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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アイテムコンテストとギルドの発展

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親子との別れとコンテストに向けて

 訓練場にアルベルトを残し、談話室で待ち始めて暫く。
 体から湯気を出した彼が戻ってきたのは、実に数十分後のことだった。

「すまない……年甲斐もなく取り乱してしまった」

 俺が冷えた水を渡すと、礼を言って受け取り一気に飲み干す。
 一瞬で湯気が収まり、汗もスッと引いていく。
 この辺りはゲームらしい短絡的な処理でもって、アルベルトはようやく平静な状態を取り戻した。
 深呼吸して、セレーネさんと俺を順番に見る。

「文句なし――いや、選ぶべき言葉が違うな。……最高の出来だ。感謝する!」
「アクートゥスグレートソード、及びアクートゥスフレイムアックス、確かにお渡ししました」

 言いつつ、セレーネさんがほっとした様子で頭を下げた。
 俺からは武器の性能に関して少しだけ言及しておく。

「質はどちらも極級+5で、お二人が持ち込んだドゥールス鉱石も合金素材として使用済みです」
「へー……」

 フィリアちゃんが感心したような声を出す。
 質が(セレーネさんにしては)そこそこなのは、単純に合金の扱いが難しかったためだ。
 ゲーム的に装備の主流となる鍛冶は、やはり他の生産に比べ難易度が格段に高い。

「他のトップクラスの鍛冶師達と性能は同程度なのだな。やはり数値に表れない部分に何かあると……実に興味深い」

 背中から剣を外し、アルベルトが手に持って眺めながらしみじみと呟く。
 俺達の武器が他の職人のものと違う理由は未だ不明だが、気に入ってもらえたようで何より。
 苦労が報われるというものだ。

 その後は軽食とお茶をしつつ歓談、そして遂にアルベルト親子がサーラから発つということになった。

「ハインド……今度メール、する……」
「はいよ。待ってる」
「ハインドさん……」
「な、何だよリィズ? メールは別に良いだろ?」
「……?」

 フィリアちゃんから送られてくるであろうメールの内容が全く想像できないが……。
 フレンド登録がまだだったギルドメンバーも全員二人とコードを交換し、そのままサーラの入口まで見送りに。
 親子はグラドタークには及ばないまでも、かなり大型の馬を引いて厩舎から出てきた。
 ここで買った一頭のラクダは置いていくようだ。
 前に言った通り馬には二人乗りを行うようなのだが、長距離移動でアルベルトの重量を支え切れるのだろうか?

「武器だけでなく、滞在中は色々と世話になった」
「いえ、こちらも良い経験をさせて頂きました。ピラミッド探索も助かりましたし、ご一緒できて楽しかったです」

 そのやり取りを皮切りに、口々に別れの言葉を交わす。
 移動が不便でプレイヤー間で気軽に会えないのは、TBの欠点でもあるしおもむきでもあると思う。
 空を飛べる乗り物でも解禁されれば、また事情は変わってくるのだろうけれど。

「ではまた会おう、渡り鳥よ。――ハインド!」
「はい? ――うわっ!?」

 彼は最後に俺の名を呼ぶと、何か袋のようなものを馬上から投げ渡してきた。
 受け止めるとずっしり重く、中からはジャラジャラと金属が擦れ合うような音がしている。
 顔を上げた時には、既に馬影は砂埃を伴って声の届かない距離まで離れていた。
 一体何事かと全員が俺の手元を覗き込んでくるので、開いて中身を手に取ると……。

「金貨みたいだな……それも大量の」
「あ、手紙が入っているでござるよ。何々……約束の追加報酬だ。返却は受け付けない。次も宜しく頼む――だそうでござる。むむむ……」
「なるほど分かった! セッちゃんとハインドだと、遠慮して受け取らない可能性が高いからだな!」
「そういうことでしょうね、恐らく。ユーミルさんにしては鋭い考察だと思います。この走り書きの荒い字を見るに、地下訓練場で急遽用意したのでしょうか?」
「かもな。追加で100万Gポンとくれたぜ……」
「結果的に最初の提示額の倍になっちゃったね。これは確かに、普通に渡されたらちょっと遠慮しちゃう額だよ……」

 アレンジ装備のフルオーダーとはいえ、受け取り済みの初期提示額100万Gはかなり高額な報酬だ。
 アルベルトはそこから更に、こうしてもう100万Gを置いて行ったことになる。
 受け取った金額は合計200万Gとなり、言うまでもなく破格の報酬である。
 正直言って貰い過ぎだ、これは。

「兄貴カッケー! うひょぉぉぉぉっ!」
「お前はそれしか言えんのか? でも、今回は素直に同意するぜ。アルベルト格好いいなぁ……」

 全員でうんうんと頷く。
 傭兵としての料金が高いため、掲示板等ではケチであるというイメージが付いているが……。
 払うと決めた時にはこのように非常に気前が良いらしい。

 そんな彼等の見送りを済ませた俺達は、ギルドホームに戻ってそれぞれの作業に戻ることにした。
 アイテムコンテストの締め切りは近い。



 まずはユーミルのアデニウムだが、これに関してはまだ苦戦中だ。
 いくつかのアデニウムの色は赤から紫に近くなっているのだが、間に合うかどうかは微妙である。

 品種改良の方法だが、森の多いルスト王国で採取可能な交配用の魔法の土。
 その土が入った鉢植えに種類の違う植物を二つ植える。
 すると魔法の土が遺伝子を運び、互いの植物に影響を与え合う状態になる……のだそうな。
 ゲームらしいファンタスティックでとても都合の良い土である。
 今俺が見ている鉢でアデニウムと一緒に植えてあるのはロベリアという花だ。

「こいつは何世代目だっけ?」
「四……だったか? 微妙な色だが、期日までには何とかなるだろう。多分な!」
「楽天的だな。確かに候補は多いし、どれか一つくらいは物になるかな……?」

 ロベリア以外にも交配相手として試している花はあるしな。
 色素の移動速度はまちまちで、中には色と関係なく毒草や薬草等の素材アイテムに化けてしまったものもある。
 その反応の種類がまた複雑で、法則性を見つけるまでに酷く苦労しそうだ。
 ユーミルはそれぞれどうなるのか読めなくて楽しいと言っているが、くじでも引いているような感覚なのだろう。

「ハインド、ハインド! 見ろ!」
「うん……?」

 ユーミルが俺に差し出した鉢の中には、一見普通のアデニウムが赤い花を付けて単品で植えてあった。
 これの何を見せたいんだ? と思い、観察しているとミツバチらしき小さな虫が花の蜜に誘われて止まった。
 刺されないように顔を遠ざけて観察していると、なんと蜂の止まっている花弁がゆっくりと閉じていく。
 蜂は異変に気付いてもがき始めるが、足が何らかの要因で貼り付いているらしく逃げられない。
 そのまま花弁は閉じ切り、蜂は永久に脱出不可能となった……。

「……お前、このアデニウム何と掛け合わせた?」
「食虫植物だぞ! 使い道は知らん!」
「……」

 ホームに置いて虫除けに使うくらいしか、俺にだって用途が思い浮かばねえよ。
 こんなものをコンテストに出すわけにはいかないし、残された時間はかなり少ないのだが。
 俺がそれを伝えると、ユーミルは心外そうな顔をしてこう言った。

「だがこのアデニウム、とてもあの女王っぽいだろう? お前を食ってやるぞ! みたいな感じが。正直、会心の出来なのだが? これをコンテストに出品しよう!」
「怒られる……意図に気付かれたら絶対怒られるって……却下だよ、こんなもの!」
「えー」

 食ってやるぞ! の部分で俺に向かって両手を上げていたユーミルが、唇を尖らせつつ元の体勢に戻る。
 その後は配合が上手くいかなかった物を選別して除外したり、結果の出た物の更なる植え替え等を二人で行っていく。
 配合の結果に関しては逐一ゲーム内のメモ機能を使って記録を取り、残ったのは水をやったりの簡単な作業のみだ。

「んじゃユーミル。毒草と薬草になっちまった奴は持っていくな。後は任せた」
「うむ、任せろ! ――ほーれ、たんと水を浴びるがいい貴様ら!」

 そんな訳で、水を撒き始めたユーミルを残し今度はリィズが作業中の調合室へ。
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