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VRMMOの支援職人 ~トッププレイヤーの仕掛人~ 作者:二階堂風都

アイテムコンテストとギルドの発展

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ルブルムストーンと試行錯誤

「これはもう、転炉でもないと“鋼”自体を作れないかも……」

 そうセレーネさんが言い出したのは、ルブルムストーンを燃料とした試作品を幾つか作製した後のことだ。
 周囲の壁にはその結果である失敗作が立てかけられている。
 そんな作業場には彼女と俺、トビの三人が顔を揃えているわけなのだが。
 トビがはいはいはいと手を上げながら俺に近付いてくる。やや鬱陶しい。

「ハインド殿、ハインド殿! 鋼って良く聞く単語でござるけど、具体的にはどんな金属でござるか?」
「そっから!? 今まで使ってた武器も鋼なのに!? ……あー、分かった。ちゃんと説明するからそんな顔するなって。鋼っていうと鉄の一種ではあるんだけど……」

 話しながらセレーネさんに視線を送ると「そのまま続けて」という苦笑い付きの表情で続きを促された。
 彼女の方が断然詳しそうなんだけどな……まあいい、間違っていたら訂正してもらおう。

「大事なのは鉄に含まれる炭素の量だ。どうせ鉄の五元素だとかの細かい話は――」
「聞いても分からんでござる!」
「だろうな! だから、簡易な説明でいくぞ。鋼というのは鉄中に含まれる炭素含有量約0.02%~2%の鉄の総称を定義して呼称しているものだ」
「正確には0.0218%~2.14%だね。武器だとその中でも、やや高めでバランスを取るかな」
「細かっ! で、その量だと何が凄いのでござる?」

 凄いとか凄くないの問題ではない。
 それによって大きく変わってくるのは硬度と可塑かそ性である。
 トビが首を捻った。

「かそせいって何でござる?」
「簡単に言うと金属のしなやかさだな。炭素が多いと硬くなりしなやかさが失われ、少なすぎると柔らかくなり過ぎてしまうんだ。硬いだけでしなやかさがないと、こう簡単にポキッと」

 そう言って俺は壁に立てられている大斧を指差した。失敗作の一つである。
 耐久力10って……一戦闘も持たない数値じゃないか。
 あれではどれだけ攻撃力があっても無意味だ。

「あ、ということは先程までの耐久性が低い武器達は……」
「うん、トビ君分かってきたね。炉の温度が高すぎて、炭素が大量に入っちゃったみたいだね」
「それだけでしなやかさのない、カチカチの失敗作になるのでござるか……」

 セレーネさんとも感触的にこれは駄目だろう、と言葉を交わしつつ。
 それでもゲームだから判定が甘いかもしれないということで、砂で作っておいた型に流し込んでみたのだが。
 しっかり「銑鉄せんてつ」と判定されてしまったらしく、ご覧の有り様である。

「悪いことばかりじゃないんだけどね。燃料が魔法の石だから、木炭以上に不純物を出さないし」
「ただ、やっぱり火力調整がな。一個だと木炭未満、二個以上で石炭並かそれ以上とちょっと極端だ」
「同時に二つ以上使うと連鎖反応で火力が上がるみたいだね。魔法の石だから計算も難しくて」
「難儀でござるな……」

 ただ、この連鎖反応を受けて斧に付けるルブルムストーンは二個にすることに決めた。
 アルベルトはお前達にやると言ってくれたが、彼とフィリアちゃんの物を二個使うことに。
 属性石は武器のサイズにもよるが、相克関係でなければ二つまで装着可能だ。
 もちろん、同じ属性の石を二つ付けることも可能である。
 通常は二個目の効果は半減するのだが。

「てなわけで、空気に攪拌かくはんさせることで炭素量を調整するのが転炉っていうわけだ。確か、設備レベル8にあったような気が……」
「あの、ちなみにそれって何世紀の技術でござるか? 聞いた限り、とても中世の物とは……」
「私の記憶が確かなら19世紀だったかな? 割と最近だね」
「中世風の世界の技術としては、オーバースペックも甚だしいでござるな……」
「それはともかく、レベル8に必要な投資費用を計算してみるよ。場合によってはそこまで上げちゃっても良いし」

 今の設備レベルは6で、7は炉の素材が丈夫になる……ってことは、こういう高温状態も運営の考慮の内か。
 炉にも耐久度が設定されているからな……今のままだと頻繁に修理が必要で面倒だとは思っていた。
 その費用が500万G、まあ妥当か。
 で、肝心のレベル8への必要資金が――

「げ」
「どうしたのハインド君?」
「5000万G……」
「はて、聞き間違いでござるかな? 今、ごせん――」
「合計で5500万G掛かる……」

 工房の空気が凍り付いた。



「思うに、レベル8からは生産ギルド向けの設備なんじゃないかな……?」
「ここまで設備が揃えば、もう鋳型いがたで充分な性能の武器を作製可能ですからね。そもそもが大量生産向きの技術ですし」
「ハンマーで叩かないと鍛冶っぽくないと思うのは、拙者だけでござるか?」
「「それは俺(私)も思ってた」」

 中世の鍛冶と言ったらやはり鍛造たんぞうでないと。
 鋳型での作製は生産及び質の均一化という点では強いが、作り手の個性が出るかというと……。

「アルベルトさんの望む大剣はこっち方向じゃないね、きっと」
「でしょうね。となると、ルブルムストーンは一個にして木炭を補う形で使いましょうか?」
「そうだね。その方法でも、燃料代は大きく節約出来るからね。不純物も減るし」
「それよりも、ルブルムストーンを砕いてみたらどうでござるか? 細かく砕けば調整も自由自在! なーんて」

 ……。
 トビの冗談めかした言葉に、俺達は口を開けたまま顔を見合わせた。

「どうしたでござる、お二人とも? 拙者、何か変なことを――」
「セレーネさん。こんな簡単なことに思い至らないって、俺達本当は大馬鹿なんですかね?」
「うっ、そうだね。ちょっと頭でっかちだったかも。どうして気が付かなかったんだろう……?」

 何故だか、これはそういう「調整の利かないアイテム」だと思い込んでいた。
 そうか、砕いた上で熱を発する機能が残っていれば問題ないのか……。
 俺はトビの背をポンと叩くと、使用していなかったルブルムストーンをテーブルに置いてハンマーを構えた。
 布で覆って破片が飛び散らないようにすると、セレーネさんに最終確認を取る。

「成功しても失敗しても属性石としての機能は失われますが、構いませんね?」
「うん、やっちゃって。駄目なら他の方法を考えよう」
「えっ? えっ? お二人とも、決断早くないでござるか? 拙者のあんな軽はずみな意見を採用しちゃって、本当に大丈夫でござるか!?」
「行きます!」
「待っ――」

 ガッという鈍い音がしたものの、しっかりと砕ける感触が手に返ってくる。
 そのまま塊を叩き、叩き、適当な大きさになるまでそれを繰り返す。
 武器に嵌めた属性石は絶対に砕けないらしいが、やはり素材状態では適応外のようだ。
 そっと布を捲り、細かくなったルブルムストーンを手に取る。

「どう、ハインド君?」
「持ってみてください」
「あ、拙者も拙者も!」

 セレーネさんとトビの手の上に、細かくなった石を落とさないように少しずつ渡す。
 トビはウッと石の裏にびっしり虫が付いていた時のような顔をしたが、セレーネさんは笑顔になった。

「何でござるか、このウィンドウの数……」
「粒の一個一個に出されても困るよな。でも、これが出るってことは熱を発する機能が生きてる証でもある」
「これ、使用する時は全部の“はい”を選ぶのでござるか?」
「いや、さっき連鎖するって言ったろ? 使用中の石の近くにあれば、他も勝手に作動するから。一個だけ着火して他を放り込めば問題なし」
「――じゃあ小さいのを試しに一個使ってみて、大丈夫そうなら炉の中の石も回収して砕こうか。これなら上手く行きそうだよ! ありがとう、トビ君!」
「サンキュー、トビ。お前が居てくれて助かったよ」
「なんのなんの。珍しくお役に立てたようで、なによりでござるー」

 それ以降、調整のコツを掴むのにかなりの時間を要したものの……。
 丸々二時間ほどかけてようやく満足出来る炉の状態を作り出すことに成功した。
 後はどれだけ上手く鍛造を行えるかに掛かっている。
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