こちらの意図が通じないんだ?
 リィズは良く分からないという顔で首を傾げる。
 その拍子にずり落ちた三角帽子を脱いで抱えると、俺の傍に正座で座り込んだ。

「ハインドさんが作るんですよね?」
「見りゃ分かるだろ? 手袋ごしで出来る範囲はやるよ」
「素手だと何か問題が?」
「……分かった、言い方が悪かった。もしトビがリィズの水着を素手で作ったとして――」
「絶対に嫌です!」

 うん、勘違いの元が分かった。それとトビ、例に使ってすまん。
 身内のリィズが良くても、他のメンバーが良いとは限らないだろ?
 そうやって説明を補足していくと、ようやくリィズが理解の色を示した。

「そういうことですか。了解しました」
「手袋だとやり辛い部分も多いからな。頼むよ」
「はい。でも、私の水着はハインドさんが素手で作って良いですからね?」
「ん? いや、しかしな――」
「良いですからね?」
「……まぁ、お前が嫌じゃないなら」

 そんなわけで、リィズの補佐を得た水着作りがスタートする。
 といっても、作製難度はそれほど高いわけじゃない。
 濡れても透けない『サージ』と呼ばれる水着用の布は、既に取引掲示板を通じて必要数入手済みである。
 この布を前以てサーラで作ったことがあったせいで、水着が設計図に登録されていたわけだが。
 恨むぜ、過去の自分……おかげで面倒なことになった。

「それにしても、このゲームの水着って結構種類があるよな。リィズはどれを作ったら良いと思う? 取り敢えず自分のから決めてみてくれ」
「あ、なら私はこの胸元にフリルが付いたワンピースで。もしくはこのバンドゥビキニを」
「…………おう」

 どちらも胸の小ささをカバー可能な――いや、やめておこう。
 兄としては妹の涙ぐましい努力を黙って応援する所存である。

「他のメンバーのは?」
「セッちゃんは恥ずかしがり屋なので露出の少ない物を。このスッキリしたデザインの、スカート型のワンピースなどはどうでしょうか?」
「あー、なるほど。これは服っぽく見える。それならついでに麦わら帽子も作ろう」

 タイミング的には、昨夜のログアウト後にリィズには事情を話しておいた。
 そして今日の昼間の内にリィズに女性陣にメールしてもらったところ、なんと全員来るとのこと。
 水着も浜遊びもOKだそうだ。
 昨日の今日なのに、みんな元気だな……これなら昨夜の内に焦って移動することもなかったのだろうか?

「ヒナ鳥さん達は……まぁ、こちらも中学生ですし大人しい物の方が宜しいかと」
「この、えーと、タンキニだっけ? これとかどうよ?」

 設計図の絵を指差しながら相談していく。
 タンキニはタンクトップとビキニを組み合わせたような水着だ。
 ボトムも露出の低いものにすれば、全体の印象としては大人しくなる。

「お腹も隠れますしね。後はこの競泳水着と、スク水にしましょう」
「……ちゃんと真面目に考えてるか? 競泳水着はまだ良いとして、スク水って。中学生だから着慣れてはいるかもしれんが」
「同じような物ばかり作っていてもつまらないので。最悪、どれを着るかはジャンケンで決めてもらいますから」

 言われてみれば全て設計図産だから、誰がどれを着ようとサイズは関係ないんだけど……。
 作っていて飽きるというのも分からなくはない。
 折角だし、色々な種類があってもいいのだろうか? よく分からない。
 ――っと、そういえばあいつの分がまだだったな。

「そしたら、ユーミルのはどうする?」
「……」

 俺の問いに、それまでスラスラと受け答えしていたリィズが眉間に皺を寄せて沈黙する。

「……ビキニでも着せておけば良いんじゃないですかね? はぁー……」
「急に適当だな、おい。スタイル良いから、ビキニは似合うだろうけど」
「割と何でも似合いますよ、あの女は。極端な少女趣味の服以外は着こなすんじゃありませんか?」

 そうか? 少女趣味……確かに可愛い系の服が似合わんと前に本人が嘆いていたような気もするが。
 正直、どっちもどっちという感じがする。無い物ねだりという奴だ。
 だったらビキニに……このホットパンツのセットでいいか。
 活動的なあいつには似合うだろ。

「これで作るもんは決まったな。んー……そしたらまずは男二人のをちゃっと作る。それでサージ生地の扱いのコツを掴むから、リィズは調薬でもして待っていてくれ」
「ハインドさんの分はブーメラン水着にしましょう」
「何で!? 誰得!?」
「私得です」
「嫌だよ! 普通の海パンにするよ!」

 俺の言葉に、唇を尖らせ不満そうなリィズ。
 ブーメランなんて競泳選手が着用しているところしか見たことが無いぞ?
 長年一緒に過ごしてきたはずなのに、最近になって妹の考えが読めないことが増えた……何故なのか。



 それから自分とトビの水着を適当に作り、その後はリィズの手を借りつつ設計図通りに女性陣の水着を作製。
 設計図の物は日本人女性の平均身長を基にしたサイズ設定なので、平均より背が低いメンバーの水着は装備すると縮むことになる。
 なんだか、減る分の素材だけ損している気分になるが。
 平均サイズより体格が良い人は、アレンジ装備よりも設計図産の方が素材の消費が抑えられて得かもしれない。

「で、ここの折り返しに針を――」
「こうですか?」
「そうそう。上手いじゃないか」
「おー? 人の気配がすると思ったら!」

 突如バッとふすまが両側に豪快に開かれ、狐面の女性がずかずかと入室。
 キツネさんが無遠慮に近付いて、こちらの手元を覗き込んでくる。
 俺達はその行動に口を開けたままフリーズした。

「何してんの? 本体君に、えっと……魔女っ娘ちゃん! うわー、キミ小っちゃくてカワイイね! 抱っこしたい!」
「ま、魔女っ娘? 私のことですか?」
「何って、見ての通り水着を作っていますが……」
「水着? そりゃまたどうして? 教えて教えて! キツネお姉さんにもおーしーえーてー!」

 勢いに押され、ついそのままキツネさんにこれから海で遊ぶことを話した。
 すると彼女は、事情を聞き終えるや否や勢い良く立ち上がってこう言った。

「ゲームの海で? 浜遊び!? 何それ超面白そう! 待ってて、私達も参加する! インしてるメンバー集めて“匠”の連中に水着作り頼んでくるぅー!」

 そして来た時以上の速度でもって、ギルドホームの壁にぶつかりながら去って行った。
 何という騒々しさ、そしてフットワークの軽さだろうか?
 残された俺とリィズは、暫し呆然とキツネさんが去ったふすまの先を見ていた。

「嵐のような人でしたね……」
「わ、悪い人ではないと思うんだ……多分」

 ただ、行儀は悪いと言わざるを得ないが。
 こちらがお借りしている身分とはいえ、声一つ掛けないで無断入室した上に開けっ放しのこのふすま。
 俺はふすまを閉じてから元の位置に座り直すと、取り敢えずリィズと共に水着を完成させることにした。
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