その村の地主には三人の娘がいた。
母親は末の娘を産んですぐに死んでしまい、いない。
地主は妻の形見でもある娘たちを大変可愛がった。
ある日、地主は仕事で国外へ旅行に行く事になった。
地主は娘たちに土産に何が欲しいかと尋ねた。
一番上の娘が答えた。
「旅先で一番高価なドレスがほしい」
二番目の娘が答えた。
「旅先で一番美しい宝石がほしい」
おまえは何が欲しい?地主が末の娘に尋ねると、
「お父さまが旅先で一番美しいと感じた景色を絵手紙にして、旅の帰りに私宛へ送ってほしい」
と末の娘は答えた。
「確かに聞き入れた。留守の間、頼んだぞ」
そう言って、地主は屋敷を離れた。
半年して、
一番上の娘には旅先で一番高価なドレスを、
二番目の娘には旅先で一番美しい宝石を、
土産に抱え、地主が旅行から戻った。
末の娘には自分が旅先で一番美しいと感じた北海に沈む太陽を描いた絵手紙を、旅の帰りに送っていた。
クリスマスが近付いた。
地主は娘たちにプレゼントに何が欲しいかと尋ねた。
一番上の娘が答えた。
「街の帽子屋で一番高価な帽子がほしい」
二番目の娘が答えた。
「街の宝石店で一番美しい指輪がほしい」
おまえは何が欲しい?地主が末の娘に尋ねると、
「前夜祭の夜にツリーの下で、お母さまとの一番素敵な思い出話を聞かせてほしい」
と末の娘は答えた。
「確かに聞き入れた。そろそろモミの木が届くだろうよ」
そう言って、地主は街へ出向く為にコートを羽織った。
前夜祭の夜、
一番上の娘には街の帽子屋で一番高価な帽子が入ったプレゼントの包みを、
二番目の娘には街の宝石店で一番美しい指輪が入ったプレゼントの包みを、
手渡した。
末の娘には二人の姉も交えて、妻と過ごした聖夜の中で一番素敵な思い出を語って聞かせた。
何年かが過ぎ、地主は病を患った。
医者によると、この冬を越せないだろうとのことだ。
三人の娘は悲しんだ。
一番上の娘は街で一番高価な薬局の一番高価な薬を買い、父へ与えた。
二番目の娘は街で一番美しいシーツや寝巻きを買い、父に着せた。
そして末の娘は父から貰った旅先からの絵手紙を父に見せ、父から聞いた母との素敵な思い出話を父と語らった。
冬も大関を向かえ、地主は自身の余命がもう幾ばくもないことを悟った。
そこで、三人の娘たちを呼んだ。
「私はもう天に召される。おまえたちに財産を分け与えよう。欲しいものを言いなさい」
一番上の娘は言った。
「お父さま、私は長女です。私がお金の管理をいたします」
二番目の娘が言った。
「お父さま、私はお父さまが集められた絵画や貴金属の管理をいたします」
おまえはどうする?地主が末の娘に尋ねると、
「私はお父さまの日記や詩集の数々が欲しい」
と末の娘は答えた。
「確かに聞き入れた。随分と妻を待たせてしまった」
そう言って、地主は息絶えた。
三人の娘たちはそれぞれ望みどおりの遺産を受け取り、それぞれの道を歩んだ。
一番上の娘は父からの膨大な遺産で遊び呆け、しかしそれも5年程で使い切ってしまった。
二番目の娘は父からの金銀財宝を眺め、自己陶酔に明け暮れる日々。
末の娘は地主の死後すぐに、父から受け取った手帳に記された父の友人であろう人物へ父の死を知らせに行った。
そしてその人物と恋仲になり、二人の子どもをもうけ今でも幸せに暮らしている。 |