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17時19分発羽田行き旅客機
作:○


Scene1.【17時25分】
 乗客たちが棚に荷物を載せ、椅子に腰をおろした頃、スピーカーから機長の声が聞こえてきた。
≪この度は本機をご利用いただき誠にありがとうございます。本機はこれより成田空港を離陸いたします。それではシートベルトを締め、離陸に備えてください≫

Scene2.【17時30分】
 いよいよ離陸。乗客たちの顔にわずかながら緊張が走る。
≪本機はこれより離陸いたします。開いている窓は閉めてください≫

Scene3.【17時35分】
 飛行機が滑走路に向けて少し進んだ所で、スピーカーから機長の声が聞こえる。
≪滑走路にバナナの皮があったので離陸をやり直します。ご了承ください≫

Scene4.【17時42分】
 いよいよ離陸。機長の落ち着いた声が乗客たちの耳に響く。
≪本機はこれより離陸いたします。ドアは閉まらないので諦めてください≫

Scene5.【17時45分】
 滑走路に向かう途中、機内に機長から放送が入る。
≪こちらは機長です。滑走路に飛行機が着陸中ですので少々お待ちください≫
 微妙に待たされた所為で、チョッピリいらついている乗客たちが騒ぎ出した。
「こっちは急いでるんだよ!」
「待てるかー! さっさといけー!」
 機長の判断が、スピーカーから流れる。
≪了解しました≫

Scene6.【17時51分】
 かすりながらも無事離陸に成功。大空に舞う旅客機。
≪本機は水平飛行に入りました。ベルトを外し空の旅をご満喫ください≫
「水平? なんか変じゃない?」
≪本機は垂直飛行に入りました。ベルトを締めてください≫

Scene7.【18時21分】
 機長の熟練の操作で態勢の立てなおし成功した旅客機。
≪本機は水平飛行に入りました。ベルトを外し空の旅をご満喫ください≫
 乗客たちの顔は興奮のためか上気して赤く染まっている。
「上下逆じゃねーか!」
「頭に血が上る」
「早く立て直せ!」
 そこへ乗客を落ち着けようと、機長の冷静な声が入ってくる。
≪本機はキリモミ飛行に入りました。ベルトを締めてください≫

Scene8.【18時28分】
 ようやく事態は落ち着き、雄大な空の旅を楽しむ乗客たち。そんな中、機長の冷静な声がフライトにスパイスを効かせる。
≪こちらは機長です。外を見ないでください≫
「エンジン燃えてない?」
≪こちらは機長です。外を見ないでください≫

Scene9.【18時36分】
 ちょっとした緊急事態、しかし全く動じない機長の声は、乗客たちの不安を和らげた。
≪こちらは機長です。本機はエンジンにトラブルが見つかりましたので、 飛行を中止いたします≫
「……え?」

Scene10.【18時45分】
 スチュワーデスが声をあげながら機内を走る。
「お客様の中に機械に詳しい方はいらっしゃいませんか?」
 声に応えてがっしりとした体格をした壮年の男性が座席から立ち上がった。
「私は地元で整備工場を経営していますがどうしました」
「エンジンが一個取れたのでつけてください」
「無理です」
「そうですよね」

Scene11.【18時50分】
 混乱する機内を治めるべく、機長の決意が方針を決定する。
≪こちらは機長です。落下中のエンジンを発見、 これより取りに行きます≫
「……は?」

Scene12.【18時58分】
 進退窮まった機長は弱音を吐く。
≪こちらは機長です。燃料を注文したいのですが携帯が通じません≫
 あまりの事に、乗客達から的確な指摘が飛ぶ。
「通じるか!」
「飛ぶ前に注文しろ!」
「無線機はどうした!」
≪無線機は離陸時に管制塔と繋いでいたコードがちぎれました≫
「それ有線じゃねーか!」

Scene13.【19時02分】
 ついに機長は決断する。
≪こちらは機長です。進退窮まったので職務放棄します≫
 身勝手な機長に乗客たちの不満が爆発する。
「ふざけんな!」
「最後まで責任もて!」
 そこへ若い男性の声がスピーカーから聞こえてきた。
≪えー、皆さん落ち着いてください、こちらは副機長です。機長に代わり私が操縦する事になりました。座右の銘は猿も木から落ちるです。ところでハンドルはどこですか≫
「あるかー!」
≪足元に落ちてるだろ≫
「落ちてるわけねーだろ!」
≪ああ、これですね≫
「あるのかよ!」

Scene14.【19時05分】
 スチュワーデスが声をあげながら機内を走る。
「お客様の中にテロリストの方はいらっしゃいませんか?」
 声に応えて凶悪な面相の男が座席から立ち上がった。
「私は地元でテロ組織を運営していますがどうしました」
「この飛行機をジャックしてください」
「嫌です」
「そうですよね」

Scene15.【19時09分】
 初めての操縦に張り切る副機長の、高揚した声がする。
≪こちらは副機長です。本機はこれより胴体着陸を行います。乗客の皆様は対衝撃、対閃光防御を万全にしてそうだ機長、波動砲のスイッチはどこですか≫
 意味不明な展開に乗客たちの不満が爆発する。
「なんだそりゃ!」
「真面目にやれ!」
≪右から三番目≫
「何だこの飛行機」
≪波動砲発射!≫
「早っ!」
≪あれ? 何も起きないですけど≫
≪バーカ、それは緊急用脱出装プツッ……ザー≫
「おおおおおおおいいいいいいい!!」

Scene16.【19時12分】
 スチュワーデスが声をあげながら機内を走る。
「お客様の中にパイロットの方はいらっしゃいませんか?」
 声に応えてロマンスグレーの渋い男が座席から立ち上がった。
「私は地元で飛行機学校を経営していますがどうしました」
「本機を操縦してください」
「分かりました。操縦席に案内してください」
「こちらです」
 スチュワーデスの先導で、二人は操縦席があった場所にやってきた。
「ふむ……見たところ操縦席も操縦桿も見当たりませんが」
「それらは先ほど機体の外に飛び出しました」
「そうですか」
「はい」

Scene17.【19時20分】
 大混乱の機内に、機長の冷徹な声が途切れ途切れに入ってきた。
≪ザザッ、ツー……こち……らは機長で……乗客の皆さ……落ち着い……私は……地上に……≫
 結果的に責任を放棄してしまった機長に対して、乗客たちの容赦ない罵声が飛ぶ。
「この野郎さっさと逃げやがって!」
「責任取れー!」
「戻ってこんかい!」
≪ザザザッ……目の前に……大きな川が……副機長……逃げ……≫
 乗客達の顔にクエスチョンマークが浮かぶ。
「?」
「どこに着地したんだ?」
≪ザザッ、ザー……でかい……鬼が……≫
「地獄かよ!!」

Scene20.【19時25分】
 スチュワーデスが声をあげながら機内を走る。
「お客様の中に超能力者の方はいらっしゃいませんか?」
 声に応えてあやしげなちょび髭の男が座席から立ち上がった。
「私は地元で人知れず世界征服をたくらむ組織と超能力で戦っていますがどうしました」
「助けてください」
「分かりました。大宇宙の法則よ! 今こそ我に力を与えたまえ!」
 男は立ち上がり両手を広げた。
「時よ!」

Scene21.【17時25分】
≪この度は本機をご利用していただき誠にありがとうございます。本機はこれより成田空港を離陸いたします。それではシートベルトを締め、離陸に備えてください……≫














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