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イノセントブルー
作:城宣彦



第四章 希望への旅立ち Scene2


リイクが連れてきたのは、何の変哲も無い樹木の下であった。

怪訝に見つめる二人を尻目に手際よく回りの草を掻き分けると、人一人が通れるくらいの縦穴を見つけ出した。

「ほらね」

リイクは得意げに言うと、その穴に体をすっぽりと静める。

「さあ、早く来て…」

穴から手を出して二人に来るように促すとリイクは下へ降りていった。

「行きましょうか」

エルティーナがその後に続き、ルシルは一番最後に穴に入った。

手すり階段を一段ずつ確実に踏み、ようやく降り切ったルシルを待っていたのは一直線に基地まで続く地下道と赤のネオンの点であった。

「これを歩いて行くの…」

少女の呟きに、当然とばかりリイクが頷くと歩き出す。

「気の遠くなる距離だな…向こうが霞んでやがる」

ルシルは吐息を吐き呼吸を整えると、重い足取りでリイクを追う。

リイクの説明によると、脱出用のシューターの通路は生物兵器の研究所まで繋がっているらしい。ルシル達にとってはこの上なくありがたい事だ。最悪の事態が起きても研究室だけは守ろうと考えると当然の事ではあったが。

ルシル、エルティーナ、リイクの三人は、それぞれの冒険に幕を閉じる時が近づいてきているのを肌で感じると、昨夜から起こった色々な出来事に思いを巡らせていた。

「いよいよね…」

誰に語りかける風も無く少女が言った。

「ああ、これで全てが終わる…」
「全てが終わったら、あなたはどうするの?」
「さぁ、でも無事に帰れたら、また戦闘機に乗る事になるんだろうな…」
「そう…」

少女は寂しげに呟く。

「でも、そうなってもあたしやリイクの事、忘れないでね。あたしもあなたの事忘れないから…」
「ああ、絶対に忘れたりしない。君はどうするの?」
「あたしはリイクと村に戻るわ…早く帰らないとお爺ちゃんが心配するしね。またいつもどおりの生活よ…ね?リイク」

前を歩く少年が振り返るとニッコリと笑った。

「ねえ、僕本当に戻れるのかな…?」
「戻れるわよ。そのために行くんでしょ?たとえ駄目だとしても、あたしが一生面倒見てあげる」
「本当?」
「だったら、戻らない方が良いぜ」

冗談とも本気ともつかない口調でルシルが茶々を入れる。

「何て事言うのよ!馬鹿っ」

冗談じゃないわとルシルを睨みつけるものの、それはすぐに笑顔に変わっていた。

それからどれくらい歩いただろうか。

シューターの通路が不意に終りを告げ、一枚の大きな扉が現れた。

時間と距離の感覚を失いかけていた三人は、大きな安堵の息をつくと、扉の前で足を止めた。

「ここだよ、この向こうに研究所があるんだ」

緊張に張り上げたリイクの声が通路に響き渡る。

ルシルはジャケットのポケットからフリーシアの磁気カードを出すと、扉のセンサーに差し込んだ。

「お願い、開いて」

エルティーナの祈りが通じたのか、扉は音も無くスーッと上がっていくと、真っ白なシューターのボディがあらわになった。

ルシルはその脇をすり抜けると最後の扉の前に立ち大きく深呼吸をする。

「用意はいいか、みんな」

真剣な眼差しに答えるようにリイクが、エルティーナが頷き返す。

「心臓が飛び出しそうよ」
「俺もだエルティーナ、行くぞッ!」

センサーのロックが解除され扉が開くと、ルシルはなだれるように研究室内に転がり込みブラスターを一閃させた。

「動くなッ、全員手を上げろ!」

二階層になっている研究所いっぱいに気迫に満ちた声が響き渡り、居合わせた十人程の技術者の動きが一斉に止まった。

「ルシル、上よ!」

警備兵が銃を向けたのと同時に少女が叫んだ。













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