「むぅ…」
神楽は不機嫌そのものの顔で、窓の外をを睨んでいた。
「んだぁ、神楽。そんなに外に出てぇのか?だったら丁度良いや。ジャンプ買ってきてくれや」そんな彼女を見下ろしていた銀時は、そう言い付けた。
「はぁ?何言ってるアルか。まだジャンプ買ってなかったのかヨ」
「ここ最近忙しかったろーが。んなときに買いに行けるか」
「いつも気がつけば買いに行ってるアル」
「ん?何か言ったかー」
「別にっ何もないヨ。行ってくるアル」
◆
パシャパシャと水溜まりに入りながら、適当なコンビニへ向かう。
「有難う御座いましたー」
今週号のジャンプを持ったまま、駄菓子屋へ行く。
「!」
その途中の道。路地の入り口に、小さな段ボールが置いてあった。
「これは――」
中には子猫が二匹。
雨が降っているため、二匹は濡れていた。
神楽は、万事屋にいるであろうあの男を思い出す。
そして申し訳なさそうに表情を歪ませた。
「…ごめん。万事屋には血も涙もない天然パーマがいるから連れてけないヨ」
持ってきていた銀時の物であるビニル傘を、雨避けにと置いていった。
駄菓子屋に着く頃には雨脚が強まり、ずぶ濡れになっていた。
「酢昆布、あるアルか?」
もう恒例となった台詞。
けれど返ってきたのはいつもとは違うものだった。
「あぁ、酢昆布はさっき売れちゃったんだよ」
「え…」
「いつも公園で昼寝をしてる人がね、ついさっき――」
そこまで聞いて、神楽はピンときた。
(アイツ――!!)
雨が降っている中、公園にいる馬鹿はいないだろう――けれど、彼女は公園へ行った。
いる気がした。
そして、文句の一つでも言ってやろうと思っていたのだ。
「うぉいサド野郎!!」
人気のない公園で、神楽の声は響いた。
――暫くして。
「…んだコラ…るせぇんだよ。折角、人を待ってんだから仕事とか勘弁して下せェ…」
「誰待ってるアルか」
「だーかーらー…」
沖田はアイマスクを取った。
目の前に神楽の顔がある。
「うおっ」
「可愛い子がわざわざ文句を言いに来てやったアルよ。もうちょっとマシな反応は出来ないのかお前」
「はっ…可愛い?そんな奴、何処にいるんでィ」
「目の前にいるアルよ。…つーかそんなことどーでも良いアル。私から酢昆布を奪って、誰を待ってるアルか?」
「……!!まさか、さっきの、聞いてたんですかィ…?」
「当たり前アル。今この公園にいるのは私とお前だけヨ」
「待ってた甲斐がありやした…」
「へ…!?」
すると神楽の髪から、雨の雫が落ちた。
自分の先程の言葉を思い出し、赤面する沖田は、誤魔化すように話題を変える。
「お前、傘は」
「…置いてきたネ」
「馬鹿か」
「フンッ!ほっとくヨロシ」
「…ほっとけねぇなァ――」
優しく沖田が言うと、神楽を思い切り引き寄せた。
「――――!?」
言葉が出ない。
ゆっくりと唇を離すと、沖田の整った顔が間近にあった。
「傘代でさァ。…それ使って下せェ」
「ばっ…!!!私の唇は傘代なんかじゃ足りないヨ。酢昆布と、もっと別の物、よこすヨロシ」
「んー?じゃあ傘代+酢昆布+欲しい物で良いですかィ?」
神楽の頬が赤くなる。
「…それで良いヨ」
もう一度、唇を重ねた。
翌日、二人が風邪を引いたのは言うまでもない。 |