【76話】 気持ちが出逢うとき 〜やっぱり僕は、君しか見えない〜
ファミレスへ向かう車中――。
真っ直ぐ前を見て運転しながら、心臓はドキドキ…、そして顔は、ダラダラと緊張の汗が止まらない。
その原因は…、屋敷を出てからずーっと俺を見つめるお嬢様のせい。
何でそんなに俺のことじっと見るんだ。
顔に何か付いてるのかな。それとも髪が跳ねてるとか…。そうじゃなけりゃ…何だ。
あぁ〜〜〜、お願いだからそんなに見つめないでくれ。
うっ、まずいぞ、動悸が激しくなってきた。
あまりにも痛い彼女の視線にとうとう堪えきれなくなった俺は、意を決してお嬢様に声をかけた。
「あ、あの、お嬢様…、そんなにじっと見られると…恥ずかしいのですが…。」
「え?あ、ご、ごめんね。…運転してる早瀬をこうして真横で見るの初めてだったから…つい…」
俺の声でハッと我に返って言い返すお嬢様は、かなり焦り顔。
運転してるのを横で見るのが初めてだから?
何だ、それで見てたのか。
「そうですね。普段、横に乗っていただくことはありませんから…。私も、横にお嬢様が乗っていらっしゃると思うと、とても緊張します。」
“とても”どころか”かなり”緊張しすぎて半分声を震わせながら告げた途端、お嬢様が不思議そうな顔で俺を見遣った。
「どうして?今はプライベートだし、早瀬は“運転手”じゃないよ?私だって“お嬢様”じゃないもん。それなのに、緊張するの?」
はうっ。
うぅ〜〜〜。
「い、いえ、…そういうんじゃなくて…」
上手い返事が思いつかず曖昧に答え返して視線を逸らしていると、突然お嬢様が笑い出した。
「早瀬って、やっぱり面白くて可笑しいね。」
え?
面白くて…可笑しい?
むっ。
「可笑しくないです。」
きっぱり即答してぶすっと脹れると、お嬢様はこんな俺を見てずっと可笑しそうに笑っていた。
うぅ〜〜。笑うな。ちっとも可笑しくなんかないやい!
俺が緊張してるのは、好きな女が隣りにいるからだ。って言うか、お嬢様が俺を見つめるからだ。
それが言えないだけじゃないか!
お嬢様のバカ。鈍感。
がうぅ〜〜〜。
その後、会話が途切れ…少し間があった後、ふいにお嬢様が思い出したように声をかけた。
「ねぇ早瀬、今から『お嬢様』って呼ぶのやめてくれない?」
へ?
「どうして…ですか?」
何だ、いきなり。何を企んでるんだ。
「だって、ファミレスで『お嬢様』なんて呼ばれるの、恥ずかしいじゃん。だから『月華』って呼んでくれればいいよ。ね?」
ふふふっと笑いながら言ったお嬢様に、俺は一瞬耳を疑った。
え…。
今…、何て…。
『月華』って呼べ…と?
っっ!!そ、そんなの恥ずかしくて出来るワケないじゃないか!!
「で、ですが、私にとってお嬢様は…“お嬢様”ですし…」
呼べない。
俺には絶対呼べない。だって、名前言った瞬間、顔から火が出そうだ。
「ダメ。それだと私が恥ずかしいもん。だから、名前で呼んでよ。ほら、“月華”だよ。“つ・き・か”。言ってみて。」
俺の方へ身を乗り出して言ってみろと強請る…いや、命令するお嬢様。
「い、今ここでですか!?」
言えない。死んでも言えない。
カーッと顔を真っ赤にして驚き上ずった声で言い返した俺に、お嬢様は『うん。今。ここで。』とあっさり返事。
こ、ここで…。こんな一般道を運転中にか…。
と言うか、お嬢様の目の前で、つ…月華…って呼べと!?
無理だ。言った途端、間違いなく電柱かガードレールに突っ込む自信あるぞ。
「ほら、早く。だって、練習しておかないと、早瀬のことだからファミレス行って『お嬢様』って呼びかねないもん。」
うっ。
かなり鋭いお嬢様の指摘に返す言葉も無く、俺はただ唇を噛んだ。
それはきっとそうに違いない…。でも…。
「ほ、ほんとに…よろしいのですか?怒りません?」
「怒るワケないじゃん。」
にこにこ言うお嬢様は、じっと俺の口から出る言葉を待っている様子。
どうする?拓海。言ってしまうか、それともやっぱり“お嬢様”で言い通すか。
うぅ〜〜〜。
「黙ってたら、ファミレスに着いちゃうよ、早瀬。」
あうっ。
ちょっぴり急かすお嬢様に、俺はひとつ深呼吸をして覚悟を決めた。
あぁ〜〜、どうか俺の顔から火が出ませんように。
それと、ガードレールに突っ込みませんように。
「…つ、…月華…」
小声ながらも言ってしまった瞬間、案の定ボンッと耳まで熱くなり、恥ずかしさに慌てて手で顔を隠した。と同時によろめいた車。
んぎゃっ!!
急いでハンドルを戻してほっとしたのも束の間、彼女の名前を呼んでしまった現実に、完全に茹蛸状態の顔になった俺。
ど、どうしよう。ほんとに名前を呼んでしまった。
お嬢様の目の前で…、いや、月華ちゃんの目の前で『月華』って呼び捨てで呼んでしまった。
ダメだ、めちゃめちゃ恥ずかしい。
穴があったら隠れたい。
まともにお嬢様の顔が見れなくて意識的に真っ直ぐ前だけ見つめていると、明るい声で彼女が喋り出した。
「うん、OK〜。じゃあ、今からそう呼んでね早瀬……あっ、私も『早瀬』って呼び捨てじゃ変か…。別の呼び方にするね。ん〜、何て呼ぼうかなぁ。やっぱり年上だから『早瀬さん』…かなぁ。」
そう言うと、今度は俺の呼び方を必死に悩み考え込み始めたお嬢様。
そんな真剣に考え込む彼女をちらりと見遣った俺は、何だか可笑しくてついくすっと笑ってしまってから、『いいえ。』と首を振った。
「え?ダメなの??んん〜〜、じゃあ、『早瀬くん』ってのは?…変か。あぁ〜〜〜もう、他には思いつかないよ。何て呼べばいい??」
散々考えたものの、すっかり呼び名のネタが尽きたのか、俺に答えを求めた彼女。
その困り果てた顔の彼女に、俺はにっこり笑顔で答えを告げた。
「拓海でいいよ。」
ずっと君に呼んでもらいたかったんだ。
夢の中でしか、呼んでもらったことが無い呼び名。
「え?……名前で…呼んでもいいの…?」
想像すらしていない答えだったのか、お嬢様は驚きの顔の後…頬を赤らめ恥ずかしげに俺へ聞き返した。
「うん。」
「じゃあ、…『拓海くん』…って呼んでもいい?」
恐る恐る俺の顔を窺うように言ったお嬢様は、耳まで真っ赤。
それが無性に可愛くて、抱きしめたくて震える自分の両手を、必死にハンドルを握ることで抑制した。
「勿論。いいよ。」
「ほんと?じゃあ、拓海くんて呼ぶね。」
俺の言葉にほっとした顔で嬉しそうに言ったお嬢様は、言い慣れない為かちょっぴり恥ずかしそう。
でも、それは俺だって同じ。
「うん…あ、…月華…」
ほら、呼びながら心臓はドキドキだ。
「ん?なぁに?…拓海くん…」
「…もうすぐ着くよ。ファミレス…」
「…うん。」
まだカップルに成り立ての二人みたいな、とてもぎこちない呼び合いと会話。
それが凄く新鮮で、夢でも見てるみたいで、嬉しくて堪らなかった。
いや、違う、これは本当は夢なのかも知れない。
だって、今まで何も無かったのに、急にこんな幸せすぎることが立て続けに起こるなんて有り得ない。
きっとこれは、翔太兄のくれたお守りが見せてくれている夢なんだ。
そう思うことにしよう…。
ファミレス―――。
駐車場に車を止めて早速店内へ入ってみると、週末だけあって客がいっぱい。
うげっ。
まぁ、仕方ないか。金の無い奴の味方だもんな…ファミレス。
客がいっぱいな割りには運良く席が空いていたのか、すぐに店員に案内されて席へつくと、お嬢様が辺りをキョロキョロ見渡し瞳を輝かせた。
「うわぁ〜、凄い。ファミレスって初めて来た〜。人気あるんだね〜。」
見るもの全てが珍しいのか、感動しまくりのお嬢様。
そんな彼女の様子がとてつもなく可愛くて面白くて、思わず笑ってしまった。
「ファミレス来て、そんなに感動してる人って初めて見た。」
お嬢様、可愛すぎ。
「…だって…」
俺の言葉に急に恥ずかしそうに顔を赤らめたお嬢様は、ちょっぴり脹れ顔。
はははっ。やっぱ可愛い。
「さて、じゃあ、何食べる?」
話を変え…メニューを広げて彼女へ見せると、瞬く間にご機嫌が直ったようで、これまた目を輝かせてメニューを眺めていた。
「ん〜っとね、あっ、これにする。このハンバーグ!」
そう言って彼女が指差したのは、大根おろしとシソの乗った凄くシンプル且つ良心的な値段のハンバーグ。
ハンバーグ…。っっ!?ハンバーグだぁ!?
はぁ!?
「えぇっ!!そ、そんなのでいいの!?」
ステーキか何かの聞き間違いじゃないのか!?
だって、財閥のお嬢様がハンバーグ…って、前みたいに沢村の専属シェフが作ったハンバーグならともかく、ファミレスのハンバーグなんて質素な物を頼むワケが無い。
「え?…うん…。このハンバーグがいい…。ダメ?」
俺の素っ頓狂な声の質問に、恐る恐るこっちを見上げて上目遣いに聞く彼女。
うっ、だからその上目遣い攻撃はやめて…。
「あ、いや…ダメじゃないけど…何て言うか…ちょっと意外…だったから…」
「ダメじゃないなら、このハンバーグにする♪拓海くんは何にする?」
メニューを俺の方へ向けてにこにこ聞くお嬢様に、俺は他の物を頼めなくなってしまった。
お嬢様がハンバーグなのに、俺だけステーキとか食えねえしなぁ。
「じゃあ、俺はこっちのハンバーグにしようかな。」
パッと目に付いたのは目玉焼きの乗ったシンプルなハンバーグ。
早速店員を呼びつけて注文を済ませると、俺たちの間に話が無くなってしまった。
目の前では、頬杖をついてにこにこと料理を心待ちにしているお嬢様。
凄く可愛いなぁ…。
くりっとしたぱっちりな二重で。お化粧もナチュラルメイクで上手で。
それに、潤んだ唇。
…あの唇に触れたいなぁ。まだ覚えてるよ、初めてキスした時の、あの柔らかい感触。
もう一度味わってみたい。
それに、整ったスタイル。
腕も指も細くて…。服のセンスも抜群で。
出来るなら、抱きしめて離したくない。
だけど、そんな完璧な容姿とは打って変わって、ちょっぴり…いや、かなり子供っぽいところがあったり、凄まじく鈍感だったりするんだよな。…でも、そこがまたいいんだけどさ。
ふふふっ。
あぁ〜〜、この幸せな夢は、今夜だけで終わり…なのかな。
翔太兄から貰ったお守りのご利益は一回こっきりでお仕舞いなのかな。なんて…、すっかりご利益に縋ってるし、俺。
マジ笑える。
しばらくじっとお嬢様に見とれていると、ちらりと彼女が俺を見上げて口を開いた。
「な、何…?」
え?
うはっ!俺ってば、真剣に見とれてた。
「あ、ううん…何も。」
慌てて答え返して視線を逸らした俺に、お嬢様が言葉を続けた。
「…ほんとに今日、付き合ってもらって良かったの?…週末だもの、出かける予定とかあったんじゃ?」
え…。
「ううん。無いよ。」
あっさり返して水をこくんと飲んだと同時に、お嬢様に疑いの目を向けられた。
「嘘。さっきだって『彼女いない』って言ってたけど、ほんとはいるんでしょ?私なんかと一緒にいたら、彼女に怒られちゃうよ?」
はぁ〜…。
だから、いないって言ってるのに。疑り深い人だな。
「ほんとにいませんってば。嘘じゃないよ。2年ほど前に別れたから、今はいない。」
付き合うって言っても、ただの遊び女だったし…。っつーか、何で俺、お嬢様にこんなこと喋ってんだよ。
ため息まじりに話して深く息を吐くと、俺をじーっと見つめていたお嬢様は『ふ〜ん』と小さく言ってから、言葉を続けた。
「じゃあ、彼女イナイ歴2年なんだ?どうして?彼女作らないの?それとも、好きな子がいるとか?」
俺の顔を窺うように質問を投げたお嬢様は、ちょっぴり興味ありげ。
ドキッ。
す、好きな子…。
どうする、拓海。『いない』って答えるか?それとも…。
大丈夫か。名前言うワケじゃないし。
「…いるよ。」
ドキドキしながらぼそりと答えると、お嬢様はほんの一瞬瞳を曇らせてから頬杖をついて笑顔で口を開いた。
「そっか。だったら、告白しちゃえばいいじゃん〜。」
にこにこしながら晴れた顔で言われた瞬間、胸にはズキンと深く何かが突き刺さった気がした。
そんな笑顔で…、他人事みたいな顔で言わないでくれよ。
俺が好きなのは、君なんだ。
「…それが、言えなくて。」
言いたいよ。俺だって。言えるなら言いたいさ。
グラスを持つ手に力を籠めて感情を抑えている俺にも気付かず、お嬢様が驚いた声をあげた。
「えっ!?言えない…って、何で!?」
目を丸くして問うお嬢様に答えを渋っていたその時、タイミング良く運ばれて来た料理。
助かった。
「さ、さぁ、お腹減ったから食べよう。月華。」
話題をすり替え笑顔を向けると、お嬢様は渋々頷きフォークを掴んだ。
そうして、夕食にありついた矢先、お嬢様の鞄の中でケータイが鳴り出した。
誰…。
「あっ、ごめん、拓海くん。電話…出てもいいかな?」
申し訳無さそうに俺に断りを入れたお嬢様にこくんと無言で頷くと、彼女は少し小声で電話の主と話し始めた。
誰だろう…。電話の相手…。
ハンバーグをもそもそと口に運びながら聞き耳を立てていると、どうやら会話は明日の話し。
明日のこと?…ってことは、あの橘って奴か?
お嬢様は、依頼を受けたってことは…その“橘”って男のこと…まんざらでも無いのかな?
だって、本当にイヤなら、普通は断るだろうし。
それからしばし彼女の電話は続き…、ようやく終了して切ったお嬢様は深いため息。
「明日のデートのこと…?」
食べる手を止め聞いた俺に、あっさり頷いたお嬢様。
「…うん。仕方ないよね、自分でOKしちゃったんだし。さ、ご飯食べよ、拓海くん。」
へへへっと苦笑いで軽く流したお嬢様は、早速フォークを握り、少し冷めてしまったハンバーグを美味しそうに口へ運ぶ。
その顔がとても幸せそうで満足そうで、見てる方までにこにこしてしまいそうだった。
お嬢様って、やっぱり子供っぽくて可愛いぞ。
「どうしたの?拓海くん。食べないの?」
へ?
食事を食べることも忘れてじっと見とれていた俺に、フォークを持ったまま不思議そうにお嬢様が尋ねかけた。
「あ、うん、食べるよ。ただ…月華が可愛いなぁ…って思って…」
好きだよ。君が大好きだ。
この幸せな夢が今夜だけだって言うのなら、忘れられなくなるくらい、君のその可愛い姿をこの脳に焼き付けておきたい。
いつか君から離れる日の為に…。
「え!?か…か…」
しみじみ言った俺にガシャンとフォークを落とし、驚きの声をあげたお嬢様。
同じく彼女の落としたフォークの音で我に返った俺は、自分の言ってしまった言葉を思い出し、一気に顔が熱くなってしまった。
うはっ!!!しまった!!つい本音が…。
あぁ〜〜〜〜、俺ってば何て失態を!!
「あ、ご、ごめん。」
慌てて謝って俯いた俺に、お嬢様がうわずった声で言葉を発した。
「…や、やだ、拓海くんってば…、やめてよ…いきなり…。びっくりするじゃない。」
「ごめん。ほんとにごめん。」
何度でも謝るから、もうそれ以上そのことを言わないで。
顔から火を噴きそうだよ。
あまりの恥ずかしさに俯いて黙々と夕食を食べ続けていると、お嬢様も無言になってしまっていた。
うぅっ。
空気が重い。
何とか、話しを変えないと。
あ、そうだ!
「…明日、待ち合わせ場所まで送って行ってあげるよ。」
ちらっと顔をあげてお嬢様を見ながら話題を変えると、驚いた顔で彼女が俺を見遣った。
うはっ。こっち見ないで。
恥ずかしさで反射的に視線を逸らした俺の胸は、他人にも聞こえるくらいドクンドクンと高鳴っていた。
ダメだ、まともに目を合わせられない。
恥ずかしい。
「え、でも、明日って拓海くんお休みじゃない。いいよ。無理に送ってくれなくても。自分で何とかして行くから。」
遠慮の言葉を吐いたお嬢様をちらりと見ると、そこには心から申し訳なさげな顔。
何で遠慮するんだよ。
俺は、君にとってタダの使用人で運転手なのに…。
「いいって。送るよ。」
安心させるべくにっと笑って答えると、お嬢様はしばし悩んでから『じゃあ、お願いします。』と恥ずかしげに小さくボソボソ返していた。
はははっ。妙に素直だな、お嬢様。
その後俺たちの間に他愛の無い会話が戻り、ようやく楽しい夕食を迎えることになった。のだが、お嬢様には少々多すぎたハンバーグ…。
『残しておけばいいよ。』と言う俺の忠告も聞かず全部たいらげたお嬢様は、案の定吐きそうなほどの蒼白な顔で苦しみ悶えていた。
はぁ〜…。
夕食後―――。
店を出て車に戻るなり、シートにもたれかかって『う〜んう〜ん』と苦しみ唸るお嬢様。
…。
「だから残せばいいって言ったのに…。月華、食べすぎだよ。」
「だって…、美味しかったから…」
ぶちぶち文句をたれるお嬢様は、青ざめた顔。
やれやれ。
「じゃあ、帰ろうか。」
早く帰って休ませた方が良さそうだな。
早速エンジンをかけようとキーに手を伸ばした瞬間、お嬢様に腕を掴まれた。
ドキッ。
「ねぇ、海…見に行こうよ、拓海くん。」
え?海…?
「海…?…でも、月華しんどいんじゃ?」
「平気。今ね、凄く海が見たい気分なんだ〜。ね?行こうよ拓海くん。ね?行こ〜。」
しんどそうながらも何度もお願いするお嬢様に断りきれず『うん…、じゃあ、行こうか。』と素直に応じると、『うん』とご機嫌な返事と微笑が返って来た。
ほんとに大丈夫なのかな?
そうしていざ海へ向けて車を走らせ始めてしばらくした頃―――。
気持ち悪さが改善したのか、隣りで大人しくしているお嬢様の気配を感じながら、ほっとしたのも束の間…ハッとした。
ちょ、ちょっと待て!!拓海!!
『じゃあ、行こうか』なんて言って車走らせてるけど、これって…これって…デ、デ、デートじゃないのか!?
デート…。
お嬢様と二人っきりで海へドライブデート♪
へへ…へへへっ…にへへへへっ。
ぐふぉっ。いかん、顔がにやける。ついでに鼻血が…。
うぬぬぬ…、やっぱり、今夜は絶対おかしいぞ。きっと、翔太兄から貰ったお守りのせいだ。
あれのご利益で一晩だけ俺に幸せな夢が訪れたんだ。そうに違いない。
だったら、幸せな夢であるうちにたくさんお嬢様とお話しておこっと。
「月…」
ちらりと隣へ視線を移し名を呼びかけた俺の目に映ったのは、気持ち良さそうにスヤスヤ眠るお嬢様の姿。
「何だ、寝ちゃったのか…。」
やっぱり寝顔可愛い。
キス…したいなぁ…。
こんな幸せ、今夜を過ぎれば二度と来ないんだろうな。
『伝えるべきなんじゃないか?お前の気持ち…』
ふと圭兄の言葉が脳裏を過ぎったのを慌ててかき消した。
無理だよ圭兄…。
伝えたいけど、やっぱり言えないよ。
好きだなんて言ったら、きっと月華ちゃんは俺ともうこんな風に仲良く喋ってくれなくなる。
そう思ったら、胸がキリキリ痛いんだ。
気持ち良さそうに眠るお嬢様を起こさないよう安全運転で埠頭へ向かった俺は、辿り着くまで何度ため息を吐いたか知れない。
埠頭―――…。
到着して静かに車を止めると、隣りには未だ眠るお嬢様。
起こしちゃ悪いよな。せっかく寝てるのに。
気付かれないようにそっとドアを開けて降りた俺は、真っ直ぐ海へと足を運んだ。
空には美しいほどの月…。そして、見下ろせば…月明かりで波がキラキラと輝く海…。
月と海…か。やっぱり絵になるな。
「綺麗だ…」
時々潮風で遊ばされる髪を何度かかき上げながら、久しぶりの海のにおいと波音に心は癒されていく。
その時――…
背後からガチャっと言う音が聞こえた。
振り返って見ると、こっちへやって来るのはまだ少し眠そうなお嬢様。
「あ、月華。起きたんだ?」
「うん。起こしてくれれば良かったのに。」
俺の声かけにちょっぴり苦笑いで言った彼女は、隣りに立って海を見遣る。
「ごめん。でも、すごく気持ち良さそうに寝てたから、起こしちゃ可哀想かなって思ってさ…」
隣りに立つ彼女にドキドキしながら答え返すと、彼女は俺を見て優しく微笑み…再び海へと視線を戻した。
「綺麗ね…海…キラキラしてる。」
じっと海を見つめて、独り言のように呟いたお嬢様。
その横顔はとても綺麗で、海なんかよりも遥かにキラキラと輝いていた。
「うん。そうだね。」
ねぇ月華ちゃん…、君の好きな人ってどんな人?高坂さんじゃないってほんと?
だけど、高坂さんじゃなくても、きっと俺なんかとは全然違うタイプの人を、君は好き…なんだろうな。
じっとお嬢様を見つめてそんなことを考えていると、視線を感じたのか…俺を見返した彼女が恥ずかしそうに口を開いた。
「な、なぁに…?」
ドキッ。
はっ…。
「あ、う、ううん。何でも無いよ…」
驚いて首を振り否定すると、頬を赤らめ恥ずかしそうにしたお嬢様。そして再び、俺と彼女の間に、重く気まずい空気が流れた。
うっ。
まただ。何とかしないと。
必死に話題を考える俺の横で同じことを考えていたと思われるお嬢様が、突然俺へ声をかけた。
「あ、ね、ねぇ、拓海くん…好きな人いるんでしょ?どうして告白しないの?言わないと気持ちは伝わらないよ?」
え…。
まさかその話題が飛び出すなんて思って無かった俺は、即座に返す言葉が無くて口を閉ざしてしまった。
「言えない理由とかあるの?」
黙りこくる俺に突っ込んだ質問を投げたお嬢様は、じっと俺を覗き込む。
言えない理由…。
それは君がお嬢様で、俺がタダの運転手…いや、俺が…ヤクザだから。
それに、君には好きな人がいるから…。
言いたいことを全て呑み込んで無言で首を振って見せると、お嬢様は更に言葉を続けた。
「それなら何の問題も無いじゃん。告白すればいいのに。」
問題無い…。告白…。
そんな簡単に言わないでくれよ。俺がどれだけ心の奥で葛藤してるか、君は知らないくせに。
「…うん…、でも…その子に好きな男がいるんじゃないかって…不安で…」
適当な答えを返して再び口を閉ざした俺に、お嬢様は少し間を置いてから優しく微笑み口を開いた。
「そういう不安は誰にでもあるよ。でも、言葉にしなくちゃ何も伝わらないよ。」
お嬢様…。
「じゃあ、月華は…?今、彼氏はいないの?」
答えられない苦しさに、逆に問い返した途端…お嬢様の顔はカッと真っ赤になった。
「いないよ!いたら、偽彼女の依頼なんて受けないってば!」
両手をブンブン振って真剣な顔で否定したお嬢様は、耳まで真っ赤。
「…そっか。…じゃあ、月華は…好きな男は…いる?」
ちらりと見下ろして尋ねると、お嬢様は恥ずかしそうにちょっぴりもじもじしながら答えをくれた。
「いるよ。凄く好きな人…」
え…。凄く…好きな人…。
そっか。だよな。
彼女の答えを聞いたと同時に、胸はきゅっと強く締めつけられるように痛んだ。
ほら、やっぱり俺が入り込む隙間すら無い。俺が告ったりなんかすれば、お嬢様が迷惑するだけだ。
だから、このまま諦めるんだ、拓海。今日を境に、この人のことはキッパリ諦めよう。
そうしよう。
「へぇ、そうなんだ…。どんな人…?…告白しないの?その男に…」
気の無いフリをしながらさり気なくぼそっと尋ねると、お嬢様はぷっと頬を膨らませて俺を見上げた。
「あぁ〜〜!ダメだよ。ずるい。そうやって私のことばっかり聞いて、自分のことは有耶無耶にしようとしてるでしょー!!」
え…
「ううん、そんなことないよ。」
違うよ。有耶無耶だなんて。
「ほんとに??」
じとっと疑いの眼差しを向けるお嬢様に『うん。ほんと。』と告げると、彼女は渋々納得したようだった。
「でも、月華の好きな人って…どんな感じの人…?」
どうせ諦めるんだ。せめて、お嬢様のタイプの男ってどんな奴なのか知りたい。
もし俺と全く違うタイプの男だったとしたら、それはそれで諦めがつく。
窺うようにちらりとお嬢様を見て問いかけた直後、彼女がにっと何かを含んだように笑んだ。
え…。
「拓海くんが先に教えてくれないから、教えな〜い。」
そう言ってにやっと口端をあげたお嬢様。
うがっ。
「えぇ――っっ!!俺が先に教えるの!?」
うぅ〜〜〜、そんなの想定してなかったぞ。
っつーか、教えられるワケないじゃないか。
ちろっとお嬢様を見遣ると、そこにはすっかり勝ち誇った笑顔。
「いいよ。別に教えてくれなくても〜。私も言わないから。」
ふふふっと悪魔な笑顔で言ったお嬢様は、海へと視線を向ける。
むぅ〜〜。
お嬢様の意地悪。
俺から先に言わないと教えてくれないなんて…。酷い。
『男なら!本気で惚れた女に当たって砕けるくらいの勇気を持て!!』
『今じゃなくてもいい。でも、好きだって一言告げてから辞めてもいいと俺は思うぞ。』
またもや脳裏を過ぎった圭兄の言葉。
当たって砕ける勇気…。
好きだって伝えてから…辞める…。
伝えてから…。
今がその時…なのかな。
どうせこの先、いつか諦めなきゃいけないんだ。だったら…早いか遅いかの違い…か。
もう、こんな風にお嬢様と一緒にプライベートで出かけることなんて二度と無いかも知れない。それなら…、いっそ腹をくくって玉砕してみるか…。で、きっぱり諦めて今日を限りに運転手を辞める…。
隣りを見下ろすと、じっと海を見つめ眺めるお嬢様の横顔。
勇気を持て、拓海。
今まで散々浮名を流してきたくせに、何ビビッてんだ。
6つ年下の女に告るだけじゃないか。
だけど……。
「じゃあ、俺が先に言ったら、月華も教えてくれる?」
心臓バクバクしながら俯き加減でぼそっと問うと、少し驚いた表情のお嬢様が俺を見遣った。
その目は、まさか言うとは思って無かった…と言いたげだった。
「え、あ…うん…。拓海くんが先に言うなら…言う。」
「ほんと?ほんとだね?約束だよ?」
念を押して何度も聞くと、『うん…』と恥ずかしげに頷いたお嬢様は、顔を逸らしていた。
勇気を出せ、拓海。
今日で全部終わりにするんだ。
大好きだった月華ちゃんと、こうして最後に二人でデートも出来たんだ。もう思い残すことないじゃないか。
あとは、玉砕してきっぱり諦めるんだ。
ほら、頑張れ!拓海!!
「お、俺の…好きな…人は…、…君だよ…。」
思い切って言った瞬間、足先から頭のてっぺんまでカーッと熱くなり、脳みそは真っ白になってしまった。
うぅ〜〜言ってしまった!とうとう言ってしまった。
ダメだ、動悸激しくて死にそう。何も考えられない。超恥ずかしい。
ドキドキしながら横目でちらりとお嬢様を見遣ると、そこには口をあんぐりと開けて俺を見上げる彼女。
その瞳が、『今なんて言ったの?』と告げていた。
あうぅっ。聞いて無かったのか…?
ってことは、もう一度…?嘘だろ…。もう言いたくねぇ…。恥ずかしいよ。
でも…
「…だから、俺の好きな人は月華だって言ったんだ。さぁ、俺言ったよ。次は月華の番だよ。」
あまりの恥ずかしさに顔を逸らして言い放つと、カツンカツンと俺から離れていく靴音。
え…。
驚いて振り返ってみると隣りにお嬢様の姿は無く、少し離れた場所で彼女は俺に背を向けていた。
うげっ。何でそんなに離れるんだぁ〜〜。
うぅ〜〜っ。俺に告られたのがショックだったからって、そんなに逃げること無いじゃないか。
そんな露骨に嫌がられて逃げられたら、俺…すげえショックだ。
「月華…」
「言えないよ。やっぱり無理!!恥ずかしくて言えない!!」
へ?
思い切り首をぶんぶん振ったお嬢様は、両手で顔を覆ってかなり恥ずかしげ。
俺に告られたから逃げたワケじゃなかったのか…?
自分が言いたくなかったから逃げた…?
言いたくない?…!?
「えぇ〜〜〜!!ずるいよ!!俺が言ったら『言う』って言ったじゃないかぁ〜〜〜〜」
俺にだけ恥ずかしい思いさせるなんてずるすぎるよ、お嬢様。
「でもヤダ!!言わない!!」
首を振って言うことを拒んだお嬢様は、俺から逃げるようにどんどん離れていく。
うげっ。
慌てて追いかけた俺は、咄嗟に彼女の腕を掴んで引き止めた。
「待って。大丈夫。俺、聞いてもショック受けないから。だから…教えてよ。」
大丈夫だよ。
俺、もう心の準備は出来てるから。君を諦める覚悟も、忘れる決意も固まったから。
お嬢様の手を掴んで真剣に告げると、彼女は躊躇うように俯いた。
お嬢様…。
「…じゃ、じゃあ、一度しか言わないからね…」
意を決したように口にしたお嬢様は、下ろした手をきゅっと握り締めた。
「うん。」
せめて君から離れる前に、君の好きな人がどんな人か知りたいんだ。
俺じゃないのは、十分すぎるほど解ってるから…。
「ほんとに一回しか言わないからね!」
「うん。」
念を押すお嬢様に笑顔で頷くと、彼女は恥ずかしそうに俯き…しばし押し黙ってから口を開いた。
「私の好きな人は…好きな…人は…、“早瀬 拓海”って人…」
え…
い…ま…なんて…
お嬢様の口から出た、想像すらしてなかった言葉。
その言葉に、俺は耳を疑った。
好きな人は“早瀬 拓海”――――…?
……俺……?
嘘だ…。そんなワケ…
…聞き間違い……?
「月華…今…何て…」
無意識に口から零れ出ていた俺の言葉に、お嬢様は恥ずかしそうに両手で顔を覆って首を振った。
「言わない!!一回しか言わないって言ったから、もう言わない!」
お嬢様…。
「お願いだよ。もう一度だけ…聞きたいんだ。もう一度だけでいいから…。だから…お願いだよ。」
解ってる。
きっと俺の聞き間違いなんだ。
俺が君のことを好きだから、自分のいいように聞いて解釈しようとしたんだ。
そうに決まってる。
君が俺を好きでいてくれるなんて、有り得ないことだ。
お嬢様の両肩を掴んで頼み込むと、彼女は両手を顔から離して俺をちらりと見上げた。
「…」
「月華…。お願いだよ。」
このままだと、俺…諦めきれないよ。
お願いだから、ズバッと切り捨ててくれよ。
無言で俺を見遣る彼女に懇願した直後、彼女は一度きゅっと唇を噛んでから口を開いた。
「そ、そんなに見ないでよ。恥ずかしいよ…。じゃあ…もう一回だけ…だよ?」
「うん。もう一回だけ。」
さよなら、月華ちゃん。
俺、君と出会えてほんとに嬉しかったよ。幸せだった。
君が大学卒業するまで運転手したかったけど、出来なくてごめんよ。
俺、もう決めたんだ。
君の答えを聞いたら諦めるって。運転手辞めるって。
彼女の口からもう一回の答えが出るまで、俺は心の奥でいっぱいいっぱい彼女に別れの言葉を告げた。
そして―――…
「だから、その…、えっと…、あぁ〜〜〜〜、んもう!私の好きな人は、“早瀬 拓海”って言ったの!!もう言わないからね!絶対言わないからね!!もうやだぁ、恥ずかしすぎだよぉ。」
耳まで真っ赤にした彼女の口から告げられたもう一度の答え。
そして、今度はしっかり聞こえた“好きな人は、早瀬 拓海”の言葉。
俺……?
お嬢様の好きな人は…俺…?
じゃあ…さっきのは、聞き間違いじゃなかった…?
そんな…そんな…。
次の瞬間、気付くと俺は無意識にお嬢様をぎゅっと強く抱きしめてしまっていた。
信じられない。
お嬢様の好きな男が…この俺だった…なんて…。
俺…だったなんて…。
「きゃっ!た、拓海くん。いきなり何するのよ。」
突然俺に抱かれてびっくりしたのか、うわずった声で言い返したお嬢様。
「ごめん…。でも、凄く嬉しくて…。好きだよ、月華。好きだよ…。凄く好きだよ…」
俺、情けない。
『好き』以外、他に何も言葉が出てこない。
好きだって言葉で胸が溢れてる。
「私も…拓海くんが好き。凄く好き…」
俺に答えるように言って俺の背中に手を回したお嬢様。
それがとてつもなく嬉しくて幸せで、更に強く彼女を抱きしめてしまった。
『拓海、お前とお嬢、気持ちが出逢わなかっただけで、本当は両想いだったんだ。』
以前圭兄に言われた言葉が脳裏を過ぎる―――。
気持ちが出逢わなかっただけ…。
圭兄、出逢ったよ…気持ち。
どうしよう、俺、死にそうなくらい幸せで…涙が溢れ出しそうで…自分がコントロール出来ないよ。
どうしていいか分かんない。
だって、こんなこと生まれて初めてなんだ。
諦めなくちゃって思ってたくらいで、まさか気持ちが出逢うなんて…想像すらしてなかったんだ。
彼女を強く優しく抱きしめながら、全身で幸せに浸っていた矢先、忘れていた大切なことを思い出した。
はっ。
そう言えば…明日…
「月華…、明日…、一日偽彼女になるんだよね…?」
そうだ、あの橘って奴に依頼されて受けたって言ってたんだ。
「あ…うん。もう、約束しちゃってるし…」
俺の腕の中で少し言いづらそうに答えたお嬢様は、瞳を曇らせた。
お嬢様…。
「…行って欲しくない…。せっかく気持ちが通じ合えたのに、…それなのに…他の男に…会いに行って欲しくない…」
ずっと俺の傍にいて欲しい。
俺だけを見てて欲しい。
他の男が君に触れるなんてイヤだ。君の可愛い笑顔を、俺以外の奴に見せたくない。
凄く我が儘で身勝手だと思うけど、でも…俺だけの月華でいて欲しい。
真っ直ぐお嬢様を見つめてお願いすると、彼女は少し困ったような顔をした。
「…うん。私も、出来れば行きたくないよ…。でも、もう決まっちゃっててキャンセル出来ないし…。」
「月華…」
「あはははっ、大丈夫だよ、拓海くん。だって、橘くんと二人っきりで行くワケじゃないし。あっ!そうだ、拓海くんに何かお土産買って来てあげる。ね?」
頑張った作り笑顔で必死に俺を宥めてくれるお嬢様。
月華…。
「…うん。」
渋々一言だけ頷いた俺は、もっと強く彼女を抱きしめた。
「大好きだよ、月華。このまま離したくないくらい、大好きだ。」
本当だよ。
この先何があったって、絶対君を離したくない。ううん、離すもんか。
心の底から溢れる言葉を口にすると、お嬢様の頬を一筋の涙が伝った。
え…。
月華…。
「私も…大好き。拓海くんが…好き。凄く好き。」
まるで涙を隠すように、きゅっと俺に抱きついて呟いた彼女。
そんな彼女が狂おしいほど愛しくて堪らなくて…、優しく見守る月明かりの下、俺はずっとずっと彼女の身体を抱きしめていた―――…。
やっと出逢った気持ち―――。
嬉しくて嬉しくて
幸せで幸せで
死ぬほど君が愛しい…。
出逢って一年と数ヶ月…
正直言えば、何度君を諦めようと思ったか知れないよ。
でも、その度に俺は思ったんだ
そして、今も想うよ
やっぱり俺は、君しか見えないんだ…って―――。
完…。 |