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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アイテムコンテストとギルドの発展

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結果発表当日・その6 装備・武器

『我が国秘蔵のエイシカクロスを発見してきただけでも驚嘆に値するが……この仕立ては実に見事。ラクダと羊毛を混ぜ、染色した糸で丁寧に縫われておる。これで妾の体型にきっちり合わせた物であったなら、更に評価が高かったであろうが。惜しいのう』

 今回俺が作ったエイシカドレスは、アレンジ装備の欠点であるサイズの融通の利かなさをある程度だが対策してある。
 ウエストをベルトで締める設計であり、それが気に入らない場合はリボンで締めることも可能だ。
 分類的にはシンプルなAラインのロングドレスである。
 丈も簡単に直せるように――とまあ、残念ながら女王に合わせた作りにはなっていない。
 性能的にはエイシカクロス自体が魔力を帯びており、魔導士向けの防具である。

「ぐあーっ、惜しい! 本当に惜しいなぁ、ハインド!」
「ここまで来たら1位でござろうよぉ! 何で2位なんでござるかぁ!」
「いや、いいんじゃないの? 俺らしくて……」

 何が不満なのか、俺以上に悔し気に二人が叫ぶ。
 どの道、詰めが甘い自覚はあったし……個人的には想定以上の満足いく結果だ。
 女王の好みに合いそうな派手な赤いドレスを作っておきながら、オークション対策でサイズに遊びを持たせてしまった。
 中途半端にせずに、どちらかに振り切るのが正解だったかもしれない。
 それで1位が取れたとは限らないのだが。

「ともあれ、おめっとさんです先輩。めでてー」
「あ、おう。ありがとう」

 シエスタちゃんの発言を皮切りに、次々と祝福の言葉を掛けられる。
 その後に発表された1位はプロのデザイナーが作った金のドレスだった。
 スカートの部分が網目のように複雑な構造をしており、金という扱いの難しい色でありながら下品にならず幻想的な雰囲気を放つ逸品。
 仮に俺が女王に完璧に合わせたドレスを作っていたとしても、これは普通に負けていたのではないだろうか?
 実力的に完敗である。プロ、強し。



 そしていよいよ最終部門の発表時間がやってきた。
 セレーネさんが出品したカテゴリである装備・武器部門。
 当事者である彼女が祈るように手を組んだまま目を閉じているので、自然と俺達も静かにそれを見守る形に。
 ラストに向けて盛り上がりを見せる女王の玉座の間とは対照的な状態である。
 100位以内に入った武器は、防具に続いて黄金の物が多かったのだが……。
 俺はその中にある、決して華美ではない一本の杖から目が離せなかった。

「……」
「どうしました? ハインドさん」
「あ、いや。もし――」

 ――オークションに出品されたなら、欲しいと思える杖があった。
 俺はリィズにそう言い掛けて口を閉ざす。
 これは俺の杖の面倒を見てくれているセレーネさんを侮辱する発言に等しい。

「何でもない。ただみんな、女王の機嫌を窺い過ぎだと思ってな。人の事は言えないけれど」
「確かにそうですね。ですが、そういう品物はオークションで苦労すると思うので」
「入賞した物はまだしも、それ以下の黄金系は悲惨なことになるかもな……」

 金ピカ装備なんて、はっきり言って特殊な趣味だ。
 買う人間が皆無とは言わないが、それほど広い需要は見込めないと思う。
 作った武器・防具はゲームの仕様で溶かすのが不可能だからなぁ……。

『では参るぞ! 最終部門装備・武器、第10位は――』

 女王の言葉と共に、一振りの武器が取り出された。



 順位が上へ進んでいっても、俺達と違ってセレーネさんの表情に焦りはない。
 ただ一心に祈りながらの不動の体勢。
 みんなも分かっている。
 セレーネさんの狙いは1位のみ……むしろ、途中で呼ばれてしまうのは本意ではないだろう。

『第4位は――』

 まだ呼ばれるな、という今までとは逆の念を送りながら映像を見守る。
 4位の武器はマードック作・炎雷のガントレット。
 左右のガントレットから炎・光の別々の属性を発揮し、更には混合させることも可能という武闘家向けの装備だ。
 防具以上に武器の上位陣は、鍛冶の有名プレイヤーが所狭しとひしめいている。

『第3位――』

 3位、ブランドン作・黄金の戦槌。
 性能と女王の好みを両立させる、他の職人気質の鍛冶師とは一線を画す柔軟な思考を感じさせる武器だ。
 重量と適性を考えると、これは重戦士専用となるだろう。

『第2位の作品は――』

 第2位はマサムネ作・無銘刀真打。
 一切の無駄を感じさせない、3位や4位とは対照的な無属性で一見地味にすら感じさせる刀だ。
 が、女王がミレスの持った鉄板をその刀であっさり両断してみせた。
 その斬れ味たるや、言語に絶するとでも評せば良いだろうか?
 マサムネというプレイヤーはトビが取引掲示板を通じて装備を購入している職人でもあり、和風装備に関しては現在右に出る者が居ない。

『そして、栄えある第1位の作品は……これじゃ!』

 女王が手に持った杖。
 それに俺はあっと思わず声を上げそうになった。
 先程の一斉紹介の時に目が離せなくなった例の杖である。
 そして肝心のセレーネさんは微動だにせず……これが彼女の作品なのかそうでないのか確信が持てない反応の薄さだ。

『はっきり言おう。この武器は4位から2位までの武器と比べ、作成者の腕は同程度である! いずれも素晴らしき出来だと断言しておこうぞ!』

 女王はその杖をクルリと回し、プレイヤー達に良く見えるようにゆっくりと角度を変えて映していく。
 他の上位の鍛冶師と同程度という言葉を受け、セレーネさんが肩を震わせた。
 杖に繊細に彫られた紋様及び装飾は控えめで、誰かの性格と似た物を俺に感じさせる。
 その期待と確信が持てない不安とが入り混じり、どうにも落ち着かない心持ちだ。

『されどこの杖の先端……』

 女王の言葉に杖の先端を見ると、そこには本来あるべき宝石が嵌まっていない。
 杖系統の武器は、先端に大型の宝石を設置することで魔力を補助する機能を十全に発揮する。
 つまりこの杖は未完成品なのだ。
 セレーネさんの様子を考慮して誰も言葉を発していないが、みんなが疑問に思っているのは明白だった。
 恐らく、この映像を見ている他のプレイヤー達もそうだろう。

『この空座にノービリス・カーバンクルを嵌めろ、というメッセージだと妾は受け取った。わざわざ未完成品を妾に対して出品するその豪胆さ、挑戦心――誠に気に入った! 1位を取ってこそ完成するこの杖の出品者の名は…………』

 ごくりと唾を飲み込み、画面を食い入るように見つめる。
 女王が長い長い間の後、息を一杯に吸い込んでから艶のある唇をゆっくりと開く。

『出品者の名は、セレーネ! 杖の名は支援者の杖、である!』

 その瞬間、談話室内では喜びの叫びが爆発した。
 口々にセレーネさんを称えながら、椅子を蹴立てて一斉に立ち上がる。

「うおおおおおおっ! セッちゃん! セッちゃああああん!」
「やった! やったでござるよセレーネ殿おおお!」
「「おめでとうございます、セレーネ先輩!」」
「おめでとうございまーす」
「お見事です、セッちゃん。さすがですね」
「やりましたね、セレーネさん! セレーネさん……?」

 セレーネさんは画面を見たまま口を開けて固まっている。
 目の前で手を振ってみても反応は無く、肩を揺すってもそれは変わらなかった。
 こ、これはまさか……。

「き、気絶してる……」
「セッちゃん、しっかりしろ! 気を確かに持て!」

 喜びの余り気絶したセレーネさんの虚ろな視線の先では、1位の報酬『ノービリス・カーバンクル』をセレーネさんの杖に嵌めた女王が、それをそのまま使って魔法の光を画面一杯に放出していた。
 続けて全部門の結果が字幕で流れ、アイテムコンテストは終了という運びになった。
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