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 それからまだ数年も前のことだ。
 署長は一文無しになったこの美少年を目の前にして、そのグレーの目を細めていた。彼
は妻も子供も居たが、いつも満たされない欲求を抱え、そしてこの僻地に飛ばした上司に
対する恨みを常に抱えていた。
 彼は検挙した犯罪者達をいたぶることで、何とか気持ちの均衡を保っていたのだ。家に帰れば、優しい夫であり、厳格な父の仮面を被ってはいたが、犯罪者からは“サタン”と呼ばれて恐れられていた。
 けれども署長は自分の中に、もっと卑しいものが潜んでいるとは思いもしなかった。そう、ジェームズ・C・エドワーズが、万引きで捕まり自分の前に引き出される前までは。

 彼はずっとウェールズに来たことを後悔し、そしてウェールズ人を憎み蔑んでいた。けれども、今この目の前にいるウェールズの小僧は、ただの小僧ではなく、とてつもなく惹き付けられる美貌の持ち主だった。
 ジェームズは両親を事故で失い、妹を遠くの修道院へやらされ、今や親戚も見放した一人ぼっちの孤児だった。何をされても何をしても、誰もジェームズの言うことを聞くはずがないということに気付いた途端、彼の中に今まで潜んでいた欲望が頭を擡げて来たのだ。

「こっちへ来い」と署長は言った。ジェームズは敵意のある目付きで少しだけ近寄ったが、それ以上は来なかった。
「来るんだ!」
 そう命令すると、署長は今の時刻は誰も居ないのを確かめるように、辺りを見回した。そばの小部屋が開いており、そこには小さなソファがある。
「来いと言ったら、来い!」
 署長はジェームズの腕を引っつかむと、小部屋に入りバタンと戸を閉じた。念入りに鍵まで廻す。

「僕を殴らないで」
 怯えた表情でジェームズは懇願した。
「殴るもんか」と署長は猫なで声で言った。「ただ」
「何でしょうか?」
 ほっとしながら、ジェームズが尋ねた。
「尻を出せ!」
「え!?」
「尻を叩いてお仕置きするのが、イングランド流儀だぞ」

 訝しげに、けれども何事も疑わずジェームズは腰を向けると、両手でソファに踏ん張った。突然、署長がおそいかかり、片手で口を塞ぎ、もう一方の手で乱暴にジェームズのズボンを引き降ろした。
「な、なにを……するんですか……」
「黙れ!」
 署長は急いで自分のものを出し、もがいている少年の中へと押し入った。そして自分のネクタイでジェームズの両手首を縛りつけた。

「嫌だ。嫌だぁ〜〜!」
 今度は所長は自分のハンカチを丸めて、ジェームズの口に押し込んだ。強姦されている少年はバタバタともがいていたが、やがて涙と共におとなしくなった。白い尻を出したまま、ジェームズは床に転がされた。そして再び、背後から犯された。署長の悪夢のような腕がジェームズの身体に這いずり回る。
 それが始まりだった……。署長の陵辱と、ジェームズの性格の急変は同時進行形だった。
 牢から出された前と後とでは、ジェームズはまるで違った人格へと変貌を遂げていた。小学校での屈辱と、そして署長の仕業は、ジェームズを神を呪う人間へと変えた。

*〜*〜*〜*〜*〜*

 それを今、ボブは直感的に感じ取ったのだ。
「分かるよ、俺、分かる」
「何もし知らねえくせによ!」
「知らなくても、分かるんだ」とボブは言った。そしてそっと首を振った。
「誤解してたよ、ごめん」と言う言葉を。ジェームズは初めて人間らしい言葉を聞いたように思った。それから、おもむろにボロボロのシャツ姿のボブを見つめた。
「謝る必要なんてないじゃないか、お前が」
「そうかな? でも」
「謝らなくていいよ」と思いもかけなく優しくジェームズが言ったので、ボブも顔をあげた。目の前には紫色の瞳が瞬いてている。そして不可思議な笑みが。

 以来二人はダチになった。そしてジェームズの忌まわしい秘密を知っているのは、ボブだけだった。





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