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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

複合型レイドイベント

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和風ギルド“凜”のホームにて

「で、これが奴らを討伐したことで得た懸賞金だ。しかし本当に良いのかい? 苦労したのは君達だから、ウチの方は3:7で妥当じゃないかって意見が大多数なんだが」

 PKの懸賞金というのは、重ねた罪の量……今回の場合だと戦闘不能にしたプレイヤーの数による『犯罪度』というものと連動して上下する。
 その数値は倒した相手のレベルがPKよりも低いほど上昇量が高かったりと色々な条件があるのだが……結論から言うと、『夜陰の牙』を倒して得たGは総額約1000万G。
 随分と多くのプレイヤーを倒してきたものだ。
 最近のPKの平均的な懸賞金は10万Gとのことで、奴らはおよそ倍ということになる。
 更に言うとPKのデスペナルティは通常のプレイヤーより大きかったりと、PKが増え過ぎないようにゲーム側でバランスを取っていたりもする。
 今はその懸賞金の分配について、ミツヨシさんとユーミルが話し合っている最中だ。

「それは違うな! 臨時とはいえ、これから同盟を組む相手に遠慮はいらん! 確かに一人辺りの負担はこちらの方が多かったが、最終的な動員人数を考えれば5:5で妥当だろう!」
「おお……言っちゃ悪いけど、おじさんユーミルちゃんはそういう計算を出来ない子かと思ってたよ。ごめんな」
「――と、ハインドが言っていた!」
「あ、あら?」

 ユーミルのずれた言葉にミツヨシさんが綺麗にズッコケて見せる。
 何だろう、リアクションが一昔どころか二昔前だ……見た目は若くても、やっぱりオジサンなんだな。

 ここは『港町ノトス』の『和風ギルド“凜”』のギルドホームだ。
 その外観は、一言で表すなら「武家屋敷」である。
 彼等は土地を買ってわざわざ建物を自作したそうだ。
 そういうことが出来ること自体は知っていたが、本当にやる人達が居るとは思わなかった。
 普通は俺達のように出来上がっているものを購入するか、借りるだけだ。

 今も、これまた一から作製したという畳の上に座って話をしている。
 ここは応接室なのだそうだ。
 こちらのメンバーはユーミルと俺だけ、向こうもギルドの幹部だという三人だけの話し合いだ。

「――ブフッ! アッハッハッハッハ! いやー、やっぱりあんたら面白いわ!」

 狐面の下から明るい笑い声が聞こえてくる。
 この女性は『カナリスの町』でこちらに手を振っていた巫女服の人だ。
 ギルドでは回復系のメンバーを束ねる、俺と同じ支援型の神官だそうな。
 名前は『キツネ』さん……というそのまんま過ぎる名前だが、そうらしいのだから仕方ない。

「それにしても勇者ちゃん、噂に違わぬ美人さん! ちょっとスクショ撮って良い? ね? ね?」
「別に構わんぞ? どんと来い!」
「やめろキツネ、失礼だろ! 初対面だぞ!」

 向こうの最後の一人はノトス側の別動隊を率いていた青年である。
 キツネさんを咎めた彼は、ユーミルの方をチラチラと見ては頬を赤らめている。

「ユッキーこそ何を緊張してんの? いいじゃん別にぃ、堅いって」
「ああ、ユッキーってことは鹿介しかのすけじゃなくて幸盛ゆきもりの方を借りてるんですか? もしかして」

 俺の発言に彼……まだ名を訊いていなかった鹿角兜の青年は目を見開いた。
 次いで笑顔に――ってこの反応、どこかで見たような。

「そうなんだよ! 分かってるねキミ! そもそも通名ってどうなのよ? 本人が名乗った説も無くはないけど、大抵は江戸時代の劇やら講談から発したものが大多数だろう? 特に鹿介とか北条早雲とか聞くとモニョるのは俺だけ? 俺は山中幸盛・伊勢盛時って呼んでやりたいんだよ何故か! 別名や通名もそれはそれで悪くないと思うんだけど、本人の生き様に深く共感したい場合はやっぱり本来の名前で呼ぶ方が良いと思うんだよ! 君はどう思う!?」

 あー……セレーネさんに会った時と似たパターンだけど、それよりも遥かに面倒くさいやつだこれ。
 歴史オタク――いや、違うな。何故だかそこはかとなく「にわか臭」がするのは気のせいだろうか?
 山中鹿介は自筆でそう書いた書状が残っていたと記憶しているが。
 アレだ。絶対に真田信繁を幸村って呼ぶと突っかかって来るタイプだ、この人。

「何というマシンガントーク。話の半分も頭に入ってこなかったぞ? 私は」
「うへぇ、ユッキー面倒くさいモードに入っちゃった。ごめんね? 本体君、勇者ちゃん」
「あ、いえ、大丈夫です。えーと……歴史ってのは後から後から新事実が出てくる上に解釈も人それぞれだと思うので、俺は各人が好きに呼んで構わないと思います。ただ、鹿介でなく幸盛って呼ぶのも通っぽくて格好いいとは――」
「だろう! そうだろう!? ほら、聞いたかキツネ! 分かる奴には分かるんだよ!」
「はいはい、ソウダネー」

 機嫌を損ねないようにと保険で入れた「通っぽい」という表現に過剰反応するユキモリさん。
 そしてそれをキツネさんに嬉しそうに話している。
 しかし、うーん……うん、深く突っ込むのはよそう!
 きっと良い結果は生むまい。

 黙って話を聞いていると、そこでようやくしっかりとした自己紹介が彼の方から為された。
 プレイヤーネームは『ユキモリ』、ギルドの前衛メンバーを束ねているとのこと。
 重戦士の防御型でギルドのメイン盾、ただし「魔法は勘弁な!」だそうだ。
 俺達の会話を見守っていたミツヨシさんが、うんうんと頷いてから口を開く。

「やっぱハインド君は同年代の子と比べて大人だねぇ。中にオッサン入ってない?」
「何ですかそれ……入ってませんよ」
「こいつは昔からこうだぞ。だから学校の先生なんかにも受けがいい」
「あー、なんか分かる。本体君って、こうクラス委員長とかに推薦したい感じっしょ?」
「何の話だキツネ? 今の話からどうしてそう繋がる?」

 一人だけ理解を共有できていないユキモリさんの方を見て、キツネさんが黙り込む。
 面の下でどんな表情をしているんだろうな……恐らく、呆れ顔だと思うのだが。

「ユッキーまじユッキー」
「は?」

 何にせよ俺は委員長なんて絶対にやらないけどな、二度と。
 前に推薦されて学級委員長をやらされた時、面倒事を山のように押し付けられて酷い目に会ったことがある。
 しかもその時の担任が若い新任の女性教諭だったんだよな……中学1年の時だ。
 思い出したくもねえ。

「ククッ、渋ーい顔になってるぞハインド君。よほど委員長という役職に嫌な思い出があるらしい」
「放っておいてください」

 それにしても、ちょっと意外だったな。
 ミツヨシさんが作ったギルドの幹部なんだし、もっと落ち着いた感じの人がやっていると思ったんだけど。
 ギルドメンバーの年齢こそ老若男女バラバラだった気がするけど、この二人は普通に若い。

 そんな簡単な顔合わせが済んだところで、俺達はミツヨシさんからいくつかのありがたい提案を受けた。

「――本当に宜しいんですか? 滞在中はここの施設を自由にお借りしても」
「いいとも。人に聞かれたくない相談事なら町の宿屋を使う手もあるけど、一緒にイベントをやるのに一々行ったり来たりするのは不便だろう? 部屋を一室用意するから、そこを自由に使ってくれ」

 恐縮する俺に対して、ユーミルの態度は単純明快である。

「ありがたい! 感謝する!」
「うーん、気持ちの良いお返事。本体君、勇者ちゃん女の子にモテるでしょう? 特に年下の子に」

 問いかけるキツネさんの目は、面越しでも好奇心に満ち溢れているのが伝わってくる。
 何となくだが、話している内にこの女性の性格も掴めてきた。

「合ってますけど。そういうキツネさんは話し好きですか? 本当に楽しそうに話しますよね。見ていて気持ちがいいです」
「お喋りでうるさいってよく言われるけどね! 鬱陶しかったら遠慮なくツッコミ入れて? それでしばらくは大人しくなるから!」

 しばらくってことは少ししたら戻るのか……まあ、明るい性格の人なのは間違いないな。
 そんなわけで、俺達は案内すると言うキツネさんに連れられて応接室を後にした。

 場所は変わり、案内された十二畳ほどの部屋にて。
 滞在中はここで相談事やログイン・ログアウトを行って良いとのこと。
 ここもやはり和風であり、先程までシエスタちゃんが「たたみー」と口にしながらその辺に寝転がって寛いでいた。
 今は時間が時間だけに、ほとんど全員がログアウト。
 どうにか一晩で、イベント海域に近いここまで来られて良かった……。

「ではハインド殿! 早速約束の確認をば!」
「分かった分かった。急いでも結果は変わらんから、落ち着け」

 この場に残っているのは俺とトビだけだ。
 目的は例のブツが設計図にあるかどうか。
 インベントリから裁縫セットを取り出し、設計図一覧が書かれた紙をめくっていく。

「ま行だな。えー……マント、マスク、マットって、中は五十音順じゃないのか? 順番がバラバラだ。み行がミリタリーポーチ、ミリタリージャケット、ミリタリーシャツ、ミリタリーカーゴパンツ、ミリタリーキャップ……」
「謎のミリタリー推し!? 銃なんて無いのに! そんなの健治しか喜ばないでござるよ! 次、次!」

 火薬はあるのだし、もしかしたら銃器も作れたりするのだろうか?
 作れたとしても、威力が矢や魔法と大差なかったりのゲームが多いわけだが。

「ミリタリーの後はミニなんちゃら系が続くな。飛ばすぞ」
「水着来い……水着来い……」

 トビが祈るように手を組んで顔の前に掲げる。
 そんなに? そんなに水着姿を見たいのか?

「煩悩駄々漏れだな――あっ」
「あっ、て何!? 見せて!」

 俺から設計図を奪い取ると、トビは食い入るようにそれを見つめた。
 暫くして無言でそっと設計図を俺に返すと、膝を着いて高く両手を掲げて静止。

「うおおおおおっ!」

 それはさながら、終了間際に逆転ゴールを決めたスポーツ選手のような喜びようだった。
 あるのかよ、水着……。
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