7代目はお嬢様に恋をする。(67/77)PDFで表示縦書き表示RDF


7代目はお嬢様に恋をする。
作:九条 要



【67話】 お嬢様のMail 1(いざ京都へ)


 12月21日―――。
 今日は、涼太と一緒に京都へ行く日。

 先日のお嬢様行方不明騒動後、案の定彼女は、酔っていた間の記憶を綺麗サッパリ忘れていた。
 まったく、何処までもお子様で世話の焼ける人だよ。
 でも、そんなところが可愛いんだけどさ。ふふっ。
 だけど、あの樹海の中で、眠りこけた彼女を抱きしめていた15分間は、死にそうなほど幸せだった。
 ずっとこのままでいられたら・・・なんて、マジで思っちゃったし。
 ほんと俺って、どうしようもなくお嬢様にベタ惚れすぎ。
 

 夕方――。
 涼太とともに荷物を持ってマンションを出ようとした矢先、ケータイが鳴り出した。
 ん?
 ごそごそ取り出し着信相手を確かめると、かけてきたのはお嬢様。
 何か用事か?
「あ、涼太、先にバス停行っててくれ。電話終わったらすぐ行く。」
「了解〜。早く来いよ。」
 俺に言われた涼太は、ご機嫌に返事をしてガラガラとキャリーケースを引き、歩いて行った。

「はい、早瀬です。何か御用でしょうか?」
 涼太が離れたのを確認してから電話に出ると、お嬢様はさほど急いでる風でもなく、いつもと変わらぬ口調だった。
―「あ、早瀬?あのね、話があるんだけど、今から来てくれないかな?」―
 えっ、今から・・・。
「あの、すみません、お嬢様。これから友人と旅行に出かけますゆえ、お屋敷に伺うのは無理でございます。」
 今から屋敷へ行ってたら、新幹線に乗り遅れるからな。
―「あ、そうなんだ?じゃあ・・・、早瀬のメアド教えて。メールで送るから。」―
 へ?メアド?
 言いにくそうにボソボソ言ったお嬢様に、俺は思わず首を傾げた。 
 何で、メールで送るんだ?
「あの、お嬢様、今お話していただくわけには参りませんか?」
 だって今電話で喋ってるんだし、今喋ればいいんじゃ??
 すごく素朴な質問を投げた瞬間、お嬢様が『いいの。とにかくメアド教えて。』と強い口調で言い返した。
 ひっ。
 な、何で怒ってるんだ??お嬢様。
 俺、何か失礼なこと言ったっけ?せっかく電話で喋ってるんだし、用事なら今話して欲しいって言っただけだぞ。なのにどうして・・・
 はっっ!!
 もしや!怒ってる理由はそのことじゃなくて、樹海でしばらく抱きしめてたことか!?忘れてると思ってたけど実は覚えてて、そのことで怒ってるのか!?
 有り得る。有り得るぞ。
 だとしたら・・・まずい。謝らないと。
「あ、あの、お嬢様!すみません、先日の件で怒っていらっしゃるのなら謝ります。ほんとに申し訳ございません。」
 何か言われる前に先に謝罪の言葉を並べると、お嬢様は『先日のことって何?』と不思議そうに聞き返した。
 は?樹海の件じゃ・・・ないのか??
 じゃあ何だ!?何の件で怒ってるんだ!?
 思い出せ、思い出すんだ拓海。何をやらかしたんだ、お前は。
 必死に脳みそを働かせるが、ちっとも分からない。
 うぅ〜〜〜、分からねえ。何なんだぁ〜〜〜。
「ねぇ早瀬、早くメアド教えて。」
 ちょっとイラついたように催促するお嬢様にビクッとした俺は、ひとつ息を吐いてから口を開いた。 
「・・・分かりました。じゃあ、言いますので何かに控えてください。」
 渋々メアドをお嬢様に教えると、彼女は一変『ありがと。じゃ、またメールするね。』と明るく言い残し、一方的に切ってしまった―――。
 何だろう。何のことでメールを送ってくるんだろう、お嬢様。
 電話で喋れないような話ってことだろ?いったい何だ??
 とてつもなく怖いぞ。
 怖すぎる――・・・。
  
 ケータイを握り完全にダークブルーになっているところへ、キャリーをガラガラ引っ張って涼太が駆けて来た。
「拓海ぃ〜〜、何してんだよ!バス来ちゃったぞ!ほら、バスのおじさんに待ってもらってるから早く早く!!」
 俺の腕をがしっと鷲掴んだ涼太は、すごい勢いで俺を引っ張り駆け出した。
「んぎゃっ!!涼太〜〜〜!引っ張るなぁ〜〜!!」
「うるさい!拓海が遅いからだろ!!つべこべ言わずにキビキビ走る!!」
 怒り口調で背中越しに言い返した涼太は、自分のキャリーと俺の両方を引っ張り、待っててくれるバスまで猛ダッシュ。
 涼太、バカ力すぎだぞ。腕が抜ける・・・。
 こうして、お嬢様のせいで不安をいっぱい抱えた俺と、とてつもなくご機嫌で元気な涼太の京都旅行は始まった―――。


 
 京都へ向かう新幹線内―――。
 お嬢様の不機嫌の理由を考えつつぼんやりと窓の外を眺めていると、涼太が俺の肩をトントンと叩いた。
「ほい、拓海。おやつ〜♪旅って言ったら、やっぱおやつは付き物じゃん♪い〜っぱい買い込んで来たんだ♪ほら、ポッキーだろ?チョコだろ?スナック菓子だろ?アメに〜・・・えーっと、えーっと・・・とにかくいっぱい買って来たから、拓海もお食べ。」
 すっかり修学旅行気分の涼太は、にへにへしながらテーブルの上にお菓子の山を作った。
 はははっ、お前は高校生かよ。
「さんきゅ。」
 ひとまずポッキーを一本もらってかじりながら再び窓の外へ視線を向けると、チョコの甘い匂いを漂わせつつ涼太が俺に話しかけた。
「なぁ、拓海。お前、本命のこと・・・もう諦めちゃったのか?」
 え?
「・・・まぁな。俺には、手の届かない女だからさ。」
 そう、俺には一生かかったって手の届かない人なんだ。あの人は・・・。
 だから、せめて心の奥でそっと想うだけにするんだ。
 ふっと笑みを浮かべて言った俺の肩を、いきなり涼太ががしっと抱いた。
「そっか。じゃあ、今回はそういうことはぜ〜んぶ忘れて、千尋と三人でぱ〜っと騒ごうぜ。な?拓海。」
 そう言ってへらへらと笑顔を見せる涼太。
 それが、単におちゃらけてるのではなく、俺のことを気遣っての言葉なんだということは、俺には十分すぎるほど分かる。
 だって、もう20年以上こいつと一緒にいるんだから・・・。
「そうだな。美味いもの食ってあちこち観光して、ぱ〜っと楽しく騒ぐか。」
 涼太の肩を抱き返し笑顔で返すと、涼太は『おうよ!』と超ご機嫌。
 ありがとう、涼太。
 お前って、やっぱりすげえいい奴だよ。
 くしゃくしゃっと涼太の髪を撫でると、柔らかくて猫のよう。
「お前の髪って猫っ毛だな。触ると気持ちい。」
「あ〜〜〜!またくしゃくしゃにした!!もう!触るなよぉ〜〜〜!せっかく綺麗にしたのにぃ〜〜」
 文句を垂れて俺から離れた涼太は、必死に毛づくろいを始める。
 そんな涼太が面白くて、ついくすくすと笑ってしまった。
「お前、そうやってると猫みたいだな。かと思ったら、飛びついてベロベロ舐める犬の時もあるし。忙しい奴。」
「うるさい。俺は犬でも猫でもないぞ。ちゃんと人間だ!がうぅ〜〜」
 毛づくろいをしながら吼えて唸る涼太に、俺はすかさず突っ込んだ。
「そうだったな、可愛い可愛い愛里ちゃんに変身する涼太くんだったのを忘れてた。けけけ。」
「むっ!あれは別に好きでなったんじゃないぞ!お前に頼まれたから、渋々女装したんじゃないかぁ!!」
 ようやく毛づくろいを終えたと思ったら、今度は犬のようにきゃんきゃん吼えた涼太。
 ほんと、忙しい奴だな。笑える。
「おやおや、その割には、俺に迫ってきたじゃん?」
 痛いところを突いてやった途端、涼太は顔をカーッと真っ赤にした。
「あ、あれは・・・。ちょっと拓海をからかっただけだ。」
「はいはい。その挑発にすっかり乗った俺様はおバカさんだったよ。」
 ケラケラ笑って再び涼太の髪を掻き乱してやると、彼はまたもや怒って毛づくろいをしていた。
 ほんっと、面白い奴だ。一緒にいてこんなに飽きない奴も珍しい。
 ふふふっ。

   
 新幹線に乗って一時間が過ぎ――。
 静かに本を読んでいると、何かが俺の肩に倒れてきた。
 ん?
 ちらりと視線を移すと、それは涼太の頭。
 すっかり眠ってしまった涼太は、気持ち良さそうな顔で俺の肩にもたれていた。
 テーブルには、涼太が食べたお菓子のゴミが所狭しと置かれている。
「やれやれ。散々おやつ食ったら寝るのかよ。子供みたいな奴だな。」
 起こさないようにそれらのゴミを袋に片付けると、涼太がむにゃむにゃと何かを言い出した。
「ん〜・・・たっくん・・・ありがと・・・」
 小さく寝言を言った涼太は、無意識に俺の腕を掴んだ。
 たっくん・・・って。
 小学校の頃の夢でも見てるのか、こいつ。
 涼太の言う『たっくん』とは、俺のことだ。そして『ありがと』の意味はきっと、イジメっ子から俺がこいつを助けたからだ。
 小学生の頃、涼太はずっと男子からも女子からもイジメを受けていた。
 家が金持ちなのと、容姿が女の子みたいなのと、その両方でだ。
 今思えば、それらは彼らの僻みであり、嫉妬だったんだと思う。
 きっと、金持ちな上見た目の可愛い涼太のことが、気に入らなかっただけなんだ。
 そんな涼太をいつも助けてたのは、幼馴染の俺。
 俺も、家が“ヤクザ”ってだけで酷い陰口を叩かれてたから、涼太の気持ちは痛いほど分かった。
 好きで“金持ち”や“ヤクザ”の家に生まれたんじゃない。
 なろうと思ってこの“容姿”をしてるんじゃない。
 それなのに酷い言葉を浴びせられることが、子供心にどれほど辛かったことか―――。
 そんな、イヤで辛いことがいっぱいの小学校生活は、俺も涼太も大嫌いだった。
 だけど、そういうことがあったからこそ、俺と涼太はずっと仲良しで今に至っている。
 相手が苦しんでいると、知らず知らず無意識に相手を宥め思いやってるのはその名残だ。
 俺のことを一番理解してるのはきっと涼太だし、涼太のことを一番理解してるのも、間違いなく俺・・・なんだと思う。


 京都駅に到着する40分前―――。
 寝てる涼太を起こさないよう、声を抑えて千尋に連絡を入れた。
「もしもし、千尋?」
―「おぅ、拓海〜。何や、ひそひそ声で。もうそろそろ着く時間か?」―
「あぁ。涼太が寝てるんだよ。だからあんまり大きな声出せなくてさ。それはそうと、あと30分ほどで着くから、迎えよろしく頼むよ。」
 小声で説明して告げると、納得した千尋は『了解。もうちょっとしたら向かうわ。待ち合わせは、烏丸中央出口いうとこな。そこ出たとこで待ってるし。』と軽い調子で返事をした。
「あぁ、分かった。んじゃ、着いたらその改札へ向かうよ。」
 そう言い置いて電話を切って隣りを見ると、俺にもたれてまだスヤスヤ眠る涼太。
 こんなに寝たら今夜寝れないんじゃないか?
 って!!おい!!よだれ!!
「こらっ!起きろ!涼太!」
 気持ちよさげに眠る涼太の頭をゴンッと叩くと、むにゃむにゃと目を擦りながら起きた涼太は、ぼーっとした顔で俺を見遣った。
「ん〜〜、なんら?たくみぃ〜」
「『なんら?』じゃねえ!俺の服に、よだれが・・・よだれが・・・。どうしてくれんだよ!ボケ涼太!」
 服にべっちょりとついた涎を指差し吼えた瞬間、涼太が『あっ、ごめん。』とにへにへ謝り、自分の服の袖で拭き始めた。
 ぎゃ〜〜〜!!
「延ばすな、ばかたれ〜〜〜!!」
「延ばしてないぞ。拭いてるんだ。」
 真面目な顔で返す涼太の額を思い切り叩いた俺は、うるうるの瞳で更に吼えた。
「何処が拭いてるんだ!?延ばしてるだけだろうがぁぁ〜〜〜!!」
 うぅっ、俺のお気に入りの服が涼太の涎まみれに・・・。
 しくしく。
「そう怒らなくてもいいじゃん、拓海ぃ〜。何なら俺の服によだれ付けてもいいからさ。」
 うがっ。
 素な顔で言い吐いて自分の服を『ほれっ』と見せる涼太に、即座に返す言葉が見つからなかった。
 〜〜〜っっっ!!
「誰がよだれなんぞ垂らして寝るか!お前と一緒にするな!」 
 俺様がよだれなんて垂らすワケねえだろうが!
「そんなに怒るなよぉ、拓海ぃ。あんまり怒ってばっかだと、せっかくのカッコいい顔が“怒り顔”になるぞ?」
 俺の眉間に指を当ててシワを伸ばす涼太。
 うぐぐぐ〜〜〜、誰のせいで怒ってると思ってるんだ、貴様はぁ!
 首絞めるぞ!
 いかん、今は旅行中だ、そしてここは新幹線の中。
 落ち着け、拓海。落ち着くんだ。涼太相手に真剣に怒ってんじゃねえ。
 どうせこいつは、何を言っても右から左だ。
「もういい。それより千尋には連絡しておいた。あと30分ほどで京都着くぞ。」
 ツンと顔を背けて景色を眺めながら背中越しに言うと、涼太が俺にべちょっとくっついて同じように窓の外を眺めた。
「おぉ〜〜!もうちょっとで京都かぁ〜〜♪」
「こらっ!寄りかかるな!重いだろうが!」
「いいじゃん、たっくん。」
 キーッと怒る俺に昔の呼び方をした涼太は、そっと離れてにっこり笑う。
「涼太・・・?」
「さっきさ、寝てるときに、久しぶりに小学校の頃の夢見たんだ。夢の中でも拓海は、いじめられてる俺を助けてくれた。それがすっごくカッコよくてさ。夢の中で俺は『拓海みたいに強くなりたい、カッコよくなりたい』って思ってるんだ。事実、ガキの頃、拓海って俺の中ですげえ憧れだった。でもそんな俺の憧れの拓海が、クラスの奴らに『ヤクザの子供だ』って陰口叩かれててさ。俺、知ってたのに・・・あいつらに何も言えなくて・・・。結局拓海の為に何も出来なくて・・・。・・・根性無しだよな、俺。」
 そう言った涼太は、切なげな瞳を俺に向けた。
 涼太・・・。
「阿呆。何もしてないことないだろうが。お前はいつも笑顔で俺の心を楽にしてくれてたよ。それは、今でも同じだ。どんな慰めの言葉よりも、俺にはそれが一番有り難いよ。」
 こつんと涼太の頭を叩いて笑いかけると、俺を見た涼太はへへへっと照れくさそうに笑っていた。
  
 
 30分後―――。
 ようやく到着した京都駅。
「おぉ〜〜!!たっくん!京都だ!京都に着いたぞぉぉ〜〜〜!!」
 俺を押しのけ窓の外を覗き込んで叫んだ涼太。
「うるさい!そんなもん、分かってる!だから『たっくん』って呼ぶな!!ほら、降りるから荷物を持て。俺は先に行くぞ!」
 涼太をべしっと叩いて怒鳴り席を立った俺は、自分の荷物を掴みさっさと新幹線を降りた。
 ったく、涼太の阿呆。
 大きな声で『たっくん』て言うんじゃねえ。恥ずかしいだろうが。
 不機嫌満開でキャリーを引いて歩きつつ、何気なく上着のポケットに手を突っ込むとそこにはケータイ。
 そう言えば、お嬢様・・・メール送って来ないな。
 話って何なんだろう。怒りメールなら、速攻送ってくるかと思ったのに。
 違うのかな?
 ポケットの中のケータイを握りあれこれ考えていると、後ろから涼太が叫んだ。
「たっくん、待ってくれよぉぉ〜〜〜」
 ぶちっ。
「『たっくん』って呼ぶなって言ってるだろうが!!殺されたいのか、てめえは!!」
 立ち止まって振り返りざまに怒鳴った俺を、涼太ががしっと捕まえニヤリと笑みを向けた。
「へへへっ、捕まえた〜。おし、じゃあ、一緒に千尋のもとへ向かうぞ、お〜!!」
 俺の手を掴んでご機嫌にキャリーを転がし始めた涼太は、軽い足取りで歩いて行く。
「はいはい、分かった分かった。」
 渋々涼太に引っ張られて向かった待ち合わせ場所では、既に千尋が待っていた。

「お〜い!拓海〜、涼太〜!こっちや!こっち〜!」
 俺達を見つけた千尋が名前を呼んで手を振った。
「あ、千尋だぁ〜。お〜〜い千尋ぉ〜〜〜!」
 千尋の声と姿に気付いた涼太は、途端に俺をぐいっと強く引っ張り駆け出した。
 げっ。
「ぎゃ〜〜〜!!引っ張るな涼太!!手が痛い!!」
 何とか離そうと試みるが一向に離れない涼太の手。
 うぅぅっ、やっぱりバカ力め。
 結局涼太に引っ張られたまま千尋のもとへ行くと、俺を見て千尋が笑っていた。
「はははっ、相変わらずやなぁ、お前らは。・・・て、んん?何や、拓海くさいで。」
 へ?くさい?
 俺の傍に顔を寄せて言った千尋に、俺は即座に涼太の胸ぐらを掴み大きく揺さぶった。
「お前のせいだぞ!涼太!!お前が俺の服によだれなんか垂らすから、千尋に臭いって言われたじゃないか!!」
「ぐ、ぐるじい〜〜!!仕方無いだろぉ〜〜〜熟睡してたんだから〜〜。怒るなよ、たっくん〜〜」
 むきーっ!!
「だ〜か〜ら〜!!!『たっくん』って呼ぶなと言ってんだろーがぁ〜〜〜〜!!! 
 完全にキレてどすの利いた声で怒る俺に、千尋が止めに入った。
「そのくらいにしときて、拓海。それ以上したら、涼太があの世へ行ってまう。それに、今夜俺んちで洗えば済むよって、大丈夫や。せやし、それ以上したらあかんて。」
 俺を掴んで涼太から引き離した千尋は、必死に俺を宥めた。
 がうぅ〜〜〜。
「次、『たっくん』って呼んだらタダじゃすまねえからな!!涼太ぁ!!」
「うぅっ、拓海怖い。」
「はははっ。お前ら、ほんまちっとも変わってへんなぁ。何や、それはそれで嬉しいわ。」
 俺と涼太のやり取りを見ながら、千尋はずっと可笑しそうに笑っていた――。












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