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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アイテムコンテストとギルドの発展

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臆病者達の選択

 俺は混乱でやや思考が麻痺した頭で、だが真摯に彼女の想いに答えるべく口を開き――

「待って! ちょっと待って、ハインド君!」
「!?」

 かけたところで、焦りを帯びたセレーネさんに必死に止められた。
 両手をバタバタと振り回して言葉を遮ってくる。
 好きだと告げた瞬間には平静そのものだった顔は、今は瞬間湯沸かし器の如く沸騰していた。

「何も言わずに、もう少しだけ私の話を聞いて! お願い……!」
「わ、……かりました」

 答えを封じられた俺は黙るしかない。
 セレーネさんは胸に手を当てて何度も深呼吸すると、赤さの残る顔で言葉を続けた。

「ハインド君、まず……」
「はい」
「私の今日の頑張りゲージはもう0です」
「――はい? ……あー……は、はい」

 頑張りゲージって何だ? とは思ったが、精神的に限界というニュアンスだけは伝わってくる。
 反して、自分以上に慌てているセレーネさんの状態を見ている俺の方は段々と落ち着いてきた。
 そんな彼女の話は続く。

「なので、す……好きっ……とは言ったけど、その先を言う気力も答えを聞く気力もありません……」
「は、はあ……」
「だから、答えは保留にしてください……私の聞く決心がつくまで……お願いします……」

 何というへたれた告白……。
 だが、自分も全く人のことを言う資格がないことを思い出す。
 俺達三人の関係も、ずっと答えを先延ばしにしたままぬるま湯に浸かり続けているようなものだから。
 それを言うと、セレーネさんは汗を一筋流して頬を掻いた。

「でもハインド君、それって気が付いているからだよね? ハインド君が誰か一人を選んだら、今の関係は崩れちゃうってことに」
「そりゃまあ、その可能性があるとは思っていましたけど……」
「私の通っている大学でも、恋愛関係のいさかいが原因で崩壊したサークルがいくつか……」
「嫌な実例ですね!?」

 なんか生々しい。
 俺達のギルドにも当て嵌まりそうで嫌な感じだ。

「私、もちろんハインド君のことが……い、一番、なんだけど! ……このギルドのみんなのことも好きなんだ。勝手ばかりで悪いけど……ハインド君さえ良ければ、暫くはこのままでいたい。君がどんな答えを持っているにせよ、このままで」
「……分かりました。ではセレーネさんの好意だけ、ありがたく受け取っておきます」

 答えはいらない、か……。
 ほっとしたような、少し残念なような複雑な心境だ。

「謝ってばかりだけど……ごめんね? 一方的に好意を伝えて、相手には何も言うなって……卑怯だし、酷いよね?」
「確かに生殺しにされている気分ではありますが……俺自身もトビを含めた今の五人で遊べる状況を気に入っていますし、同じことですよ。前に進もうとしない、臆病者で卑怯者です。そんなですから、いつの間にかあの二人を誰かに取られていたとしても文句は言えませんけどね……」
「ハインド君が積極的な誰かにさらわれることはあっても、逆はないんじゃないかなぁ。二人とも頑固で、一途で、君を替えの利かない特別な存在だって思っているのが伝わってくるから。だからどれだけ気持ちが高まっても慎重になるし、臆病にもなるんだよ。私も、一緒」
「そりゃあ男冥利に尽き――って、俺が攫われる側なんですか!? えええ……」

 普通は逆なんじゃないのか……? 男なのに……。
 しかも攫われるって表現、どこのお姫様なんだよ俺は。
 ドレスを着た自分の姿が脳裏に浮かんできて吐きそうになった。気持ちわりい。
 頭を振ってそのイメージを払うと、気を取り直してセレーネさんの澄んだ目をじっと見返す。
 揃いも揃って、こんな男のどこが良いのかは分からないが……。

「えーと……いびつな輪の中へようこそ。行きつく先は分かりませんが、道中楽しく行きましょう」
「うん、仲間に入れて。いっそのこと、三人纏めて面倒を見てくれても……良いんだよ?」
「ウチの母さんみたいなことを言わないでくださいよ……」
「あ、そうなの? ハインド君のお母さん、変わってるね」

 臆病な俺達は、こうして結論を先延ばしにすることを選んだ。



 その後はセレーネさんから贈られた『極上の支援者の杖+7』を装備し、杖についての説明を受けた。
 杖の性能は素晴らしく、魔力が格段に上がったのは言うまでもなく『ノービリス・カーバンクル』の効果で詠唱短縮-3%というおまけ付きだ。
 握り心地もしっくりくるし、何よりこの品の良い装飾と杖全体の雰囲気が最高に好みである。
 ユーミル辺りは地味だと言うかもしれないが、俺はセレーネさんをそれこそ手放しで褒めちぎった。
 そのせいか、終いには耳まで赤くして縮こまってしまったが……。

 落ち着いたところでセレーネさんと二人で談話室に戻ると、片づけを済ませた三人が椅子に座って今日のコンテストに関しての雑談をしていた。
 ――そろそろ良い時間だし、今夜はこれで終わりかな?
 鍛冶場で何を話していたのか訊かれたので、杖をセレーネさんから受け取ったことを話した。
 トビは羨ましいと唸りながら俺の方を見たのみだったのだが……。
 ユーミルとリィズは視線を交わし合うと、何やら無言のまま二人で頷き合っている。
 なんだ?

「ユーミル、今日はもう解散でいいのか?」
「ああ、解散で問題ないぞ。ただし男二人は、だがな」
「どういうことでござる? ユーミル殿」

 ユーミルはトビの質問には答えずに、セレーネさんを手招きした。
 何かを察しているのか、俺の隣に立つセレーネさんの表情はやや引きつっている。
 そのまま近付くとリィズとユーミルの三人で顔を寄せ合い、俺達に聞こえない声で何事かを囁き合い……。

「――というわけで、女子だけで内緒の話があるのだ! 男共は帰れ帰れ!」
「第一回、渡り鳥女子会議です。私達のことはお構いなく」
「ふ、二人とも、そういうことだから……ハインド君、私は大丈夫だから。ねっ」

 俺の心配そうな視線を察したのか、セレーネさんがそう言って困ったように笑う。
 そのやり取りを見たトビが意地の悪い笑みを張り付けて手をポンと叩いた。

「ははあ……なるほど、そういうことでござるか。ハインド殿、取り敢えずここを出るでござるよ」
「いや、ちょっと待――引きずるなっ、押すなっ! 自分で歩くから!」

 トビに強引に腕を掴まれ、談話室を出た。
 あいつら妙に勘が鋭いな、とかセレーネさん大丈夫かな、とか色々と思うところはあったが……。
 ギルドホームにある俺の個室に入るなり、トビがアイテムボックスに腰掛けて愉快そうな様子で話しかけてくる。

「いやぁ、ハインド殿は最近とみにモテるでござるなぁ。ギルド内の人間関係がカオスカオス。ひひひ」
「お前も大概察しが良い奴だな。にしても、他人事だと思って楽しみやがって……お前だって彼女が欲しいって言ってたじゃねえか。男一人蚊帳の外で、悔しくないのか?」

 俺の言葉にトビは大袈裟に肩を竦めてみせた。
 なんか、こいつがやると絶妙にイラッとする仕草なんだよな……問答無用でアイアンクローをかましたくなってくる。

「んー、でもあの三人だと……ぶっちゃけ全員面倒くさいので、やっぱり羨ましくはないでござるかな! 特にユーミル殿とリィズ殿は酷い! 実に酷い! 見た目は全員文句なしの美人でござるがっ!」
「……ほう。二人にチクってやろうかな……」
「――!? 待って、殺されちゃう!? 粉微塵にされちゃう!? 調子に乗り過ぎたのは謝るから! 謝るからぁ! メール画面呼び出すのヤメテ!」

 その後も女性陣の様子が気になりはしたものの……。
 結局できることは何もないので、『エイシカドレス』のオークションへの出品だけを済ませると、そのままトビと一緒にログアウトすることにした。
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