「それはあなたが決めることよ」
地獄少女は言った。
好きだ。
殺したいほど私はあの男を愛している。そして恨んでもいる。
私を捨てた男。
「最近、あんまり会ってくれなかったよね?私のこと嫌いになった?」
久しぶりに呼び出された私は、男に尋ねた。
「はぁ?何言ってんだよ。お前らしくもない」
男は前髪をかき上げた。
私はこういうナルシスティックな仕草が好きだ。本当にこの男によく似合う。
「だって、私はあなたの悩みを聞くためにいるんじゃないのよ。私たち、恋人同士でしょ?」
「え?冗談はよせよ」
男はあからさまに迷惑そうな顔をした。
「冗談?じゃあ今までのは何?」
おかしなこと言わないでよ。私たちは付き合ってるのに。
「今まで?飯行ったり、カラオケするのが付き合うことじゃねーだろ」
「だって2人きりで」
「おいおい。2人きりとからしくないぜ。俺はお前を1度たりとも女として意識したことはねーぜ」
2人きりって女の子にとっては特別なのよ?1度たりとも女として意識した覚えはない?どういうことなの!
私は驚いて何も言えなかった。
「わりぃ。言い過ぎた。だけど俺には彼女がいるからな。彼女以外の女は眼中にねーんだ」
他に女がいるなんて聞いてない。
絶対に認めない。
許さない。
私たち、付き合ってるのよ。おかしいじゃない!
数ヶ月前、失恋して沈んでいたあなたを慰めてあげたのは私。一緒に飲みに行った帰りにあなたの方からキスしてくれたじゃない。
あなたの彼女は私なのよ!
「これはとんだ勘違いだねぇ。酔った勢いで口づけなんてよくあることじゃないかい」
骨女が言った。
「いいのか、お嬢?」
一目連は聞いたが、あいは答えない。
私は堪えられず、地獄通信にアクセスしてしまった。いや、私は悪くない。悪いのはあの男。
地獄少女は「人を呪わば穴二つ」と言っていた。あの男を地獄に流したら、私も地獄に行くことになると。
私たちは地獄でも一緒。
あの女ね?あんなののどこがいいの?デレデレしちゃって。
どうして私じゃないのよ?これって二股じゃないの?
死ね死ね死ね死ね。
「確かに相談にのってもらったり、お前にはいろいろ感謝してる。だけど、お前じゃだめなんだ」
私を裏切ったお前が悪い。私のどこがいけないっていうのよ?あのキスを忘れたなんて言わせない!
死ねっ!
「恨み、聞き届けたり」
糸は解かれた。
「お、おい、ここはどこだ?」
男が船の上で暴れている。
あいは答えない。
「なあ、どこなんだよ?」
「この恨み、地獄へ流します」
「今回の依頼はお嬢も気が向かなかったみたいだが……」
輪入道が呟いた。
「そうだろうねぇ」
骨女は顔をしかめた。
「あの男が悪くなかったとはとても言えないが、同じ男として同情するよ」
一目連が言った。
「おや、あんたは目だろ?」
「はぁ?そういうお前も骨だろう?」
「骨だけど女だよ!」
「2人ともやめんか。依頼が来たようだ」
骨女と一目連の大人げない言い争いを輪入道がたしなめた。
あの男はこの世から消えた。
地獄少女に消してもらったから。
私がこの手で葬ってやってもよかったんだろうけど、刑務所に入りたくないしね。
男の家の前で、あの男が“彼女”と言っていた女が泣いていた。
どうして何の連絡も寄越さずに急に行方を眩ましたのかと。
「知らないの?彼女の私にしか行き先を告げなかったようね」
「え?」
「ああ、あなた騙されてるわ。どうせお前しかいないとか言われたんでしょう?」
「…………」
「いつものことなの。彼、放浪癖があるのよ。片っ端から女の子に手ェ出して、そろそろ結婚って時になると逃げちゃうの。借金もあるし、ヒモみたいな感じよ」
「知りませんでした。彼女がいたなんて……ごめんなさい」
女は頭を下げた。
「あら、あなたが謝ることないのよ。気にしないでちょうだい。だいたい、私と付き合ってるのもお金目当てに決まってるんだから」
「お金目当て……そういえば金がないってぼやいてました」
「そうでしょう。あんな男とは別れた方が正解よ。って私が言うのも変だけどね。同じ男を愛した者同士、仲良くやりましょう」
これでよかったのよ。
あの男のことを知っているのは私だけ。
葬ったのも私。
私はあなたの彼女。
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