7代目はお嬢様に恋をする。(46/77)PDFで表示縦書き表示RDF


7代目はお嬢様に恋をする。
作:九条 要



【46話】 てめえ、月華の何なんだ!?


 翌日・・・。

 むにゃむにゃと眠りから覚めると、何やら視線を感じた。
 んあ?
 まだ視界のぼやける目を凝らしてじーっと見やると、そこには二つの瞳。
 その正体に気付くのに、さほど時間は要さなかった。
「ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!何でてめえがここにいるんだ〜〜〜〜〜!!!」
 大声を上げて慌てて和室の隅っこに逃げた俺は、心臓バクバク状態で犯人に怒鳴った。
 び、びっくりした。ショック死するかと思った。
「そんなに驚かなくてもいいだろ。もう7時過ぎてるから起こしてやろうと思っただけじゃん。それより何でケータイ握り締めて寝てたんだよ?それも開きっぱなしで。」
 スーツ姿で布団にちょこんと正座をしてにへにへする涼太が、俺の手に握り締められているケータイを指差して不思議そうに問いかけた。
「ケータイ・・・。」 
 言われて初めて気付いた手の中のケータイ。
 開きっぱなしのそれを見て、一気に顔が真っ赤になった。
 やばい、俺。お嬢様の写真出したまま寝てた。
「涼太、これ・・・見て無いだろうな??」
 睨みつけて恐る恐る問うと、涼太はぶんぶんと首を振った。
「見てない。見てやろうかと思ったけど、殺されたくないからやめた。それより、支度しないと仕事遅れるんじゃねえの?って俺もだけど・・・。」
 にんまり言って立ち上がった涼太は、さり気なく時計を指差しいそいそとネクタイを結び始めた。
 仕事・・・。
 時計を見やると既に7時20分。
 んぎゃっ!!まずい!!お嬢様に怒られる!
「だぁ〜〜〜、何でもっと早く起こさねえんだよ、ボケ涼太!」
 立ち上がるなり涼太に怒鳴りダッシュで風呂場へ向かった俺を、呆れがちに涼太が見ていた。
 くそ〜〜〜寝すぎた。
 
 素早くシャワーを浴びてスーツに着替え、髪を整えてリビングに戻ると、涼太がTVを観ながらパンにかぶりついていた。
「あれ?どうしたんだよ?それ。」
「ん?あ、拓海が寝てる間にコンビニで買って来た。じゃないと、朝飯食いっぱぐれるから。ほれ、拓海のサンドイッチも買って来たから食えよ。それと、コーヒー牛乳。」
 俺の質問にゴソゴソとビニールからパンとコーヒー牛乳を取り出して告げる涼太。
「さんきゅ、助かる。朝飯作ってる暇ねえからな。じゃ、さっそくいただき。」
 ネクタイを結んでからソファに座り、パクッとサンドイッチにかぶりついたところで涼太が声をかけてきた。
「なぁ拓海、夕べふと思ったんだけどさ、蓮って奴がもし俺に本当に“マジ惚れ”だったら、どうするんだ?例えば、仮にだぞ?俺には、金も物も要求してこなかったら?それでも、エンディングで圭ちゃんにボコボコにされるのか?あいつ・・・。」
 え・・・。
 驚いて反射的に涼太の顔を見たが、彼は俺を見ることは無くじっとTVの画面を見つめていた。
「当然だ。だって、お前の他にもあいつは6股かけてんだぞ?しかも、全員から金品を巻き上げてる。その中に俺の知り合いがいる。一度痛い目を見ても罰は当たらん。」
 冷たく言い捨てもそもそとサンドイッチを食う俺を、今度は涼太が見返した。
「ろ、6股ぁ??・・・そっか。6股かけてるってんなら、情状酌量の余地は無いな。」
 ふっと冷めた笑いをした涼太は、美味そうにコーヒー牛乳をすすった。
 涼太・・・。
「涼太、お前まさか・・・『女』として蓮に惚れた・・・とか?」
 有り得ない質問を投げかけた途端、涼太がぶーっとコーヒー牛乳を噴出した。
「ぎゃっ!!噴出すなよ!!」
 汚ねえ。
「阿呆!!お前が変なこと言うからだろ!ったく、朝から気持ち悪いこと言うなよな、拓海。俺が好きなのは『可愛くて、美人で、甘えると超可愛い“女の子”』だ!!拓海のケータイに映ってる子みたいな・・・」
 えっ。
 涼太がちろっと視線を逸らしてぼそっと言った瞬間、サーッと血の気が引いていくのを感じた。
 俺のケータイの写真・・・って。
「み、見たのか!?お前!!見たのか!!??言え!!」
 涼太の胸ぐらを鷲掴みにしてユサユサ揺さぶりエキサイトした俺。
 だって、涼太に見られたくなかった。
 俺だけの愛しのお嬢様。
「ぎゃ〜〜〜〜〜やめろぉ〜〜。食ったもんが出るぅ〜〜〜〜!!」
 揺さぶられて顔を青ざめる涼太を無視して、俺の詰問は更に続く。
「うるさい!!お前、『見て無い』ってさっき言ったじゃないか!!ほんとは見たのか!?おい!どっちなんだ!!言わねえとこのまま絞め殺すぞ、こらぁ!!」
「ぐ、ぐるじいぃ〜〜〜〜〜。う、嘘つきました・・・。見てない・・・神様に誓って・・・見てません・・・。たずげで・・・。ほんとに吐く・・・いや死ぬ・・・。」
 死にそうな顔で途切れ途切れに答える涼太を、更にぐっと締め上げた。
「ほんとだな??ほんと〜〜〜に見てないんだな!?嘘じゃないんだな??」
「ほんとに見てないって・・・。だからはなじで〜〜〜・・・。」
 これ以上絞めたらさすがに本当にゲロられる気がして手を離した俺は、ひとつ息を吐いてからサンドイッチにかぶりついた。
 涼太の奴、ほんとに見てないんだろうな?
 何か怪しい。

「ふぅ〜〜、マジでゲロるかと思った。そんなムキになって怒らなくてもいいだろ。ただの冗談じゃん。それとも何か?その本命って『可愛くて美人で甘えると超可愛い女』だったりするのか?」
 ちゅーっとコーヒー牛乳を飲んで気分不良を改善した涼太が、細い視線で俺を見やり問いかけた。
 ぎくっ。
 涼太の言葉に一気にカーッと顔が熱くなった俺は、奴から顔を背けた。
「い、いいだろ。そんなの。とにかく誰にも見せたくないんだ。俺だけの・・・大切な人なんだ。」
 世界一大好きな子なんだ。お嬢様は・・・。
「ふ〜ん。その様子じゃ『可愛くて美人で甘えると超可愛い子』なんだぁ〜??でも、片想いじゃなぁ〜。」
 むっ。
「片想いでも何でも、一番大切で一番好きで一番愛してるんだ!!」
 意地悪な瞳で言う涼太についムキになって反論した直後、凄まじく恥ずかしい科白を堂々と叫んだ自分に赤面してしまった。
 うっ、俺としたことが・・・。とんでもないことを口走ってしまった。
「わおっ、拓海の口から遊びじゃなく『愛してる』なんて聞いたの初めてだ。やっぱ一度見てみたいなぁ〜、拓海の本命。って、言ったところで見せてくれないのは分かってるけど。おっと、マジでそろそろ家出ないと遅刻だぞ、拓海!」
 急いでパンとコーヒー牛乳を食った涼太が時計を指差した。
 へ?
 素直に時計へ視線を移すと7時50分。
 ひっ!仕事8時からなのに。間違いなく遅刻だ。
「涼太、俺はこのまま行く!お前は、鍵閉めて行くように!いいな?じゃ!」
 食べさしのサンドイッチとコーヒー牛乳を掴み、涼太に言い置いた俺はバタバタとマンションを後にした。


 車をぶっ飛ばして沢村の屋敷に到着したのは、8時20分。
「ひぃ〜〜〜〜、だいぶ遅刻した。」
 絶対お嬢様怒ってるに違いない。
 急いで使用人駐車場に車を止めると、必死に走って屋敷の玄関へと向かった。
 それにしても、いつもながら何て使用人駐車場から遠いんだ。屋敷の玄関。
 ムカつく。
 切れる息で走ってようやくでかい屋敷の玄関に辿りつき、息を整え・・・いざ呼び鈴を鳴らそうと手を伸ばした瞬間!・・・突然玄関の重い扉が、どうやったらこんな勢いよく開くんだと思うくらい、とてつもなく思いきり開いた。
「うわっ!!」
 あまりの驚きに身を引いたのと同時に、何かが俺に凄い勢いでぶつかった。
「ぎゃっ!!」
「いってぇ!!!!」
 俺の声に被さったのは男の声。
 いててて・・・。
 ぶつかった顎を擦りながら視線を落とすと、そこには見たことのない男がいた。
 しかも、見た感じ・・・お嬢様とたいして変わらないくらいだ。
 誰だ?こいつ?でも、屋敷から出て来たってことは・・・。
「あ、すみません。」
 とりあえず一応頭を下げて謝ると、男は俺を見上げて睨みつけ怒鳴った。
「何なんだよ、てめえ!!んなとこでぼーっと突っ立ってんじゃねえよ!!邪魔なんだよ!さっさとどきな!!」
 むかっ。
 何だこのクソガキ。
 人にぶつかって第一声がそれかよ。
 思わず拳にぐっと力を籠めたものの、得体の知れぬ・・・もとい、正体の分からぬ相手だけに、ヘタに手を出すと危険だと察した俺は、殴る代わりに笑顔を向けた。
「ぼーっと突っ立ってた訳じゃありません。お嬢様に用事があって、これから呼び鈴を鳴らそうかと思ってたところです。」
「お嬢様ぁ??あぁ、月華に用事か。・・・って、てめえ!月華の何なんだ!?」
 無愛想に返していた男は、突然俺の服をがしっと鷲掴みにし、凄い目つきで睨み詰問した。
 ぎゃっ!
 いや・・・な、『何なんだ!?』と言われても・・・。
「あの、お嬢様の専属運転手をしております者ですが・・・」
 って言うか、お前こそお嬢様の何だ!?そんなにムキになるところが怪しい。
 苦笑いで返した途端、男は更に凄い目つきで俺を睨みつけた。
 だから、何で俺がこんなクソガキに睨まれなきゃならねえんだよ。
「月華の専属運転手だぁ??お前が??」
 疑わしいと言わんばかりの顔で、俺を頭の先から足の先までじっくり見る男。
 何なんだ、こいつは。
「はい。そうでございます。嘘は申しておりません。」
 作り笑顔で答えたのと同じくして、屋敷の中から足音が聞こえた。

「大輝、何して・・・あっ、早瀬!」
 足音とともに顔を見せたのはお嬢様。彼女は、俺を睨みつけている男を『大輝』と呼んでから、俺に気付いてにっこり笑った。
 大輝・・・?初めて聞く名前だ。何者??
「お嬢様、おはようございます。少し出勤が遅れてしまいました。申し訳ございません。」
 お嬢様に軽く頭を下げて謝る俺を、大輝と言う男がじっと見やり、『どうやら、嘘じゃないみたいだな。』と小さく呟いていた。
 だから嘘じゃないってさっき言っただろうが!このクソガキ。
「ううん、いいよ。あ、ねぇ、それより早瀬・・・」
「ほら、月華、早く行こうぜ。」
 お嬢様が俺に話しかけたと同時に、いきなり彼女の手をぎゅっと強く握った大輝と言う男は、そのまま俺の前からお嬢様を引っ張って行った。
 えっ。おい!
「きゃっ、ちょっと、大輝ってばそんなきつく引っ張らないで。痛いよ。痛いってば。」
 大輝と言う男のあまりの強引さに、お嬢様が痛みで顔を歪めた。
 お嬢様!
「ちょっと、お待ち下さい。お嬢様が痛がっておいでじゃないですか。」
 たまらず大輝の肩をがしっと掴んで言い放った俺に、即座に大輝が見返し口を開いた。
「てめえ、何気安く俺の肩掴んでんだよ!!運転手如きが、気安く俺に触るんじゃねえよ!!離せ!」
 むかっ。
 何だと、このクソガキ〜〜〜。
「確かに私は“ただの運転手”です。しかし、お嬢様に無理強いをなさる方はどなたであろうと許しません。主をお守りするのも私の役目です。」
 大輝の手からお嬢様をぐっと離した俺は、彼女をきゅっと優しく抱きしめた。
「早瀬・・・」
「お嬢様、手は大丈夫ですか?」
 お嬢様を見下ろし声をかけると、彼女はこくんと頷いた。
 そんな俺とお嬢様をじーっと見ていた大輝が、一瞬の隙を見てがばっと俺からお嬢様をかっさらった。
 げっ。
「やっ、いきなり引っ張らないでよ大輝。」
「あ、ごめん。今度は強く引っ張らないようにする。だから温室行こ、月華。」
 痛そうにしたお嬢様に素直に謝った大輝は、少し頬を赤らめながらお嬢様の手を優しく握って歩き出した。
 何だ、あいつのあの態度の違いは!しかも、何で顔を赤らめる!!
 むむぅ〜〜、あいつはいったい何者なんだ!お嬢様の何だ!?
 気になる。ものすご〜〜く気になる!
「うん。あ、じゃあ早瀬、話しはまた後でね。」
 大輝に笑顔で返事をしたお嬢様は、俺にも可愛い笑顔で言い残し・・・トコトコと行ってしまった。
 お嬢様ぁ〜〜〜〜。

 結局玄関先にひとりポツンと取り残された俺は、『一生懸命走ってきた俺っていったい・・・』とブルーになりながら、トボトボと運転手待機室へと向かった。

 待機室に入ると、中にいたのは翔太兄ひとり。
「あ、拓、おはよ〜。」
「おはよ。あれ?加藤さんと山中さんは?」
 辺りをもう一度見渡したが、やっぱりいるのは翔太兄のみ。
「二人とも旦那様と奥様のお供だよ。」
 にっこり笑顔で教えてくれた翔太兄は、『拓、コーヒーでいい?』と更に付け加えた。
「あ、うん。ありがと。」
 お礼を言ってからソファに腰を下ろした俺は、はぁ〜っとひとつため息を吐いた。
 ほんとに、あのクソガキは何者なんだろう。
 お嬢様も、奴のことを名前で呼んでた。ってことは、知り合いだよな?

「拓、はい、コーヒー。どうかしたのかい?眉間にシワ寄せて。」
 テーブルにコーヒーを置いた翔太兄が、俺の向かいのソファに座りながら声をかけた。
「え?ううん。何でもない。それより、翔太兄、この前は変な電話してごめん。」
 俺、どうかしてたよな。翔太兄がいるのに、由胡に蓮の相手させようとするなんて。
「へ?あぁ、あれね。電話口でいきなり『由胡を貸してくれ』って言うからびっくりしちゃったよ。でも、何で?もういいの?」
 思い出してくすっと笑った翔太兄が、俺に尋ねかけた。
「うん。もう解決したからいいんだ。」
「解決?」
 俺の言葉に不思議そうに首を傾げた翔太兄。
「あぁ、ちょっとね。」
 曖昧に返した瞬間、翔太兄がついっと視線を細めて俺を見た。
「拓、それって、お嬢様の彼氏がらみ・・・じゃない?」
 えっ・・・。
 入れられた鋭い突っ込みに、思わず目を見開いて固まってしまった。
「当たり・・・だ?だと思った。だって、この間お嬢様の彼氏の写真持ってたし。何となくそんな気がしたよ。でも、お嬢様は放っておいても平気だよ。騙されてるのご存知だから。」
 へ?
 思いがけない翔太兄の告白に、俺は更に驚き目が点になった。
 翔太兄、何で・・・。
「え、何で・・・知って・・・」
「ん?あぁ、お嬢様から聞いたんだ。騙されてるけど、知ってて付き合ってるんだ・・・って。拓が退院して初出勤した日だよ。拓が帰ってからお嬢様とお庭で会ってね。その時に。」
 ふふふっと笑う翔太兄に『そっか。』と答え、コーヒーをすすった。
 何だ、お嬢様、翔太兄に先話してたんだ。
「でもさ、お嬢様が彼と付き合った理由、おもしろいよね。」
 コーヒーカップを手に、おかしそうにくすくす笑って言った翔太兄。
「あぁ、『年上だったから』だろ?」
「そうそう。それもさ、『年上の人と付き合ったら、自分も精神的に大人になれるかも知れないって思ったから』だもんね。」
 苦笑いで返した俺に言葉を続けた翔太兄は、ふふっと笑ってクッキーを頬張った。
 え・・・?
 精神的に大人になれるかも知れないと思ったから?
 それが理由・・・?それで、蓮と?
「そう・・・なんだ?」
 初めて知った。
「えっ、あ、もしかして拓、知らなかったのか?理由・・・。あちゃ、知ってるもんだと思ってた。」
 理由を知らなかった俺に驚いた翔太兄は、まずいとばかりに手で口を押さえた。
「なぁ翔太兄、何でお嬢様・・・、大人になろうなんて・・・。」
 真剣に聞く俺に、翔太兄はしばし口を閉ざしてから軽く息を吐いた。
「今知らなくても、そのうちきっと分かる日が来るよ、拓。」
 そのうち?
 翔太兄の科白に『そのうち・・・か。』とだけ呟いた俺は、カップの中のコーヒーをじっと眺めていた。

「それより、今日は拓、お嬢様に近づけないかもよ。」
 窓の外を眺めつつ翔太兄が小さく呟いた。
「え?どういうことだ?」
「今日は、お嬢様の従弟が来てるんだ。これがまた口の悪い子でね。でも、お嬢様にだけは素直で優しくていい子なんだよ。」
 おかしそうに笑い出す翔太兄を見て、ひとりの男を思い出した。
 口が悪くて、そのくせお嬢様には素直で優しくて・・・。
 むっ、あいつか・・・。
 あいつ、お嬢様の従弟だったのか。
「あぁ、その子ならさっき会ったよ。確かに口の悪いクソガキだった。」
 思い出しても腹の立つ。
「あははは。な〜んだ。拓ってば、もう合ったんだ??だろ?事実、すっごくクソガキなんだ。あの子は『櫻井 大輝』くんって言って、奥様の弟さんの息子さんなんだよ。つまり、お嬢様の従弟。年はお嬢様と同じなんだけど、誕生日はお嬢様の方がひと月早いんだ。あの子も大学生だよ。」
 お嬢様と同じ年?大学生?
 笑いながら説明する翔太兄に頷きつつ、ふと彼の一言に引っかかった。
 お嬢様の方が、クソガキより一ヶ月誕生日が早い?それって・・・、翔太兄、お嬢様の誕生日知ってるってことか?
 一瞬聞こうかどうしようか迷ったものの、今は聞かずに黙っておいた。
 だっていつか、罰ゲームで必ずお嬢様の口から聞いてやるんだ。
「へぇ、お嬢様と同じ年なのか。」
「うん。でさ、大輝くんて、拓と同じでお嬢様のことものすごく純粋に大好きなんだよ。だから、お嬢様に近づく男はすっごく嫌うんだ。おもしろいだろ?」
 そう言って普通に素で笑う翔太兄を見ながら、俺は返す言葉に詰まりただ苦笑した。
 ・・・。
 しょ、翔太兄、それっておもしろいって言うのか?
 従姉を好きって、普通ダメだろ。
 にしても、やっと謎が解けたぞ。何であいつが俺を睨んでたのか。何で頬を赤らめてたのか。
 お嬢様のことが好きだからなのか・・・。
 むぅ〜〜〜。新たなライバル登場か??
 いや、俺の中では悠斗以上の強敵はいないぞ。あいつが一番曲者だ。

「あ、じゃあさ、お嬢様の従弟ってことは、あのクソガキもいいところのお坊ちゃんなのか?」
 ふと思い立って気になり問いかけると、翔太兄は『そうだよ。』と頷いた。
「やっぱ、そうか。」
 運転手如き呼ばわりされたもんな。
「櫻井グループの次の後継だよ。大輝くんは。」
 にこにこ笑顔で言った翔太兄は、コーヒーをこくっと飲み干した。
 『櫻井グループ』??・・・って、沢村に負けず劣らずの資産家じゃん。
 すげえ。そこのお坊ちゃんなのか・・・あのクソガキ。
「へぇ。」
 でも、いくらお嬢様のこと好きでも、従姉弟同士じゃ結婚も出来ねえよな。けっけっけ。
 ざまあみろ、クソガキ。
 やっぱ、俺のライバルにも値しねえ。ふふん。
 ひとりにへにへとご機嫌にコーヒーを口に運んでいると、そんな俺を見て翔太兄が笑った。
「拓、『あんなクソガキ、俺のライバルじゃねえ。』って思ってるだろ?見てて丸分かり。おもしろい。」
 うっ。
 翔太兄の鋭い指摘に、思わずコーヒーをむせ込んでしまった。
「げほっげほっ・・・。翔太兄〜〜、分かっててもそういうのは黙っててくれよ。」
「ごめんごめん。ほんとに拓って、お嬢様のことに関しては、すごく素直で純粋な反応するからおもしろくてさ。さて、俺はそろそろ坊ちゃんを送らないと。今日は出勤遅いんだ。じゃ、行って来るよ、拓。」
 ふふふっと笑いながら謝った翔太兄は、センチュリーの鍵を掴んで俺に言い置き、スタスタと部屋を出て行った。
「おぅ、いってらっしゃい〜。」
 翔太兄の背中に手を振り見送った俺は、ソファにでろんと倒れ込んだ。

「はぁ〜〜、さてと、俺は何しようかなぁ・・・。」
 あのクソガキがいるかぎり、お嬢様と話しは出来そうも無いし。
 ちらっと窓の外を見やると、白い大きな入道雲がどっしりと空に浮かんでいた。
 今日も暑いぞ、こりゃ。
 こういう時は、涼しい場所で涼んでるのが一番だ。
 しかし、あのクソガキのこと『従姉弟同士だから結婚出来ないし、ざまあみろ〜』・・・な〜んて思ってにへにへしたけど、それを言うなら俺なんか『お嬢様とヤクザ』じゃん。もっと最悪だぜ。
 はははっ。
「結婚かぁ・・・。」
 お嬢様もいつか、奥様が旦那様と結婚したみたいに『いいところのお坊ちゃん』と結婚するんだろうな。
 例えば、涼太みたいな・・・。いいな、羨ましい。
 俺もお嬢様と結婚したい。
 確かに、今を大事にしようって思うし、そうするべきだって分かってるけど、それでも先のことは考えちまう。
 だって、ずーっとずーっと片想いは苦しいよ。
 苦しすぎて、胸が痛い。

「何が『結婚かぁ〜』なの?」
 え?
 突然聞こえた声とともに、ソファの背もたれからにゅっと顔を覗かせたのはお嬢様。
「お、お嬢様!えっ、あ、いえ・・・その・・・」
 びっくりした。いつの間に入って来たんだ。あのクソガキと温室行ってたんじゃ。
 慌てて起き上がって座ると、お嬢様がちょこんと俺の隣りに腰を下ろした。
「早瀬のお友達で、誰か結婚するの?」
「え、ええ、まぁ。」
 引きつり笑顔で適当に頷く俺を見て、お嬢様は『そっか。』と笑う。
 言えない。君と結婚したいだなんて・・・。口が裂けても言っちゃいけない科白だ。
「早瀬も、いつか結婚するんだよね?どんな人とするんだろうね?」
 え・・・。
 独り言のように呟いたお嬢様に、俺の胸はズキンと痛んだ。
 お嬢様・・・。
 俺は・・・。
「いえ、きっと、ずっとしませんよ。そんな気がします。そういうお嬢様も、いつか奥様のように、何処かの御曹司のもとへ嫁がれるのでしょうね。その際には、私のお仕事もお終いですね、きっと。」
 痛む胸を堪えいつものように笑顔で言うと、お嬢様はぶんぶんと首を振った。
「私もずーっとお嫁に行かないもん。だから、ずーっと傍にいてね、早瀬。」
 そう言うと彼女は、俺を真っ直ぐ見つめて最っ高の笑顔をした。
 お嬢・・・様・・・。
 やっぱり大好きだよ。死ぬほど愛してる。今すぐ思いきり君を抱きしめたいよ。
 抱きしめて『愛してる』って叫びたい。そして、ずっと離したくない。
 でも、それは禁じられたこと。
 君と俺は『お嬢様と使用人』だから・・・。『財閥の令嬢とヤクザ』だから・・・。
 こんな俺が、君に気持ちを伝えるなんて・・・もってのほか。
 膝に置いた手をぐっと握り締めて感情を抑え、笑顔とともに口を開いた。
「はい。ならば喜んで、ずっとお嬢様の運転手をさせていただきます。」
 俺は、君と一緒になることなんて・・・永遠に無理なんだ。
 それなら、せめてずっと傍にいたい。
 君だけを見ていたい・・・。
「うん。ずーっとよろしくね。運転手兼ボディーガードさん。」
 そう言って俺を見たお嬢様は、優しくにっこり笑っていた。

 それから間も無く・・・、俺達の間にひとつの声が割り込んだ。
「あ〜〜〜〜〜!!!またてめえかぁ!!月華に何してやがる!!」
 待機室のドアをバンッと開けてズカズカ入って来たのは、あの大輝と言うクソガキ。
 げっ、また出たな。クソガキめ。
「いえ、何も。ただ、お嬢様とお話を。あ、お嬢様、もうひとつお伺いしたいことがあるのですが、土曜日のバーベキューは何時からですか?」
 今日一番大事な質問を思い出して投げかけると、お嬢様は『11時30分からだよ。』と笑顔で告げた。
 11時30分か。それなら何とか涼太を見送ってから出れば間に合うかな。
「そうですか。では、私も参加させていただきます。」
「ほんと?早瀬。良かったぁ〜。じゃあ、11時30分にお屋敷の玄関前ね。バーベキューは、屋敷の裏にある人工の川原ですることにしたから。四人でゆっくりのんび・・・」
「待った!待った!!何だよ、そのバーベキューって!!月華、こいつも参加するのか!?なぁ!?だったら、俺も参加する!!俺も土曜日に来る!!」
 お嬢様の話しの途中で割り入ったクソガキが、俺を睨みつけてから自分も参加すると主張した。
 うっ、しまった。こいつの前で言うんじゃなかった。
「え、でも大輝は、いつも土曜日はおうちでドイツ語とフランス語のレッスンじゃない。だから無理・・・」
「そんなの休む!!ちんたらドイツ語やフランス語なんかやってる場合じゃない!月華がこいつと一緒にいることの方が、俺には危機だ!!こいつが月華に何かしないって保障無いだろ!!」
 またもやお嬢様を遮って口を開いたクソガキは、俺をキーッと睨んで彼女に吼えた。
 いや・・・、『何か』・・・って。何もしねえよ。
 っつーか、したくても出来ないし。
「何変なこと言ってんのよ、大輝。早瀬がそんなことする訳ないじゃない。だから大輝はちゃんと家で・・・」
「イヤだ!来るって言ったら、絶対来る!!こんな奴に俺の月華を渡してたまるか!!」
 お嬢様をがばっと抱きしめたクソガキは、蛇のような目で俺を威嚇していた。
 ・・・。
 もしかして俺って、お嬢様を襲うケダモノみたいに思われてるのか??
 うぅ〜〜。
「もう、離してよ。じゃあ、おじ様のお許しが出たら大輝もバーベキュー来ていいよ。でも、お兄ちゃんもいるよ?」
 大輝を突き放しちらっと彼を見て言ったお嬢様に、一瞬奴が固まった。
 む?
「え・・・、悠兄ちゃんもいるのか?うぅ〜〜〜〜。」
 唇を噛んで嫌そうに唸るクソガキを見ながら、思わずぷっと笑ってしまった。
 こいつ、悠斗のこと怖いんだ。笑える。
「お兄ちゃんいてもいいなら、大輝も参加していいよ。」
 ふふっと小悪魔な笑みを向けるお嬢様に、クソガキはしばし考えてから俺をビシッと指差し口を開いた。
「それでも参加する!だって、こいつが月華と一緒にいると思ったら、何か分かんないけど超ムカつく!!」
 はははっ、悠斗よりも俺のことがムカつく訳ね。
「ん〜、分かった。じゃあ、一応大輝もメンバーに入れておくから。それでいいでしょ?」
 苦笑いで呆れがちに言ったお嬢様に『おぅ。』とクソガキが答えたところで、彼のケータイが鳴った。
「ちっ、幸成からだ。もうそんな時間か。」
 独り言のように呟いたクソガキは、更に『おい、てめえ!俺がいないからって、月華に変なことすんじゃねえぞ!いいな!?絶対だぞ!!分かったな!?』と俺に何度も念を押し、ケータイを持っていそいそと部屋を出て行った。
 だから、何もしねえって。変な奴。

 にしても、幸成?・・・友達?それとも、あいつのとこの使用人?
 むぅ〜っと頭を悩ませてる俺に『幸成って言うのは、大輝の大学の友達だよ。』とお嬢様が教えてくれた。
 大学の友達?
 あぁ、そっか、まだ大学って休みだもんな。
「なんだ、お友達ですか。それにしても、おもしろい従弟さんですね。あ、川凪さんから聞きしました。お嬢様の従弟の方だと。よほど、お嬢様のことがお好きなのですね。だって、私のことを『お嬢様を狙うケダモノ』みたいな目で見ていらっしゃいましたよ。こ〜んな風に目を三角にして。」
 くすくす笑い両手で目じりをキッと上げてやってみせた俺に、お嬢様も『そうそう、そんな目つきだったよね、大輝ってば。』と同意しケラケラ笑い出した。
「でもって、『俺がいないからって、手ぇ出すんじゃねえぞ〜〜〜!』って怒ってましたね。」
 目じりを指でキッとあげたまま大輝のモノマネをした俺に、更にお嬢様はお腹を抱えて笑い出す。
「ひゃはははは、似てる〜〜〜。早瀬ってば、モノマネ上手すぎ!おっかしい〜〜〜」
 くすくす笑うお嬢様の顔は、やっぱりどんな女より一番可愛い。いや、世界一可愛い。
 好き。
「お嬢様、笑いすぎですよ。」
「あははは、だっておかしいんだもん、早瀬ってば。それに、“ケダモノ”ってのもおかしくて・・・。早瀬でも“ケダモノ”になったりするの?」
 まだおかしいのか、ケラケラ笑いながら問うお嬢様。
「へ?私ですか?そりゃまぁ、そういう人が目の前にいれば・・・なるかと。」
 俺だって、普通に男なんだ。
「そうなんだぁ?早瀬もやっぱり、男の人なんだね。」
 俺の言葉に素直に頷き感心したお嬢様。
 うっ、そんな感心しなくても。っつーか、俺ってやっぱ、未だにお嬢様の中で悠斗と同レベルなのか?
 何かショック。
「ええ、まぁ。ごく普通に、健康的な一般成人男子です。」
「ふ〜ん、そっかぁ。早瀬も女の子の前でケダモノになっちゃうんだぁ〜。」
 ちらっと俺を見て意地悪っぽく言ったお嬢様の瞳は、まるで誘っているかのよう。
 お嬢様・・・。
 もしかして、俺のこと誘ってる?
 そう思った瞬間、口と身体は無意識に動いていた。
「何なら、なりましょうか?今・・・」
 ぐいっとお嬢様を抱き寄せ真剣に見つめて告げると、驚いた彼女は一瞬にして表情を強張らせた。
「え・・・。は、早瀬・・・」
 顔を真っ赤にして俺の腕の中で身を固くしたお嬢様に気付いた瞬間、思いきり笑い飛ばしてしまった。
「あはははっ。冗談ですよ。以前にも申しましたでしょ。お嬢様にそのような感情は持ち合わせておりません。安心して下さい。お嬢様が変なことを仰るので、からかってみただけです。」
 くすくす笑いながらお嬢様を離した俺は、両手をぐっと握り締めた。
 バカだな、俺。あんな風に全身で拒絶されるの分かってたはずなのに。それでも、ちょっとだけ期待した・・・。バカすぎだぜ。
 ははっ、やばいな、手ぇ震えてる。感情押し殺してるせいかな。
「もう、早瀬のバカ。びっくりするじゃない。」
 開放され自由になったお嬢様が、真っ赤な顔のまま口を尖らせてぼやいた。
「申し訳ありません。悪ふざけが過ぎました。」
 謝ってソファを立ったのと同じくして、クソガキが電話を終えたのか再び戻って来た。

「おい!てめえ、月華に何もしてないだろうなぁ!?月華、こいつに何もされ・・・って、何で顔赤いんだよ?月華。はっ!やっぱこいつに・・・。こらぁ!!やっぱてめえ、月華に何かしたんだろ!?したんだろ!?おい、こら、何とか言え!“たかが使用人の分際”で、月華に手ぇ出すんじゃねえ!!必要以外は気軽に話しかけるな!!身分を弁えろ!!」
 入って来るなり俺に吼えたクソガキは、お嬢様の顔を見て更にヒートアップしたらしく、俺のスーツに掴みかかってきゃんきゃん吼えまくった。
 『たかが使用人の分際』・・・か。その科白、前にお嬢様にも言われたっけ。
 バカ野郎、そんなの俺だって分かってるっつーの。
「何もしておりませんよ。それ以前に、お嬢様が私など相手になさるわけ無いでしょう。私とて、お嬢様にそのような感情は持ち合わせておりません。自分の立場くらい弁えております。変な言いがかりは止めてください。」
 大輝の手を振り払い静かに言い返した俺は、そのままツカツカと待機室を出て裏庭へと向かった。


 待機室の裏庭をもう少し奥まで行った先に生えている大木に辿りついた俺は、それを背もたれにしてズルズルとしゃがみ込んだ。
 時々吹く風が、サラサラと大木の葉を揺らし音をたてる。
 それと同時に遊ぶ髪を、何度かかき上げた。
「あ〜あ、俺って超おバカさんだ。」
 自分で自分にぼやいて笑った瞬間、瞳からは何かが落ちた。
 それが何なのか気付きたくなくて、すかさず取り出したハンカチで拭った。
 
 しばらくぼーっとしていると、俺を探し当ててパタパタと駆けて来たお嬢様が、俺の前に膝をついた。
「よかった、早瀬見つけた。ごめんね、さっき。大輝が失礼なこと言って。私が代わりに謝るから許して。」
 そう言うとお嬢様は、俺にそっと頭を下げた。
 お嬢様・・・もしかして、俺にそれを言うためにわざわざ探して・・・?
「いえ、気にしておりませんから。お嬢様が悪くないのに、頭は下げないで下さい。それに、彼が仰ったことは間違っておりません。たかが使用人の私が、お嬢様と気軽に話すなどいけないことでした。以後気をつけます。」
 そうだ、俺はただの使用人なんだ。もっと弁えないと。
 この子は財閥のお嬢様なんだから。
「どうして?使用人だと私と話しちゃいけないの?何で?そんなの変だよ。お兄ちゃんも言ってたもん。『早瀬と仲良くするんだぞ』って。なのに、喋っちゃダメなんて変だよ。ね?そうでしょ?」
 心の底から不思議そうに尋ね返すお嬢様は、俺の目をじっと覗き込んだ。
 そんな瞳で見ないでくれ。感情が抑えられなくなる。
「ですが・・・」
「じゃあ、私が許可します。今後も、月華お嬢様と普通にお話してよろしい。ね?それならいいでしょ?」
 少し視線を落として口ごもった俺に、指をぴっと一本立てて笑顔で告げたお嬢様。
 君って・・・、ほんとに優しいいい子だ。
「はい。では、仰せのとおりに。」
「うむ、よろしい。」
 すっと頭を下げて応じた俺に笑って返したお嬢様は、ちょこんと隣りに腰を下ろした。
「ところでお嬢様、こんなところにいてよろしいのですか?従弟さんは?」
「ん?あぁ、大輝ならお友達と合う用事があるからって、一旦帰っちゃった。『すぐ戻る!』って言い残して・・・」
 苦笑まじりに言ったお嬢様の科白に、思わず俺も苦笑いを浮かべてしまった。
 はははっ。すぐ戻るのか。来なくていいのに。

「はぁ〜、それにしてもすごく風が気持ちいいね、ここ。揺れる葉の音と鳥の声しか聞こえない・・・。うちにもこんな場所あったんだ・・・。」
 そう言って大きく深呼吸をしたお嬢様が、わさわさ揺れる葉音と鳥のさえずりに耳を傾けた。
「ええ、そうですね。意外な癒しスポット発見です。」
 揺れる木々の隙間から覗く青い空を見上げて呟くと、お嬢様も『そうね。』と頷き笑う。
 何だろう、すごく幸せを感じる。
 ただ隣りにいるだけなのに・・・。
「そうそう、ねぇ早瀬、土曜日楽しみにしててね。何とかうまく工夫して、シイタケ食べれるようにしてあげるから。」
 ふと俺へ視線を移し、自信あり気に言ったお嬢様。
「はははっ。では、土曜日は気合を入れて参ります。」
「うん。任しといて!」
 自分の胸をポフッと叩いたお嬢様は、にっこり笑顔を向けた。
 俺の愛しのお嬢様、君はやっぱり世界一素敵だよ。
「あぁ〜〜早く土曜日にならないかなぁ〜。」
 待ち遠しそうに遠い空を見上げて呟いたお嬢様に『そうですね。』とだけ答えると、『でも、大輝は来なくてもいいけどね。』と彼女は苦笑まじりに付け加えた。
 はははっ。
「彼が来ると、お嬢様身動き出来なさそうですしね。」
 彼女の言葉に深く頷き同意した俺は、想像した途端おかしくて、ついくすくすと笑ってしまった。

 にしても、土曜日かぁ・・・。
 涼太の方も、上手くやってもらわないとな。けど、ほんとにあいつ、一人で大丈夫かな。昨日の蓮の態度が演技ならこっちも不安はないけど・・・、もし涼太や俺の睨む通りマジ惚れだったら・・・やばいよな?ヘタしたら、あいつ襲われるじゃん。襲われたら、涼太が男だって即バレだぞ。
 それはまずい。すげえまずいぞ。
 やっぱ、ひとりバーベキューでにへにへしてる場合じゃないか?
 うぅ〜〜〜。
 隣りでにこにこするお嬢様そっちのけで、頭の中は涼太と蓮のことで不安ばかり増していた。
 むぅ〜〜〜、尾行するべきか否か・・・。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう