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アラディア 〜人と神と悪魔と……〜
作:鴉の卵



ネコと呪術師









 二階建てが建ち並ぶ洋風の街において裏路地に光が差すのは稀である。
 場所によってはずっと影になってる場所のほうが多い。
 そのため裏路地は自ずと湿気臭かったりするのが常だ。
 そんな路地の壁にもたれ掛かかる。
 肩を預けるように冷たいレンガに身を預けながら息を整えていく。
 この入り組んだ路地を全力疾走で人の居ぬ方、居ぬ方へと走ったため無駄に体力と気力を消費してしまった。
 いったい自分がどこに居るかさえ判断出来ない。
 この年で迷子なんて……まあ仕方ないよな。


「しかし……おかしな街だな。
地下に用水路か下水道があるのかね?
まったく異臭がしない路地なんてあるんだな……」


 文明レベルを見れば俺の世界より四百年は遅れてるように見える。
 その時代の排泄関係は不衛生で路地裏など入れたものではない。
 だがこの街にはそんな臭いが全くしない。
 今も路地裏を涼しい風が通っている。


「ヘイ!
そこな美男子な若者!」

「?」


 突然の声に振り返るもいるのは俺1人。
 一本道のこの路上において隠れる場所なんて見当たらない。
 何より気配がない。



 ………なら上か?



「……………」


 民家の二階には確かに窓がある。
 だが人影はどこにも見当たらない。


「にゃんにゃにゃんにゃ?
その年にして目が使い物にならないのであるかして?」


 …………下か。
 視線を下げてみたがそれでも誰もいない。



 いるのは毛色の変わった猫一匹。
 風になびくエメラルドグリーンの毛。
 青と金のオッドアイの瞳。
 ちょうど森で遭ったUMAを小さくしたような感じだ。


「なんだ、お前も迷子か?」

「にゃにを言っておる若者?
迷子は汝ではないか」


 喋りやがったよ……
 なんだよ喋る猫って?


「ふぅ……」


 猫を地面に下ろす。
 早く宿に帰らないとな。
 きっと疲れて――


「リポDとアロエドリンク、どちらが好みであるか?
望みであれば我が輩の温かい看護もあるのであ〜る」


 なんか猫がドリンク剤の瓶をペシペシと叩きながら聞いてきてる〜?!
 しかもなんか親身に迫り来るよコレ!


「さてまずは自己紹か――」

「するな!名乗るな!近寄るな!
俺の頭の中に残ろうとするな!」


 逃げた。
 全力で走り出した。
 流れる風景が加速し、そして街の外へと跳び出す。
 周りには誰も居らず、また先程までの喧騒が今では風の音だけとなっている。
 完全な郊外は静かだった。
 あの夜………
 不気味な羽音とうめき声が響き渡っていたなど信じられない。


「なんだ………」


 目の端に何かがなびく。
 茶色に変色した布切れがはためいている。


「あれは〜、俗に言うI・KI・DA・O・REって奴であるな〜おい!」

「だぁ〜っ!
どっから湧き出て来やがったテメエ!」

「もちろんアナタの心のな・か・からYOであ〜る」

「猫って普通喋んないよな?なあ!」

「夢の国の女王たる我が輩が喋んないよな?WA〜Y?
冗談は吉〇興業!
つまりは〜、我が輩は特別な存在つまりExistenceぅ〜?」

「正直死にたいんだな?
俺に殺されたいんだな。
そうなんだなUMA!」

「うぅ……」

「ほれほれ、脈ありであるぞ」

「………なんだろう。
一気に冷めた感が否めない自分が嫌だ」









 ベッドに眠る行き倒れが1人。
 ベッドに眠る少女が1人。
 ベッドに眠る少女の隣その他大勢が多数。


「帰れ」

「「無理」」

「「ヤダ」」

「にゃにゃにゃ」

「看病など1人で十分だ。
早く帰れ、今すぐ帰れ、特に貴様は土に還れナメ猫風情が」


 小さな水桶とタオルを持ってきた暁があからさまな顔でその他大勢を追い出しにかかるもあえなく失敗。
 しかも猫に至ってはまるで『自分は普通の猫ですよ?え、猫が喋るって?いい病気紹介しましょうか?』と言わんばかりに俺の靴をペシペシ叩いて来やがるのでとりあえず踏みつけて転がす。


「だってまともな医者は私しかいないじゃない」

「大丈夫だ。
そのお医者様の応急処置をしたのは俺で、さらに治療したのも俺だ。
だからあなた方はゆっくり寝てなさい。
そこのツインズもよい子は寝んねの時間だぞ。
猫は外で寝やがれ」


 とりあえずメイ達は自室に帰し、猫は窓から投げ捨てる。
 もちろん簀巻きにした上に袋を二重三重に重ねてだ。
 これで悪魔は去った………


「それで自称お医者様の検診結果は?」

「疲労困憊に身体衰弱。
それに背中の一部が魔力に汚染されてる」

「待て。
魔力に汚染されるだと?」

「そうですね……
暁さんも気をつけて貰うために説明しましょう。
魔力は無色透明な物じゃなく属性を持って有しています。
雨の日には水の属性、火が燃えれば火の属性とあります。
火水風土、さらに光闇に物。
これらがよく知られる属性です。
ここで重要なのが光闇です。
人間は光の属性寄りのため闇、特に悪魔のような穢れの強い闇は体に毒でしかありません。
光闇は特別な属性で、これはどこにでも有りますが神言使いクラスでなければ使用不可能な属性の上に他の属性と掛け合わせる時に重要な役割も果たします」

「つまり人間は闇への耐性が低い上に、闇は体に残留すると?」

「そうです。
人間の体も多種多様な属性で組み立てられていますから」


 もう一度少女を見る。
 顔は土と泥、さらには血で汚れ。
 手足は擦り切れてボロボロだ。
 その理由を聞きたくとも彼女が起きるのはまだ先だ。
 今はゆっくり待つしか……


「…………」

「にゃ〜……ふぅ〜……にゃ〜……ふぅ〜」


 なんでだ?
 俺は間違いなくこれを外に捨てた。
 あれだけ厳重に締め上げたうえでだ。
 ならこれは………


「そうか、夢か」















 彼女が起きたの次の日の昼間。
 ちょうど暁が昼御飯を作り終えた時だった。


「うにゃ……ここは……ぁ?」

「ガルガの宿。
さらに言えば俺の宿泊してる部屋だ」

「貴方は、わぁ!」

「熱は無し、脈も良好……顔色も良いな。
よし飯だ、準備しろ」

「あの、え、えぇ?」


 少女の答えを聞くより先に暁は彼女を抱き上げ椅子に座らせる。
 メイとユウが何やら強請るが……まあ無視するんだけどな。


「あの、私急いで……」








「それで逃げてきたと」

「はい……
お願いします!
早く、早くしないと悪魔が、悪魔が子供達を!」


 それを聞いたミリアリアとセシルは揃って苦い顔をする。


「悪魔なんて大したことないだろうに」

「暁、悪魔だけなら一個小隊でもなんとか出来ます。
ですが……悪魔が子供のみをさらうのはマズいんです。
この前の悪魔は使い魔と呼ばれ、いわば下級悪魔です。
知能は低く、倒すのも数があれば容易です。
ですがそれを統べる悪魔は私達よりさらに上の、部隊長級の力がいります。
それにもしその悪魔がデヴィルなら近衛隊の力も必要になります」


 ここから王都まで半日、大部隊で来るならさらに1日かかる。
 それだけの時間がないのは明白だ。


「お願いします……村を、妹達を助けてください……!」


 何度も、何度も暁にすがりながら懇願する彼女に感化されたのかユウが暁に何かを喋ろうとするがメイがそれを止める。


「とりあえず早めに事を運ぼう」









 皐月暁は純粋な呪術師であり、また魔女であった。
 古来より受け継がれゆく秘伝を1つ違えることなく受け継いだ真祖とも言える系統の魔女。
 世界に残存する祖たる13冊の“大魔導書”(グラン・グリモア)。
 そして魔女に由来する記述書を全て受け継いだ彼は根底から魔女でもある。


『お兄ちゃん!助けてあげてよ!』


 そしてお人好しでもあった。
 弟のような少年の願いを断れるような性格を持ち合わせない暁は欠けた月の照らす街道を走っていた。


「おいクソ猫……」

「我が輩にはマルテンクス・グリーン三世という立派すぎてもはや三往復もしてしまうほどに偉大な生態系につけるべき名前があるのであ〜る」

「なら生産者なんだな。
それより行き先の村の位置は解るんだよな?」

「も〜ちろんである!
我が輩が知らぬ土地など最西の大穴と暁の心の中ぐらいぶぎゅるっ――「なんか言ったか?」愛が痛いぜぃ!」


 マル猫の頭をギシギシと鳴り響く程に締め付けながら腕を振り抜く。
 それでも平気でボケる生物に対し俺はどうすればいい?


「不思議だよな………。
これでも握力は人間離れしてたつもりなのになぜか更なる限界を超えられそうだよ」


 ベキベキ―――メギョ、ゴグ……


「世界は絶望という快感に満たされている」

「うし、もう少しで死んでくれるかゲテ猫」

「世界に1つだけの我〜が輩♪
我が輩だ〜け〜はナンバーワ〜ン♪」


 っく〜ぬぅ〜〜〜〜っ!!!
 なんで割れないんだよ!


「それが世界の選択だった………」

「死ね、死ね死ね死ね死ね死んでくれよ〜!!!」





 疲れた。
 まだ日は昇ってないが、次第に空が紫がかっている。
 ってことは太陽が上るまでの一時間で生存者を探し出さないと……


「アキラ………血の臭いがする」

「そうか」

「心配じゃないの?」

「マル、死んだ人間より生きている人間が何より価値があると思わないか?
たとえ傷ついているだけでも、この先に人間の気配がしないなら助けに行く必要はない…………」


 踏みしめていく土が湿り気を帯びている。
 酷く不快な液体が混ざり合い、地面に染み込むことなく小さな水たまりが出来ている。
 腐敗臭のする液体がブーツに付着しては粘り気のある糸を引く。


「死人に必要があるのは弔い………そして殲滅だけだ」


 空に黒い影がさす。
 いや、森の奥からさらに増える。
 数えるだけで2体。
 気配でいけばあと4体はいる。


「マル、少し隠れていろ」

「にゃ〜………」


 マルを森の中に腰のホルダーに左手を添え、右手に魔力を込める。
 魔力を練り上げ―――練成完了
 物質を精製し―――創造完了
 概念を付加させ―――存在確率


「我、全てを裁く」


 『“黒の剣”(ミョルグス)』が手に収まる。
 冷たい刃は熱を持ったように黒く輝く。
 長さは90程の長さの西洋剣を振り抜きながら刺突の構えを取る。


「ハアハア………」


 ギリギリと筋肉が収縮する。
 森の奥から何かが走ってくる。


「フッ、ヤァ………」


 矢をつがえたかのように暁の腕は完全に引かれ、体は力を溜め続ける。


 Α∀∀∀ΕYaahhh!!!

「いや、助けてお兄ちゃぁぁん!!!」


 森から小さな少女が泣きながら走り出してきた。
 その後ろからはあの醜い悪魔、使い魔が言語不可能な発生しながら腕を振り上げる。


 そして―――


 乾いた銃声のように空気が弾けた。


 ΟΟΟΕΕΑΑΗΗΗ!!!

「うぇぁ?」


 黒い大木のような片腕が森の中に混じる。
 体から離れた腕はそれを認めまいと激しく痙攣している。
 使い魔は肩口から胸部にかけて大きな空洞を開けられ、吹き飛ばされながらも少女を掴もうと腕を伸ばす。


「だ、れ……?」

「呪術師」


 仲間を殺されたのが理解出来たのか使い魔達が一斉に森から、空から現れた。


「逃げよ、う……まだ死にたくな―――え?」


 泣きじゃくる少女の頭を撫でながら暁は笑いかける。


「生きたいんなら、助けてあげるよ」


 少女にはそれがまるで御伽噺に出てくる英雄のように見えた。


「我は浸食す―――故に、全てが我が全て也」


 体中のリミッターを浸食し、全てを制御下に置く。
 そして魔力を血に混ぜる。


「ぐ、が………」


 魔力が熱を持ち、皮膚の下から発光し血管を浮き上がらせる。


 ΗΕΑΑΑΑΑ!

「ッシ!」


 襲い掛かる使い魔の腕に刃を立て切り裂く。
 跳ね上がった反射神経による一瞬の太刀筋は名刀さえ折らざるえない強靭な巨腕を紙のように切り裂いた。
 太刀筋の後を追うように血と残像が空に絵を描く。
 筋肉が限界近い圧縮と放出を行い荒々しい太刀筋が使い魔を肉片へと変える。
 そして肉片を的確に蹴り、後方の使い魔達への牽制とする。
 弾く者、避ける者、また肉片に体を抉られる悪魔と様々だ。


「我は憤怒す」


 ミョルグスで手を裂き、血を刀身へと滴らせる。
 血は魔力となり刀身に光を喰らう黒い炎を宿した。


「黒爪――――」


 ミョルグスに纏いついた炎が膨れ上がる。


「―――滅断!!」


 振り抜くミョルグスの刀身が一瞬にして伸びる。
 全てを断ち切る黒炎が木々を、使い魔を灼き殺す。
 斬られた傷は消えぬ炎が纏わりつき、静かに死体“だけ”を燃やしていく。


「大丈夫か?」


 泣き止むことない少女を暁は笑いかけるしか出来なかった。







 それは村の外れに位置した洞窟。
 地脈を理解した上での結界もこれだけ汚れていれば効果も下がってしまう。
 それを表すように洞窟の周りは揺らぎ続けている。
 もつれてきた証拠だ。


「ここが避難場所、か…………」


 地脈の流れを循環させ、その流れに聖遺物を組み込むことで出来上がる結界。
 地脈がから切り離した故に地脈とはまた別の流れを作る。
 確かに合理的だが…………


「長くは保たないな。
もって明日の夕刻………それを過ぎれば聖遺物も地脈の力もなくなるな」


 無限に続くものなどなく、また無限とは有限の延長線の1つでしかない。
 故に、それが有限であるならば長く保つことは難しくとも短くすることは容易である、


「入り方はわかるかい?」

「…………(ふるふる)」

「そうか。
すぅ…………おい、誰かいるか!」


 木々の葉が微かに揺れる程に声を張り詰める。
 喉がジンジン痺れる不快感を無視し、肩に食い込むマルの爪を無理矢理引き剥がして地面に投げつける。


「誰だ?」

「村長さん!」

「っ、ミユか、ミユなのか?!」

「うん!」

「生きていてくれたのか………」

「うん、お兄ちゃんが助けてくれたの!」


 揺らぐ結界のせいで洞窟の中は見えづらいが入り口付近に数人の人間が立っているのはわかった。


「助けにきた。
この子の保護も含めて入れてくれないか?」

「わかりました。
少々お待ちください………」







 洞窟内には傷ついた村人数十人がケガの手当てをしていた。
 軽い物でも深い切り傷。
 酷い物だと全身を包帯に覆われ、虫の息だ。


「ぅ………あ…………」

「アナタ、大丈夫よ………もうすぐ助かるから」


 泣き崩れる親子が父親にすがりついていた。
 大丈夫、大丈夫と泣き崩れる奥さんと息子が瀕死の男性の手を握っている。
 誰が見ても助からないのがわかる。
 それでも微かな希望にすがりつく。


「大丈夫、大丈夫だから………
“誰か”が助けてくれるからね、アナタ」


 暁の足が止まる。
 “誰か”、その単語に足が止まってしまう。


『求められたら与える。
迷い、傷つく者は助け、癒せ』

『めんどくさ』

『貴様、本当に呪術師になる気あるのか?』

『そりゃあね』

『なら助けろ。
ちなみに何も求めるなよ。
呪術師は魔女であると同時に殆どボランティアなんだからな。
ただ貰えるなら貰え』

『矛盾してんぞ婆さん』

『次に歳に関する話をしたら呪うぞ餓鬼』

『なあ、呪術師が人呪っていい5か?』

『呪うしかないなら呪う』

『私的過ぎ』


 あぁ、懐かしいな………
 婆さん元気かな?


「見せろ」

「え……?」

「なんだよアンタ。
余所者のくせにしゃしゃり出てくんなよ!」


 掴みかかる青年を押しのけて男の容態を確かめる。
 包帯の下は火傷や裂傷、さらには汚染された魔力が染み込んでいる。
 誰が見ても助かる見込みはない。


「夫は、夫は助かるんですか?!」

「現状無理だ」

「そんな………」

「お前、もっと言葉があるだろうが!」

「おい村長、重体のケガ人と傷口が変色赤黒く変色してきた人間を一カ所に集めろ」

「え、なぜです?」


 暁は洞窟の壁と地面に陣を書き記していく。
 そして奥に進んでは同じ陣を書いていく。


「早くしろ。
死なせたいのか?」

「え、あ、はい!」


 陣を書き記し終わり、それぞれの陣に腰のホルダーから銀の小箱を取り出し赤い粉を振りかけていく。
 粉が降りかかった魔法陣から光り輝いていく。


「全員を集めましたが……」

「そうか。
―――我は全てを拒絶する貪欲者也」


 魔法陣が互いに線を引き、繋がっていく。
 それが済んだ頃、洞窟内は巨大な魔法陣に包まれた。


「汚染された魔力と結界のほつれはどうにかなったが、流石に失った血は無理だ。
あと自然治癒も強化されてるがなるべく多くの栄養を与えないと意味がない。
………これをケガ人全員に食わせろ」


 別の小箱からケガ人分の丸薬を渡す。


「これは?」

「栄養剤だ。
この結界の為だけのな」


 それを青年に渡した暁は村長と共に奥へと進んでいった。





 村の見取り図と付近の地図を広げながら村長の説明を聞いていた暁は欠伸を噛みしめていた。
 昔から体のスイッチの切り替えは早かったが、無駄なことに対する“節電”のスイッチの切り替えも早かった。
 ………つまり、仕事の最中に意味もない話をされると眠くなるのだ。
 仕事に必要な情報を聞くだけなら数分で終わるそれを村長は感謝の意を込めて長々と離している。


「―――と、以上になりますが………残りの軍の方は外にいるのですかな?」

「いや、単独だ」


 話を聞いていた村の人間がざわつきだす。
 村長も意外な答えに戸惑っているようだ。


「そんな、それじゃアナタ様は単独で来たのですか?」

「別に使い魔程度なら40体集まろうが俺には意味を成さない。
あの程度ならまだワーウルフや翼種の方が百倍キツかった」

「ワーウルフ?翼種?」

「…………亜人だと思え」


 カルチャーギャップがあるとは感じていたがここまでとは………
 まさかこっちの外敵は悪魔しかいないのか?


「とりあえず。
人間の中に潜むわけでもなく、また無闇やたらに素早くない悪魔なら楽勝だ」

「だが山の奥にはデヴィルがいるんだぞ!
アンタがいくら強かろうが王族近衛隊の方々を待つべきだ」

「残念だがその近衛隊が来るのは少なくとも明日の夜明けだ。
この結界は明後日まで保つが………それも襲撃に遭わなければの話だ。
襲撃されれば明日の夜明けはおろか今夜の月夜さえ拝めないだろうな」


 それを最後に暁と村人は黙り込んだ。






 ギシリ、ギシリと骨が軋む。
 先程の呪術で筋肉が傷んだ。
 強制の呪術を使えば明日の夜まで最高の状態を維持出来る。
 だが、それを過ぎれば…………


「お兄、ちゃん……」

「ん……どうした?」


 今朝助けた少女が自分の後ろにいた。
 この脇道には俺以外が近寄らなかった。
 今頃は住人全体で話し合ってるんだろうな………平和なことだ。


「助けてくれてありがとう」

「気にするな」

「それでね、それで………私のお兄ちゃんを助けて」


「どういうことだ?」

「お兄ちゃんは小山の洞窟にいるの!
みんな、みんな酷いことされてた!
お兄ちゃんも泣いてたのに悪魔は笑いながらお兄ちゃんを虐めてた!」

「君はどうやって逃げて来たんだい?」


 少女から見えないようにミョルグスを握る。


「お兄ちゃんが逃がしてくれた」

「だが山から村まではそれなりな距離があるじゃないか」

「隠れながら走ったの。
でも、村に入ったら悪魔が……」

「そうか」


 ミョルグスを腰に挿す。
 そして荷物を簡単に確認して立ち上がる。


「お兄ちゃん?」

「村人に言ってやれ。
賢く、また長生きしたいんなら頭の回転を早くしろってな」

「?」

「助けてやるよ」


 少女の頭を一撫でして外に出る。






 村の中は最悪という言葉がぴったりな程に荒れ放題だ。
 形を保った家は数件。
 残る十数件の家は燃え尽き、崩れ落ちている。
 しかし死体が1つもないのは気になる。


「しかし、こんなのに手こずるとはな」


 足下に転がる様々なパーツを蹴りながらミョルグスの血を払う。
 村を染めた血の大半が暁のせいだ。
 深い黒の血が辺りを染めている。
 足の踏み場に困るほどの肉塊に舌打ちをする。


 GοοΑΑааЯеγγγ!!!

「ウザったいんだよ!」


 村を出るまでに10数体。
 山に入った瞬間倍の悪魔が木々の間から襲いかかる。
 回避と攻撃を同時に行っても数の暴力には大した効果が見れない。
 しかも山の中の悪魔は確実に村の悪魔より皮膚の硬質さも連携の取り方も段違いだ。
 ミョルグスで切り裂くにしても節を見つけなければ無駄に力を使う。
 それを繰り返す度に悪魔達はそれを学び、防御をこなしていく。


 ガキンっ―――!!!


 さらにはミョルグスの刃さえ通らなくなってきている。
 なんなんだこの生物は!!


「戦闘中に進化する生き物なんて聞いたことねえぞ!」


 魔力を凝縮させ手に込める。
 すでに周りは悪魔に囲まれている。
 そしてそれは同時に勝機でもあった。


 μμμОООАА∀∀∀∀∀!!


 一斉に攻撃をする包囲攻撃。
 多対一に対する有効な決め手の1つ。
 だが…………


「世界の全ては変化する―――我が力によって
我は全て喰い荒らす―――暴食也!」


 経験値の違いがここで出た。
 多対一にとって多に勝つ一手。
 それが集まった所をまとめて始末する方法だ。
 地面と木々に魔力を通して形を整え硬質させ、一気に風の嵐刃で巻き上げる。
 その無謀とも言える賭に暁は勝った。
 さらに巻き上げた嵐刃を一気に冷やす。


 βΕΑΑΛ!!


 暁を中心に森が切り刻まれ、薙ぎ倒された。
 ダウン・バーストと呼ばれる現象を呪術により“偶然的”に起こし、強化したのだ。


「無駄な時間だったな」


 既に更地となった“森”を歩きながら暁は走り出す。
 その場に“悪魔”はいないと確認して。







今回、かな〜りの修正のため大幅に削除してしまい申し訳ありませぬ











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